携帯はじめました。
えー、このたび、プロジェクト・Gの携帯サイトをオープンしてみました。
本編に修正を加え、さらに気分次第では若干追加もしながら更新しております。
それに加え、今後は、本編で書かなかった場面を、書いていく予定です。
・・・例えば、カメ星人編の西村、三島・山本の番外編、白川のカタストロフィ編・・・。
なんかを更新していこうかなぁ~と思っている今日この頃です。
えー、携帯版の本編は毎日更新ですが、いままでの更新状況から察する通り、追加編はおそらく更新率めっさ低くくなることが目に見えているので、期待せずにお待ちください。
携帯版プロジェクトG↓
http://sato496.is-mine.net/index.html
H20.7.25現在、No.5/そうぐう。まで載せていますので、お暇ならどうぞ見てやってください。
泣ける!!ケータイ小説
30万作品スベテ無料
No.60/ おつかれちまでした 。
白川が死に、残った吾妻は戦意喪失
新井田は、吸収され
意識だけが残されている状態
死んでいるのと、なんら変わらない状態だ。
新井田は思う
今、吾妻が殺されれば、地球上から人間は絶滅する
それはつまり、もうガンツに代えの人間がいなくなるということ
完全敗北
長きに渡り、地球全体を巻き込んだ戦いに
人間の、ガンツの敗北という形で幕を閉じる・・・
・・・いや、それは違うのかもしれない・・・
星人の勝利、すなわち人間という種よりも、星人が強力な力を持つことの証明
もともとガンツの管理下にあった星人は
また、人間に代わってガンツの支配下に置かれるのではないか・・・
さらに強力な敵を用意され、戦わされ続けるのではないか・・・
そもそも、この戦いは
初めから最後まで、ガンツの手のひらの上で、転がされていたようなものだ
敗者は切り捨てられ、勝者は拾われる
その繰り返し、終わりの無い戦い
延々と流れ作業のように続く、そのうちのほんの一部にすぎないのかもしれない
新井田は自分の存在の小ささを、実感した
あの、何も無い、なんの刺激もなかった日常を思い出す・・・
小さいが、自分中心に回っていた、ささやかな世界・・・
・・・それが
こんな形で、なにもかもが、なくなってしまうとは
あのとき、自分が思い、行動すれば、何だってできた
幸せな人生を、送ることだって・・・
目の前の吾妻が
音も無く命を落とす
三島も、西村も、山本も、白川も、そして吾妻も
この世界で、散っていった人間が
自分自身が
こんなにも激しく命を燃え上がらせることができるなんて
人間の真価を、思い知らされた。
しかし、この世界では、たった一つの小さな命が
どんなに激しく燃えようと
何も、何一つ変えることができない
そういう、世界なんだ
それは―――
星人の中に取り込まれ、薄れゆく意識の中で
新井田は目にする
全身を黒いスーツに包んだ
何百、何千もの人の群を
――――それはもちろん、
星人にとっても、同じことが言えるということ
全身を絶望に抱かれ
いま、か弱い炎が
一つの小さな命を、燃やし尽くす。
No.59/ 餌 。
見覚えのある黒い玉がいくつものコードにつながれている
ソレを、大きなガラスケース越しに見つめている自分。
新井田の頭の中に流れ込む星人のイメージ
場所こそあのマンションの一室とは異なるが、その黒い玉はガンツに違いない
周りには見たこともない機械、おそらく地球のものではないだろう
そして、ガラスケースの中にいるのは
形という形はなく、アメーバのような生物
この光景は、最初の星人の記憶。
アメーバのような星人たちは、ケースの中をうごめいているだけ
次の瞬間、目の前の黒い玉から全てのコードが抜け
上から徐々に消えていった
転送が始まった、それと同時に景色が変わる
ここは、とある殺風景な一室
黒い玉の転送先、間違いなく地球であった
そこに次々と増えていくアメーバのような小さな星人
しばらくして、黒い玉が歌いだす
それは頭が痛くなるような信号音
まるで星人に指令をあたえているかのようだ
鳴り終わると、黒い玉が勢いよく開く
しかし中には、武器はおろか
全裸の男の姿すらなかった。
空っぽの黒い玉
その表面が、ぼんやりと光だし
ある映像が映し出された
それは人間
星人ではない、まぎれもなく普通の人間だった。
人間の住む街に、解き放たれる星人
彼らの知能は高くはなく、手当たりしだい近くにある物にとりつく
動物や昆虫から、植物や建物・・・
あらゆるものにへばりつき、その中へとしみこんでいった
いろいろな物にとりついた星人は、その媒体を支配し成長してゆく
そして成長した星人を通して、ガンツはその媒体の情報を得る
しかし、人間を内側から支配するほどの力を星人はもっていなかった。
そんな中、ひょんなことから一人の男の体を手に入れた星人があらわれる
その男は、星人にとりつかれた数日後に病によって死亡した者で
媒体の生命力が弱まっていくなか、星人の弱い力でも体の支配が可能となったのだ。
命が尽きた瞬間、男の体は完全に星人のものとなり
転送が始まった
ガンツの部屋にきた最初の人間
そう、この男が後に
黒い玉の中にいる、あの男となる。
そう、このことが、星人の立場が180度変わるきっかけとなった
ガンツが人間を手に入れ、しばらく経った後・・・
人間による星人狩りが始まる
いままで、星人の餌扱いだった人間
ガンツは、その人間に興味をもったのだろう
人間がもつ能力を試すかのように、あの命がけの狩りを行う
もちろん標的は、星人
わけもわからずに襲われた者もいただろう
だが中には、高い知能を持つ者もいる
人間の襲撃に遭い、ガンツに裏切られたと解釈する星人が現れだした
それをかわきりに、星人は力を増幅させていく
人間を食うことでその能力を得るもの、体内から人間を支配するもの
次第に星人は強力なものへと、進化していった。
しかし・・・、星人たちはことごとく人間に殺されていく
餌のひとつにすぎなかった人間、ガンツはその人間がもつ強みに目をつけたようだ
それは、生への異常なまでの執着
どの生物にも言えるが、生きるために、死をまぬがれるために発揮する力はとても強大だ
だが、それをいつでも発揮できるわけではない
しかしガンツは、人間のもつある特性を活かし、それを引き出すことに成功した。
感情、人間の感情を操ること・・・
絶対的な恐怖を与えることで
常に死を目の前にかざすことで、生への執着によって生まれる力を
最大限に発揮させることができた
その結果が星人狩りなのだ。
・・・星人の全ての記憶と推測を交えた、この戦いの理由を
いまでも呆然とする頭のなかで、新井田は思い返し、考えをめぐらせる・・・
ガンツに目的があるのだとすれば・・・
ただ盲目的に、より強力な力を得ようとしているだけに思える
力への可能性を見出せない星人たちは
得られた力を試す、ただの的
ガンツにとって、それだけの・・・
餌以下の存在なのだろう。
No.58/ 特等席の傍観者 。
やめろぉぉぉおおおッッ―――
オレは
叫ぶことしかできなかった。
白川の体が、ズタズタに切り裂かれる
手も、足も、首も
いくら彼女が強くても、助からない
絶望的。
オレは、見ているだけ
なにもできない
体の感覚もない
ただ、意識はハッキリしてる
今、
オレは星人の中にいる。
あの時、吾妻に置いていかれてから
でかい星人の塊に突っ込んで・・・
気づいたら、ココにいた。
ココは、ほんのり暖かくて
ユラユラと意識だけが漂う
不思議なところだ。
視覚は生きていて
まるで水中から外を見ているような
ハッキリとしない映像
ただ、白川が戦っていることは、わかる
そして・・・殺されてしまったことも・・・
・・・どうなってるん、だ・・・
ほかの、吸収されたやつ等は・・・?
・・・オレと同じに、どっかにいるのか?
―――ソレハナイ
いきなり、どこからか声が、
新井田の心の声に、応えた
―――特別ナノハ、アナタだけだ。
この声の主が、星人であると気づくのに、時間はかからなかった。
・・・とくべつ?どうゆう、ことなんだ?
新井田の考えたことに対して、またも星人が応える
―――あなたヲ、統合しきれずに、意識だけが残ッテしまいました。
しかし、もうすぐソレモ統合される。
その前に、あなたと話がシタイ―――
星人とヒトとの、最初で最後の交信が始まった。
新井田は、自分がもうじき、消えてしまうという事実
ここまできたら、そんなことはどうでもよかった
だが、自分の命を幾度も懸けて
戦ってきた相手が、一体なにものなのか
知っておきたかった
何のために、ここまで戦ってきたのか
それがわからないままでは、死んでも死にきれない
新井田は、いままでの思いをすべて解放した。
その思いに対して、全てのこたえと、今までの全ての記憶を
星人は一瞬にして新井田に返してきた。
しばらく、意識が遠のいた
われにかえった新井田は、その事実に呆然とするしかなかった・・・
自らを神と名乗る星人、地球上の星人を含む全ての生物を、とり込み
その体から精神までを、統合した
全知全能の究極の生物、つまり
「神」となった。
ここまで星人を強大なものにしたのは
GANTZの存在が、あったからだ。
更新再開について。
どうも、とてもお久しぶりです。スミマセン・・・完全に放置状態で・・・。
こんなところ、見てる人は、もういないだろうと・・・何気なく、覗いてみたら・・・
・・・なんと、いました、何人か!!!
見てくれている方がいるので、
というか、このままじゃあ消化不良で、終われないです。
そんなわけで!!目標は四月までに完結!!!
ということで!!期待しないで、どうかお待ちくださいスミマセン。。。
No.57/ 元凶 。
「驚いた?」
「・・・わけないか」
笑いながら新井田の姿をした星人は言う
「白川さんの体に、一瞬触れたとき・・・
感じたんだよね、この人間に対する怒りをさぁ。」
ブンッッッ
白川は新井田の言葉を無視し、刀を振り回す
ガッ
「きかないって、そんなの」
片手だけで白川の攻撃を防ぐ
「・・・」
それでも攻撃を続ける白川
怒涛の斬撃をすり抜け
一瞬にして白川の目の前まで距離をつめる
ガシッッ
白川の右手を強く掴む
・・・動かない・・・
あまりの力の強さに、振りほどくことができない
ミシミシミシ
さらに圧力をかけていく
「・・・チッ!!」
銃をとりだし、ゼロ距離で星人の顔面を撃ちまくる
「だから・・・きかないって」
ピシッ
「あっ」
顔にヒビがはいる
さらに攻撃を続ける
「もうわかったからいいよ」
そうつぶやくと、白川を掴む手にさらに力がはいる
グシュッッ
いとも簡単に、白川の腕はにぎり潰された。
その瞬間、渾身の力で星人を蹴りとばす白川
ちぎれた腕を気にすることなく、星人に銃を撃ち込む
ピシピシッ
体中ヒビだらけになった星人
「ちょっと、まってよ」
「今、面白いもの見せてやるから・・・」
「おとなしくしてろ」
ヒュン
星人の腕が伸びる
それに反応し、攻撃をかわす
が、
地面を貫き、二本の触手が白川を切り裂く
無残に転がる両足
仰向けで身動きがとれない白川
「生きてる~~?」
ゆっくり近づいてくる星人
「お前が、死ねッ」
痛みを感じない白川、今状況は苦しくは無い
だが、体のダメージは大きく声が震える
左手ににぎった銃を星人に向ける
ドスッッ
腹に突き刺さる、星人の触手
「グゥっふ・・・」
大量の血液が、溢れ出る
「最期にいいものみせてやるよ」
「ぁ、っだ・・・終わり、じゃ・・・ぁい」
声が上手く出せない、視界がなんとなくボヤけてくる
それでもなお残った左手でレーダーをつかむ
そして震える指先でボタンを押す
キィィィイイ
天から降る幾筋もの光線
それが白川の負傷部分に降り注ぐ、すると失われた四肢を次々と再生させてゆく
まるでガンツに転送されるときのように、手足は元通りになった
――ソンナ、コトモデキルんだね。」
一瞬白川の頭に響く声
また、姿を変えた・・・
!!
「流石に、これは驚いたみたいだね・・・」
聞き覚えのある女の声
白川は、目の前にいる姿を変えた星人に目を釘付けにされる
・・・私・・・
・・・違う・・・コイツは・・・
「あなたがもっとも、憎んでる人物」
自分自身。
正確に言えば、白川の主人格
見た目は全く変わらないが、伝わって来る
平穏の中で暮らし、当たり前の幸せをもって過ごすものの甘さ
にじみ出ている、自分にはないものが。
「やめろ・・・その、姿・・・やめろ・・・」
肩を震わせながら白川はいう
いつもの、冷酷な鉄仮面の白川ではない、憎しみという感情が溢れている
親からの虐待、そのストレスによって生まれた別人格
自己を守るために感情を押し殺し、痛みすら感じなくなった
辛いときはいつも自分が耐え、主人格は奥に引っ込んでいる
逆にそれ以外、表に出ることのない別人格
自分の存在価値、そんなものは無いと思っていた
しかし、自分が耐えている時に
痛みも知らず、のうのうと平穏だけの中で生きる、もう一人の自分がいる
許せなかった、いつか、かならず
殺してやる
お前にも、価値なんて無いのだから。
「ぁぁぁあああああああああ!!!!!」
叫びながら星人に向かって特攻する白川
戦法も何もない、彼女を動かすのは憎しみのみ
そんな彼女に
当然、勝ち目などなかった。
No.56/ジハード。
自らを神と名のる異型なる星人
それを目の前にして吾妻は、言い知れぬ不安を感じていた
あの星人はおそらく自分達の最後の敵、それは間違いない
だが、得体の知れないものを目の前にして恐怖を全く感じない自分
そしてソレに対して敵意をもつことができない
自分の感覚がマヒしていくように感じた。
・・・う、あ・・・不思議な感じだ、コイツ自分のこと神様とか言ってるし
ヤバイのはわかってるけど・・、なにも出来ない・・・
ただ立ち尽くす吾妻
そのとき、星人がゆっくりと前へ、足を踏み出した、一歩ずつ、吾妻に向かって
星人との距離、3メートル。動くことができない
・・・に、逃げろって・・・敵だぞ、殺されるんだぞ?
なんでこんなに落ち着いてるんだよ・・・足を動かす、それだけ考えるんだ・・・
アイツはまだ距離がある、あんなトロトロ歩いてんだ、まだ大丈夫なはずだ・・・
星人から目を背ける吾妻、自分の足を見る、ゆっくり足を後方へ動かす
ゆっくりゆっくり、一歩二歩、次第に身体に力が戻ってきた
・・・よし、もう大丈夫だ、一気にダッシュだ!!!
「ん?」
頬になにかが、触れた、顔を上げる
星人が、吾妻の顔に腕を伸ばしていた
見た目とはウラハラに、その感触は鉄のように硬く冷たい
その瞬間、いままで感じていなかったいろんな感情が
星人の手を伝って吾妻に一気に流れ込んできた。
「うぁぁぁぁあああああああああ」
頭を抱えて発狂する
目が血走り小刻みに揺れ、胃液が逆流し口からダラダラ流れ落ちる
苦しみを紛らわすかのように地面に頭を打ち付け、のたうちまわった。
「アッ・・・うぇぁッ・・くかぁッッ、ゲフッゲフっ・・・」
・・・なんだッ、今のはぁ・・・
吾妻の意志に関係なく、心の奥底に押さえつけられていた感情が引きずり出された
ヤツに触れられた瞬間に
十数秒間、彼は我を失った。
だが、その間、無防備な吾妻を目の前にした星人は
彼に一切の危害を加えることもなく、その場を離れていた
それは、吾妻を見逃したのではなく
興がそれた、別のモノへの意向
その行動は「新たな敵の出現」を意味していた。
「・・・これが、中身か」
長く伸びた黒髪をなびかせ、両手には厳つい武器
相変わらず冷たい目をした女
白川が、今まさに不意打ちの一撃を星人へ放とうとしていた。
銃を構え、狙いをしぼりロックオン
・・・終わりだ・・・
引き金に掛けた指に力をこめる
バシッ
銃が弾かれた
触手だ、星人がまだ球状であったときと同じもの
それが地面からいきなり突き上がってきた
気づかれている、すでに
見たところ星人に目や耳などの感覚器はない
だが離れていても正確に、こちらの気配を感じ取っている
・・・死角ゼロ。
どこからどう攻めようとも結果は同じ
背後もクソもない、全てが正面
真向勝負!!
真っ直ぐ星人に向かって走り出す白川
星人の体中から無数の触手が伸びる
ヒュオッッ
もの凄いスピードで白川に襲いかかる触手
ジグザグに移動することで撹乱するが、完全に動きを捉えられている
「――ッッ!?」
いきなり地面から突き上がる触手
完全に虚を突かれた、反応が遅れる白川
ザクッッ
スーツをものともせずに、右足のふくらはぎが大きく裂かれた
・・・スーツを破れても、この程度か・・・
痛みを感じない彼女にとってはかすり傷同然
ダンッッ
念のため地中からの攻撃を警戒し、勢い良く飛び上がる
と同時に、手首に付けられた小型の機械のスイッチを押す
一瞬、白川の周囲の空間が歪んだように見えた。
空中で無防備な獲物を串刺しにせんと、無数の触手が迫ってくる
しかし、触手が彼女に近づけば近づくほど、その勢いは失われ
ヨロヨロと攻撃の矛先が逸れてゆく
一本として彼女に触れることは出来ない
いま彼女の半径5メートル以内は通常の何十倍もの重力空間と化している
高重力装置、それを持つ者以外は高重力による影響を受けなければならない
そして飛び上がった白川が星人の真上に到達、黒い刀を握りしめ
高重力装置を手首から外す
次の瞬間、彼女を何十倍もの重力が襲う
ギュンッッッ
高重力による、超スピード落下
剣を振り下ろす、もちろん真下の星人めがけて
ズッッ、ドォォォオオン
超スピードが生み出した圧倒的破壊力
地面を砕く文字通りの重い一撃
あたりは濃い砂煙に包まれた
深くえぐれた地面から、這い上がってくる白川
手ごたえはあった、確実に真っ二つ。
――・・・ミ、タイ・・・ミタイ――
いきなり、頭に、頭の中に響く声
・・・ミた、い・・・見たい」
また聞こえる、徐々にハッキリ聞こえてくる
これはもう、テレパシーのようなものじゃなく
聞こえている、鼓膜がその振動を捉えている
「見たい、白川、さんの・・・恐怖が」
!!?
「はは・・・またキミか」
以前と似たこの状況
白川の目の前に現れたの者は、新井田 生だった。
No.55/ 偽神誕生。
「ぅぁぁっぁああ!!」
次々と巨大な塊に引きずり込まれてゆく
ズバッッ
足に巻きついた触手を切放す白川
塊まで数十メートル、近づけば近づくほど敵の存在感を強烈に感じる
頭がおかしくなりそうだ
一旦その場から退く白川、そして他メンバーと合流した
「白川さん大丈夫ですか!?」
「くそッ・・・遠山が・・・・」
「・・・」
なす術がない状況、圧倒的な大きさをもつ敵を前に、彼らはただ傍観することしかできなかった。
「はは・・・なんだよアレ?どうなった??」フライトを楽しんでいた吾妻だが
あたりの異様な静けさに足を止めた。いままで空を覆うほどの数いた星人の姿はない
周囲には点々とガンツメンバーが見えるが、その数もごくわずか
こんな戦力でアレを倒さなければならない・・・
巨大な、巨大な、球状の塊。
数多くの命を吸収したソレは、今は活動を止めている
しかし、塊の奥から聞こえてくる、空気を伝わり、頭の中に響く鼓動。
・・・強く、重く、脈打つ生命の声が聞こえる。
気のせいではなく、ハッキリと、徐々に早まる鼓動
もうすぐ、もうすぐ今まで感じたがないような恐怖が
あの中から生まれてくる。
―――だが、その場から誰一人として、逃げようとするものはいない
今ここに残っている者たちは、いくつもの死と恐怖を目の当たりにしてきた
わかっていた、同じ世界に、同じ地球という星に存在する限り
逃げることは許されない
命を与えられたものとして
衝突を避けることは
絶対に出来ない、ということを。
・・・ヒュウゥゥゥウウーーーッ
「ん?」
吾妻の遥か下から、フラフラと黒いボードで飛んでくる男が一人
「新井田ァ!!」
その男は新井田だった、彼はいままで星人から逃げつつボードの練習をしていたのだ
なんとかバランスを取れるようになったが危なっかしい
フラフラ飛んでいたと思ったら急に加速したり、動きイマイチおぼつかない
「よ~~~し、いい感じだぁ~~・・・って、ちょっオイ!!うわわわッッ!!!」
あらぬ方向へ加速し始める新井田
「やばいって、そっちは・・・オイ、誰か助けてくれぇぇぇぇええ!!!」
なんと巨大な塊にむかってさらに加速する、このままでは吸収されてしまう
焦る新井田、言うことをきかないボード
・・・マジで、こんな惨めな死に方、ありえねぇーよ・・・
今まで何度か死を体験してきた新井田、走馬灯すら出ぬまま塊に衝突。
ボフッッ
・・・・すると、新井田が突っ込んでいった場所から、次第に亀裂が広がりそこから大量の光が漏れ出してゆく、空いた口が塞がらない吾妻
「新井田・・・あいつ、なんなんだよ・・・」
塊はボロボロと崩れていく、それとともに光が次第に強さを増していく
ゴゴゴゴゴゴ
大気が震える音が聞こえる
「・・・なにか、来る」ボソッとつぶやく白川
「!?・・・早くッ!!この場から出来るだけ離れるんだッ!!!」
磯野が叫ぶ、一斉にその場から猛スピードで退却する
ゴゴゴゴ・・・・。
大気の震えが止んだ、そして発せられた光が一点に集まってゆく
次の瞬間、凝縮した光が爆発を起こす。
―――カッッッッ!!!!
光が衝撃となってメンバーを襲う
一瞬のできごとだった
気が付いたら砂まみれで身体が地面にめり込んでいた。
「うぅぅ・・・なんて威力だよ・・・爆発しやがった」
吾妻がヨロヨロと立ち上がる
初めから、見渡す限りの荒野だったが、今の爆発で地面がえぐれ
見るも無残な光景になっていた
しばらく歩くと、遥か前方にぼんやりとした光が見えた
ソレめがけて走る吾妻
「・・・」
すると彼の目の前にとてつもなく巨大なクレーターが現れた
おそらく先ほどの爆発のせいだろう
クレーターの中心にはウネウネとうごめく発光体がいた
恐る恐る近づいていく吾妻
吾妻が近づくと不定形な発光体は次第に「人」へと姿を変えていく
・・・コイツ・・・星人、なのか?
神々しくもあるその姿に吾妻は釘付けになる
もし、この世界に神様が存在するなら、きっとコレのことを言っても違和感がない
この光を浴びていると意識がボーっとしてくる
目の前にいるものが敵だということを、すっかり忘れてしまうほどだった
――・・・ヒ、ト・・・ヒトヨ――
!!?
頭に響く声、我にかえる吾妻
「なんだこれ!!?直接頭ん中に・・・」
――ヒトヨ、ヒトノジカンハ、モウオワッタ――
――ワタシガ、カミダ――
No.54/ラスボス。
巨大な生首に下敷きにされた星人、唇を尖らせ、突き刺した
ちゅるるるる~~~~ッ
そして自分の何十倍もあろうかという生首の体液を数秒の間に吸い尽くしてしまった
カラカラに干からびた吸いカスをどけると
不機嫌そうな表情で立ち上がる星人
「あぁ~~~マズィ~~ッッ!!」
立ち上がった星人は普通の人間のようだが、思ったよりも大きく
アレだけの量を吸ったというのに少しも腹が膨れていない
「ダメだぁ~~~、やっぱ人間じゃねぇ~~~となぁぁ~~!!」
よだれをたらしながら新井田たちを睨みつける星人
そして徐々に姿を変えていく
頭からは触角が生え、唇を尖らせるとホースのように伸び、クルクルとトグロを巻いている
そして体表が徐々に硬質化し、黒光りする殻に覆われていく
星人は巨大な「虫」へと姿を変えた。
「いまさらそんな変身なんかで驚くかよッ!!今のうちにやっちまおうぜ!!」
吾妻が銃の引き金を引く、出遅れる新井田
シュォォォォオオ・・・
吾妻の銃から異音が発せられた
「・・・お前ぇ~~~なにをした~~~・・・」」
星人が体を震わせる
「あああ~~~~身体がッッ、アツイィィィィイ!!?」
苦しみながら地面をのたうち回る、星人の身体が赤くなったかと思うと
次の瞬間、全身が炎に包まれた
星人がどんなに暴れてもその炎は消えることはなく、結局灰となり跡形もなくなってしまった。
「うぉ~、すっげこれ!なにこれ、火炎放射器!?」
「ハハッ・・・オレらがいない間に大分こっちも変わったんだな」武器の強さに驚かされる二人
「よっしゃ!じゃあ行きますか!!」
星人の大群を前にして臆していたが、ようやく希望が見えてきた
そして二人は部屋から持ってきた黒いスノーボードのようなモノを足にはめる
するとフワッと宙に浮き上がった
「おお~!!やっぱ予想通り飛んだよ!!!」
子供のようにはしゃぐ吾妻、新井田はバランスが取れずそれどころではなかった
「新井田!!こんなん簡単じゃんッ!!俺さきに行ってるぞ!!」
ドヒュンッッ
吾妻は空を覆う星人の群れの中へと消えていった
・・・ちょっ、待ってくれよ!!・・・
こうゆうのオレやったことないっつーの・・・。
「うひょ~~~ッッ!!すっげぇ、マジで俺空飛んでるよ!!!」
戦いを忘れはしゃぐ吾妻、その目の前を超スピードの黒い影が横切る
「ん!?なんだよ今の??」
目を凝らす吾妻、よく見るとそれは白川率いるあの8人だった
彼らは何かを目指して急上昇している
「なんだよ!?あれ・・・」
驚きを隠せない吾妻
彼らのはるか上空に浮かぶ、超巨大な球状の塊
それは何百もの星人が集まり球体を形成しているようだ
その塊の中心部からぼんやりと黄色い光が漏れていた
なにかいる
それを見れば誰もが感じるだろう
圧倒的な存在感を持つ生命が、人類最後の敵が、あの中にいると
気づけば、周りにいる星人がその塊に引き寄せられるかのように集まってくる
白川たちもその様子を覗っていた
「白川さん、この感じ・・・なにかとてつもなくヤバイ気がするんですけど・・・」
空気が震えているのがメンバーに伝わってくる
「関係ない、アレがボスなら叩き潰すだけ」
そう言うと一人躊躇なく突っ込んでゆく白川、それにつづく他の7人
巨大な塊に近づくにつれて、ある異変に気づく
塊に集まってくる星人たちが、どう見ても何かに引っ張られているような印象をうける
引き寄せられた星人は塊の一部として吸収されていた
ググッ
そのとき、白川のすぐ後ろにいたメンバーの一人、遠山が
自分の腕に違和感を感じた
「ん?・・・うで、なにかに引っ張られてる!?」
「どうした遠山?」
隣にいた磯野が彼の異変に気づき、声をかけるが
「うぁぁあああ!!!?」
ものすごいスピードで星人の塊に引き寄せられていく遠山
「白川さん!!遠山がッ・・・」
目の前を通り過ぎてゆく遠山、白川がそれに気づいたときには
もう遅かった、彼女の左足に何かが巻きついていた
グイッ
足が引っ張られる、バランスを崩す白川
とっさに白川はレーダーを調節する
すると彼女の左足には半透明の触手のようなものが巻きついていたのが見えた
そして磯野が叫ぶ
「お前ら!!周波数を変えろッッ!!!」
他のメンバーもレーダーを調節し敵の触手が認識できる周波数に合わせた
彼らは唖然とする
巨大な球状の塊は、数百、数千もの触手が伸び
多くの星人やガンツメンバーに、襲い掛かろうとしていた。
No.53/ 空白。
新井田たちを含む、一度死んだガンツメンバー達が何十人も転送されてくる
「ここ・・・日本、か?」
あたりを見回しながら吾妻が言う
「・・・違う、なんとなくだけど雰囲気が、全然違う・・・」と新井田
黄土色で乾燥しヒビ割れた地面、それが地平線まで広がり、空はぶ厚い雲に覆われていた
よく映画などで表現されている、破滅した地球――
――まさに、そんな感じがした。
一通り転送が終わったかと思うと、新井田たちから少し離れたところに
また新たに転送されてくる者がいた
ジジジジ・・・
転送されてきた8人
見知らぬ顔が並ぶ中に、たった一人
新井田の目に留まる人物がいた
「あれっ?・・・しらかわ、さん??」
「新井田ぁ~何いってんだよ、白川ってコがここにいたっておかしくないだろ・・・」
白川に間違いないが、二人はなにか違和感を感じていた
「白川さんだッ!」
「あの人がいてくれれば最後のミッションだろうが楽勝だろ!!」
一度死んだガンツメンバーの何人かが歓声をあげる
どうやら白川のことを知っているらしい
すると白川を先頭にその8人が新井田のもとに近寄ってくる
間近で見た彼女は以前より大人びていたが、相変わらず冷たい目をしていた
「・・・新井田くん、ホントに久しぶりだね」
「オレは、そうでもないけど・・・」
「そっか、キミずっと死んでたからね・・・
・・・あれから5年くらい経ってるけど、私あのときのことまだ忘れた訳じゃないから」
そう言うと、白川がいきなり新井田に銃を向けてきた
・・・おいおい!ちょっと待てよ・・・何なんだよ!?あのときのことぉ??
そんなの全然しらないし・・・それより、5年ってなんだよ!!?
「お、オレ・・・なんも知らないし!・・・っていうか今、何がどうなってんだが・・・」
慌てる新井田、それを見て溜め息をつく白川
「ハァ・・・そうだった、キミはもうあのときのとは、別だったね」
そして銃を下ろす
「・・・ちょ、ちょっといい、かな?」
恐る恐る白川に、今の状況そして自分が死んでいた間に何が起こったのかを尋ねる新井田
白川が言うには――
新井田が死んでから1年後、星人の活動が急激に活発化し
このころから人間の星人化も増えていき、世間に星人の存在が知られはじめた
そのため疑心暗鬼に陥った人間達は殺し合い、戦争をはじめ
自滅の道をたどったのだ
おそらく今地球上に存在する者は、星人とガンツメンバーだけだろう。
「はぁ・・・う、嘘だろ・・・」
「まぁ、それも今日で終わり・・・この星で勝ち残るのは私だから」
言い終わると白川はゆっくりと空を見上げる
「・・・来た」
それにつられて新井田も振り向く
「なん・・・だ?鳥の群れ??」」
鳥の群れのようなソレは、空を埋めつくすほどの大群であり
徐々にこちらに近づいてくる
「敵がきたぞォォオ!!」
あわただしくなるガンツメンバー
「敵??ってアレが・・・全部星人なのかよ!?」
冷や汗が流れる新井田
「まぁ、そういうこと・・・アレでもけっこう減らしたと思ったんだけどなぁ
まだあんなに残ってたんだ・・・」
「もしかして・・・あ、アレ全部倒せって?」
「うん、でもあの程度の数なら余裕でしょ・・・」
この状況を前に顔色一つ変えず、余裕さえ見せる白川
ビビる新井田に目もくれず、星人の群れに彼女は突っ込んでいった
「新井田・・・おい!新井田ァ!!聞こえてんのか」
「ああ、吾妻!ごめん・・・今ちょっと、わけわかんなくてボ~ッとしてたわ・・・」
急にたくさんの事実を受け入れられず、かるく放心状態になっていた新井田
「新井田・・・もう戦うしかねぇって、上見てみろよ・・・」
「は?」
吾妻に言われるままに空を見上げる新井田
いつの間にか彼らの頭上にまで迫ってきた星人の大群
羽の生えたメガネで小太りのオッサン、しかも恐ろしくデカイ
その星人の背中に、人型の小さい星人が何体か乗っている
そのような組み合わせが何百体も空を舞う
「吾妻ぁ・・・あんなの、無理だって」
ボソッという新井田
「さっきさぁ、やるしかないって言ったけど・・・これはたしかに・・・」
さすがの吾妻も強気ではいられなかった
ズド―――ン
いきなり二人の目の前に巨大なオッサンの首が降ってきた
白川達だ、この星人の大群にひるむことなく武器を振り回していた
「すげぇ・・・」
感心する二人、そのとき
「あぁ~~~、チクショ~~~、ハンターどもがぁぁ~~~」
やたら悔しがる野太い声が聞こえてきた
よく見ると、巨大なオッサンの生首に星人が一体下敷きにされていた
「あぁぁ~~~!てめぇら何見てやがんだぁぁ~~~!!」
新井田たちと目が合う星人
「吾妻、こいつ今のうちにやっちまうか」
頷く吾妻、二人は銃を構える
「この武器もトリガー二つだけど使い方同じだよな?」
「新井田、撃ってみればわかるって」
「だな」
グググ・・・
引き金に力を込める二人
「ああ~~~あ、無視しやがったこいつら~~~!!」
ちゅるちゅる・・・ずずずずるるぅぅッッ
「うぇッ!?」
「何してんだ・・・コイツ・・・」
「吸ってる・・・!?」
