結合係数の計測において、コイルの巻線抵抗を無視すると誤差が大きくなってしまう場合には
どのように結合係数を測定すればよいのでしょうか?
前回の記事 結合係数の計測でコイルの巻線抵抗を無視して大丈夫なのか? の続きです。
まず、計測対象の回路モデルは
「電磁誘導によるワイヤレス給電の等価回路」
https://ameblo.jp/principal-technology/entry-12318341026.html
で解説した、統合回路モデルまたは等価回路モデルとします。
統合回路モデル
このモデルにおいて、測定したい結合係数 は次式で表されます。
では、この結合係数をどのように計測すればよいか説明していきます。
計測には、インピーダンスアナライザなどを使用する方法もありますが、
ここでは、一般的なLCRメータを使った方法を解説します。
●コイル単体の巻線抵抗と自己インダクタンス
1次側コイルの巻線抵抗:R1
1次側コイルの自己インダクタンス:L1
2次側コイルの巻線抵抗:R2
2次側コイルの自己インダクタンス:L2
これらの値は、コイルをLR直列回路としてLCRメータで測定できます。
そして、2つのコイルの巻数をそれぞれ N1,N2 とすれば
2つのコイルのパーミアンスは、それぞれ
で算出できます。
●結合状態でのインピーダンス(複素インピーダンス)
いま考えている統合回路モデルや等価回路モデルのように、2つのコイルが結合状態にある場合、
1次側電源から見た回路全体のインピーダンスは実数部と虚数部を持ち、
となります。
なお、通常は負荷を短絡(RZ = 0)として計測しますが、ここでは負荷は任意の抵抗値とします。
この回路を、1次側からLCRメータで測定すると
- 抵抗が [Ω]
- インダクタンスが [H]
として測定値が得られます。
ここで はLCRメータが計測に使った周波数[rad/sec]です。
以上のように、結合係数の算出に必要なパラメータを全て計測によって得られます。
●結合係数の算出
計測によって得たパラメータから、結合係数は次のように求めることができます。
まず、コイル間の結合磁束経路のパーミアンス AM を算出します。
このコイル間のパーミアンス AM の虚数部はエネルギ損失要素であり、磁気結合とは関係ないので、結合係数は実数部から計算します。
なお、ワイヤレス給電の場合、空芯コイルであるため鉄損のようなエネルギ損失は発生しないため、虚数部(偏角)は小さい値となります。
もし、虚数部(偏角)が大きい場合は、計測精度に問題があると考えられます。
最後に、巻数 N1,N2 とパーミアンス AL1,AL2 を自己インダクタンスL1, L2に置き換えて整理すると
この式に、計測から得られたパラメータを代入することで、結合係数を算出することができます。
途中の計算式は複雑なので省略して説明しましたが、2つのコイルによる電磁誘導モデルの回路方程式から結合係数を理論的に導出すると以上のようになります。
●まとめ
少し複雑な式を扱うことになりますが、もし結合係数がうまく計測できない場合は、
この巻線抵抗を考慮した方法を、ぜひ試してみてください。
また、詳細の導出過程が知りたいという方は、コメント欄などからお問い合わせください。
★ 実際の計測例については次の記事にします。
つづく…
▼ブログランキング参加中▼
にほんブログ村
▲クリックで投票お願いします▲