レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -5ページ目

残暑というより暑中という感じがする

お盆が終わった。

世の中は少し落ち着きを取り戻したようである。

しかし、僕の店には落ち着きなどない。

もう手に汗握る日々だ。

額からも汗が滴る。

緊迫感でなく、生理的現象だ。

真夏の大阪。

ただでさえ熱気がすごい。

それは堺の田舎といえども同じだ。

隙間なく走るアスファルト道路やコンクリートが昼も夜も熱を吐き出す。

そこへ来て、元材木倉庫の店内。

二箇所の扉を開放して風の通り道をつくった所で、蒸し風呂である。

扇風機をフル回転させる。

扇風機はカタカタと首を振って、虚しく熱気をばら撒くだけだ。

お客が来れば、お互い汗だくで、話をする事になる。

「しかし、あつおますな」を連呼する。

商品の陳列など、落ち着いて出来るものではない。

作業は自ずと夜になる。

それを待っていたかのように蚊が来襲する。

奴らも気温の高すぎる昼間は動かないのである。

これはある意味修行である。

お盆というのは、お客の財布の紐も心の扉も、ほんの少し開く。

それを狙っている訳ではないのだが、お盆は毎年里帰りのついでに立ち寄ってくれるお客の為に、頑張って営業をする。

お客への第一声は「いらっしゃいませ」ではなく「店内は毎度の如く、蒸し風呂です。大丈夫ですか?」である。

お客は「屋外の骨董市を思えば、全然大丈夫」と仰る。

彼らは強者揃いなのだ。

下手をすると、こちらの方が暑さでゼイゼイ言う。

エアコンのない店舗など、現代では珍しい。

もはや昭和中期以前の空気をリアルに再現しているとすら言える。

昭和のあの気だるく蒸せるような夏を体験したければ、是非成穂堂へ。

容赦なく鳴き響くセミたちもお出迎えする。

それにもめげず、盆明けの今日も、僕は汗を拭きながらレジに立つ。

うそである。殆どの時間、エアコンのガンガン効いた事務所に、こもっている。


個人的には夏が大好きである。

懐かしい思い出も圧倒的に夏が多い。

あの開放的な空気感も好きだし、茹だるような暑さにだらけ切った空気感も好きだ。

そこには何の戦意もなく、ある種の平和さえ感じる。

しかし、今年はこの暑さが少しばかり体に堪えている。

僕の座るベンチの隣りには、ちゃっかり夏君が座っている。

僕が「もうそろそろ、帰るかい?」と聞くと、夏君は「もう少し付き合いなよ」と、肩を組んでくる。

僕は「ふぅ〜」と、ため息をついて、立ち上がる。