ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策

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ワイヤレス給電の開発課題
・コイルの位置ずれ対策
・電力伝送距離の延長
・安定した充放電制御
がパワエレ技術でどのように解決できるのか。
ワイヤレス給電とパワエレの両面から、双方向ワイヤレス電源の開発実績に基づいたノウハウを解説します。

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最近のブログでは、結合係数の計測において巻線抵抗を

無視できないことを理論的に説明してきました。

 

今回はコイルのパラメータに具体的な数値を設定して

どいうことかを確認してみましょう。

 

 

さて、巻線抵抗と自己インダクタンスおよび結合係数が

以下のような2つのコイルの例を考えます。

 

【1次側コイル】

  R1=0.02 [Ω]  L1=1.2 [μH]

【2次側コイル】

  R2=0.05 [Ω]  L2=4.0 [μH]

【結合係数】

  k = 0.1

 

そして、2次側コイルを短絡して(R= 0

1次側からみた抵抗とインダクタンスをLCRメータで計測すると

 

●計測周波数が、「1kHz」の場合、

  Rshort=0.02003 [Ω]  Lshort=1.1976 [μH]

  ( ZRe=0.02003 [Ω]  ZIm=0.00752 [Ω] )

 

●計測周波数が、「100kHz」の場合、

  Rshort=0.02015 [Ω]  Lshort=1.1880 [μH]

  ( ZRe=0.02015 [Ω]  ZIm=0.74645 [Ω] )

 

という計測値が得られます。

 

この計測結果を、前回のブログで示した以下の結合係数の算出式に代入すれば

 

 

         

 

どちらの計測周波数でも、

 

 結合係数 : = 0.1

 

という正しい値を得ることができます。

 

 

一方で、結合係数の算出で一般的に用いられている

 

 

この式で算出すると

 

計測周波数が「1kHz」では、

 結合係数 : = 0.045

 

計測周波数が「100kHz」では、

 結合係数 : = 0.1

 

このように、巻線抵抗を無視すると計測周波数によって異なる結果になってしまいます。

 

巻線抵抗を考慮するべきか無視してよいのか慎重に判断して、

結合係数を正しく計測できるようになりましょう!

 

 

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結合係数の計測において、コイルの巻線抵抗を無視すると誤差が大きくなってしまう場合には

どのように結合係数を測定すればよいのでしょうか?

 

前回の記事 結合係数の計測でコイルの巻線抵抗を無視して大丈夫なのか? の続きです。

 

 

まず、計測対象の回路モデル

「電磁誘導によるワイヤレス給電の等価回路」
https://ameblo.jp/principal-technology/entry-12318341026.html

で解説した、統合回路モデルまたは等価回路モデルとします。

 

統合回路モデル

 

 

このモデルにおいて、測定したい結合係数  は次式で表されます。

 

                

 

 

では、この結合係数をどのように計測すればよいか説明していきます。

計測には、インピーダンスアナライザなどを使用する方法もありますが、

ここでは、一般的なLCRメータを使った方法を解説します。

 

 

●コイル単体の巻線抵抗と自己インダクタンス

 

1次側コイルの巻線抵抗:R1

1次側コイルの自己インダクタンス:L1

2次側コイルの巻線抵抗:R2

2次側コイルの自己インダクタンス:L2

 

これらの値は、コイルをLR直列回路としてLCRメータで測定できます。

 

そして、2つのコイルの巻数をそれぞれ N1N2 とすれば

2つのコイルのパーミアンスは、それぞれ

 

 

で算出できます。

 

 

●結合状態でのインピーダンス(複素インピーダンス)

 

いま考えている統合回路モデルや等価回路モデルのように、2つのコイルが結合状態にある場合、

1次側電源から見た回路全体のインピーダンスは実数部と虚数部を持ち、

 

 

となります。

 

なお、通常は負荷を短絡(R= 0)として計測しますが、ここでは負荷は任意の抵抗値とします。

 

この回路を、1次側からLCRメータで測定すると

  • 抵抗が  [Ω]
  • インダクタンスが  [H]

として測定値が得られます。

 

ここで はLCRメータが計測に使った周波数[rad/sec]です。

 

以上のように、結合係数の算出に必要なパラメータを全て計測によって得られます。

 

 

 

●結合係数の算出

 

計測によって得たパラメータから、結合係数は次のように求めることができます。

 

まず、コイル間の結合磁束経路のパーミアンス Aを算出します。

 

回路方程式から算出されるは複素数となり

ここでは極形式として絶対値と偏角で整理します。

 

 

         

 

 

 

このコイル間のパーミアンス Aの虚数部はエネルギ損失要素であり、磁気結合とは関係ないので、結合係数は実数部から計算します。

 

なお、ワイヤレス給電の場合、空芯コイルであるため鉄損のようなエネルギ損失は発生しないため、虚数部(偏角)は小さい値となります。

もし、虚数部(偏角)が大きい場合は、計測精度に問題があると考えられます。

 

最後に、巻数 N1N2 とパーミアンス AL1ALを自己インダクタンスL1L2に置き換えて整理すると

 

 

         

 

この式に、計測から得られたパラメータを代入することで、結合係数を算出することができます。

 

 

途中の計算式は複雑なので省略して説明しましたが、2つのコイルによる電磁誘導モデルの回路方程式から結合係数を理論的に導出すると以上のようになります。

 

 

●まとめ

 

少し複雑な式を扱うことになりますが、もし結合係数がうまく計測できない場合は、

この巻線抵抗を考慮した方法を、ぜひ試してみてください。

 

また、詳細の導出過程が知りたいという方は、コメント欄などからお問い合わせください。

 

 

 

★ 実際の計測例については次の記事にします。

 

つづく…

 

 

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トランスなど2つのコイルの相互誘導における結合係数の測定方法について、

計測器メーカや技術情報サイトなどで様々な解説がなされています。

 

これらの多くの解説がコイルの巻線抵抗を無視していますが

巻線抵抗を考慮しなくても結合係数は計測できるのでしょうか?

 

一般的な解説では、結合した2つのコイルの

片側オープンと片側ショートのときのインダクタンスを使って

 

結合係数  は

 

 

で求めます。

 

これは、コイルの自己インダクタンスが  のとき

 

 

となるからです。

 

 

では、コイルの巻線抵抗を考慮して、コイルのインピーダンス

 

 

の場合はどうでしょうか?

 

 

片側オープンのインピーダンスは

 

 

となるため、

 

 

として、巻線抵抗を無視した場合と同様に、

自己インダクタンス  を計測することができます。

 

次に片側ショートのときのインピーダンスを

 

 

としてインピーダンスを計測すると

 

 

という計測結果が得られます。

 

このように少し複雑な式となり、巻線抵抗を無視した場合と同様の手法で

結合係数を求めることはできないことがわかります。

 

また、式から計測値は で変化することがわかりますが、

これはインピーダンス計測に使用した電源の周波数によっても

計測結果が変わるということです。

 

やはり、巻線抵抗を考慮すると演算がかなり面倒になるため、巻線抵抗は無視したくなります。

実際に無視できるかどうかは、自分で判断するしかないのですが、

 

式から考えると

 

 

であれば巻線抵抗は無視できるでしょう。

 

つまり、

鉄心を使った通常のトランスであればインダクタンスが大きいため巻線抵抗を無視できますが、

ワイヤレス給電のような空心のトランスでは、巻線抵抗を無視できるかどうか慎重に判断する必要があります。

 

 

では、巻線抵抗を考慮した場合の結合係数は、どのように計測すればよいのか、

これは次の記事にしたいと思います。

 

つづく…

 

 

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今回は、1次側電源から負荷までの電磁誘導方式ワイヤレス給電の等価回路を明らかにします。

 

最終的には、結合係数をどのように計測すればよいのか?

という検討につなげたいと考えています。

 

以前書いた記事 → T型等価回路とは、回路の何が等価なのか?

では、相互誘導と磁気系の基礎を解説しましたが、

今回はコイルの巻線抵抗を考慮した1次側電源から負荷までの現実的な回路で考えます。

 

 

統合回路モデル

 

 

電磁誘導方式のワイヤレス給電システムの構成要素を、「1次側電源」「1次側コイル」「漏れ磁束経路」「結合磁束経路」「2次側コイル」「負荷」とすれば、上図のような電気と磁気を統合した回路モデルで表すことができます。

 

図中の各記号の意味を以下に示します。

 

【1次側電源】
  ● 出力電圧:v1 [V]
  ● 出力電流:i1  [A]


【1次側コイルおよび2次側コイル】
  ● 巻数:N1N2 [Turn]
  ● 巻線抵抗:R1R2 [Ω]
  ● 起磁力:Fm1Fm2 [A]
  ● コイル磁束:φw1φw2 [Wb]
  

【漏れ磁束経路】
  ● 漏れ磁束経路のパーミアンス:Ap1Ap2 [H]

  ● 漏れ磁束:φp1φp2 [Wb]

 

【結合磁束経路】
  ● コイル間のパーミアンス:AM [H]
  ● コイル間の起磁力:Fmg [A]
  ● 2つのコイルを通過する磁束:φg [Wb]

 

【負荷】
  ● 負荷抵抗:RZ [Ω]
  ● 負荷電圧(受電電圧):v2 [V]
  ● 負荷電流:iL [Ω]

 

 

この磁気系を含む統合回路モデルを、電気系の要素(コイル・理想トランス・抵抗)だけで等価的に表したのが、下図のような等価回路モデルです。

 

等価回路モデル

 

この統合回路モデルと等価回路モデルとでは、電源と負荷の電圧・電流 (v1  i1  v2  iL)の相互関係(伝達関数)が理論的に同じになります。

 

巻線抵抗を考慮した等価回路モデルでは、コイルの巻数比を無視することができないため

等価回路は理想トランスを含むモデルで表現することになります。

 

また、どちらのモデルで考えたとしても、結合係数  は

 

 

ここで  および  は、コイル単体の自己インダクタンスを決定するパーミアンスです。

 

 

ワイヤレス給電システムの設計や解析がうまくできない場合は、

このように回路モデルを見直してみると良いかもしれませんね。

 

 

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このブログのワイヤレス給電に関する記事では

誘導結合方式の話をメインにしていますが、

たまには電磁波放射方式の話をしてみましょう。

ワイヤレス給電の方式分類はこちら

 

宇宙で太陽光発電して、その発電エネルギーを地球へワイヤレスで送る方法として

レーザーを使う方法が研究されています。

(レーザーや光もマイクロ波などと同じ電磁波なので、分類は電磁波放射方式になります)

 

「宇宙の太陽光発電へさらに前進、レーザーによる電力伝送実験で好結果」

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1610/14/news028.html

 

この記事にあるように、レーザーの方向の制御は重要な開発課題となるでしょう。

 

しかし、本当の課題は他にあります。

 

この記事の最後に書かれている

「2030年代にはMW(メガワット)級の発電システムを実用化する」

という部分です。

 

MW級って…

 

百万ワット(1,000,000W)以上ってことです。

 

ちなみに一般的なレーザーポインタの出力は、0.001W 以下です。

これは、目(網膜)への影響を考えた安全基準で決められています。

 

1Wのレーザーだと、拡散度合い(面積当たりのエネルギー)にもよりますが

失明・やけど・火災の危険があります。

 

つまり、その百万倍以上のエネルギーを持った

MW級のレーザーが宇宙から地球に照射されるって、宇宙兵器ですよ。

 

 

もし、レーザー照射位置がズレたら・・・

 

もし、航空機がレーザーを横切ったら・・・

 

 

恐ろしいですよね。

 

原理的にも技術的にも不可能ではないと思いますが、

実用的には安全性を確保するのは難しいでしょう。

 

これが宇宙太陽光発電の最も重要な課題ではないでしょうか。

 

 

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