Smith、待望の再発

Smith
Group Called Smith/ Minus-Plus
映画"Easy Rider"のサントラ盤に"The Weight"が収録されていた(*1)LAの男女混声グループ、SmithがDunhillからリリースした2枚のアルバム、"A Group Called Smith"(1969)と"Minus-Plus"(1970)をカップリングした2on1CDが2月にリリースされます。
このバンドの最大の魅力は、Lynn Careyを思わせるような、キュートさとパワフルさを兼ね備えたGayle McCormick嬢(*2)の素晴らしい歌声。半分くらいは男性メンバーがリードボーカルを取っているんですが、私としてはGayleにもっと歌ってほしかったなと思います。
バンドはLAのナイトクラブで演奏しているところをDel Shannonによって見出され、ABC/Dunhillと契約。Shannonがアレンジした Burt Bacharachの"Baby It's You"がシングル発売され、全米5位の大ヒットとなります。Steve Barriのプロデュースによるデビューアルバムは最高17位(11週連続トップ40)を記録。"Easy Rider"のサントラに抜擢されたのは、決して無名ではなく、当時話題のグループだったからなんですね。
Dunhill、Steve Barriとくると、フォークロックやママス&パパス系をイメージしてしまいそうですが、このバンドはR&B寄りの黒っぽいロックサウンドです。1stの曲目を見ると、ほとんどがカバー曲ですが、いずれも個性的でソウルフルなアレンジがほどこされていて、演奏も(セッションマンの手が入っているのかもしれませんが)メジャー級で、聴きごたえがあります。
*1
映画本編で流れるThe Bandのバージョンは契約の関係で使用できず、かわりにSmithのカバーバージョンが収録された。この曲はSmithのオリジナルLPには未収録で、1994年の1stのCD再発時にボーナスで収録されていた(今回の2on1には収められていない)。
*2
Smith解散後はソロとして活動し、1971~74年の間に3枚のアルバムをリリースしている。1stソロ"Gayle McCormick"からシングルカットされた"It's a Cryin' Shame"は全米44位のヒットを記録(この曲もSmithの1stの再発CDにボーナス収録されていた)。
Track Listing:
A Group Called Smith (1969)
1. Let's Get Together
2. I Don't Believe
3. Tell Him No
4. Who Do You Love?
5. Baby It's You
6. Last Time
7. I Just Wanna Make Love to You
8. Mojaleskey Ridge
9. Let's Spend the Night Together
10. I'll Hold Out My Hand
Minus-Plus (1970)
11. You Don't Love Me (Yes I Know)
12. Born in Boston
13. Comin' Back to Me
14. Feel the Magic
15. Jason
16. What Am I Gonna Do
17. Take a Look Around
18. Since You've Been Gone
19. Circle Man
20. Minus-Plus
Brotherhood (Friend Sound)のコンピ発売

Brotherhood
Complete Recordings
Brotherhoodは、Paul Revere & the RaidersのメンバーだったDrake Levin(ギター)、Phil Volk(ベース)、Mike Smith(ドラム)と、Beat of the Earthの1stに参加していたRon Collins(キーボード)によって結成された西海岸の4人組。RCAから元祖パワーポップ系のサイケポップアルバム、"Brotherhood"(1968)と "Brotherhood Brotherhood"(1969)の2作をリリースしています。
今回のコンピはその2枚と、彼らがChris EthridgeやJim GordonとともにFriend Sound名義で制作したセッションアルバム、"Joyride"(1969)を2枚のCDに収めたもの。3作とも、これが初CD化だと思います。ガイド本「サイケデリック・ムーズ」でも紹介されていた"Joyride"は、ポップなBrotherhoodのアルバムとはまったく違う、ずぶずぶの「真正エクスペリメンタルサイケデリア」作品なので、欲を言えば単独でCD再発してほしかったところ・・・。
CD One
Brotherhood (1968)
1. Somebody
2. Woman Unkind
3. Pastel Blue
4. Close the Door
5. Doin' the Right Thing (The Way)
6. Seasons
7. Love for Free
8. Lady Faire
9. Ice Cream
10. Jump Out the Window
11. Box Guitar
12. Forever
Brotherhood Brotherhood (1969)
13. Don't Let Go
14. Glory Train
15. When the Chips Are Down
16. Back Home Again
17. California Dreamin'
18. Rose Garden
19. Deep Blue Sea
20. Family Tree
21. Love Sketch
22. Destination Unknown
23. When I Get Home
CD Two
Friend Sound / Joyride (1969)
1. Joyride
2. Childhood's End
3. Love Sketch
4. Childsong
5. Lost Angel Proper St.
6. The Empire of Light2
Ultimate Spinachのアーカイブライブ&コンピいろいろ発売

Ultimate Spinach
Live at the Unicorn July 1967
Ultimate Spinachは、MGMらによってでっち上げられた似非サイケムーブメント、「ボスタウン(Bosstown)サウンド」の第一弾の目玉として売り出された男女混声グループ。彼らがデビュー前の1967年7月にボストンのUnicorn Coffee Houseで行なった公演の録音とされるアーカイブライブがリリースされます(Keyholeから1月21日発売予定)。
この音源はわりと昔から知られていて、私もずいぶん前にネットのアーカイブサイトからダウンロードした記憶があります。いま、ひさびさに聴いていますが、当時の録音としては上々の音質。演奏も、彼らのサイケバンドとしての実力がわかる貴重な記録だと思います。
ただ、2ndアルバム収録の"Mind Flowers"が演奏されていることや、チープオルガンではなくエレピが使われていることなどから、1stリリース後の1968年のライブではないか?という疑問もあります。1967年7月というと、Alan LorberによってUltimate Spinachと改名させられる(*1)前、まだUnderground Cinemaと名乗っていた頃のはず・・・。
*1
リーダーのIan Bruce-Douglasによると、彼がLSDトリップの最中に、鏡を見ながら自分の顔に緑色のマーカーで落書きをしている時に思わず発した言葉、「俺は究極のホウレン草だ!」が元になっていて、いつかこれをバンド名にしたいと思っていたんだそうです。だから、定説のように「無理やり改名させられた」ということではないようです。
Tracklisting:
1. Hey Joe
2. Get Together
3. I Don't Know Your Name
4. Funny Freak Parade
5. Don't Cry For Me
6. Follow Me
7. Hip Death Goddess
8. Mind Flowers
それから、同じくKeyholeから60sフレンチ・フリークビートのコンピレーションが発売されます。その他、以下はリリース予定のコンピレーション(米南部のポップサイケを集めたCD2枚組の"Alice in Wonderland"はすでに発売中)です。

Various Artists
Psychegaelic: French Freakbeat

Tommy James & The Shondells
Original Album Series

Psychedelia (Tomorrow, July, Gods, Idle Race, Yardbirds)
Original Album Series

Various Artists
Psychedelic Rock Mexican

Various Artists
Alice in Wonderland: Southern Pop Psych Trip
QMS, IABDの「フィルモア最後の」ライブ発売

1971年のフィルモアウェスト閉鎖を前にして、6月29日(火)から7月4日(日)まで開催されたクロージング・ウィークでの、It's a Beautiful Day(7月1日)とQuicksilver Messenger Service(7月3日)の公演を収録したアーカイブライブが、いずれもCD2枚組でリリースされます(Keyholeから1月21日発売予定。同時に6月30日のBoz Scaggsのセットもリリース予定)。
この1週間の公演の模様は映画「フィルモア最後の日」("Fillmore: The Last Days", 1972)に描かれ、2枚組の名サントラ盤も生まれました。クロージング・ウィークの出演者は以下のとおり。
June 29: Sawbuck, Malo, Kwane and the Kwanditos
June 30: Boz Scaggs, Cold Blood, Flamin' Groovies, Stoneground
July 1: It's a Beautiful Day, Elvin Bishop Group, Grootna, Lamb
July 2: Grateful Dead, New Riders of the Purple Sage, Rowan Brothers
July 3: Quicksilver Messenger Service, Hot Tuna, Yogi Phlegm
July 4 (closing night): Santana, Creedence Clearwater Revival, Tower of Power, Other San Francisco musicians and all the good people (Michael Bloomfield, John Cipollina, Jack Cassady, Van Morrison, etc.)

It's a Beautiful Day
Live at the Fillmore West 1 July 1971
CD One:
1. Creed Of Love
2. Hot Summer Day
3. Bye Bye Baby
4. Bitter Wine
5. White Bird
6. Hoedown
7. 20/20 Vision
8. Good Lovin'
9. Let A Woman Flow
10. Don And Dewey
CD Two:
1. Anytime
2. Place Of Dreams
3. Bombay Calling
4. Wasted Union Blues
5. Bulgaria
6. Time Is
Musicians:
David LaFlamme - violin, vocals
Patti Santos - vocals, percussion
Hal Wagenet - guitar
Mitchell Holman - bass
Fred Webb - keyboards
Val Fuentes - drums

Quicksilver Messenger Service
Live at the Fillmore West 3 July 1971
CD One:
1. Bill Graham Introduction
2. Fresh Air
3. Baby Baby
4. Dr. Feelgood
5. Much To Say
6. Words Can't Say
7. Mona
8. Subway
9. Ain't That A Shame
CD Two:
1. Doing Time In The USA
2. Mojo
3. Too Far
4. The Truth
5. Roadrunner
6. The Hat
7. Who Do You Love
8. What About Me
9. Call On Me
10. Freeway Flyer
Musicians:
Dino Valenti - guitar, vocals
Gary Duncan - guitar, vocals
David Frieberg - bass, vocals
Greg Elmore - drums
Dale Ockerman - keyboards
Unknown - congas, percussion
Fear Itself再発

Fear Itself
Fear Itself
アトランタで結成されNYに出て活動した4人組、Fear Itselfが1969年にDotレーベルからリリースした唯一のアルバムがAuroraからCD再発されます(1月21日発売予定)。
このバンドの最大の魅力は、やはりカルメンマキ似のリードボーカル、Ellen McIlwaine嬢のパワフルな歌声でしょう。ボーカルのみならず、3曲のカバーチューンを除く全曲のソングライティング(うち2曲はトラッドアレンジ)、およびリズムギター、キーボード、ブルースハープの演奏と、大活躍しています。
アルバムはブルース系のヘヴィサイケ作品で、Bob DylanやVelvet Undergroundなどを手がけたTom Wilsonのプロデュース。今回の再発はボーナス1曲入りで、アルバムハイライトの約9分のトラッドアレンジ曲"In My Time of Dying"の、おそらく別テイク(デモ?)と思われます。
ちなみに、Ellen McIlwaineはナッシュビル生まれですが、長老派教会の牧師の家庭の養子となって日本へ渡り、17歳で帰国するまでの15年間を神戸で過ごしています。その後、70年代以降はシンガーソングライター/スライドギター奏者としてソロで活躍し、むしろサイケ関係外で有名になっています。
Track Listing:
1. Crawling Kingsnake
2. Underground River
3. Bow'd Up
4. For Suki
5. In My Time Of Dying
6. The Letter
7. Lazarus
8. Mossy Dream
9. Billy Gene
10. Born Under A Bad Sign
Bonus Track:
11. In My Time Of Dying
St. John Green再発

St John Green
St John Green
ガイド本「サイケデリック・ムーズ」で紹介されていたLAの5人組、St. John GreenがFlick-Discレーベル(*1)から1968年にリリースした唯一作がRelicsからCD再発されます(1月21日発売予定)。
本作は、奇才Kim FowleyがWest Coast Pop Art Experimental BandのMichael Lloydとコラボして制作した一連の作品(Kimのソロ作のほか、Fire Escape, The Smoke, A.B. Skhy, Underground All-Starsなど)の中の一枚。
全12曲中5曲にKimが作者としてクレジットされていて、かなりKim色の強いフリークアウトしたビザールな作品なので、スタジオプロジェクトか?とも思ったんですが、メンバー5人の名前がしっかりクレジットされていて、Fuzz, Acid & Flowersにも「一時LAのバーやクラブで人気を博していた」と書かれているので、バンドとしての実体はあったようです(Topanga Canyonのアーティスト・コミュニティー、Canyon Groupsに属していたらしい)。
オープニングの"7th Generation Mutation"など、おどろおどろしいドゥーム~サタニズム系の楽曲や、詩や台詞の「語り」が入った演劇系の曲、Kimお得意のノベルティソングみたいな曲など、一聴するとキワモノ的な感じなんですが、不思議と聴きやすく、この手のものが苦手な人でも楽しめるのではないかと思います。それは、ファズギターやオルガンサイケチューンを含めた、バンドの本質の部分にあるガレージサウンドが魅力的だからでしょう。
*1
MGM傘下の短命に終わったサイケ系レーベルで、他にBoston Tea PartyやAmerican Revolutionなどのアルバムを出している。
Track Listing:
1. 7th Generation Mutation
2. Canyon Women
3. Devil And The Sea
4. Do You Believe?
5. Help Me Close The Door
6. Messages From The Dead
7. Goddess Of Death
8. St. John Green
9. Spirit Of Now
10. Love Of Hate
11. One Room Cemetery
12. Shivers Of Pleasure
12月~1月のリリース予定(覚書)

Baris Manco
Yeni Bir Gun
ターキッシュ・サイケの星、Baris Mancoの1979年のアルバム(アナログ盤はこちら)。Guerssenから1月7日発売予定。

Jan Duindam
Thoughts
1978年のオランダ産アシッドフォーク名盤。Guerssenから1月7日発売予定。

Tee-Set
Emotion: the Album-Rarities
オランダのビートポップバンドTee-Setのデビュー作"Emotion"(1966)に、ライブ音源や未発表曲を含むレアトラックを追加したCD2枚組。12月10日発売予定。

Velvet Underground
Golden Archive Series
1970年にリリースされたMGM/Verveのグレーテストヒッツ・コンピシリーズのVU編。同シリーズには他にCowsills, Tim Hardin, Mothers of Invention, Blues Projectなどが出ていた(オリジナルLPのトラックリストはこちら)。Sundazedから1月21日発売予定。
以下は日本の60s関連アイテム(12月10~11日発売予定)。

Various Artists
Sixties Japanese Garage-Psych Sampler
米国で1987年におそらくブートレッグ(レーベル表記はColumbiaではなくCorumbiaと書かれている)でリリースされたコンピ。でも内容のレベルは高い。オリジナルLPのトラックリストはこちら。

Various Artists
Vol. 1-Monster a Go-Go
1990年にPlanet Xというレーベルからのリリース。こちらもさらにレベル高し。オリジナルLPのトラックリストはこちら。

近代映画社
GS グループ・サウンズ 1965~1970
「近代映画」「スクリーン」などの雑誌に掲載されたGS関連の記事を復刻した単行本。
"Fifth Pipe Dream"再発

Various Artists
Fifth Pipe Dream
1968年にSan Francisco Soundレーベルからリリースされた伝説的なコンピレーション、"Fifth Pipe Dream"がRelicsからCD再発されます(12月10日発売予定)。
San Francisco Sound Recordsは、自称「サンフランシスコサウンドの生みの親」こと、悪名高きプロモーターのMatthew Katzによるレーベル。彼はJefferson Airplane, Moby Grape, It's a Beautiful Dayらのマネージメントをつとめましたが、「Fake Grape事件」(Tripsichordら配下のバンドにニセMoby Grapeとして公演させた)など、アーティストとのトラブルが絶えず、JAを含む多くのバンドと訴訟沙汰になっています。
本作は、そのMathew Katzが手がけていた、当時まだアルバムデビュー前のバンドを紹介するという体裁のコンピレーションLP。先頭のIt's a Beautiful Dayによる2曲は先にシングル発売されていたもので、"Bulgaria"はのちにデビューアルバムに収録される同名曲とは異なるJAライクな曲(Mathewによるタイトルの付け間違えで、本当は"Love For You"という曲らしい)。次の"Aquarian Dream"にいたっては、まったくIABDとは関係のない曲で、レコーディングにはIndian Puddin' & Pipeのメンバーが係わっているらしい。
そのIndian Puddin' & Pipeの本体は、シアトルからシスコに移ってきたWest Coast Natural Gasというバンド。サイケクラシックの"Hashish"をはじめ、のちに多くのサイケコンピに取り上げられて有名になりますが、結局シングルもアルバムも残さなかったので、ここに収録された4曲がIndian Puddin' & Pipeの「オリジナル」ということになります。(追記: West Coast Natural Gasとしては同レーベルから1967年にシングルを1枚出していて、2012年にスイスのRD RecordsからIP&Pのトラックと未発表曲を含むコンピCDが出ています。)
Tripsichord Music Boxも、本作収録の3曲が「レコードデビュー」となるもの。1967年12月の録音で、これが最初のサンフランシスコでの8トラック機材によるレコーディングだったそうです(1971年のアルバムには未収録の曲で、再発時にボーナスで収録されていた)。
というぐあいに、レーベルのいかがわしさが匂ってくるようなアルバムですが、そのへんも含めてサイケ作品としてはとても魅力的で、シスコサウンドを代表するような素晴らしいコンピレーションだと思います。
Track Listing:
1. IT'S A BEAUTIFUL DAY - Bulgaria
2. IT'S A BEAUTIFUL DAY - Aquarian Dream
3. TRIPSICHORD MUSIC BOX - You're The Woman
4. TRIPSICHORD MUSIC BOX - It's Not Good
5. INDIAN PUDDIN & PIPE - Two's A Pair
6. INDIAN PUDDIN & PIPE - Beyond This Place
7. INDIAN PUDDIN & PIPE - Hashish
8. INDIAN PUDDIN & PIPE - Water Or Wine
9. TRIPSICHORD MUSIC BOX - Family Song
10. BLACK SWAN - Lady Blonde
11. BLACK SWAN - She Encircles Me
Gear Fabから2月発売予定の新譜CD

Thomas Edisun's Electric Light Bulb Band
Red Day Album
Thomas Edisun's Electric Light Bulb Bandは、ガレージコンピ"Aliens, Psychos & Wild Things Vol.4"に、唯一の?シングル"Common Attitude"が収録されていたルイジアナ出身の4人組(リンク先のamazonではThomas Edisonになってますが、バンド名の表記はEdisonではなくてEdisun)。"Red Day Album"は1968年に制作されながらも未発表に終わった「ロストアルバム」です。
私は極上メロウサイケな"Common Attitude"しか知らなかったのですが、YouTubeにアップされていた動画を見ると、サイケ期ビートルズからの影響がうかがえます。バンドは70年代にZuider Zeeと名を変え、パワーポップ系のアルバムを一枚、Columbiaからリリースしています。ちなみに、"Mindrocker"コンピに収録されているThomas A. Edison Electric Band(のちのEdison Electric Band)とは別のバンドです。