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南大阪のレトロショップです。僕の原点、古本も扱っています。どこにでもあるようなリユース品もあります。
趣味でやっている店のように思われがちですが、結構、ほんきです。
孤高の剣士と呼ばれたくて、剣道、再開しました。・・・が、なかなか時間がとれません。僕のような者を「リバ剣」というらしいです。
剣道普及の一助になればと剣道具の買取りも行っております。
どうぞ宜しくお願いします。
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本・レトロなお品・剣道具お譲りください![]()
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知人の悪ふざけ
基本的にテレビは見ない。
その分、NetflixやAmazonPrimeで映画を観るのを楽しみにしている。
何だったか忘れたが、時折、TVなんとかというものを見たりもする。
昨夜も、ヘラヘラ笑いながら、とある映画を観ていた。
その中で、女性がとても高価な腕時計をプレゼントされる場面があった。
それをみた時、数珠つなぎのように、昔の出来事を思い出した。
それはとある、真夏のひどく暑い日だった。
その日、知人の勤めるデパートの近くに用事があった。
で、ついでに寄るから、お茶でも行こうという事になった。
数ヶ月前、知人はそのデパートの高級腕時計売り場の責任者という立場で転職をしたところだった。
知人が言うには「あたしは、中々いい仕事をするんですよ。個人的な顧客もそこそこいる。あたしをハンティングしない手はないと思うんですわ。謂わば、腕利きの傭兵というところですな」と。
職場は抜けられるのか?と聞くと、大丈夫だと。
当時、僕は何処に行くにしても、ヨレヨレのジーンズにTシャツ、サンダル履き。
勿論、その日もそのような格好で出掛けた。
再現すると次のような感じだ。
腕時計売り場に着くと、知人がいない。
僕はそんなに広くもない売り場を、しばらくうろついた。
スタッフさん達は、明らかに僕をチラチラと目で追いかけていた。
これでは警備を呼ばれかねないと思い、知人に電話を入れた。
知人は時計売り場の奥の方にU字型の入り口みたいなのが見えまへんか?と言った。
そして、もう用事が終わるから、そこから入ってきてと。
気づきにくいけど、確かに少し狭めの入り口があった。
その向こうに明らかに他とは違った空間がチラッと見えた。
僕がその入り口に向かって歩き出した所、その近くにいたスタッフさんに呼び止められた。
どうやらその先は、限られたお客しか踏み入る事が出来ない売り場のようだった。
通常、外商が付き添って案内するような売り場なのだろう。
そこからちょっとした知人の悪ふざけが始まった。
知人は僕を見つけると、三文役者のように、いんぎんに挨拶をした。
僕は小さな声で「やめなさい」と言ったが、知人の目は笑っている。
知人が、近くのスタッフを呼び止め、何やら呟いていた。
と、ついさっきまで、怪訝な目で僕を見ていたスタッフさん達の態度が一変した。もう笑顔満開という感じだ。
ああいうのを豹変とか掌を返したというのだろう。
知人は「その格好じゃ思い切り不審者扱いされるわな」と、小さな声で言った。
それから知人は、その秘密の部屋に僕を招き入れ、普段目にするような事のない商品を見せてまわってくれた。
勿論、息を吹きかけてもダメなような、上質な什器越しにだが。
そこには、聞いたこともないようなメーカーの商品がゆったりと並べられていた。
もう腕時計というより、宝石だな。
その売り場を担当しているスタッフさん達が、チラッと僕の身なりを見ながらも深々とお辞儀をする。
今更ながら、僕は相当場違いな所にいると思った。
この秘密部屋の人たちは、どこかオープンな売り場のスタッフさんとは雰囲気が違っていた。
一口にデパートの接客スタッフと言っても色々とあるもんだと、初めて知った。
そうこうしているうちに、スタッフさんがこちらに近づいてきて「横から失礼します。あのお茶、用意しましょうか?外商の担当は誰でしょう?」と、言った。
僕は「あっ、いいです。今日はこれで失礼します」と言った。
知人は僕に「同じ館内ですが、落ち着く喫茶店があります。そちらに参りましょう」と言った。
他のスタッフさん達が「有難うございました」と深々とお辞儀をなさっていた。
知人は「なっ、売り場を抜ける事が出来たやろ」と。
「あんた、あのね、この暑いのに冷や汗が出たわ」と、僕。
知人に本当にあんな高価な時計を買う人がいるのか?と聞くと、ぼちぼちやけどなと。
既に景気は悪化の一途を辿っていたのに、この世とはかけ離れた生活をしている人たちがいるのかと、僕はただただ驚いた。
もう一つ、当時、デパートの客離れが進んでいる中、こんな売り場を維持する意味があるのかと、しっくり来ないのもあった。
客離れが進んでいるからこその施策だったのかも知れないが。
知人に「僕のことをまわりのスタッフさんにどう説明したの?」と聞いたが、
「あの飄々とした人、いつもあんな格好だけど、実はとんでもない方だ。覚えておいて損はない」と言っただけだと。
まんまと知人の悪ふざけにしてやられた。
まあ、それは兎も角、その時の僕は、彼らスタッフにとって何者に映っていたのだろう? 是非、聞いてみたいものだ。
むかしむかしのドラマの一コマのような話だ。