GANTZ-プロジェクト・G -2ページ目

No.52/ 四人目。


・・・・・・はぁッッ!!


!?


・・・なんだ、どうなってる?

・・・オレは、死んだ、のか?


そうだった、ベルト星人に殺されたんだ・・・


・・・じゃあ、ここは?


くっそ!真っ暗でなにも見えない・・・なにもわかんねぇ


ちくしょお!!死んだのに、死んだのになんでっ、こんなにッッ

生きてるみたいに、苦しい・・・頭がおかしくなりそうだッ!!


真っ暗な、なにも見えない世界で、頭を抱えしゃがみこむ新井田
ふと、前方から強い光が射すのを感じる


顔を上げてみると、周囲に何人もの人影があることに気がつく

人々は光源に吸い寄せられるように足を進めている


そして、同じように新井田も歩きだす


次第に目が慣れてきた、周囲の人間の姿がハッキリとわかる

皆ガンツのスーツを着ている
新井田の顔は引きつり、地面に膝をおとす


またか、またガンツなのか!?
オレは、死んでなかったのか!?


そのとき、光源から耳に入る小さな音
次第に大きくなり、歌であることがわかる


そう、忘れるはずもない、あの歌


「うぁぁぁああああッッ!!」
発狂しながら光源にむかって走りだす新井田


集まっている人々を押しのけ、そこへたどり着く
そして光は文字に形を変え、新井田を唖然とさせた



てめぇ達は
ま~た命を無くしました。

てつが、また
新しい命をやります。

これが
最後なので
がんばって下ちい。


・・・なんだよ、コレ?

意味がわからない、新井田はしばらくその文章を眺めていた

そのとき、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる
バッ、と振り向く

「・・・ッッ!!?」
驚きのあまり声もでない新井田


そこにいたのは三島 弘幸だった。


「どうしてッ、なんで三島さんが・・・」


三島の隣には父親の姿が、そしてもう一人母親らしき女性がいた
三人は目に涙を浮かべながら再会を喜んでいた


あたりを見回すと、そういった人の姿が多く見られる

見覚えのある顔もチラホラ
一瞬、その中の一人と目が合う


・・・あ、吾妻ァ!?


「うぉッッ!!新井田ぁぁあ!!」
死んだはずの吾妻だった、彼は叫びながらこちらに走ってくる


「・・・」


「何ジロジロ見てんだよ?」


「えっ!・・・ああ、吾妻、お前死んだのに・・・」


「ん~、俺もよくわかんねぇよ、てか死んだのかよ俺?」


・・・死んだはずの吾妻に三島さん・・・
じゃあやっぱオレだってまた死んでるんだ、なんだココは?


気分が落ち着いてきた新井田は、この状況について考える


・・・あの言葉は明らかにガンツだ

また命をなくしました・・・か、ってことは・・・
ここにいる人たちは全部、今まで死んできたガンツの住人!?


「いまさら、オレたちに何をさせるっていうんだ、クソッ!」


「まぁまぁ、新井田、落ち着けって・・・俺らこうして生きてんじゃん
しかもほら、ガンツもこれで最後みたいなこと言ってるし

今回生き残れたらさぁ、もしかしたらフツーの生活に戻れんじゃねぇーの!?」


この期に及んで前向きな吾妻を、目を細めて見つめる新井田


・・・はは、こいつバカだな、何も考えてねぇーのか?
でも、ここまでくると逆に尊敬するよ、ウダウダ余計なこと考えててもしょうがないし


そのとき、いきなり地面に何本もの光の線が等間隔に走る


ゴゴゴゴ


大きな音とともに線部分から地面が割れ
割れ目からゆっくりと棚のようなものがせりあがってくる


「すげぇ~!!」
思わず感声を上げる吾妻


この広い空間に何十列も出現したその棚には
数え切れないほどの道具や武器が収納されていた


「・・・ここまできたら、やるしかねぇか・・・」
ボソッとつぶやく新井田に吾妻がいつになく真剣な表情でうなづく。


二人は戦闘の準備をするため棚に近づいていく
銃身が恐ろしく長いものや、ムチのようなもの、さらにスノーボードのようなものまで
見たことも無い武器や道具が並んでいる



「よっし!!完璧だ」意気込む吾妻


「よし!って、お前適当に選んで使い方とかわかんないだろ・・・」


「だいじょぶだって!臨機応変だから俺」

どんなときでもバカで前向きな吾妻
そんな彼を見ていたら真面目に考えてる自分の方がバカな気がしてきた新井田


「・・・そうだな」
ふっきれた新井田、使い慣れた武器を捨て、とにかく強そうなものばかり手に取った
不思議と不安はなかった、この先に何が起きても驚かない、そんな気がした。


そして転送が始まる


「・・・何処?ここ?」


新井田たちの目の前には
恐ろしく広く殺風景な荒野が、どこまでも続いていた。

No.51/消滅。

ゆっくりと目を開く新井田

ガンツの部屋、その玄関で白川が無表情で彼を見つめている


「キミって、そんなにイカレてる人だと思わなかった」唐突に言う白川


「ハハっ、そうかな?星人になったからかも・・・
そんなことよりさぁ、白川さんそこ退いてもらってもいい?」


ブンッッ


次の瞬間、黒い刀を新井田に向けて振り回す白川
しかし、彼女の攻撃が新井田に直撃するよりはやく


白川の両腕は無くなっていた


そんなことはおかまいなしに蹴りを入れてくる白川

「・・・やめようって、オレはガンツだけ殺せればいいんだから」
ボソッと言う新井田、白川の足を掴むと壁に思い切りたたきつけた


そして新井田の手に握られている光の剣を、白川の胸に突きつける


ズブッ


あっさりとスーツごと彼女の体を貫く

「ゴフッ・・・うぅ」
口から血を吐く白川、それでも体を動かそうとする
しかし、今の新井田はガンツスーツを着ているうえ
ベルト星人の異常な身体能力をもっているのだ

当然、力で新井田に勝つことはできない


新井田はそんな彼女の体にまたがり、ベルト星人の卵をうえつけようとしていた


しかし、寸でのところで転送される白川

一人部屋に取り残された新井田
「ふぅ、もう少しだったのに・・・まぁ、いいか
余計なのもいなくなったし、やっとガンツと再会かぁ・・・」


目の前に広がる懐かしい光景、忘れもしない真っ黒い玉
新井田の顔に笑顔はない

少しずつ玉に近づいていく
そしてガンツの玉の中にいる、スキンヘッドで色白の素っ裸の男をのぞきこむ
生命維持装置のようなものを着け、ねむっているように見える

新井田にはそれが何者なのかはわからなかった、しかしこの男が

ガンツの本体であることに間違いない


「・・・ふぅ、ふっ」

呼吸を整え、剣を構える、狙うのは頭


・・・串刺しにしてやる


「死ね!!!」


ズンッッ


「うくッ!!?
・・・か、身体が、重い??」


・・・何が起きた?なんだコレは?立ってるのが、やっとだ・・・
ガ、ガンツか!?ふざけやがってここまできてッッ!!!


ゴツッ


今度はいきなり背後から何者かに殴られた
何が起こったのかわからない新井田、完全に地面にはいつくばり


動けなくなってしまった


「くッ、そ、ガンツ、殺してや、るッ、ちくしょ、お!!!」


渾身の力で立ち上がろうとする新井田の前に
ガンツスーツを着た男が近づいてくる

その男が近づけば近づくほど身体が重くなっていく
たまらず崩れ落ちる新井田

その瞬間、男の顔が見えた
もの凄く見覚えのある顔

というよりさっきまで見ていた

頭はスキンヘッド、色白の肌
感情の感じられないその瞳は、まるでガンツの玉ように黒い


そして男は見たこともない形の黒い銃をもっていた


やられる・・・


心の底からそう思った、不思議と恐怖は感じなかった
ただ、結局ガンツに一矢報いることができなかったことが

悔しかった、ここまでして生きてこれた意味が新井田にはわからなかった。


ギョォォォオオ―――


男は銃の引き金を引く、次第に大きくなる発射音

スーツが壊れ、新井田の身体がミシミシと悲鳴をあげる
そしてまるで何かに吸い込まれるかのように身体が一点に凝縮していく


―――オオオン・・・


音が鳴り止むと新井田の姿は、跡形もなく消えさっていた。

No.50/ WRY。


「懐かしい・・・オレの、家だ・・・」
体を小刻みに震わせながら懐かしい我が家の記憶を思い起こす新井田


「な、なおき?・・・そっちの人って・・・」
二人を見つめながら問いかけるもう一人の新井田


「ん?・・・この人が兄ちゃんだけど、あんたこそ誰だよ?」
ニヤニヤしながら答える直貴の姿をしたコータロー


「・・・何言ってんだよ、お前何言ってんだよ!?誰だよコイツはッッ!!?」
星人新井田を指差しながら声を荒げる、その姿を見て口を開く


「お前は知らなくても、オレはお前のこと知ってんだよ、偽者野郎。
人の人生勝手に奪いやがって、今までオレがどんな思いで生活してきたかわかるか?

お前は何も知らずに平和な生活を送ってやがる、ゆるせねぇんだよ、ずっと邪魔だったんだよ
・・・でも、もうそれはいい、お前を殺したとしても、戻ってくるものはないから
オレを家族と思ってくれるヤツはもう一人もいないから・・・」
新井田が言い終わると、隣にいたコータローが直貴から元の姿に戻っていく


それを見て言葉が出ないもう一人の新井田

「わかっただろう、オレ達の家族は、もうみんな死んだんだよ」
新井田の腰にベルトが浮き上がる
そして、目の前にいるもう一人の新井田に飛び移った


腰に巻きつくベルト、光を放ち、その場に膝をつく新井田

「・・・・・・はぁッ、はは・・・はははははッッ!!!」
突然笑い出す新井田、服装以外に変化は見られないがとにかく気分がいい
「はははッ!!・・・馴染む・・・
ものすごい速さで馴染んでいく!!・・・この感覚だ、これがオレの体だァ!!」


いままで歩くことすら困難であったが、オリジナルの体を手に入れ
自分にできないことはない、そう思う新井田だった。


その夜、ベルト星人全員が新井田の家に集まった
そして、新井田を中心として、ガンツへの報復を企てていた。


「やつ等のアジトへ潜入し、黒幕もろとも一網打尽だ!」
コータローが新井田を凝視しながら言う


「あっち側で危ないのは二人しかいないから、戦力的には問題ない
・・・ただ、あの部屋には鍵がないと入ることができないんだ

だからまず、鍵を奪い取る、それを手に入れればガンツはもう終わりだ。」
強い口調でそう断言する新井田


その後「鍵」を手に入れるため、ガンツのマンションを含め、その周辺を監視するコータロー達

一方新井田はコータローの言いつけで、鍵の奪回には参加せず
ベルト星人としての力を使いこなすため訓練、仲間の増殖に励む


そして数日後、黒玉の部屋襲撃当日、廃ビルに集まるベルト星人。


「ついに、この日が来た・・・」
物思いにふける新井田

周りにはコータローと数十人にも増えた星人がいる


「ふふ、ショウお前の力があれば、今日は悪が滅びる記念すべき日になるだろう」
新井田に歩み寄りながらニコニコ笑うコータロー


「そうですね、オレの復讐が達成される時でもある・・・

・・・いままでずっと我慢してきた、でも今のオレなら誰にも負ける気がしない」

言い終わると新井田はベルトに手をかざす、すると弱い光とともに剣の柄のようなモノが手に握られていた
それを天に振りかざすと光が刀身を形作っていく、そしてキッとコータローを睨みつけた


ザンッッ


地面に落ちる、腕
それを見て表情が固まるコータロー

自分の腕から大量に噴出す血


斬られた、ショウに?


そうコータローが気づいたと同時に

ゴトッと地面の血溜まりに身体が崩れる


手に続き両足までも両断され、芋虫のように体をうねらせる


周囲の星人たちもその様子に気づき始めた
そこにいた誰もが戸惑い、あたりは鎮まりかえる

顔を上に向けるコータロー、この状況にもかかわらず落ち着いた様子で新井田に問う

「はじめからそのつもりだったのか?」


「・・・ああ、忘れてるわけないだろ、お前らがしたことを」

ニヤッと口元が引きつる新井田そして――


―――ドスッ


コータローのベルトを一突きにした


その次の瞬間、雄叫びを上げながら襲い掛かってくる数十人ものベルト星人
新井田を裏切り者だと認識したようだ


「ハァ・・・今のオレには、誰も敵わないって言ってるのに・・・」



、、、数分後その場に再び静けさがもどった


無残に転がる死体、その中に血に塗れた、新井田 生ただ一人が立ち尽くす


「・・・待ってろよガンツ・・・」



――――今、いくから。

No.49/ 生。




「なんで、お前がここにいる・・・」
目の前の新井田に対して、思わず声がもれた白川


「・・・ぁあ、コレだよコレ」
ポケットから黒い鍵を取り出す新井田

「みんなに取り返してもらったんだよ」


「・・・違う、お前はあのとき死んだはず」白川が新井田を睨みつける


「ああ~!そっちね、確かに死んだねオレ
でも実際生きてるんだけど今、まぁ、あの後色々あったから・・・」


ベルト星人ミッションが終わりに近づいた頃
捕まった新井田はコータローによって卵のようなものを植えつけられた
そして彼の腰にベルトが浮き上がってくる


そのすぐ後、ガンツによって頭を爆破された新井田
この時点で彼の命は尽きた


しかし、新井田の死体に残されたベルト
それが動き出し、近くにいた星人の体に巻きついたのだ

するとその星人の姿が新井田に変化していく
新井田は星人の体をのっとることで生き延びることができた

「ハァ、ハァ・・・」


「気分はどう、しょう兄?」
新井田の弟の姿をしたコータローが尋ねる


「・・・最悪だ」


ガンツの住人としての新井田は死んだ
しかし、新井田は星人になることで生き延びることができたのだ


この時から、星人となった新井田の復讐が始まる。


現在生存しているベルト星人は6人

普段はのっとった人間の生活を送っているため、それぞれ帰宅していく
そんな中残ったコータローと新井田

「ショウ、体のほうはもう大丈夫か?」


「・・・んッ、ダメだ、上手く、動かせない・・・」
不完全な星人化の状態で体の転移をしたため、その体を自由にコントロールすることができない新井田

「くっそ、これ、どうにかならないのか!?」


「自分自身の体が使えればいいが、アレはもう使い物にならない
とにかく慣れるしかない・・・お前は我が同胞の命を奪い新たな命を得たのだ

・・・今、お前が味わっている苦痛をその代価だと思え。」


・・・はぁ、簡単に言いやがって

慣れるしかないって、くっそ、なんか他にないのかよ
他にって、オレがわかる分けないか、星人になったばっかしだし

・・・あ~あ、そういえば星人になったんだなオレ、実感ねぇーけど


この前まで普通の高校生だったのに、死んじゃって、変な狩させられて
また死んで、今度は宇宙人になってんじゃん・・・

まぁ、いいか、別に、もともと生きてても何の目標もなかったし
でも、今は違う、二回死んでやっとできた目標


ガンツを、コイツ等をぶっ潰すこと


オレが何者であろうと関係ねぇー、むしろ今のこの状態はベストだ
この力を自分の物にできたら、オレは何だってできる!


・・・ん!、そういえば・・・ハハッ!!
思いついた、こんな体にこだわることないんだ!!


「コータローさん、ちょっと頼みたいことがあるんですけど・・・」
自分の体を上手くコントロールするための方法を、新井田は思いついた。



ベルト星人暗殺ミッション後、多くの犠牲者がでた
その戦いの舞台となった中学校周辺の住民は、ほとんど星人化し殺されている

一夜にして数百人もの人間が行方不明になったとなれば、もちろんテレビでも取り上げられていた


そして、もう一人の新井田 生の通う高校でも
吾妻を始めとする多数の生徒が戦いの犠牲となった


「・・・うちのクラスだけでも、5人が行方不明になっている
なぜこんなことが起きたのか、わかってないらしい・・・

これ以上犠牲者が出ないためにも、何か知っている人は何でもいいから教えて欲しい!」
新井田のクラスの担任が話す、テレビで見て知ってはいたものの、実際にクラスメイトが犠牲になったことで
それが現実であると実感させられた生徒達、鎮まりかえる教室


そんな中、もう一人の新井田 生は考える
昨日、塾から帰宅した後、家族は誰もいなかった、結局、今日の朝になっても帰ってこない
そのため、寝坊した新井田を起こす者がおらず、学校に遅刻してしまった
学校に来たら来たで、いきなりこの話、そして本当に吾妻がいない

新井田は悪い予感がした


帰宅後、未だに帰らない家族

親戚に電話をするも、やはり知らない
昨夜の行方不明事件に関係しているのではないか、と心配する親戚

こういう場合どうしたらいいのかわからずに、とりあえず警察に電話を、と進められた


そのときだ

「ただいまーっ」


弟の直貴の声だ
安心する新井田、慌てて玄関へ駆ける


「直貴ッッ!いままでどこいってたんだよ・・・」



!?


そこには弟と、自分ソックリの人間、もう一人の新井田 生がいた。

No.48/ 訪問者。


・・・やっぱり、アイツらベルト星人か・・・
時間はたっぷりある、今回は一匹も逃がさねぇ・・・


「てめぇら皆殺しにしてやるよッ!!」
叫ぶ山本、フードの男めがけて刀を振り上げる


「ハァッ!!威勢のいい野郎だなァ!!」
刀を振り上げた山本の両サイドから、ベルト星人が二人襲い掛かってきた


ガッ

山本の両腕を掴み、動きを止める
「今っすよ!!やっちまってください!!」
叫ぶベルト星人、するとフードをかぶった小柄な男が
メキメキと音をたてながら姿を変えていく、その姿は

ベルト星人のボス、コータローであった
そして猛スピードで山本に迫ってくる


「チッ!!てっめぇらいい加減離しやがれぇぇぇえ!!!」
危機を感じた山本は、自分の体を押さえつけている星人二人のスネを思い切り蹴り飛ばした

ゴキッ

「うがぁッッ!!」
足があらぬ方向に曲がる二人
押さえつける力が弱った瞬間

山本は武器を離し、二人の頭をわしづかみにする

そう、このときすでにコータローは自分の攻撃圏内に山本を捉えていた

ハンマーのような拳を振り上げる
山本は掴んだ二人を盾にして防ごうとする


ズドォォオオッッ


コータローの凄まじい威力のパンチに
盾にされた星人はいとも簡単に砕け散る


それでもなお威力が衰えない、そのまま山本の両腕を弾き
胸に直撃、めり込む拳、ゴキゴキと胸骨、肋骨が砕けていく


身体が宙を舞う、というよりバットで打たれたボールのように一直線に飛んでいく
そして地面に何度もバウンドしながら転がり、ようやく壁にぶち当たってその動きが止まる

すでにスーツも壊れ、砕けた骨が肺につきささったのか息が上手くできない
・・・う、そだろ・・・一発で
なに、死にそうになってんだ、オレ・・・


オイ、あいつら来たぞ・・・立てよ、戦えよ・・・


身動きが取れない山本の元に集まってくるベルト星人たち
「あっちゃ~、コータローさん!!もしかして殺しちゃいました?・・・」


「この体で戦うのは初めてで、うまく加減ができなかった」


「う~ん・・・、まあ、目的はブツの回収なわけだし、いいんじゃない別に
それはアイツの個人的な問題なわけだし、俺等が言うこときくことねぇーし」


「それもそーだな、そんじゃさっさと終わらせっか」


そういうと山本の体を調べ始める
山本は薄れていく意識の中、ただそれを黙って見ているしかなかった


・・・くそどもが、オレは、まだ、死んでねぇ・・・
オレは、死んでねぇ、戦えッ!・・・


くそ、やべぇ、息できてねぇーじゃん・・・
いや、まだ戦えるんだ、こんな、こんな所で死んでられるか

立つんだ、立って、もう一度戦うんだ


戦え、戦えよ・・・もう時間ねぇーんだよ・・・


・・・あ~あ、初めてだな・・・こんなに、死にたく、ないのは・・・


完全に意識がなくなった山本を後に帰っていくベルト星人たち
一方オタクたち三人は、隙を見てすでに逃げ帰っていた


一人残された山本、口から血が頬をつたい、血だまりができている
そのとき、彼の頭が半分なくなっている、どうやら転送されているらしい


血だまりや地面の割れ目、戦いの傷跡を残して山本はその場から消失した。


それから二日後の夜、ベルト星人の襲来を知らない白川

ガンツ部屋に集められた人間、その中に山本の姿がないことに気が付く

他はほとんど知らない者ばかりだ
  

今は、この異常な状況を説明する者もいない
いきなり人を殺す者もいない
そして自分に話しかけてくる者もいない


初期の頃から星人狩りを共にしてきた者達はもう誰一人として残ってはいないのだ


いつも通りガンツが歌いだし、それにざわめく新メンバー達
ガンツを凝視する白川

今回のターゲットは―――


ガチャッ


そのとき、不意に玄関から鳴った音にバッと振り返る白川
そして立ち上がり、ゆっくりと玄関へと進んでいく


玄関のドアが開いている
そして目の前に、一人の男がいる


・・・この状況で部屋に入ることはできないはず
それより、コイツはすでに―――


「久しぶりだね、白川さん」



―――新井田 生!!?


そこにいたのは死んだはずの新井田の姿だった。

No.47/ 悪殲滅作戦。


いつものあの部屋、ガンツに表示された残り時間は00:00:00を示す
タイムオーバー、死を覚悟するメンバー


しかし、星人がまだ残っているにも関わらずいきなり転送が始まる

あまりにもあっけなく、凄惨なミッションの幕は下ろされた。


それから数日後、何も変わることのない日々が続き
今宵もまた非日常的な「狩り」が、いつものように行われていた


「オラアアアアッッ!!」
いつも以上に荒々しい山本
それもそのはず、前回のベルト星人との戦いで
あと数匹というところまで追い込んだものの惜しくもタイムオーバー
ガンツの部屋に強制送還されてしまった


そして今まで稼いだ点数が0に戻され

おまけに、今回のアリ星人暗殺ミッションでは15点以上取らないと死。というペナルティをかせるガンツ


そのせいか白川も表情が険しい
怒れる二人の前に、数だけは一丁前のアリ星人もあえなく全滅


そんな星人とガンツメンバーの戦いを見つめる一人の男の姿があった
「あ~、はい、今終わりました・・・はい、そろそろだと思うんで、ええ、それでは・・・」
携帯電話で話す男、話が終わり、転送されていくガンツメンバーを見送るとその場から去っていった


「あぁ~!!くっそザコが!!もっかいあいつ等とやらせろガンツ!!!」
転送されてくるなり怒鳴り散らす山本

白川も姿を現す
そしてその二人の戦いを呆然と見ていただけで
運良く生き残った新メンバーのオタクが三人、ぶるぶる震えながら部屋の様子を覗っている

そして、ガンツが採点を始める



山本 くん


35 てん


TOtaL35 てん
あと 65 てん でおわり


続けて白川の採点



白川 さん


26 てん


TOtaL26 てん
あと 74 てん でおわり


「チッ・・・」
山本より点数が少なかったことが気に食わなかったらしく、舌打ちをする白川


採点も終わりそれぞれ帰っていくメンバー

するとガンツの部屋があるマンションの前に、数人の男の姿がある


マンションから出てくる白川をジロジロと見つめ、なにやら話している
「おい、アイツ違うか?」

「さぁ、わかんないけど・・・男って言ってたぜ」


次に出てきたオタク三人を睨みつける

「じゃあ、アイツらか?」
「おそらく、あの中のどれかだろう」


男達は三人の行く手を塞ぐように立ちはだかる

それに気づいたオタクたち、目を合わせずに、通り過ぎようとした
しかし、気づいたときには三人は四方八方を囲まれていた


「ちょ!あ、な、なな、なんなんですか、あなたたちは!?」
慌てるオタクたち

そして怪しげな男達の中から、フードをかぶった小柄な男が話を始める


「あなたたちは、山本という人をご存知ですか?」


全くわからない、という素振りをするオタク三人

そのとき――


ザスッ


オタクの背後にいた男の胸を、黒い刃が貫く

「・・・ッ!?・・・なん、だコレ??」

長く伸びた刀身を一斉に目で追う男達
その先にある刀の柄の部分まで確認することができたが
それを握っている手がない、それどころか人の姿すら見えない


「くっそ、まずい!!俺等ねらわれてんぞッ!!」


ギョ―――ン、ギョ―――ン、ギョ―――ン


遠方から聞こえる黒い銃の発射音
気づいたフードの男が言う


「・・・上か」


そしてもの凄いスピードでその場から離れると、月明かりもない真っ暗な空を見上げた
漆黒の空に銃を構えるガンツ住人、山本の姿があった


ドドンッッ


爆発する地面、そこに着地する山本
一瞬ひるんだ男達を、スーツのばか力でなぎ倒す


そして刀を拾い上げながら山本が言う
「ハハッ、お前ら、丁度殺したいと思ってたんだ!!」


フードの男が口を開く
「・・・お前が山本だな?」


すると男の腰にオモチャのようなベルトが浮き上がってきた。

No.46/ 反逆の遺志。


「うおぅッ!!・・・吾妻ァ!!あ、吾妻!!?」

・・・吾妻が、いない・・・くっそ途中で振り落とされたか・・・


バイクに乗る新井田は未だに、コータローことベルト星人のボスに追い掛け回されていた

吾妻の攻撃で、体のいたるところから出血をしているはずの星人
最初のころより勢いは失ったものの、新井田一人ではとても勝てそうにもない


・・・アイツ、まだ追ってきてる・・・なんとか振り切らないと
いや、ダメだ!・・・倒すんだ、逃げてたらいつもと何もかわんねぇ!!


戦うことを決意する新井田
「来い、来いよ!テメェなんかひき殺してやる!!」


思い切り車体を傾け、地面に足を滑らせながらいきなりUターン
そして目の前に迫っていたコータローめがけて一気に加速する

ゴキャッ

激突するバイク、それを両手で押さえるコータロー
あまりの衝撃に骨が砕ける音が聞こえた

「くっそッ、なんて力だよ!!」

あと一押しでつぶれそうな状態だが
コータローのばか力によって車体が押し戻されてゆく

「なっ!!?」
車輪が空回りしている、そうこの巨大なバイクが地面からわずかだが持ち上げられていた

「ぐぉっぉぉおお!!!」
うなり声を上げながら次第に持ち上がっていくバイク、焦る新井田

すかさずホルスターから小型の銃を引き抜き
コータローめがけて引き金を何度も引いた


バシュッ、バシュバシュッ


体中の肉がさけ、そのダメージが骨まで届いたのか
バイクの重みに耐えられなくなったコータローの腕が悲鳴を上げる

ゴキンッ

腕の骨が折れた、手から離れるバイク
その途端に急発進、コータローの体を車輪が巻き込む

ベキベキ・・・

押しつぶされたコータロー、新井田は止めを刺そうとUターンをしてまた戻ってくる

「うぉぉぉ、死ねぇぇッ!!!」

グチャッ

何かがつぶれる音がした、後ろを振り返る新井田
そこにはつぶれた腕を押さえながら立っているコータローの姿があった

「あいつ!!・・・避けられたか」
さらに追い討ちをかける新井田
しかし、またもや紙一重のところで避けられてしまう

再び背後をとったコータローは息を荒げながらも新井田を追う
足へのダメージが少なかったため、スピードは落ちていない

だが確実に勝てる見込みが見えてきた

・・・いける、いけるぞ・・・次で終わりにしてやる!


最後の力を振り絞り、猛スピードで追ってくるコータロー
後ろを確認しながら徐々にスピードを緩めていく新井田

コータローはそれに気づかずに、もう少しで追いつけると思いさらにスピードを上げる

・・・今だッッ!!

思いっきりブレーキをかける新井田
急停止したバイク、猛スピードのコータローは止まることができずに激突


ゴシャッッ


バイクの後部座席に全身を強く打ち付け、ズルズルとズリ下がっていく
「はぁ・・・、やったか・・・」

恐る恐る後ろの様子を覗う新井田
変身が解け、もとの人間の姿に戻ったコータローが、血まみれで横たわっていた

「・・・、ふぅ・・・」
その悲惨な姿に目をそむける新井田、そしてそのままバイクを走らせる

・・・多分、コイツがボスだろうな・・・
しっかし、まだ残りがこんなにいるなんて・・・
吾妻の姿が見えないけど・・・アイツ、大丈夫か・・・

そのとき、新井田の背後にゆっくりと忍び寄る、血まみれの手

「!!・・・むぐッ!!?」

その手にいきなり首を絞められる新井田
「許す、な・・・悪の組織を、ぶっ、潰せ・・・」

・・・!!コイツ、まだ生きてたのか!?
死んだと思われたコータローは、バイクの後部座席にしがみつき、死に物狂いで新井田の首を掴んだ

「グッ、ぅぅ・・・」
・・・ッのやろ~、あんな体で、なんてパワーだよッ・・・
いいかげん、死んでろっつの!!

「ふごぉぉぉお!!!」
中学校の校舎に方向を変え、バイクを急加速させる

首を絞められ、そろそろ息が限界の新井田
校舎を直前にして、一気に車体を傾けドリフト、そして横滑りの状態で校舎に突っ込む
ドリフト時の遠心力で、身体が外に投げ出されたコータロー、そして校舎とバイクに押しつぶされた

ドゴォッッ――・・・


崩れた瓦礫によってバイクごと生き埋めに
しばらくして、この音を聞きつけた星人たちが駆けつける

「なぁ、これ、さっき変な乗り物が突っ込んでたよな・・・」

「ああ、なんかコータローさんが追いかけてたヤツだ」
そうこう話しているとき、瓦礫の山がわずかだが揺れた

そして中からゆっくりと人が這い出てきた
「オイ!!こいつ!?」

「!!・・・コータローさんじゃねぇぞ、こいつ黒いやつ等の仲間だ!!!」
瓦礫から出てきた新井田、目の前に集まっている数人のベルト星人
武器もない、そして肉体的にも精神的にも疲れきっている、焦る新井田

幸いスーツがまだ壊れていない、隙を見てなんとか逃げ出そうと身構える
そのとき一人のベルト星人と目が合う

「・・・あ、なんで、だ?・・・なんでお前が、ここにいるんだ、直貴ッ!!」

思わず叫ぶ新井田、数人の星人の中に、新井田の弟、直貴の姿があった

「んん~、なんだぁ~、ナオキ、コイツお前の知り合いか?」
ベルト星人の一人がナオキに尋ねる

「・・・オレの、兄貴だ・・・」
驚いた表情で兄の新井田を見つめている
「なにぃ~、兄弟!!・・・オイオイどうすんだよ・・・」

「殺す、か?」

「待てよ、お前それは酷くないか本人の目の前で・・・」

未だに弟が星人になってしまったという事実を受け入れられず呆然とする新井田
そんな彼を前にしてゴチャゴチャと話し合う星人たち

話し合いの結果が出たらしいのか静かになる
そして一人の星人が口を開く


「ん~、まぁ、アレだ・・・いくらお前が悪の一員だろうと
同胞の実兄を殺すというのは気が進まない・・・そこでだ

・・・今まで行ってきた悪行を悔い改めるならば、お前を我々の仲間として迎える」


仲間として迎える、つまり自分が星人になるということ
そんなことできるわけがない、そう思う新井田

だが断れば殺されるだろう、もし生き残ろうとするなら
自らの弟を殺さなければいけない、新井田にそれはできるわけがなかった


そのとき、瓦礫の中から何かがシュルシュルと這い出てくる
コータローのベルトが狙っている、いち早く気づくことができた新井田は横っ飛びで避ける

飛びつくベルト、それを間一髪のところで避けた新井田
しかし、何を思ったのかコータローのベルトは直貴の体を這い上がり

その体を奪いとってしまった

「・・・うッあああ!!!」
叫ぶ直貴、それを見て新井田も叫ぶ
弟の姿が見る見るうちにイカツイ男に変わっていく

復活したコータロー、なりふりかまわずそれに突っ込んでいく新井田

ガッ

新井田の本気の拳をいとも簡単に避けられ、その勢いで地面に倒れこむ
「ちっくしょぉぉぉお!!!てめぇらッ、ぶっ殺してやる!!ぶっ殺してやるッ!!!」

怒りで我を忘れてコータローに襲いかかる
しかし数人のベルト星人とコータローによって体を地面に押さえつけられる新井田

身動きがとれずにただ星人に罵声をあびせる

「しょう兄・・・話聞いてってば」
弟の声に動きが止まる新井田、もちろんそれはコータローが変身した直貴である

「なんで、お前がぁ・・・」今にも泣きそうな新井田

「しょう兄、オレたちの仲間に入れって、そうすればもうこんなことしなくてすむんだ」

「やめろぉぉおッッ、勝手に、直貴の声つかってんじゃねぇぇえ!!!」
一瞬、弟の声に惑わされそうになったが、それでも必死に抵抗しようとする新井田

「ほら、前・・・あれ、見える・・・」
前方で星人の大群と白川が戦っている、それを見るように促す

「わかるかなぁ、あそこにさぁ、・・・ウチのお父さんとお母さんがいるって」


!!


離れていてよくわからない、しかし新井田にはそれが本物であるとわかった
17年間毎日顔をあわせてきた、家族である二人を見間違えるはずがない


白川の振り回す刀によって片腕を失った父親、それを必死に庇おうとする母親
しかし、次の一振りで二人の命は失われてしまった


新井田は、もう声が出なかった、抵抗する気力もない、開いた口が閉まらず、涙が止まらない
「許さない、よくもオレたちの親を・・・しょう兄はアイツらの仲間なんだよ
でもさぁ、こんなことホントはしたくなかったんだろう?

しょう兄はやさしいから・・・仕方なくやってたんだろ
こっちにくれば、もう無理をしなくていいんだ

そしてオレたちといっしょに、
しょう兄にこんなことをやらせたヤツを、ぶっ潰すんだ。」


コータローの誘惑に心が大きく揺らぐ新井田


・・・オレは・・・許さない

「ゆ、ゆるさな・・・い」


「そうだよ、しょう兄、いっしょにぶっ潰してやろう!!」
すると倒れこんだ新井田を仰向けにすると
コータローのベルトから、なにやら管のようなものが伸びて
新井田のヘソにめり込んでいった、スーツを着ているにも関わらず
ズブズブと体に侵入していく、まるで卵か何かを植えつけるかのように・・・


次第に意識が薄れていく新井田、その中で今までの苦しい日々を思い出していた


・・・あの部屋に行ってから、オレの生活がかわったんだ
居場所を奪われ、大事な仲間を奪われ・・・

家族の命を奪われ、一人になってしまった
あのときオレがベルト星人全部たおしてたらこんなことにはならなかったんだ

今のこの状況はオレのせいか?

・・・いや、違う

こうなったのは、あの部屋に呼び出されたからだろう

ガンツ、ガンツ・・・なんなんだよお前は
オレにこんな事をやらせてなにになるってんだよ

おまえが余計なことしなかったら、オレみたいな中途半端な存在は生まれなかったんだ

お前が悪い、ガンツ、全部だ、全部お前のせいだ


許せない
許せない
許せない



オレは



お前らを



絶対に



「・・・許さない、かならずテメェらを、ブッ潰して―――」



バンッッ



破裂する新井田の頭、復讐を誓う言葉をかき消す
反逆者へのガンツの無情な仕打ち


黒い玉の部屋の住人、新井田 生は
自らの死、という方法でガンツの呪縛から開放された。

No.45/ のっとり。


「はぁ、はぁ、・・・あぶなかった」

吾妻は星人へと姿を変えた、というより星人に体を奪われてしまった

そして立ち上がり、体をほぐす
「・・・そーかお前ら、いっつもこんな酷いことをしているのか」

星人の言葉に耳を傾けることなく、思い切り斬りつける白川

ガッ

切れない、確かに当たってはいる
「ははッ、この体、すごいな、お前の攻撃が効いてないぞ!」

それでも攻撃を続ける白川に星人が言う
「おいおい、この体はお前の仲間だぞ・・・ほらァ!」
星人は腰にまかれているベルトに手をかざした、すると

一瞬光に包まれる星人、次の瞬間にその姿は吾妻に変わっていた

「白川・・・俺だよ、止めてくれって」姿から声まで吾妻そのものだ

さらに続ける吾妻
「俺たち、ガンツにいいように使われてムカつかないか?」

「別に」即答する白川

「こんなこと続けていても、意味がないし、そのうち死んでしまうかもしれないのにか!?
今までは逆らうこともできないし、逃げ出すこともできなかった・・・でも、今は違う、今の俺ならそれができる」

そう言うとレーダーを取り出す、画面には星人の位置が示されている
「見てみろよ、俺のことを星人だと、ガンツはみなしてるようだ」

白川のレーダーは目の前にいる吾妻に反応していた

「つまりだ、俺はもうガンツの住人なんかじゃあない、星人に生まれ変わったことで解放されたんだ!!」

熱弁する吾妻に冷ややかな視線を送る白川
「だから何、早く私に殺してほしいの?」


「違う、白川、お前もこっちに来い、ガンツの居所はワレた、これから俺たちと一緒にこの腐ったゲームをぶっ潰すんだ!!」

そのとき、言い終わった吾妻の耳に何かが聞こえる、聞き覚えのないおかしな音

ピンポロ、パンポン

次第に大きくなっていく、なにやら頭の中から聞こえてくるようだ
「この音!!・・・まさか、前に新井田が言ってたアラームってヤツか・・・」

ピンポロ、パンポン
さらに大きくなっていくアラーム

「くっそ、こんなものが~!!コレがある限りガンツからは逃れられないのか・・・ちっくしょ~・・・ちくしょぉぉぉおッッ!!!」


バンッ


ハジケ飛ぶ吾妻の頭部、残された体はガクッと地面に崩れ落ちる

それを見つめる白川、そして腰に巻き付けれたベルトに刀を突き刺す
うすうすベルトが本体だということに気づいていたようだ

そしてまた、次第に増えていく星人の大群に、白川は一人向かっていった。


未だに屋上にいる山本たちは、新井田とすれ違ったベルト星人たちと戦っていた
下に大量にいる星人とは強さが段違いである、しかし山本の敵ではなかった


「・・・っしゃあ、ラストォォオッッ!!!」

ザンッ

最後の一匹を頭から縦に両断する山本
「はぁ、はぁ、これでこっちは片付いたね」息を切らしながら三島が言う

「ハッ、思ったよりてこずったが、たった7匹程度で何ができるっていうんだよザコが!」

「あっちゃん!下にはもっとたくさんいるんだから、気を付けないとダメだよ」

「わかってるって、この程度のヤツが何匹いようとかわんないさ」


強気の山本、下にいる大群に攻撃を仕掛けようとした、そのとき

「うわぁぁあッ!!なん、っだコレ!!?」
三島が叫び声をあげる、よく見ると彼の体をベルトが蛇のように這い上がっていく
そして腰に巻きつこうとしていた

「くッ!!どうなってやがる・・・」
焦る山本だが、とっさにそのベルトめがけて刀で切りつける

「おじさんッ、すこし我慢してくれ!!」


ザスッ


「うぐッ!」

半分になったベルトは、黒い血のようなものを出しながら地面に落ち動かなくなった
山本はすぐに体を支え、声をかける、どうやら完全に腰に巻かれる前にベルトを切ったおかげで三島の体には何の影響もなかったようだ


「うわぁ!!・・・きゃぁああ!!」

いきなり後方から五木や新メンバーたちの悲鳴が聞こえる
まさかと思って振り向く山本、しかし時すでに遅し、全員ベルト星人に姿を変えていた

・・・そうか、ああやって死んだと見せかけて体を奪う、これがこいつらのやりかたか・・・
戦闘態勢にはいる山本、不適な笑いを浮かべる元ガンツメンバー6人
「私たちの体をよくも破壊してくれたな・・・許す訳にはいかない・・・
二度とこんなことができないように、ガンツも貴様等も、皆殺しだッ!!」


バンッ

そう言い終わると同時に頭が破裂した
それにつられるように次々と頭が破裂していく元ガンツメンバー

「・・・フン、ガンツか・・・余計なことしやがって」
そうつぶやく山本、そして死体から逃げようとするベルトに止めを刺した


「あっちゃん、あと15分しかないよ、急がないと!」

「ああ・・・」


・・・残ったやつ等全て殺すことができれば・・・時間はないがこの数だ


今回で、もう一度100点を取ることは不可能じゃない。

No.44/ 一騎当千。


転送されてくる吾妻
「お!・・・やっぱり、ここか、ってことはコイツら全部星人ってことかよ」
そこは先ほどまで吾妻がいた中学校の屋上であった
屋上からグラウンドを見下ろすと、100人を越える人の姿が見える

おそらくそこに集まっている者全てが星人だろう


そして妙なバイクにまたがった新井田が転送されてくる
「新井田~!!すげぇーな、それやっぱバイクだろ!!」

「さぁ・・・よくわかんないけど、とにかく今回の星人は気を付けたほうが・・・!?」
下の光景を目の当たりにして言葉を詰まらせる新井田

今回の星人は、ガンツスーツにも引けをとらないほどの身体能力を持ち、そして今までとは違い
限りなく人間に近い姿と知能をもっている、そんな星人があれほどの大群をなしている


「ウソだろ・・・なんだよこの数、コレ全部殺せっていうのか・・・」
逃げることは許されないこの状況、新井田は改めてこの世界の厳しさに恐怖した


「怖いの?」いきなり白川が近づいてきて言った

「おまえは・・・怖くないのか」


「わからない、私にそういうの無いから・・・」
ニコッと笑みを浮かべると、走り出し、星人の大群めがけて跳躍した


それと同時に、山本と三島はライフル型の銃を大群に向け、多重ロックオン
そして引き金を引く

ババン、バン、ババンッッ

数十人もの星人がいっきにバラバラに弾けとんだ、なにが起きたのか理解できずに、ざわめく星人


ダンッッ
白川が着地する、いっせいに星人たちの視線が集まる
次の瞬間、ありったけ伸ばした刀を水平に振りぬく

「伏せろぉぉぉおおおッッッ!!!」
コータローが超人的な脚力で飛び上がりながら叫ぶ

ズバ―ッッッ
反応が遅れた星人たちは白川の斬撃のまえに両断された

ババンッッ
山本たちの攻撃をうけ弾ける

「くそッ!!どこから攻撃してきてるんだッ!!?」

すでに星人の半数を失い、焦りの色が見え始める
そんな中、星人のボスであるコータローは落ち着いた様子であたりを見回している

「アキトよ、あの黒い少女はお前に任せる、私達は屋上にいる悪人どもを成敗する」
屋上の山本たちを見つけ、それを凝視しながらコータローは言う

「は、あんなところから・・・わかりました。ここは私にまかせてください」

コータローは何人か部下を引き連れ、校舎に向かって走り出した。


「おかしい・・・全然減ってない」レーダーを見ながらつぶやく新井田

「はぁ?どうしたんだよ?」

「あんなに、倒してるはずなのに・・・レーダーの反応が全然減ってないんだ」新井田はそれに心当たりがあった

今日の朝のことを思い出す、鍵を使いガンツの部屋に行き、ベルト星人を一人倒した
しかし、攻撃は当たったはずなのに、星人は死ななかった、というより、もう一人の男が星人になった

・・・そうだ、あのとき、ヤツが腰に巻いてたオモチャみたいなベルトが、勝手に動き出して別の男に巻きついたんだ!

ってことは・・・あのベルトが本体で、あれを壊さない限り、あいつらは倒せないってことか
「・・・吾妻、後ろ乗れ・・・いくぞ。」

「おッ!やっとやる気になったか新井田ぁ~!!」

吾妻が後ろに乗ると、バイクを発進させる新井田
「そういえば・・・お前運転できんのかよ?」

「は?そんなん適当にやればできるだろ・・・多分」
適当にいじっていたらとりあえずバイクを動かすことができた新井田
フラフラしながら直進するバイク

「オイィ!!ここってそうえば屋上だよなぁ・・・どうやっておりんだよ!!?」

「はぁ!?しらねぇーよ、こっから落ちても大丈夫だろ・・・多分」

「ちょっ!新井田ぁぁあ、お前ッ、このまま飛び降りる気かよぉぉぉおお!!!?」

バキッ
屋上の鉄策を突き破り、宙を舞う黒いバイク
振り落とされないように必死にしがみつく二人

「ぅぉぁぁぁあああ!!!!」

ドンッッ
無事着地できたが、二人はかるく放心状態に
「ははッ・・・すげぇー怖かった・・・」

「・・・大丈夫だって、言ったろ・・・」足の震えがとまらない新井田が続ける
「吾妻・・・見えるだろ、あの、地面を這い回ってるベルト・・・あれを狙って撃つんだ」
白川が暴れまわっているなか、地面に倒れている死体の山から、シュルシュルと蛇のように這い出てくる大量のベルト
それらは新たな宿主を求めて民家に向かっている

「よしッ!いくか!!」

走り出すバイク、その目の前に、もの凄いスピードで走ってくる、数人の人影
「あッ!!」

「新井田ッ、どうした!!星人か!!」

「・・・」

「人の形しててやりにくいのはわかるけど、こいつら星人なんだッ、ひき殺せ!!」

「うぁぁああ!!!」

ゴスッ
勢いよくぶつかり、回転しながら吹っ飛んでいく星人

「コータローさん!!マサヒコがッ!!」

「・・・目の前で同胞をやられて黙ってはいられない、こいつらは私に任せろ、お前達は上のやつらを、頼む。」
怒りの表情を浮かべるコータロー、部下達を先にいかせ、自分は後ろを振り向き、新井田たちの乗るバイクを睨みつけた

「・・・悪は許さない・・・皆殺しだ。」


コータローは両手を高々と上げ、ポーズをとると
「変、身ッッッ!!」
その掛け声とともに全身が光に包まれた


全身を覆う赤いタイツ、その姿は戦隊ものコスプレそのものだった

膨れ上がる筋肉、その溢れる力を抑えきれないかのように、全身が武者震を始める
「ふぅー、ふぅー・・・」
息を荒げながら、はるか遠方で暴走する黒いバイクに視点を定める
そして100m走のスタートのように体勢を沈める、一瞬地面にヒビが入ったかと思うと

次の間、爆音とともに地面を砕き、新井田たちめがけて尋常でないスピードのスタートをきった。


グチャッ、グチャ

「ふぅぅぅう!!!」雄たけびを上げる吾妻
新井田も人間の形をした星人を攻撃することへの抵抗も薄れ
今では、このバイクで敵をなぎ倒しながら駆け抜けることに爽快感を感じていた

・・・はじめはあの数で、どうなるかと思ったけど
今はもう、全然いけるようなきがしてきた!ハハッ、いけるぞ、いける!!!

運転にも慣れてきた新井田、地面を這い回る小さなベルトでさえも確実に踏み潰せるようになった

「吾妻ァ!!あとどれくらいだッ?」

「ああ、ちょっと待って・・・」
レーダーで確認する吾妻、半数近くは減ったものの、まだまだ数は多い
しかも、一度体をうしなった、ベルト星人が近くの民家に逃げ込み、その住人の体を奪って戻ってくる

確実に本体(ベルト)を狙わなければ被害は増える一方だ

「吾妻ァ!!ちゃんとベルト狙って撃てって!!」

「わかってるって、でもこんなに揺れてちゃ当てようにも狙いがさだんまんねぇーよ!!」
バイクの振動の中、苦戦しながらも確実に敵の数を減らしていく
しかし、新井田たちの後方からあの男が近づいてきていた

「なんだ・・・アレ・・・!!?
新井田ァ!!後ろから、変なヤツ来てる!!!なんか知らんけどヤバそうな感じが・・・」
振り向く新井田、そこにはすでに、全身を赤いコスチュームに包んだコータローの姿があった「吾妻ぁああ!!撃てェェ!!!」

「わかってる!!!さっきから撃ってるけどコイツきかねぇーんだよぉぉおお!!!」


ギョ――ン、ギョ――ン、ギョ――ン

確かに当たった箇所は肉が裂け血が流れている、しかし致命傷にはなっていない
ダメージを無視して突っ込んでくるコータローは、その程度の攻撃では止められなかった


銃を向ける吾妻に、コータローの硬い拳が振り下ろされる

スッ
それを簡単に避ける吾妻、もの凄いスピードのパンチだが彼にはハッキリと見えていた
さらにもう一発拳をふるう、しかし当たらない

「ハハァ、そんなトロイ攻撃当たらねんだよッ!!」

避けながら確実にこちらの攻撃をあてている吾妻
さすがに全身血まみれになったコータローには初めの勢いが失われていた

次第に距離を離されていく、ついに追うことをあきらめて、その場に立ち止まる
そしてベルトに右手をかざすコータロー、光がそこへ集まっていく

光が収まると彼の右手には銃のようなものが握られていた
一見オモチャにも見えるが、銃口が大砲のようにデカイ

それを構え、新井田たちに狙いを定める
「これで終わりだ・・・ファイヤ――!!!!」

掛け声とともに引き金を引くと、極太のビームが放たれた
赤い閃光が一直線につき抜ける、しかし新井田たちからは多少それて、地面に直撃


だが、その破壊力は凄まじく、恐ろしい爆音と爆風に車体が大きく揺らぐ
後ろに乗っていた吾妻は不運にもバイクから転落してしまった

「ああ、くそ~、なんつー威力だ・・・」

頭をふりながら上半身を起こす吾妻
そのときいきなり頭の上を何かがかすめた

「ん?」

横に転がる両断された死体、少し離れたところで白川が黒い刀を振り回していた
こちらに走って逃げてくるベルト星人

吾妻の姿が見えているのかいないのか白川はめいっぱい伸ばした刀を振り回す

ザンッ

真っ二つになる星人
「あ、あぶねぇ~、俺も殺す気かよ・・・」


そのとき、星人の下半身からゆっくりと這い出すベルト
そして、かるい放心状態の吾妻の腰に、巻きついた


「ウッ、あ、コレ、おいおい、ウソだろ・・・
ああッッ、ぐうぅぅ、ウ・・・ソだろ、俺、お、れ・・・」

震えながらその場にうずくまる吾妻


彼が次に顔を上げたとき、それは全くの別人となっていた。

No.43/ 交換条件。


五木が一人、新メンバー達に状況を説明するなか

ガンツにはターゲットとなる星人が映し出されていた。


「ベルト星人~?はぁ、これ人間じゃん」
ガンツの画面を見つめるながら言う吾妻
そんな彼に新井田が朝あったことを説明した

「ハッ、お前それで逃げてきたんかよッ!!」

頭をかいて申し訳無さそうな顔する新井田
「とにかく、結構強そうな感じだから、武器いっぱい持ったほういいよ」

「まぁ、そうだけど・・・あの山本って怖い人が使ってる刀みたいなのってなんなの?
玉ん中にもないのにどっからもってきたんだろ・・・」

「あ、そうえば、いつの間にか持ってるから・・・あの武器を取り出すところ見たことない・・・」
今までの山本のことを思い出しながら新井田は言う

「つまり・・・まだ俺らの知らない武器があるってことだろ・・・」

「確かに・・・そんなこと、今まで考えたことなかった・・・」
新井田はこの部屋にきて長いが、まだ知らないことが多い、というより知ろうともしていなかった
吾妻の言う通りまだ見たこともない武器が存在してもおかしくはない
「でも、そんなんどこにあるってんだよ?」

「だぁ~かぁ~ら、聞けばいいじゃん」

「誰に・・・」
大体予想はついているが一応聞いてみる新井田

「あの山本ってひとにだよ!」

無理だ、あの人が教えてくるわけがない
今までの山本を見てきた新井田にはそうとしか思えなかった

「まぁまぁ・・・わかないって、人は見かけによらないさ
実際、あの人の目の奥に優しさを感じる、ような気がする・・・」

・・・はぁ!?こいつなに言ってんだ!?
あの目が合っただけで殺されそうな山本が!?
なにを根拠にそんなこと言ってんだこのバカは・・・

「よしッ、俺ちょっと聞いてくるから」

あきれる新井田をよそに山本に声をかける吾妻

・・・たしかに、あの人が三島さんのお父さんを生き返してからは
おとなしくなった感じはした・・・でも、アイツは三島さんを殺したんだ
それなのに平然としてやがる、結局そうゆうやつなんだよ・・・


なにやら吾妻が渋い表情でこちらを見つめている
やっぱり無理に決まってるだろ、と思う新井田

しかし山本が新井田を指差して言った
「オイ、お前ちょっと来い」

しぶしぶ近づいていく新井田
「・・・なんだよ」

「フン、武器の場所を教えてやってもいい・・・
ただ、条件がある・・・、お前がガンツからもらった物をオレによこせ」


なにを言い出すかと思えば、山本は前回のミッションで新井田が
「ごほうび」としてもらった黒い鍵を渡すように言った


「・・・ああ、やるよ、こんな物」

「やけに素直だな・・・」
新井田の態度が気に入らなかったのか、表情が引きつる山本

・・・どうせオレには必要ないし、多分もう使わないから持ってても意味がない・・・
そう思いながら山本に鍵を手渡した

「よ、よし・・・じゃぁ、その刀のある場所、教えてくださいよ」
もう文句はないだろうと吾妻がすかざず話を進める

「ああ、教えてやる・・・」
言うと山本はガンツの左隣にあるドアを指差した
「あそこだ・・・、ガンツが開くとあそこも開くようになる・・・」


さっそくそのドアを開けようとする二人、すると・・・

「うわぁぁあ!!」
新メンバーのわめき声が鳴り響く、どうやら転送が始まったようだ

それを見て慌ててスーツを着させようとする五木
山本は三島を再生し戦闘に備える


「新井田ァ!やばい、もう転送始まってる・・・早く中はいれって」
吾妻に急かされ、ドアを開ける

カチャッ

「うわぁ~、何だこれ・・・」
その部屋の中には不思議な形をした乗り物が数台と山本がいつも使っている刀が床に転がっていた

「へ~、こんなところがあったんだぁ」いきなり白川が部屋に入ってきた
彼女はやはり、普段とは別な人格の白川のままであった

そんな彼女に声をかけられずに、ただ黙って見つめることしかできない新井田

白川は床に転がる刀を拾うと転送されていった

「オイィ!!新井田なにボケッとしてんだよ、俺らも転送されるぞ・・・って、ああ!!
ヤバッ、きちゃった俺・・・新井田、とにかくお前この変なバイクみたいなヤツたのッ・・・」
転送されていく吾妻は慌てて新井田に、部屋にある乗り物を持ってくるように頼んだ


「・・・なんだこれ、バイクなのか?」

その乗り物は、黒い車体に、巨大な車輪の中に人が乗れるような形をしている
新井田はそれにまたがると転送がはじまり、妙な形のバイクとともに消えていった。