No.22/ 高揚。
バンッッッ
新井田に突きつけていた大刀とそれを握っていた右腕がバラバラに弾け飛ぶ
その拍子に地面に落ちた新井田
ビチャ、ビチャと身体に飛び散る星人の赤黒い血、そのショックのあまり遭えなく失神
悲痛の声をあげる星人
それを見た白川が笑みを浮かべながら
「・・・やったぁ・・・」
普段の彼女からは滅多に出る言葉ではない、しかもこの状況ならなおさらだ
しかし、今彼女は心のそこからそう思っていた。
血が湧き出る右手を押さえながら失神した新井田を睨みつける星人
星人が自分に気づいていないとわかると
ゆっくりと白川は歩き出した
星人の真後ろまで近づくと、左拳を振り上げる
見る見る膨らんでいく筋肉
そして思い切り星人の背中を殴る
「ふっっ!!!」
ズッッ
白川の拳から肘あたりまでが背中に突き刺さる
咽びながら血を吐く星人
そして今度は左足を振り上げローキック
ボキッッ
足の骨が折れ、バランスを崩す
しかし突き刺さった左腕で倒れそうな星人の身体を支え
まるでスーツの力を試すようにもう一度ローキック
ズキャッッ
星人の足が両断され
その痛みに天を仰ぎ声をあげる
まだまだ終わりじゃないと言わんばかりに星人へ打撃をあたえ続ける白川
「はぁ、はっ、あはっ、すごい・・・」
そして声をあげる気力もなくなった星人の巨体を持ち上げ、血で染まった地面に叩きつけた
それでもまだかろうじて息がある
そんな虫の息の星人に対して、容赦なく左足を振り上げ
顔面めがけてドドメの一撃を食らわす
「・・・ふっ、これで・・・おわっ、り!!!」
グチャッッッ
つま先が鼻骨を砕き、口から上をえぐり飛ばした
「はぁ、・・・あはっ・・・ふふっ・・・」
頬を赤らめ満面の笑みが顔中に広がる
しかし白川の目は笑ってはいなかった、
次第に笑顔が歪んでいき、ついにはその場で泣き崩れてしまった
「ううっ・・・」
星人の死体のすぐ脇で失神していた新井田が目を覚ます
「あれ?・・・ん!?」
「う、うわっっう!!!!っっだコレ!!?・・・」
星人の無惨な死体に驚き、嘔吐寸前の新井田
「あっれ、オレ・・・助かった?・・・なんで・・・星人が・・・」
そのとき真っ先に目についたのが白川だった
・・・あ、白川さんじゃん、こんなとこに・・・ん?・・・まさか、これっ・・・なわけないか・・・
いやいやっ、ちょっ、待てよ・・・確か、このコ前・・・点数とってたよな・・・
新井田は気になり、これは誰がやったんだ、と白川に尋ねる
しかしただすすり泣くだけで、返事は返ってこない
「・・・あ~・・・まあ、星人に見つかるとわるいから・・・とりあえずどっか隠れようよ・・・」
「・・・う・・ん・・・」
新井田が促すと力なく返事をして立ち上がる白川
そして二人は近くの廃屋に身を落ち着かせた
「・・・ねぇ、白川さんアレもってるよね?」
「・・・・・・」
「あの~、ほらアレだよ、オレの渡した消えるの・・・」
「・・・これ?」
白川はレーダーを新井田に差し出す
「ああ、それそれ!・・・これで・・・たしか星人の位置がわかるはず・・・」
カチカチといじるうちにレーダーの液晶画面にそれらしいものが表示される
・・・これか?・・・これって・・・三島さんとかがいた場所っぽくない!?
ってことはここにいれば安全・・・だけど、西村はどうなったかな・・・アイツ・・・ここに行ったんだよな?
・・・どうする?・・・オレも行く・・・か?
その時、隣にいた白川の身体が下半身だけになっており、徐々に消えていく
「うぁああっっ!!?・・・あっ!これって・・・もしかして、終わった?」
どうやら星人が全て倒され、部屋への転送がはじまったようだ。
No.21/ 二人二脚。
そのころ白川と高木は古い廃屋の中に身を潜めていた
白川は壁によりかかり黙って時が過ぎるのを待つ
そこから少し離れた所に高木がうずくまって泣いている
「ううぅっ・・ああ・・・くそっ・・・なんでっ・・・
・・・なんでチエが殺されなきゃっ・・・いけないん・・・だよぉぉ・・」
それを見かねて白川はその場を離れる
「・・・ふう、・・・」深いため息をつく白川
「ガンツ」の部屋に来てから、幾人もの人の死を目の当たりにしてきたが
白川がそれに慣れるということは無かった。
今、彼女はどうしようもなく気分が悪い。
人の死、そしてそれを悲しむ人の姿
それが嘘のことだ、と無意識に言い聞かせている自分にイラだっていた。
そんなイラだちを誤魔化すかのように、今の自分に出来ることを考える白川
・・・またなにも、なにもしなかったら・・・また私がしんじゃうんだ・・・
だから、今は自分のことは、自分でしないと・・・
レーダーで星人の位置を確認する
・・・!!
・・・近い、近くに・・・いる!?
右足のホルスターに収められている銃に手をかけ
真っ直ぐ星人のいる方向を見据える
街灯からも離れたこの場所では視界が悪いが、二つの影が確かに見える
一つはそれほど大きくは無く、ウロウロしながら歩き
その後ろに距離をおいて大きな影がのっそりと近づいてくる
・・・はぁ、ふ・・・怖い・・・
イヤ、ここにいたくない・・・逃げたい・・・
・・・でも・・・また、この前みたいに・・・
あまりの恐怖に、混乱しそうな白川
足が振るえ、涙が流れる
それでも必死に銃を握り、視線を前に向けようとする
そして白川まで20メートルくらいまで近づいてきた小さい方の影が、
何かブツブツ言っているのが聞こえた
「・・・あれ~・・・どうしよ・・・なんで白川さんとか居ないんだ・・・
やばいってこれ・・・・、どうしよ・・・」
まぎれもなく人間の声である
そしてその声の主は新井田だった
・・・・あ、あの人・・・・にいだ、って人・・・星人じゃない・・・
安心してその場にしゃがみこむ白川
だが、それもつかの間、新井田の後ろに居た
大きな影こそが星人だと気づく
次の瞬間には新井田のすぐ後ろまで迫っている子連れ星人(親)
しかし新井田はそれに全く気づいてない様子である
ガシッ
星人が新井田をわしづかみにする
「はっ!えっ!?ちょっ、なに・・・オイィィ!!??」
新井田は自分の今ある状況に気づくと
体中から血の気が引き、声を出すことさえできなかった
「お前ぇぇ、だ・・い・・・ごろ・・・・・こ・・・したのに
にでるぅぅ・・・お・ま・え・・・がぁ?」
新井田は失神寸前の状態なので星人の質問に答えることはできなかった
その状況を見ていた白川はその場を逃げ出しそうになっていた
・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・わたし・・・
・・・うっ・・・うてば・・・撃とうよ・・・できるって私なら・・・
・・・前、みたいに・・・
銃を構え、目つきが変わる白川
そしてゆっくり引き金を引く
ギョ―――ン
No.20/ 自己中。
散乱した星人の肉片を踏み潰しながら歩いてくる山本
こっちに向かってくる山本を見て、新井田は先の戦いを思い出す
・・・すげー・・・なんだこの人、あんなに強い星人を・・・一人で・・・
心臓の鼓動が未だに高鳴っている
「おい・・・」
山本が声をかけられる新井田だが
自分が何をしに来たのかすっかり忘れ、近づいてくる山本を見つめる
「おいっ!んだよお前・・・ジロジロ人のこと見るんじゃねぇーよ気持ちワリィ・・・」
「!!!・・・あっ・・・すいませんっ・・・
あ~っと、えっと、ああっ!!・・・・」
目的を思い出した新井田だったが、
・・・・ふう・・・1,2回しか話したことのないってのに
・・・・いきなりこんなこと頼むのもなぁ・・・なんか気まずい・・・
そしてしばらく沈黙する、やめようと思うもここまできて後には引けない新井田、なんとか用件を話す
「・・・なんていうか・・・助けて欲しい・・・です・・・
その・・・三島さんたちを・・・お願いします・・・」
「・・・はぁ?」
山本が渋い表情をし答える
「オレが三島を・・・か・・・」
「はいっ・・・おねがいします・・・」
「・・・はぁ・・・」
ため息をつきながらレーダーを取り出し、時間と星人の数を確認する山本
「ダメだな・・・」
「えっ・・・」
「そんなっ、お願いします!」
「まだ時間はあるが、星人が結構のこってんだよ」
「ソレを全部オレが殺す、アイツを助けるなんて時間の無駄だ」そう言うと山本の仲間二人が後方から歩いてくる
「おいっ!邪魔すんじゃねぇーよ、お前ら・・・こそこそ人の獲物、横取りしやがって・・・」山本が叱咤する
「すみません・・・いや・・・つい、山本さんが危なかったもんで・・・撃っちゃったみたいな・・・」
仲間の一人、柏木 鉄次がニヤニヤしながら謝る
柏木は背も高くなく、身体も細い、もう一人の仲間の須藤とは対照的であり
ニヤついた顔からは強い悪意が感じられる
「後、残ってる星人は全部オレがやる、また邪魔したらお前、わかってんだろーな・・・」
「はいっ、はいっ、わ~ってますって、山本さん・・・」慌てながらもヘラヘラしている柏木
「ちっ・・・」舌打ちをする山本、それから新井田の方に振り向く
「まぁ、そうゆうことだ、星人はオレが全部殺してやるから、お前等は何もしなくていい」
「それと・・・三島のヤツが死ぬところが見れないのは残念だな・・・
あいつがさぁ、どんな顔で死んでたか・・・後で教えてくれよ・・・」
嫌味ったらしく言い放ちその場を後にする山本たち
・・・なんだこの人、なんかムカつくなぁ~・・・
・・・・っていうか・・・・行っちゃったし・・・
結局断られて、どうすんだよ?
・・・オレってマジで役立たずだな・・・・・これからどうしよ・・・・・
一人途方にくれる新井田
山本たちの後姿をただ見つめる
・・・ホントにどうする?・・・まず一人でいるのって相当危険だよな!
戻るか、三島さんのとこ・・・西村のことも、心配だし・・・
・・・あっ!・・・そういえば、白川さん大丈夫かなぁ?
そうだよ・・・いくら隠れてるからって、女の子一人で大丈夫なわけねぇよな!
・・・よし、行こっ、白川さんとこ・・・うん、それがいい!
そう決めるや否や、新井田は急いでもと来た道を戻っていった
No.19/ イデア。
「はぁ、はぁっ」山本を探すため一人走る新井田
何処にいるのかも解らずに、当てもなくさ迷う
「・・・あいつ、何処にいるんだよ・・・」
・・・良く考えたら、今のオレってかなり危険じゃないか!?
レーダーないから・・・星人がどっから出てくるか解んないし・・・
一応・・・武器はもってるけど、こんなデカイ銃使えんのか・・・オレ・・・
「うっ・・・」
なんか・・・いる・・・なんだ?・・・星、人?
20メートルほど離れたところに、家の屋根に軽々と上っていく影が見えた
・・・どうする、まだ、気づかれて・・・ないよな・・・
よし!・・・今のうちにっ・・・逃げよう、逃げっ・・・ん!!?
外套に照らされるその影をよくみれば、人間であることが解った
・・・はっ・・なんだ良かった、・・・もしかして山本かもっ!
近づくうちにその人は屋根の上で、新井田が持っているのと同じ、ライフル型の銃を構えているのが解った
・・・あれ、山本じゃない・・・山本といっつも一緒にいる奴!!
まぁ、この際誰でもかまわねぇ・・・
・・・ん、それにしても何してんだこの人・・・?
そこにいたのは山本の仲間の一人、須藤 義人だった
須藤は何かを狙うような、真剣な顔をして引き金に指を掛けた
ギョ―ン・・・・ギョ―ン
銃口から放たれる光を見つめる新井田
星人も、いないのに・・・何に撃ってんだよ?・・・ま、いいか・・・よしっ!
「あっ・・・あの―すみませんっ!!」新井田の声に気づき、振り向く須藤
「あの・・・えーっと・・・三島さんたちを助けて欲しいんですけどっ・・・」
「は・・・?」
少し考え込んだ須藤が屋根の上からおりた
「・・・そういうことは、山本に聞け・・・」
巨漢の須藤を目の前にして新井田は、愛想笑いをしながら尋ねる
「じゃあ・・・山本さんはどこに・・・」
すると須藤は、新井田の胴体ほどもあろうかという腕を持ち上げ、山本のいる方向を指差した
「あ・・・あっちですか・・・」
新井田は逃げるように須藤のもとから走り去った
・・・なんだアイツ、すっげぇ強そう・・・ヤクザかあの顔は・・・
・・・ん?あれ・・・山本か?・・・BR>
それは山本はいるにはいたが、子連れ星人(親)と戦っている
「ああっ!!!」
・・・なんっ・・・で、山本がいたと思ったら・・・星人も一緒にいんだよぉ・・・
くそっ、とりあえずどっかに隠れないと・・・
ダイゴロっっ!!!ダイゴロっっ!!!
叫びながらものすごい勢いで襲い掛かる星人
それに怯まずに、右手に握られている黒い刀を構える山本
ガキィィィイン!!
星人の巨大な刀での斬撃を自分の刀で受け止める山本
その驚異的な怪力によって地面が割れ、足がめり込む
「・・・くっ、コイツ強ぇえ・・・」山本は眉間にしわを寄せながらつぶやく
さらに力任せに大刀を振り下ろす星人
ガッッ!!ガッッ!!
刀からは火花が散り、さらに地面にめり込んでいく山本
しかしワンパターンな星人の斬撃を見切り、それを受け流す
ドウン!!!
受け流された攻撃は地面を砕く、その一瞬のスキに山本は思い切り地面を踏み込む
ミキミキ・・・
足の筋肉がスーツの力で盛りあがった
ダンッ!!
その力でもの凄い高さに飛び上がる山本
バンッ、ババンッ!!!
いきなり破裂した星人、その残骸の上に着地する山本
「ちっ・・・あいつら余計なこと・・」
ソレを物陰に隠れ、見ていた新井田は、今までにないほどに興奮を覚えた。
・・・やっぱり・・・あの人スッゲ・・・
No.18/ 差。
「ホントに大丈夫かな・・・三島さんと谷口さん・・・」西村が心配そうに後ろを振り返る
「・・・っていうか、なんか安全な所ってないの?」
今、新井田たちはスーツを着ていない高木 文也を連れ、隠れられる場所を探していた
「ん・・・とにかく、星人からできるだけ離れようよ」
「おいっっ!!何なんだよ、どーなってんだよっ!?」
高木は西村たちに着いてくるもののパニックに陥り
「・・・あの、宇宙人を全部倒せば帰れるからっ・・・」
「はぁっ?何言ってんだよっ!!死んでんだぞ!?人がっっ!!」
聞く耳を持たず、ずっとこの調子でわめいている
「そろそろいいかな、エリア内ギリギリだから、出ないように気をつけて」
ピンポロ、パンポン・・・
「ん?なにこの音?」
「だから、この音が警告音っていうか、危険信号みたいな・・・
とにかくっ、コレが聞こえてきたら、音のしない方に行かないと・・・」西村の話を聞いていて大体予想がついた
「もし出たら・・・死ぬ・・・?」
「・・・うん」
「それより、三島さんたち助けに行かないとっ!!」
「だから・・・」西村は新井田の顔を見て何か言おうとする
・・・マジで戻るのか・・・あんなヤツ勝てないって、もう二人とも・・・死んでるかもしれないし・・・
ん?・・・なんかオレのこと見てないか!?
なんだよその目は・・・もちろん一人で行くんだよな・・・オレは絶対行かないからな~
今回は何もしなくていいと思っていた新井田は、西村の視線に動揺する
「・・・だから、白川さんはここでその人と一緒に隠れてて」
西村はそう言うと高木に近づいて、自分の持っていたレーダーを渡した
「ああっ!?なんだよコレ?」
西村が高木の姿を消す
「ここで、じっとしててください・・・そうすれば、帰れますから・・・」
「白川さんはレーダーの使い方って、わかる?」
「え?・・・私それ・・・持ってない・・・」
「えっっ??」
「あっ、じゃあ・・・新井田くんは、もってるよね・・・」
「は?」
・・・おいっ!!もしかしてオレのを貸してやれってこと?
・・・ってオレってすでに西村と一緒に行くことになってる!?
「も、持ってるけど・・・」
「白川さんに貸してあげられない?」白川に目をやる新井田、目が合う二人
・・・うっ・・・そんな風に見られたら、断れるわけないじゃん
ここで断ったら最低だなオレ・・・
でもっ、もし、オレがコレを貸して・・・さらに星人を倒しに行くなんていったら
死ぬだろ!!・・・透明なしじゃ、そっこー見つかって真っ二つ・・・
それはぜっっつたいに、いやだぁぁあ・・・
「・・・別にいいよ、私は・・・この服着てるし」白川が静かにつぶやく
・・・ううっ・・・なんて、なさけないんだオレは・・・女の子に気を使われるなんて・・・
男として・・・あ~もう人間として失格だ・・・
「・・・わかった、いいよ、コレ貸すよ・・・そのかわり・・・星人と戦うのは、勘弁してください」
「え?・・・」
「だ、だってさ、オレらが行っても足手まといっていうか・・・その、そうだ!
あの山本って人に助けてもらえば・・・あの人なら、あの星人にも勝てると思うし」
西村が無表情のまま新井田を見つめる
「・・・うん、そうかもね・・・でもボクは、一人でも大丈夫だから、新井田くんは山本さんたちを探して」
「あ、何言ってんだよ?マジで一人で行く気かよ!!?止めろってっ、自分で死にに行くようなもんだって!!」
「大丈夫だから」
まっすぐ新井田に向けられた西村の眼差しから、強い意志を感じた
「でもっ、行ったってやられるかもしれないのに・・・」
「・・・・・・じゃあ、一緒に来てくれる?・・・」
「・・・・ぅ、あ・・
・・・ごめん・・・」
一人走る新井田は、後ろめたい気持ちで押しつぶされそうだった
・・・アイツ大丈夫だよな・・・くっそ、くそ、・・・後味悪すぎ・・・
・・・・・バカだオレ・・・
No.17/ 弓手欠落。
プシ―――ッ
谷口の腕から血が流れ出る
「ああぁあっっ!!?」
ソレを見た三島はすかさず銃を構えるが
利き腕の右手が折れたため、左腕で星人を狙う
その間にも星人はさらに追い討ちをかけようと、刀を大きく振りかぶった
星人に向け二つある引き金を同時に引く
ギョ―――ン・・・
銃口からは光が放たれ、星人に命中した
しかしこの銃は例え命中しても、その効果が現れるまでは数秒の時間がかかる――
そのため、谷口に向かって振り回された大刀は止まらない
ビュオゥゥウウッ
バンッッ!!!!
星人の下半身が吹き飛ぶ
バランスを崩した星人だが、無理やり刀を振りぬく
ドゴッッ
バランスを崩したことで刀の腹での打撃になり、即死は免れた
そんな無理な体勢からでの攻撃だが、谷口は5メートル以上身体を飛ばされた
あばら骨が砕け、口から血が流れ、瀕死の状態だが一命は取り留めた
そして星人はその場に倒れこみ、うなり声を上げる
三島は急いで谷口のもとへ駆け寄った
「生きてるかッッ!!?」
「あ・・・はぁ、・・・ごめ、ん」今にも消えそうな声で答える谷口
「大丈夫だからッッ!!!絶対、助ける・・・から・・・」
三島は谷口の止血をしながら、声をかける
仲間の瀕死の姿を目前にして三島は震えがとまらなかった
ズザザザッ・・・
何かが引きずられるような音に、気づいた三島は音のする方を向く
「!!!」
下半身が吹き飛んだはずの星人が地面を這って、こちらに向かってくる
「あ・・・あいつ、まだ生きてたのか!?」
「ゆっ・・・ゆる、さぬ・・・」
「くそっ・・・」
三島はすぐに谷口から離れ、星人の注意を引く
星人の動きは鈍くなっていく、それでも三島を追う
そして三島は銃を構える
ギョ――ン・・・
銃の効果で数秒後には弾け飛ぶであろう星人は
それでも向かってくる
そして思い切り大刀を振り回し、雄たけびを上げながら三島めがけて投げつけようとしている
「ヂャァァァアアアンッッッ!!!!」
バンッッ!!!
次の瞬間、星人は粉々に吹き飛ぶ、大刀は虚しく地面に突き刺さる
「はぁ・・・はぁ・・・
終わった・・・谷口さん、終わったよ」そう言うと、谷口の近くに座り込む
「あっ、そういえば他の皆は?・・・ああ、無理しなくてもいいよ」
「・・・うん・・・西村くんたちは・・・あの、男の人・・・を助けに・・・」
大分落ち着いた様子の谷口
「そっか・・・転送も始まんないし、多分まだ星人が残ってる・・・
・・・でも、俺はここにいるから、谷口さんのこと守るから、あとは皆に任せればいい」
「ご、めん・・・私・・・」
!!?
なにかに気づく三島、遠くの方に巨大な人影が、それも四方八方に
「やっばい、やばい・・・」
No.16/ 峰打ち。
高木 文也、23歳、フリーター
彼女と共に部屋に来たものの、山本に彼女を殺されてしまう
その怒りのあまり、星人を殺してしまった。
しかし今、この状況の中
自分のした事の重大さを、高木は理解し始める
ドチャッ
空中に舞っていた二人の上半身が地面にたたきつけられる
しかしソレを見るものは誰もいない、
今は,目の前にいる巨大な刀を振り上げた大男が
まさに自分達の命を奪おうとする
その姿に、目が釘付けになる。
「だ、だい・・・ごろ・・・
ぬ、・・・か・・・
ぬしらか、・・・わが子の、い・・・
命、を・・・ゆるさ、ぬ。」
怒りに震える低い声にはもの凄い威圧感があった
高木は足元に転がる星人の死体から離れ
三島に指を差し、何か言い出す
「こ・・・こいつ、こいつがやったんだ!・・・
・・・オレはっ、関係ないっ・・・」
この状況で良くこんなことが言えるものだ、と高木は一人感心した
「ぬ、ぬしも・・・か、ゆる・・・さぬ・・・
楽に、死ねると・・・お、もうな・・・」
バゴッッッ!!!
次の瞬間、天高く振り上げられていた刀が、一気に地面を割る
三島は身体を少しずらし、直撃は免れた
「くっ、でかいくせにっ・・・はや、い!!!」
砕かれた地面から巻き上がる砂ぼこり
ヒョウッッ――
砂ぼこりを切り裂き、さらに大刀が三島を襲う
ガツッ!!!
「あぁあっ!!!」
刀が二の腕にめり込む、と同時に三島の足が地面から離れ
勢いよく回転した体が吹き飛ばされる
ドスンッ
三島が地面に叩きつけられる
「おいっ、ヤバイって!!!」
「あいつボスか、子連れ星人の!!?」
新井田が慌てて西村の腕を引っ張りながら言う
「ちょっ、落ち着いてって!!
まず、助けないと、三島さん助けないとっ!!!」
「お前が落ち着けって、見ろよっ!!アレ、う・・・腕、おかしくないか!!?」
倒れている三島の、腕が変な方向に曲がった姿を新井田が指差す
「うあっ!!折れてるっ??ス、スーツ着てるのに・・・」
星人の危険性を認識し、黙り込む新井田たち
「・・・わ、わたしが、いくよ」谷口が沈黙を破る
新井田の記憶には谷口のことはほとんど残ってない
あるとすれば、はずかしがり星人の時にいつの間にかやられてた記憶だけ
外見は大人の女性と言う感じで、頼りになるかどうか、それだけでは判断できなかった
「わたしが、三島くんを助けるから・・・キミ達は、あの男の人を助けてあげて」
「わかった、よし、いこっ」新井田はそういうと、西村と白川を引っ張り連れて行った
・・・頼まれたってあんなヤツと戦えるかよ、今回はさっさとあの人助けて
あとは、他の人達に任せればいい・・・
・・・何とか、なるだろ・・・
「はぁ、はぁ、いっってぇぇ・・・生きて、る・・・」
三島は身体を起こし、腕が折れていることに気づく
負傷した三島に近づいてくる子連れ星人
「い、いまのは峰打ちだ、いったはづだ・・・ら、くには殺さない」
またその巨大な刀を振り上げる
「うっわ!」慌ててその場から横に飛んだ
ズンッッ
紙一重で交わす三島、身体にビシビシと砕けた石や砂が当たる
そこへさらにもう一撃、連続で刀を振り下ろす
ヒュン、ズドッ!!!ヒュン、ズン!!!
砂ぼこりが舞い、視界が悪くなったのか、星人の攻撃はあたらず
空をきり、地面をさらに砕いていく。
「三島くんッッ!!!」谷口がライフル型の銃を両手で持ち、星人に銃口を向ける
ギョ―― ン
ギョ―― ン
闇雲に引き金を引く
「三島くんッッ!はやく、逃げて!!!」
ドンッッ!!ドンッ!!
星人ではなく地面が爆発する
「谷口さん・・・逃げろ、こいつ・・・ヤバイ」
ズオァッッ
もの凄い勢いで谷口の目の前に星人が現れる
と同時に――
スパッッ!!!
「えっ?」
ボトッ
地面に何かが落ちる
「何、こ・・・れ」
「あれ、ない、私の腕・・・」
地面にある物は谷口の腕だった。
No.15/ 迷子。
山本 敦也、20歳、大学生
幼少の頃、母を亡くす、父は政治家であり比較的裕福な生活を送る
しかし父は気性が荒く、虐待を受ける それに耐えられず自殺 そしてこの部屋に来ることになった。
そして今、鮮血を浴びた山本が部屋の中に無表情で立ち尽くす
「おおぅうっ、ひひィィイ!!?」 それを目の前にして、絶叫する面々
「ひぃぃいっ、た・・・っすけて・・・やめって、くれぇ」 危うく殺されるところだった金持ちのオヤジが、血で真っ赤になった顔を歪ませて命乞いをする
「うるせぇんだよ・・・少し黙れ」 オヤジを睨みつけ、銃を突きつける
「ひいッ!!やめッッ、やめぇっっ!!!」
バッ!
「あっ!?なんだよ三島?」 三島が山本の両手を握り締める
「・・・・やめろ」
「・・・!!?・・・なにお前、なに泣いてんだよ?」 今にも泣き出しそうな三島 二人がもめているうちに、コソコソとその場から逃げるオヤジこの期に及んで玄関のドアを開けようとする
しかし、開かないと言うより触ることすら出来ない
「くそっ、どうなってる!!こんな・・・こんな所にっあんな、狂った連中と一緒に閉じ込めおって・・・この私を・・・」 と、そのとき急に目の前の景色が変わった
「こっ!!!?・・・外?」
「はっ、はは・・・夢か、そうだ夢に決まってる」
「私が死ぬなんてタダの悪い夢だ、今日は少し疲れていたから・・・」
「!!!?」 オヤジは自分の目を疑う、自分の目の前にいきなり人間が現れてくる しかもそれは山本だった
山本に睨まれオヤジは全身の血の気が引く
バゴッッ!!!
いきなり山本に殴られ、オヤジの身体は宙を舞う オヤジの歯が何本か抜け、口から血を流しそのまま動かなくなった
次々と転送される面々 「おぁ!!?外じゃん、帰れるっ!!」
「何処だよここ?公園?」 新しく部屋に来た――
殺された女と金持ちのオヤジを除く
――4人が騒ぐ 「はっ、さっきのは夢だよな・・・」 山本に撃たれ、死んだ女の彼氏の男がつぶやく
「ありえねって、チエが死んだわけねって・・・夢だ夢っ!」
「ん?・・・」 男は何かに足を引っ張られる感覚がした
そして自分の足元を見ると、そこには妙な子供が男のズボンを引っ張っている。
その子供は前掛けをして、頭の先に髪の毛を結った、今の時代ではありえない姿だった
「こいつ、って・・・」 男は思い出す、あの部屋で、黒い玉に映っていた、子連れ星人をそれと同時に、部屋で起こったことが夢ではないと確信する。
「チャ―ン」 子連れ星人が意味不明な言葉を発する
「チ・・・エ・・・うっ・・・あぁぁぁあっ!!」
ドゴッ!!
子連れ星人を思いっきり踏みつけた彼女を殺された怒りをぶつけるかの如く星人をいたぶる
それに気づく他三人
「何やってんだ・・・!!?」 三人のうちの一人の長身の青年がそれを見て驚く
「うっ、コレってあの・・・何とか星人!?」 「ちょっと酷くない・・・」 同じく、メガネをかけた男と太った男が恐る恐る覗き込む
「ホントに宇宙人なの?・・・ヤバイって」 そんな周りの声にイラついた男が叫ぶ
「何見てんだ!!てめぇら消えろっ!!!」 そう言い放つと思いっきり星人を踏みつける
グチャッッ!!!
思い切り腹を踏まれ、口から黄色い液体を吐き出す子連れ星人 さらに足を上げ、止めの一撃を食らわそうとした
ヂャ―――ン
最後の力を振り絞り、声を上げる子連れ星人
そのとき新井田や三島たちも転送され、子連れ星人の叫び声に気づく
「おいっ、どうしたっ!!?」 三島が走る そこにはグッタリした子連れ星人の姿があった
「こ、殺したのか・・・」 「あんだけやりゃ、死ぬだろ・・・っていうかホントに宇宙人?これって?」 太った男が興奮気味に言う。
カラカラカラ・・・・
何かが転がる音が近づいてくる、しかし誰も気づかない
ガラガラッッ!!
流石に今の音に気づき、音のしたほうを振り向く
「なんだ・・・」 「なに、何の音?」 そこには木製の乳母車が倒れていた
「うしろっ・・・」 「うしろぉぉお!!!」 三島たちから少し離れた所にいた新井田や西村が叫ぶ
「?・・・」
ザンッッッ!!
「あっっ????」 「ああっ!!・・・おいっっ!!!」 三島の隣にいた太った男、そしてその隣のメガネの、上半身が宙を舞う
「くっそっ!!!早く、に、っげろ!!!!」
そこにいたのは、前頭部にマゲを結い、全身に黒い布をまとった、大男だった
そして2メートル近くある刀を、思いきり振りかぶっていた。
No.14/ 人ニ非ス゛。
「こ・・・殺した・・・!?」
「まさか自分を・・・」
新井田と西村を冷淡な山本の目が見つめる
全く動かないその瞳に、嘘は感じられない。
新井田は山本を良くは思っていなかったしかし今は、嫌悪感を心のそこから感じる。
「お前さぁ、自分と同じ人間がいたらどう思う?」
「・・・・」
「まぁ、オレだったら、まず偽者だと思うな・・・そんな偽者に自分の生活を奪われて、黙ってられるわけねぇよなぁ」
「・・・うっ・・」
・・・確かに、コイツの言ってること・・・わかるけどっ・・・
だからって、ふつう殺せるか!?
でも・・・
「ちょっ!・・・まって・・・」西村が話を中断した
そして新井田の腕を引っ張り、小声で話す
「ねぇ!この人、ヤバイって・・・」
「ん・・・あぅ・・・」新井田は、ふと我に返った
「オレ、・・・いくら何でも、殺すなんて・・・できない、って・・・」
「はぁ、だらしねぇな、・・・まぁ、仕方ねぇか・・・」頭をかきながら山本は言った
「おおおぁ!!?」
「なんだコレッッ??どうなってんだ!!」見たこともない男が叫ぶ、どうやら新しくこの部屋に来た者らしい
「ちっ、うっせーのが来たなぁ・・・」顔をしかめ新井田を見る山本
「早く、三島さんたち来たからっ」西村が新井田を引っ張る
「おいっ、殺すか殺さないかは、お前の勝手だ・・・
・・・けどよぉ・・・もしヤル気になったら、いつでも手伝ってやるよ・・・」
「そいつがいる限り・・・お前は本物になれないんだからなぁ・・・」
西村に連れられて新井田は三島たちの方へ行く
すでに三島、谷口、白川がいた
「山本と・・・なんかあったのか?」三島が尋ねる
「いや、それが・・・」西村が事情を軽く説明した
「同じ人間が二人・・・山本から少しは聞いてるけど、実はオレも良く知らないんだ・・・」
「そうですか・・・」
「それよりっ、あの山本って人・・・何なんですか!?」西村は小声で言う
「アイツは、前まであんなじゃなかったけど・・・こんな所にいたら、ああなっても仕方ない・・・」
「・・・・」
・・・こんなトコにいたら、オレもアイツみたいになるのか?
簡単に殺したり・・・あんなの、人間じゃねぇよ・・・
しばらくして、またあの歌が流れる
あ―た―らし―い―あ―・・・・
初めてここに来た者は今まで落ち着きがなかったが
いきなり鳴り響くラジオ体操の歌に驚き、動きを止めた。
そして前回と同じく、黒い玉に言葉が浮かび上がる
てめえ達の命は、
無くなりました。
新しい命を
どう使おうと
私の勝手です。
という理屈なわけだす。
「意味わかんねっ・・・」
「はぁ~?・・・」当然この状況が理解できないず、また騒ぎ出す
さらに黒い玉が別の画像を映し出す。
「何コレ?」
「こ・・・子連れ・・・星人??」
てめえ達は今から
この方をヤッつけに行って下ちい
子連れ星人
特徴
子供っぽい 子持ち
好きなもの
子供
口ぐせ
チャーン チャーン
「何コレ?テレビかな~」
「カメラなんてねぇじゃん」また騒ぎ出す
頃合いを見計らって三島が立ち上がった
「おい、ここに来たのが初めての人、ちょっと聞いてくれっ」新人達は三島に注目した
そして三島が前回のように状況を説明する
「ばかばかしい、なぜ私がこんなくだらないことをしなきゃならんのだ!!?」
話は聞いたものの信じられる訳もなく、さらにギャーギャー騒ぐ面々
そして、その中の一人が三島に突っかかってきた
「なんなんだお前は!!」
「私はこの後、大事な会議があるんだっ!早く帰らせろっ!!」見るからに金持ちのオヤジが声を荒げる
「そうだ、んなもんお前等だけでやってりゃいいだろーがよ!!」それに続いて叫ぶガラの悪いカップル
新井田は困っている三島を見て思った
・・・いっつもこうなってんじゃ、大変だなあの人も・・・ほっとけばいいのに・・・
そのとき、立ち上がる山本の姿が目に入った
・・・!!、おい、まさかっ・・・あいつ
山本の手には銃が握られている
また殺そうとしていることがわかった、しかし新井田はただ見ているだけだった
「三島ぁ、いっつも大変だなぁ」そういうと金持ちのオヤジに銃を突きつける
「なっ、なんだ貴様ぁ!!」
「うっせーよ、死んでろ」
「山・・・もっ・・・!!!・・・ヤメロォォオオ」
バシッ
三島が山本の腕を払う
ギョ―ン
なんとかオヤジから狙いをはずした
「なんだよ・・・邪魔すんなよ・・・」
バンッ
その音とともにオヤジの後ろに立っていたガラの悪いカップルの、女の頭が爆発した。
「はっ・・・結局、当たってんじゃん」
No.13/ 同性生活。
家族が囲むベッドにいた自分そっくりな人間を目の当たりにしたが、
新井田にはその光景を信じることができなかった
他人の空似、生き別れの双子の兄弟、考えうる全てを想像する新井田
「ショウ!・・・ほんっとに心配かけて・・・なんでこんなこと」新井田(父)が心配して言った
「学校の屋上で・・・・・・偶然、手切っちゃって・・・・」
もう一人の新井田 生が説明していることは、新井田があの部屋に来る前、学校の屋上で起きた事故と全く同じであった
いきなり新井田は、気が動転したのかベッドにいるもう一人の自分に近づき両手で顔に触ったり、引っ張ったりした
不思議がるもう一人の自分の顔はまるで鏡でも見ているかのようであった
・・・なん・・・だよコイツ、オ・・・レじゃん・・・
新井田は確信した、それが自分だと。
頭の中は真っ白だった、しかしあの部屋での経験と、今の状況、自分が現実からかけ離れた世界に来てしまったことを再認識した
そして新井田はその場を後にする。
それから夜が開け、眠りについていた新井田は目が覚めた
ベッドから起き上がりカーテンを開ける、窓に映るはずの自分の姿、そこには何も映ってない。
「・・・はぁ・・・」目をこすりながらタメ息をつく、未だに透明になっている新井田
・・・昨日のアレ、夢じゃないか・・・やっぱ・・・
昨夜、新井田は病院から出た後に自分の家に何とか帰り着き
鍵が開いていたので勝手に上がりこみ、そのまま自分の部屋のベッドで眠りについた
これからどうしよ・・・
学校、行くか?いってどうすんだよ・・・
そういえば、他のヤツも二人いんのか?
あの部屋に行ったせいで・・・
あの三島って人なら知ってるかも・・・でも何処にいるか解んないし
探すのもメンドクサイし、とりあえずこのままでいいか・・・・
自分の家なのに新井田は家族に見つからないよう、暮らした。
しばらくして、もう一人の自分が退院し、家に戻ってくることになった。
こうして、もう一人の自分との生活がはじまった。
・・・ほんとに、オレにソックリだ・・・マジでどうなってんだよ
未だに信じられない新井田だったがもう一人の自分を見ているうちに、しぐさや性格、あらゆる点において、
その全てから自分と同一のものを感じる。
・・・でも、同じ人間が・・・二人いるわけない・・・どちらかが偽者!?
次第にそう考えるようになっていった。
その夜、勉強をしている自分を見つめながら考える新井田
・・・どっちかが偽者だとしたら・・・コイツだろ
オレがいない間に、勝手に人の生活に入り込んできやがって・・・
そう考えると、なんかムカつく・・・
いっそのこと、オレの姿見せてやろうか?
新井田はポケットからレーダーのような機械を取り出した
ゾクッゾクッ
突然、寒気がした新井田
オレ・・・ビビッてんのか、どうしよ・・・やっぱ止めるか・・・
でもコイツ、オレのこと見たら・・・ビビって気絶するかもなぁ~
よしっ、決めた!
行くぜぇ・・・3,2,1っで、思いっきり脅かす
3、
2、
いちっ!
キュィィィイイ
ピキンッ!!
うっ、耳鳴り?
・・・やっぱダメだ、身体動かない・・・コレじゃあ、ビビリって言われても仕方ないか~
・・・ん?・・・っていうか動かせないっ!?
どうなってんのコレェェエ!!?
・・・・あれ?
・・・・・ん!!!
「おい!!!?ここっ・・・・・
驚きのあまり声を上げてしまった新井田
・・・って!!この部屋っ、また!!?」いきなり目の前の光景が変わった、そこは黒い玉のある部屋だった。
そこには西村と山本がいた。
新井田は西村のそばに行き話しかける
「おい、またここ!?どうなってんだ、いきなりっ!!?」
「新井田・・・くん、だっけ、また透明なんだけど・・・」西村が声のするほうに向いて言った
「あ!・・・忘れてた・・・
っていうか、なんでっ、ここにオレいるんだよ!?」新井田は機械をいじり姿を現しながら言った
「100点とるまで、またここに来る、って言わなかったっけ?この前・・・」
「・・・そういえば、でもっ、こんないきなり・・・
・・・ああっ!!そんなことより・・・」新井田は自分がもう一人いたことを西村に話した。
「え?・・・なにそれ?」西村は知らないようだった
「三島さんに聞けばわかるんじゃないかな?」そう西村が言うと、突然誰かが声をかけてきた
「おい、お前も二人いるのか」
「えっ!!?」話しかけてきたのは山本だった、まさかコイツが話しかけてくるとは思ってなかった新井田と西村は驚く
「あっ、何か知ってるん・・・すか!?」新井田が尋ねる
「知ってるっつうか・・・オレもさぁ、前まで二人いたことあんだよ・・・」
「じゃあ、前までって・・・今は一人!?」新井田は以前、山本の平気で人を殺す姿を見て、恐怖を感じていたがこの際関係なかった。
「まぁ、そういうことか・・・」
「えっ!!・・・でもどうやって・・・」
「簡単なことだろ・・・
もう一人の自分がそんなに邪魔なら・・・」
「殺せばいい」