成穂堂、泣く。
メールをひらくと剣道具引き取りの依頼が入っていた。
依頼主はうら若き女性。
ご依頼の品は、買い替えたが殆ど使用していない防具と、
成長にあわせて使用してきた防具たち。
読み進めていくと、最後にメッセージがあった。
買い替えた防具は、使用していないのではなく、
使用できなかったのだ。
東北にお住まいで、震災に遭われた。
今の状況を考えても、これからの状況を考えても、
剣道ができる日は来ないような気がする。
使ってもらえる方の手元にいくのを望む。
と、締めくくられていた。
文面から、幼い頃から剣道に親しみ、
それは、その方の生活の一部だったのだろう事が伺える。
今まで当たり前に出来ていた事が、
ある時点を境に幻のように消える。
自分の置かれた状況を飲み込み、
身を震わせ立ち上がろうとするまでに
どれほどの時間が必要なのだろう?
きっと、そんな状況を理解は出来ても、納得はできないだろう。
それでも人は生きていかなくちゃいけない。
僕もこの10年の間に色々な事があった。
必死で立ち上げた新刊屋の暖簾をおろしたり、
体調を崩して、剣道を諦めざるを得なくなったり…
明日をどうしていいのか分からない日々が続いた。
ところが、ある日を境に
考えられないような事がおこりはじめた。
古本屋一本でやっていく道がついたり、
体の方も剣道が再開できるまでに回復した。
勿論、家族や知人の助けがあってのことだ。
きっと「奇跡」とは起こりえない事ではなく
起こり得るから「奇跡」というのだろう。
それも奇抜な事が起こるわけではない。
長年、自分の身を守ってくれた防具には、
言葉にはできない思い入れがあるものだ。
防具についた癖やキズなど、不思議なくらいに覚えている。
僕は、修理しながらも30年来の防具を使っているし、
今回の依頼主が大切に保管していたように、
古い防具を引退させても、
恐らく処分をする事はできないだろう。
それだけ思いのこもった防具を手放すのには、
どれほどの決意が必要だったのだろう?
携帯から送られてきたメールのようだったが、
どのような生活をなさっているのだろう?
そんな事を考えていると、
不覚にもおかしなものが頬を伝ってしまった。
心のどこかで、防具が送られてこない事を願っている。

依頼主はうら若き女性。
ご依頼の品は、買い替えたが殆ど使用していない防具と、
成長にあわせて使用してきた防具たち。
読み進めていくと、最後にメッセージがあった。
買い替えた防具は、使用していないのではなく、
使用できなかったのだ。
東北にお住まいで、震災に遭われた。
今の状況を考えても、これからの状況を考えても、
剣道ができる日は来ないような気がする。
使ってもらえる方の手元にいくのを望む。
と、締めくくられていた。
文面から、幼い頃から剣道に親しみ、
それは、その方の生活の一部だったのだろう事が伺える。
今まで当たり前に出来ていた事が、
ある時点を境に幻のように消える。
自分の置かれた状況を飲み込み、
身を震わせ立ち上がろうとするまでに
どれほどの時間が必要なのだろう?
きっと、そんな状況を理解は出来ても、納得はできないだろう。
それでも人は生きていかなくちゃいけない。
僕もこの10年の間に色々な事があった。
必死で立ち上げた新刊屋の暖簾をおろしたり、
体調を崩して、剣道を諦めざるを得なくなったり…
明日をどうしていいのか分からない日々が続いた。
ところが、ある日を境に
考えられないような事がおこりはじめた。
古本屋一本でやっていく道がついたり、
体の方も剣道が再開できるまでに回復した。
勿論、家族や知人の助けがあってのことだ。
きっと「奇跡」とは起こりえない事ではなく
起こり得るから「奇跡」というのだろう。
それも奇抜な事が起こるわけではない。
長年、自分の身を守ってくれた防具には、
言葉にはできない思い入れがあるものだ。
防具についた癖やキズなど、不思議なくらいに覚えている。
僕は、修理しながらも30年来の防具を使っているし、
今回の依頼主が大切に保管していたように、
古い防具を引退させても、
恐らく処分をする事はできないだろう。
それだけ思いのこもった防具を手放すのには、
どれほどの決意が必要だったのだろう?
携帯から送られてきたメールのようだったが、
どのような生活をなさっているのだろう?
そんな事を考えていると、
不覚にもおかしなものが頬を伝ってしまった。
心のどこかで、防具が送られてこない事を願っている。
