こんにちは。
世界を駆けるプロ・ランニングコーチの安藤大です。


4月19日(土)に六甲で2025年のサロモンのゴールデントレイル・ワールドシリーズ(GTWS)、『神戸トレイル(Kobe Trail)』21kmのレースが開幕しました。

 

21kmはエリートランナー向けで、僕は日曜日の15kmに出場しましたが、土曜日は体感気温が30℃近かったのに比べると少し涼しかったものの、それでも厳しい暑さと高い湿度との戦い!

 

レースレポートをお届けします。

 

■神戸トレイルKOBETRAILのここが特徴・おすすめ!

✅ 大阪・神戸からアクセス良好、日帰り参加も可

✅ 日本初!?お祭りや野外音楽フェスのような雰囲気を取り入れた新感覚のトレイルランニングレース

✅ コースは国内でも“超”がつくほどハードかつ危険。特に下りはテクニカルで、スリル満点!

✅ リレー、4kmのショートレース、夫婦・親子ペアの部など、多彩な部門で幅広い年齢・体力レベルの方が楽しめる工夫あり(※距離の短いリレーでも、初心者には通常レース以上に過酷な場合も)

✅ 国内屈指のテクニカルな下りコース。下りが大好きな方は、自分の技術を試す絶好のチャンス!

✅ループコースなので選手が3回(15km)スタートに戻ってき、選手と観客との距離感が近い

 

■ここが工夫・改善の余地を感じた

​✅ 大会前夜になってから、摩耶ケーブル・摩耶ロープウェイの混雑に関する案内メールが届き、周知が遅かった印象。結果的に多くの参加者が、登山道を自分の足で登って会場入りすることに(たとえ周知をしていてもそうなっていた可能性はあり)。キャパシティオーバーを感じた人も多かったようです。

✅ どんな飲食ブースが出店しているのか、事前の案内が少なく、内容がわかりにくかった。

✅ 音楽の選曲センスに一貫性がなく、ターゲット層が不明瞭。

✅ 参加賞のサロモンTシャツについて、男性は全員Lサイズのみ選択可能だった点は不便。体型に合わないと感じた参加者もいたかもしれません。

✅リザルトの公開が遅い

 

全体的にアナウンスの下手さを感じました。


音楽の選曲センスに一貫性がなく、誰をターゲットしているのか不明瞭に感じました。「愛は勝つ」などの楽曲は、素晴らしい曲ではあるものの、スタート前の雰囲気とは合っていない印象。キッズ向けには「忍たま乱太郎」のテーマ曲が流れていたが、今の子どもたちには馴染みがない。

 

コース難易度:5以上(5段階)
体力難易度 ★★★★★ 技術難易度 ★★★★★

 

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日本国内でも“超”がつくほどのハードで危険、技術が必要なコースなのに、「今日がトレイルランニングはじめてなんです」と話している人が沢山いて、思わず耳を疑いました。

 

初めてこの大会の15kmに参加した場合、トレイルランニングが嫌いになってしまいそうですが(笑)

 

給水所や誘導スタッフ、そして観客の中にも、僕のイベントに参加してくれたことのある方がたくさんいて、その声援が本当に励みになりました。

観客の中にいた女性2グループから、「キャプテン!」「安藤さん!」「コーチ!」と声援をいただきました。手を挙げて応えたものの、疲労のせいで誰かはわからずじまいでした。
 
でも、応援してくれて本当にありがとうございました!

応援に来てくれた方には、少しは“本気で走るカッコいい姿”を見せられたんじゃないかな。

また、パーソナルトレーニングを受けてくださっている女性の方からは、「日ごろは指導していただいていますが、安藤さんが実際に走っている姿を見るのは初めてで、とても感動しました」と声をかけていただき、こちらも嬉しくなりました。

■結果から

予測タイム2時間55分00分
実際の結果 ​2時間45分56秒

出走者342人中総合21位(全体の6.1%)

年代別97人中3位入賞
公式ホームページ 約15.2km/1,439m
時計のデータ 約15.7km/1,460m 

 

エントリーリストでは377人いたので欠場者多かった。トレイルランニングの大会にしては距離と累積標高差が大会発表とランナーの時計データとがぴったりでした。

 

2024年の結果は…

2時間43分以内でTOP10 

2時間55分(全体の10%)で15番以内
3時間15分で(全体の20%)で20番以内

女子の優勝タイム 2時間58分03秒

 

予測タイムは2時間55分。実際にはそれよりも10分も速く走れたのに、TOP20にすら入れませんでした。

 

ランナー全体のレベルが急激に上がったというよりは、昨年より大会の人気が高まり、申込者数が倍増して約400人になったことで、上位ランナーの層も厚くなったのだと思います。


2週間前には韓国で35kmのレースに出場し、さらに前日もトレランイベントがあったため、序盤から足に疲労が残る状態でしたが、その中でも今の自分にできる走りはしっかりと出せたと思っています。

年明けからこのレースだけに集中していれば、また涼しければあと10分以上は記録を縮めることのできる余地があると感じました。

また、テクニカルなコースに適したシューズがサイズ切れのままで、当日までに入手できなかったで、シューズが適していれば、さらにタイム短縮も狙えたかもしれません。

 

ただ、本気のレースは年間で1〜2本が限界で、1か月に2本も詰め込むのはやはり無理がありますね。

大会前日の夜22時に、大会事務局から「スタート時間に合わせて摩耶ケーブル・摩耶ロープウェーの混雑が予想されます。※混雑時は、麓から掬星台まで2時間以上かかる可能性があります」との注意喚起メールが届きました。

このメッセージを事前に確認できていた人が、果たしてどのくらいいたのでしょうか。


確認できなかった人たちは、想像以上の混雑に巻き込まれてしまったと思われます。

メッセージが届く前から混雑するだろうと思い、スタートの2時間前に到着するよう予定していましたが、急きょ3時間前に前倒しして現地へ向かうことに。


スタート時刻は13時と比較的遅めで、受付は12時まででしたが、僕が会場に到着したのは10時15分でした。

臨時便の中でも一番早い時間帯に乗ったため、比較的スムーズに乗車できましたが、それでも列はできていました。その後はさらに混雑が激しくなり、受付に間に合わないかもしれない参加者も多数出ていたようです。中には、自分の足で一般登山道を登って会場までたどり着いた方もいたようです。

フレッシュな状態でもタフなこのコース。15kmのレース前に摩耶山を一回登った人は、21kmを走ったようなもので過酷だったと思います。


帰りも2日間ともに夕方を過ぎるとロープウェイは1時間以上待ちの混雑で、観客や体力のある人の中には自力で下山をした人もいたようです。

 

■大会の受付人数と輸送人数、時間を試算してみた
KOBETRAIL2025の大会参加者は「KOBE 15k / 15k EKIDEN / 4k / 4k Pair」の全カテゴリーを含むと、およそ800人以上近い。

両方の乗り継ぎ(摩耶ケーブル・ロープウェー)を経て、800人すべての乗客が山頂に到達するには?最短でも約340分(5時間40分)かかるという試算になります。

これは選手だけの人数で、そこにサポーターや観客、一般登山者も加えるためため、輸送人数が想定を上回り、時間内に到着できない方が出る可能性は高くあってあらかじめ想定できます。

一方で、大会事務局からは次の案内がありました。
 

​■選手、サポートの皆様へのお願い
摩耶山掬星台には公共交通機関のご利用をお勧めします。
摩耶山掬星台には駐車場がございません。お車でのお越しはご遠慮ください。


主催者側は、混雑の回避を考慮し、公共交通機関の利用を呼びかけています。また、阪急六甲駅から「六甲ケーブル」経由のアクセスも案内されていますが、六甲ケーブル山上駅から摩耶山までは徒歩で約7.6kmの距離があり、バスの便も限られているため、定員や移動手段の検討には一定の工夫が求められます。
山頂は「GOLDEN TRAIL WORLD SERIES」や「KOBE TRAIL」の看板で彩られ、華やかな雰囲気に包まれていました。摩耶ケーブルの運営会社がここまで協力してくれ、こうして大会が実現したことは奇跡のようで本当に素晴らしいと感じました。
「「日本三大夜景」として知られる掬星台からの眺め。山頂の展望台はもやがかかり、空には厚い雲が広がっていました。このとき、「今日は湿度との戦いになりそうだな」と感じました。」
■受付
受付は行列もなく、ゼッケン番号を伝えるだけでよかった。
 
大会参加賞のサロモンのKOBETRAIL Tシャツ。普段僕はMサイズを着ていますが、入っていたのはLサイズ。間違いかもしれないと思い受付へ確認しに行ったら、「ゆったりめに着るスタイルで男性には全員Lサイズを渡しています」とのこと。デザインは良いのに、体型に合わないと感じた参加者もいたかもしれません。
■多数のトレイルマルシェが出店
会場に飲食ブースがあることは案内で知っていましたが、トレイルマルシェにどんな店舗が出店しているのか、事前の情報が少なく、内容がわかりにくかったため少し不安がありました。そこで当日はそれを当てにせず、自宅でおにぎりを作って持参しましたが、結果的にそれが正解でした。

同じように情報が不十分だったことから、多くの人が摩耶ビューテラス702内のカフェ「CAFE702」に集中し、「注文した料理がなかなか出てこない」といった混雑が発生したようです。

また、阪急王子公園駅付近のコンビニではおにぎりなどが売り切れていたそうで、山頂の自販機も水・お茶・炭酸飲料などはすでに完売。自宅から飲み物を持参しておいたのも、正解だったと思います。
 
 
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どんなレースでも、会場に飲み物や食べ物があるとは期待せず、あらかじめ自分で用意しておくことがトラブルを防ぐポイントです。最初から期待しなければ、がっかりすることもありません。ー「期待をしない人生」by キャプテン

 
サウナもありました。前日は体感気温30℃の暑さだったのでほとんど利用者がいなかったそうですが、この日は午前中は肌寒かったため体験者が見えました。
萩原珈琲。人気でした。

おでん(800円)。やや高めの価格設定ですが、山の上ということを考えると妥当かもしれません。水を一切使わず、日本酒だけで出汁をとっているそうで、とても美味しかったです!

 

前日は暑すぎて、おでんはまったく売れなかったんですよ。とほほ…

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神戸摩耶山カレー(500円)。ご飯は少量なのでこれだけではランナーには足りないでしょう。ほかにも韓国料理の弁当やフィッシュ&チップスのキッチンカーがあったようですが、パッと見て何のお店かわかりづらく、どこで販売されていたのか結局わからず仕舞いだったのは残念でした。飲食店において看板は重要。
 
■チェックしておきたいトイレの場所
▪️トイレの場所
①掬星台の休憩小屋横
②掬星台の階段下すぐ
③摩耶ロープウェイ内
の3か所です。
 
階段下は仮設トイレも設置してあって、比較的空いています。摩耶ロープウェイ内はあまり気づかれていない穴場です。
互いにエールを送り合う。昨年に続いての出場で、「自分超え」を目指しているそうです。関西での開催ということもあり、会場ではたくさんの知り合いにも出会うことができました。
■大会の特色を表すゲート
スタート・フィニッシュゲートが鳥居になっているのは、外国人にも喜ばれそうな演出ですね。冷静に考えると、ゲートは必ず写真や動画に映る場所なので、大会の特色を表すうえで最も力を入れるべきポイントだと感じました。
 
■国内稀にみる白熱のスタートシーン
両脇を大勢の観客に見守られながら、スタートします。国内には多くのトレイルレースがありますが、ここまでのヒリヒリとした緊張感はなかなか体験できません。コースが狭いため、後続のランナーからプレッシャーをかけられたり、押されたりしないかという不安感の方が強く感じます。コースの全体像を掴めている人とそうでない人とでは差が生じます。

レースがスタート。

■ループ1

制限時間が3時間以内と短いため、序盤のドライブウェイの下り坂は思い切って飛ばすと決めていました。しかし、周囲の選手たちはそれ以上の速さで次々と追い抜いていきます。

自分のペースは1kmあたり4分5秒と決して遅くはないのに、まるで自分が遅れているように感じられました。明らかに周囲はオーバーペースだと思いつつも、流れに乗らざるを得ず、ループ1を予定よりかなり速い26分(予定では33分)で通過しました。

とにかく後続のランナーからのプレッシャーをこれからの下りで感じたくないので、必死に走った感じでした。

トレイルの急斜面の崖のような下りで無理に追い越そうするランナーがいたり滑り落ちてくる人がいたりして、かなり怖かった。

給水所には、水の溜まったタンクとスポンジが用意されていることを事前の映像で確認していたので、ループごとに頭から水をかぶってクールダウンしようと決めていました。


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水かぶりコーナーがなかったら完走できていなかったかもしれない!



アームカバーを着けていない選手がほとんどでしたが、僕は体温を下げるためにあえてアームカバーを着用し、それを濡らして走りました。この経験と工夫の差が、あとあとの差につながったと思いました。

 

安藤さん、やっぱり全身赤や!

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(走り去っていく後ろ姿を見て)

え、半分青やで。

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■ループ2

地蔵尾根は、後続のランナーからプレッシャーをかけられたり、無理に追い抜かれたりすると、ヒヤヒヤする危険箇所もあるため不安がありました。しかし、幸いなことに、誰も後ろから来ることはなく、ほっとしました。ループ2は予定どおりのペースで1時間10分で通過しました。

 

給水所でバナナを食べていると、背後で女子グループの話声が聞こえました。

 

 

え〜安藤さんって、バナナ食べるんや。

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ほんまや〜安藤さんがバナナ食べてる。

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(バナナぐらい食べるやろ…)

どうやら僕はバナナも食べないと思われているらしかった(笑)

 

 

■ループ3

2週目を終えた時点で、2時間50分以内でフィニッシュできることがわかっていました。残り時間がわかっていればあとはその時間我慢をするだけなので気持ちは楽でした。


続くループ3の山寺尾根でも同様の不安がありましたが、結局誰にも追い抜かれることはありませんでした。山寺尾根はコース試走で2回下っており、どのルートを取るか、どこに足を置くかまで一連の動きを記憶していました。


山寺尾根は試走時のタイムより速い15分で下山、下山間近というところでコース試走時とまったく同じ場所で軽く足首を捻り、思わずストップしました。


このあとループ3の登りで大きくタイムを落としてしまいました。予想はしていましたが、ループ2の黒岩尾根もきついものの、やはり神戸トレイルで一番きついのはループ3のえんえんと続く階段だと思います。

 

今回のレースでは、追い抜かれるよりも、序盤のオーバーペースで疲れたランナーを追い抜くことの方が多かったです。10メートル先にいた男性が40代で、もし追い抜けていたら年代別で3位に入賞できていたかもしれないので、少し悔やまれます。

 

 

最後の方で立っていた誘導スタッフが知り合いのIさんで、

 

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一番苦しい場面で会わなくともいいのに…。

とおしゃべりしました。

実際に参加してみて、大会運営やレースの雰囲気は素晴らしく、コースもテクニカルでとても楽しかった。

 
ただ、狭い登山道では後ろから誰かが来るのではないかと気にしながら走る場面があり、個人的にはそういった緊張感が少し苦手だと感じました。周囲を気にせず、自分のペースで走れるコースの方が向いていると思いました。
 
観客の方が「私もトレイルランニングやってみたい!」と話しているのが聞こえてきて、思わず嬉しくなりました。この大会が、挑戦するきっかけや良い影響を与えているんだなと感じました。

 

トレイルランナーズ大阪のビラを持って配った方が良かったかな(笑)もちろん、冗談ですが。

 


15kmや21kmは想像以上にハードですが、15kmをリレーで走る部門や、初心者向けの4kmの部、夫婦や親子ペアの部もあるので、来年参加してみてはいかがでしょうか。