資本資産価格モデル(CAPM)。ファイナンスを勉強すれば必ず習うモデルです。このモデルは名前の通り、資産の価格(期待リターン)を評価するためのもので、DCF法で企業価値を評価する際の割引率の算定等にも用いられています。
ポイントとなるのはこのベータであり、リスクが高い場合(市場ポートフォリオの変動より大きな資産価格の変動が見られる場合)にはベータは1より大きな値を、低い場合(市場ポートフォリオに連動した変動があまり見られない場合)には1より小さい値を示します。このベータを推定するには統計的な分析が必要ですが(上場されていない資産について分析する場合には、類似する上場銘柄を探す等の作業も必要です)、少し慣れてくると、いろいろな資産(銘柄)を見ただけで、厳密な分析を行わなくともベータがどのぐらいの水準になりそうか、なんとなく相場観のようなものが見えてくるようになります。
一つのポイントは、その銘柄がどのような市場で収益を得ているのか見ることです。特に個人的にイメージしているのは、その銘柄が最終消費市場で収益を得ているのか、設備投資や政府向け等、他のところで収益を得ているのかを見ることで、経済のどのポジションで事業を営んでいるかによって、ベータはかなり変わってきます。
さて、では実際にアメリカの銘柄をいくつか見てみましょう。Yahoo Financeで各銘柄の情報を調べると、ベータの推計値も報告してくれています。
1.P&G(消費財)

The Procter & Gamble Company (PG) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Finance
消費財最大手P&Gの株価情報。ベータ(スクリーンショットの右下)は0.39と極めて低くなっています。この手の消費財は、不況になったとしてもすぐに売上が減ったりするものではないので、景気変動に対して比較的株価が安定しており、ベータも低く出ることが多いです。
2.GE(電機)

General Electric Company (GE) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Finance
大手電機メーカーGEの株価情報。ベータはおよそ1.2。GEは既にエネルギー・ヘルスケア等に事業を絞り込んでおり、実際には公共セクター向けも多いと思いますが、株価の変動は比較的大きく、ベータは1を超えています。
3.ボーイング(航空機)

The Boeing Company (BA) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Finance
大手航空機メーカーボーイングの株価情報。ベータはさらに高い1.44。景気循環により受注が大きく変動する設備投資型の事業のため、景気変動に対する株価の変動も大きくなっており、ベータは高くなります。
4.ロッキード・マーチン(軍需産業)

Lockheed Martin Corporation (LMT) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Finance
こちらは軍需産業のロッキード・マーチンの株価情報。作っているのはボーイングと同じ航空機(戦闘機)ですが、こちらは公共セクター向けのため業績は景気変動と連動せず、ベータも0.68と低めに出ています。
5.アップル(テック企業)

Apple Inc. (AAPL) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Finance
最後にアップルの株価情報。テック系は全般的にベータも高め。耐久消費財型の製品なので、最終消費者向けであっても比較的収益の変動は大きいのではないかと思います。
今回はこれだけです。こうしたことは慣れている人から見れば(ファイナンス理論としての正しさは別として)当たり前なんだと思いますが、言われてみればあまり教科書や授業等で教わった記憶もなかったので、まとめておくことにしました。
