成穂堂参上
門をくぐるとなだらかなスロープが続いてた。
僕は大きく育った庭木を見ながら、
奥まった所にある玄関ドアまで、ゆっくり歩いた。
マホガニー製であろう重厚なドアの前には、
いかにも上品な奥様がお待ちになっていた。
僕は会釈をし、「お電話を頂きました成穗堂です」と、
数分前インターホンで言った事と同じ事を言った。
奥様が「どうぞ」と言って、ドアを開けて下さった。
ドアの内側には、予想を超える大きな空間が広がっていた。
奥様は「お待ちしておりました。この場所で事件はおきたのです。探偵さん」
と、困ったような仕草をみせた。
「ん~、なるほど~。私にお任せ下さい」
実は僕にはもう一つの顔がある。
なんていうような事はない。
ちょっと書いてみたかった。
本の引き取りに伺ったのだ。
ここは、店からそう離れていないお屋敷町。
このあたりから、本の買い取り依頼がある度に、
僕はドギマギする。
ヨレヨレのジーンズに軍手では
門前払いされるのではなかろうか、と思ったりする。
やはり、上質なスーツに革製の手袋などをして
行かないといけないような気がする。
玄関ホールには、大量の本が置かれていた。
本の量もさることながら、その内容に僕は考え込んだ。
殆どが専門書なのだ。
医学書が中心で、一般向きの本もその内容は
精神医学につながるものが殆どだった。
別の箱に建築関係書と文庫が200冊程度。
それとペーパーパックが数百冊。
新刊屋時代に洋書も扱っていたが、
品揃えは問屋任せだった。
凡そ、その合計1,000冊。
僕は「んん~」と唸って腕組みをした。
奥様がニコッと笑って
「どうしようもないですか?廃品回収行きでしょうか?」と。
僕は「いえ、決してそんな事はないのですが」と言って、また腕組みをした。
ちょっと算段がつきかねる。
それを察して奥様が
「生かせる本なら、生かせて頂ければそれで結構なのです。
よければお持ち帰り頂けますか?」
結局、気持ちだけの代金を置いて、
持ち帰らせて頂くことになった。
車に、本を積み込みながら、ふと思った。
町にただ一軒残った古本屋が、
どうにかこうにか生き残っているのも
こういった、本を大切にしていこうとする人たちの
ご厚意による所が大きい。
しっかりやっていかなくちゃ・・・
しかし、あの玄関ホール、僕の部屋よりでかいよなあ。
それはそれで腕組みをして、唸ってしまう。

僕は大きく育った庭木を見ながら、
奥まった所にある玄関ドアまで、ゆっくり歩いた。
マホガニー製であろう重厚なドアの前には、
いかにも上品な奥様がお待ちになっていた。
僕は会釈をし、「お電話を頂きました成穗堂です」と、
数分前インターホンで言った事と同じ事を言った。
奥様が「どうぞ」と言って、ドアを開けて下さった。
ドアの内側には、予想を超える大きな空間が広がっていた。
奥様は「お待ちしておりました。この場所で事件はおきたのです。探偵さん」
と、困ったような仕草をみせた。
「ん~、なるほど~。私にお任せ下さい」
実は僕にはもう一つの顔がある。
なんていうような事はない。
ちょっと書いてみたかった。
本の引き取りに伺ったのだ。
ここは、店からそう離れていないお屋敷町。
このあたりから、本の買い取り依頼がある度に、
僕はドギマギする。
ヨレヨレのジーンズに軍手では
門前払いされるのではなかろうか、と思ったりする。
やはり、上質なスーツに革製の手袋などをして
行かないといけないような気がする。
玄関ホールには、大量の本が置かれていた。
本の量もさることながら、その内容に僕は考え込んだ。
殆どが専門書なのだ。
医学書が中心で、一般向きの本もその内容は
精神医学につながるものが殆どだった。
別の箱に建築関係書と文庫が200冊程度。
それとペーパーパックが数百冊。
新刊屋時代に洋書も扱っていたが、
品揃えは問屋任せだった。
凡そ、その合計1,000冊。
僕は「んん~」と唸って腕組みをした。
奥様がニコッと笑って
「どうしようもないですか?廃品回収行きでしょうか?」と。
僕は「いえ、決してそんな事はないのですが」と言って、また腕組みをした。
ちょっと算段がつきかねる。
それを察して奥様が
「生かせる本なら、生かせて頂ければそれで結構なのです。
よければお持ち帰り頂けますか?」
結局、気持ちだけの代金を置いて、
持ち帰らせて頂くことになった。
車に、本を積み込みながら、ふと思った。
町にただ一軒残った古本屋が、
どうにかこうにか生き残っているのも
こういった、本を大切にしていこうとする人たちの
ご厚意による所が大きい。
しっかりやっていかなくちゃ・・・
しかし、あの玄関ホール、僕の部屋よりでかいよなあ。
それはそれで腕組みをして、唸ってしまう。
