有栖川さんに教わったこと
中学校から配られているワークブックをしていた二男が
「おとーさん、アリスおじさんの名前がのっている」と。
「アリスおじさんって、有栖川さんの事?」
「そう、ミステリーちゃうねんな。何かおかしいね」
そう言って、二男がワークブックを見せてくれた。
版元をみると、大手の参考書メーカーだ。

そんな版元からも依頼が入るのか~
僕にまわしてくれないかなあ・・・
いやいや、それは押しも押されもしない正統派の物書きであるという証なのだろう。
早速、目を通してみると『主題と表現の特色をとらえる』として
800字程度の例文を担当したようだ。
そういえば、昔「来る仕事は拒まず」なんて笑いながら言っていた。
勿論、安請負という意味ではない。
時には、新聞で時事や社会問題、事件を語っていたりで驚くこともある。

子供時代「おいら新聞にのったんだぜ」なんて、
新聞を踏んづけてケラケラ笑っていたが、
正味、掲載されるような人物になる人もいるのだねえ。
僕は鳴かず飛ばずで今日まできた。
その間に、僕は僕なりに腹を括ってきた事もある。
そして今まさに、一つの事を決断しようとしている。
家内にも話した。
折角この世に生を受け、生かせてもらっているからには
前向きに物事をとらえ、飛ぶ日を目指したい。
商売というのは、一歩間違えば出鱈目なギャンブルとそう大差ない。
どんなに理詰めで周到な計画を立てても、
そこには何の確約もない。
身は一つである。物理的にこなせる量を超えた時、
劇的な手法を考え出すか、何かを切り捨てるしかない。
このまま走っていても発展はない。
僕の場合、現実的なのは走り出すためには切り捨てる事である。
当然、それには痛みがつきまとう。
商売でいえば、一時切り捨てた分の利益が落ち、逆に新たな費用が発生する。
多分、家計を直撃する事になる。
勿論、将来的にプラスに転じると信じているからこその決断だが、
先ほども書いたように何の確約がある訳でもない。
だけど、どこかで腹を括らなければ、将来の夢に近づけないというのも現実だ。
いいとこ取りだけをしようというような都合の良い話はない。
僕はワークブックをぼんやり見ながら、
遠い昔、アリスさんとしみじみと話した内容を思い出していた。
アリスさんが専業作家の決意をした頃の事だ。
アリスさんがふらりと訪ねてきて下さり、随分長い時間話をした。
アイスコーヒーをすすりながら、アリスさんはこんな事を言った。
「KENさん、サラリーマンと違って、フリーになり筆一本で食べて行こうと思うのは、とても不安なものです。
いつアイデアが枯渇してもおかしくないと思うだけで、ぞっとするのです。
僕は、こうして運よくデビューさせてもらった訳ですが、
新しい手法を持った作家がどんどん生まれてくるわけですよ、間違いなく。
これから認められる作家になるのか、底なし沼に足を突っ込んでいるのか分かりません。
妻は何とかなるから、やりたい事をやったらと言ってくれるけど
この先、食べて行けるのかどうかも分かりません。
だけど、人って腹を括らないといけない時があるのですよね」
その時、書店運営に少しばかり自信のあった僕は
「ぞっとする」「食べて行く」という不安が実感出来なかった。
それから、道は違うが僕も独立し、
アリスさんの言っていた言葉が身に沁みて分かるようになった。
その後のアリスさんの努力は並々ならぬものだったと思う。
こうして何かしら大きな決断をする時、アリスさんとの会話を思い出す。
そして自分にこう言い聞かせる。
みんな不安で一杯なんだ。
だけど自分を信じて諦めなかった人間だけが、手にできる宝物があるのだ。
信じて走れ!
「おとーさん、アリスおじさんの名前がのっている」と。
「アリスおじさんって、有栖川さんの事?」
「そう、ミステリーちゃうねんな。何かおかしいね」
そう言って、二男がワークブックを見せてくれた。
版元をみると、大手の参考書メーカーだ。

そんな版元からも依頼が入るのか~
僕にまわしてくれないかなあ・・・
いやいや、それは押しも押されもしない正統派の物書きであるという証なのだろう。
早速、目を通してみると『主題と表現の特色をとらえる』として
800字程度の例文を担当したようだ。
そういえば、昔「来る仕事は拒まず」なんて笑いながら言っていた。
勿論、安請負という意味ではない。
時には、新聞で時事や社会問題、事件を語っていたりで驚くこともある。

子供時代「おいら新聞にのったんだぜ」なんて、
新聞を踏んづけてケラケラ笑っていたが、
正味、掲載されるような人物になる人もいるのだねえ。
僕は鳴かず飛ばずで今日まできた。
その間に、僕は僕なりに腹を括ってきた事もある。
そして今まさに、一つの事を決断しようとしている。
家内にも話した。
折角この世に生を受け、生かせてもらっているからには
前向きに物事をとらえ、飛ぶ日を目指したい。
商売というのは、一歩間違えば出鱈目なギャンブルとそう大差ない。
どんなに理詰めで周到な計画を立てても、
そこには何の確約もない。
身は一つである。物理的にこなせる量を超えた時、
劇的な手法を考え出すか、何かを切り捨てるしかない。
このまま走っていても発展はない。
僕の場合、現実的なのは走り出すためには切り捨てる事である。
当然、それには痛みがつきまとう。
商売でいえば、一時切り捨てた分の利益が落ち、逆に新たな費用が発生する。
多分、家計を直撃する事になる。
勿論、将来的にプラスに転じると信じているからこその決断だが、
先ほども書いたように何の確約がある訳でもない。
だけど、どこかで腹を括らなければ、将来の夢に近づけないというのも現実だ。
いいとこ取りだけをしようというような都合の良い話はない。
僕はワークブックをぼんやり見ながら、
遠い昔、アリスさんとしみじみと話した内容を思い出していた。
アリスさんが専業作家の決意をした頃の事だ。
アリスさんがふらりと訪ねてきて下さり、随分長い時間話をした。
アイスコーヒーをすすりながら、アリスさんはこんな事を言った。
「KENさん、サラリーマンと違って、フリーになり筆一本で食べて行こうと思うのは、とても不安なものです。
いつアイデアが枯渇してもおかしくないと思うだけで、ぞっとするのです。
僕は、こうして運よくデビューさせてもらった訳ですが、
新しい手法を持った作家がどんどん生まれてくるわけですよ、間違いなく。
これから認められる作家になるのか、底なし沼に足を突っ込んでいるのか分かりません。
妻は何とかなるから、やりたい事をやったらと言ってくれるけど
この先、食べて行けるのかどうかも分かりません。
だけど、人って腹を括らないといけない時があるのですよね」
その時、書店運営に少しばかり自信のあった僕は
「ぞっとする」「食べて行く」という不安が実感出来なかった。
それから、道は違うが僕も独立し、
アリスさんの言っていた言葉が身に沁みて分かるようになった。
その後のアリスさんの努力は並々ならぬものだったと思う。
こうして何かしら大きな決断をする時、アリスさんとの会話を思い出す。
そして自分にこう言い聞かせる。
みんな不安で一杯なんだ。
だけど自分を信じて諦めなかった人間だけが、手にできる宝物があるのだ。
信じて走れ!