★1964年イチコーフィアット2300S ハイウェイの貴婦人~ブリキ自動車コレクションから217 | ポルシェ356Aカレラ

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★16番鉄道模型の車両名と製品メーカーを御教示ください。
俗に聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とも言いますので、恥ずかしながら鉄道に関する知識がないため車両名も判らずに安価な日本型16番ということで入手し、そのまま手元に置いてある鉄道模型について、御存知の方が居られましたら御教示ください。モデルとなった車両名(車両型式)と製品のメーカーが判りますでしょうか。
モーターなしの同じ先頭車が2両手元にあり、ボディは金属のような硬質感ありですが材質不明です。塗装はバリっとした感じではないため、何となく素人が塗ったような印象を受けます。裏板は木製で床下機器をやっつけ仕事で取敢えず取り付けたような感じの仕上がりです。2両共にヘッドライト・テールライトの配線がされており、ヘッドライトはカワイモデル製品に見られるような飛び出た感じの電球が付いています。旧国、2ドア、前面半流線形といったWordで検索したところ、よく似たモノとしてロコモデルのクモハ43040の画像がヒットしたのですが、手元の模型はドア窓下の縦長楕円のプレスの数が多いなど異なり、どうもよく判りません☆




連結面






雑に仕上げられた感ありの床下


カワイモデル73系(右)との並び





★閑話休題
今回は国産旧車ファンの人には「何じゃらホイ??」的な車種となり申し訳ないのですが、ブリキ自動車コレクションから第217回記事としてイチコーのフィアット2300Sクーペご紹介します☆☆☆



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フィアット(Fiat)
1899年(明治32年)にトリノで創業した長い歴史を持つイタリア最大の自動車メーカー。日本には明治末期より戦後1960年代半ばにかけて大倉財閥の大倉喜七郎が創立した輸入会社・日本自動車の手により連綿と輸入されていました。現在街で見かける郵便配達用の所謂「郵便車」は、1912年(明治45年)に日本自動車が輸入したフィアット2台が使われたのが最初と言われます。

フィアット2300Sクーペ
1960年(昭和35年)11月のトリノ・ショーにカロッツェリア・ギアが出品したフィアット2100ベースの2+2クーペは、そのプロポーションの美しさ、、プレーンかつエレガントなデザインで好評を博し、翌1961年(昭和36年)に2100クーペとしてフィアットのカタログモデルとしてデビューします。セダン用の2054ccエンジンは3個のダブルチョーク・ウェーバーで140psに強化され最高速度200㎞/hを謳い、ブレーキは当初から4輪ディスクが標準装備されていました。
1962年(昭和37年)にはセダン系のモデル・チェンジに追随してクーペも2300ccとなり、セダンと同じ130psで最高速175㎞/hの標準グレードとダブルチョーク・ウェーバーを2連装し150ps最高速190㎞/h以上の2300Sの2種となります。車重は1230㎏、165-15のピレリー・チンチュラートをはき、ファイナルは2300が3.9、2300Sは更に3.636と高められていた。日本には1968年(昭和43年)の生産終了まで当時のフィアット正規輸入代理店・日本自動車(本社・赤坂溜池)と西欧自動車(本社・新宿歌舞伎町)によりリアルタイムで少数が輸入されています。エレガントなルックスでプアマンズ・フェラーリの異名も持つクルマでしたが、日本国内販売価格270万円(初任給2万円前後の時代であり、現在の貨幣価値では概ね10倍の3000万円弱程度)は、けっして庶民の手に届くような金額ではありませんでした。
ル・マン24時間に優勝するなど優れたレーシングドライバーであると同時に優れたモーター・ジャーナリストでもあった、ポール・フレール氏(Paul Frère:1917年1月30日-2008年2月23日:フランス生まれベルギー国籍:日本ではCG初代編集長・小林彰太郎氏と親交が深くCG誌への寄稿でよく知られています)が、1962年、デビュー直後のフィアット2300Sクーペを自ら購入し、1967年にポルシェ911Sに乗り換えるまでの5年間、計9万キロを家族旅行等のマイカーとして使用したこともよく知られたエピソードです。


★1962年 フィアット2300Sクーペ 広報写真





★フィアット2300Sクーペ 実車カタログより抜粋

西欧自動車 総合カタログ日本語版より


1964年前期型カタログより




顔はダイハツコンパーノスパイダーとも似ています。


広いトランク


ダッシュパネル


ダッシュボード図解。スピードメーターは230㎞までの表示。


1966年後期型ではサイドモールが追加となりフロントグリル中央のFIATエンブレムが縦長から円形に変更されています。


ホイールキャップの意匠も変更されています。



【1964年 フィアット2300Sクーペ 実車主要スペック】(1964 Fiat 2300S Coupé Specifications)
全長4620㎜・全幅1630㎜・全高1365mm・ホイールベース2650mm・車重1290kg・FR・水冷直列6気筒OHV2279cc・150ps/5600rpm・20.0kgm/4000rpm・4輪ディスクブレーキ・変速機4速MT・乗車定員4名・燃費9.5km/ℓ・最高速度190km以上・日本国内での販売価格:270万円(2300セダンは215万円)


【イチコー 1/17スケール 1964年フィアット2300Sクーペ 主要データ】(1/18scale 1964 Fiat 2300S Coupé by ICHIKO Tinplate Model Toy KEY DATA)
・基本素材: ブリキ
・一宏工業 品番(管理番号): 0265(ノーマル)、1965(教習車)、1965A(アンビュランス)、不名(SCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港技術サービスカー)
・発売時期: 1964年12月? (ノーマル)、アンビュランス1965年5月頃、SCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港技術サービスカー1966年7月頃、教習車1966年10月頃。
・販売価格: ノーマル都内300円/地方最低小売330円、教習車リモコン都内800円/全国840円、アンビュランスとSCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港技術サービスカーは不明(国内未発売の可能性有)
・全長:270㎜ (実車比:1/17.1スケール)
・全幅:95㎜ (実車比:1/17.1スケール)
・ホイールベース: 153㎜ (実車比:1/17.3スケール)
・カラーバリエーション: 赤メタ・青メタ・緑メタ・白(アンビュランス)、白/空色(SCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港技術サービスカー) 等
・バリエーション: 後期はフェンダーミラーとトランク上のアンテナなし
・ノーマル以外のバリエーション: アンビュランス(リモコン)・教習車(リモコン)、SCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港技術サービスカー(ルーフライト等点滅アクション付)
・動力: 後輪フリクション及び電動リモコン
・特記事項: 不人気車故、市場評価は低目ながらレア度は高目。
・入手難易度: 10段階評価でレベル7程度
・2024年現在のアンティークトイ市場の推定評価額: 3.5~6万円 程度(箱付未使用ミントコンディションの場合)


●イチコー1965年版カタログより
0265番 フィアット2300Sクーペ ノーマル


国産車の中にポツンと1台だけフィアットが掲載され、小売価格はRT40コロナと横目のセドリックはフィアット2300Sクーペと同じ都内300円。


1965番 フィアット2300Sクーペ 教習車/海外仕様リモコン


1965‐A番 フィアット2300Sクーペ アンビュランス



●財団法人輸出玩具登録協会発行「NEW DESIGN(ニューデザイン)」1965年5月25日号に掲載されたイチコーフィアット アンビュランス・リモコン仕様 (国立国会図書館の蔵書より複写)
昭和40(1965)年5月6日付で意匠登録されています。



●財団法人輸出玩具登録協会発行「NEW DESIGN(ニューデザイン)」1966年10月25日号に掲載されたイチコーフィアット SCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港技術サービスカー (同上)
製品名「11インチ エアポート サービスカー ウィズ ライト&サイレン」として、昭和41(1966)年7月19日付で意匠登録されています。



●東京玩具商報1966年10月号イチコー玩具見本市展示商品「フィアット2300S教習車」 (同上)
子供練習用自動車「ハンドルドライビングカー シリーズ」として411ブルーバード、130セドリック、RT40コロナ等の各リモコン仕様と共に掲載されています。イチコーのリモコン乗用車は車種を問わず全て都内800円/全国840円と記載されています。




●1/17 イチコー1964年フィアット2300Sクーペ(青メタ・箱無・ミラー欠品/錆傷有)
元々のメッキが厚かったのかメッキパーツは比較的綺麗ながら、ミラーの欠品や錆傷のある遊ばれた個体。










NOREV1/43フィアット2300Sとの大きさ比較




室内プリントは大きな丸側メーターが2連である点以外は、あまり実車に忠実ではありません。




リアトレイにイチコー商標


シャシー裏




●1/17 イチコー1964年フィアット2300Sクーペ教習車 リモコン(緑メタ・箱無・比較的美品)
ルーフの「練習中」の行燈とトランクの「子供自動車学校 交通規則を守りましょう」の赤文字プレートを点滅させながら賑やかにリモコン走行します。教習車モデルは国産ミニカーでは1975年のダイヤペット80系5代目クラウンが最初だったため、実車では在り得ない車種選択とは言え、ブリキの世界ではミニカーよりも約10年早く教習車が出ていたことになります。


















ボディの状態は良いもののシャシー裏前部に錆が出ています。




●1/17 イチコー1964年フィアット2300SクーペSCHIPHOL TECHNISCHE DIENST/スキポール空港サービスカー (白/空色・箱付・ライト点滅・美品)
2000(平成12)年春のイチコー倒産前後にイチコー内部から市場に流出した品物でルーフに「見本品」のマジック書きを消した跡があるため、上掲の「NEW DESIGN(ニューデザイン)」1966年10月25日号に掲載された意匠登録に使用された個体なのかもしれません。国内で売られた形跡がなく、恐らく輸出専用品だったと思われます。








ルーフには「見本品」と書いた文字を消した跡があります。




「MX-38-90」のリアナンバーの文字は何を意味するのでしょうか。








室内プリント


ルーフライト点滅アクションのための配線が屋根裏を這っています。


シャシー裏


箱内の緩衝材も残った未使用品


このモデルはもしかすると市販されていないのでは?と調べてみると、海外サイトで260ユーロ(日本円約4万3000円)で左ミラー欠品の個体が出品されていました。




●ヤフオク出品のイチコーフィアット2300Sクーペのバリエーション (ヤフオク画像より転載)
赤メタ2ndノーマル箱付。ミラー/アンテナが省かれた2ndモデルながら貴重な箱付。




箱絵


赤メタ「教習車」(箱無・左ミラー欠品)


青メタ1stモデル・ミント箱無








●1/17 イチコー1964年フィアット2300Sクーペノーマル/教習車/スキポール空港サービスカー 3台の並び


手前は大きさ比較用1/43NOREVフィアット2300S(当時物)






イチコー1965年版カタログの同じ頁に都内300円/全国330円の同じ価格で掲載されたフィアット2300Sと横目のセドリック2台の並び。1/17フィアットより1/18横目のセドリックの方が実車もブリキも一回り小さいながらも同価格ということは、セドリックの方がパーツ点数が多く製作に手間が掛かっていたということでしょうか。




【参考】1/43スケール1960年代の魅力的なフィアット・スポーツカー3台の並び
奥:伊Mebetoys1966年フィアット・ディーノ・ボート積(日本語箱付)、前左:仏Norev1963年フィアット2300Sクーペ、前右:Spark 1965年フィアットアバルトOT1300。スパーク以外は当時物。





●英ロンスター旧ホイール フィアット2300Sクーペ(海外サイトの出品画像より)
ダイヤカットレンズの入った小スケール2300Sの魅力的な初版。販売価格80ユーロ(日本円1万3000円程度)。






トミカに見倣って欲しい、小スケールでフル開閉アクション付




※フィアット2300Sの実車カタログについては2013年4月1日の自動車カタログ棚からシリーズ第125回記事をご参照ください。






★オマケ(その1): 懐かしの商用車コレクションVol.81 いすゞベレット エキスプレス1967年「イセ洋品店」
2024年4月3日(水)発売の新製品。税込定価2499円。spark/ダイキャスト製。まさかのベレット エキスプレスのモデル化に狂喜乱舞している向きは多いことと思います。よくぞモデル化してくれたという印象ですが、すっかり年式の新しい車種のリリースがメインとなっているTLVに是非見倣って欲しい車種選択だと思います。今後、エキスプレスの模様替え/仕様替えのリリースも楽しみですが、一歩進めてベレットトラック「ワスプ」やベレル エキスプレスといったレア車のモデル化も期待したいところです。






1967年後期型をモチーフとしたモデル化と記載されていますが、フロントグリルは実車では網目となっている上下部分が単なる太い銀バーとなっていることとグリル中央部については縦線のメッキ部を銀色とすべきところが黒く塗り潰されているため実車の印象とは残念ながら異なります。








秋田旧車界の重鎮トランシス様を真似て大盛屋ベレット1500デラックス(4ドア)、ベレットスポーツ(GT)との並び画像。


1966年10月発行実車カタログ(A4判・8頁)




この繊細なグリルの意匠を再現することはハードルが高いということか、懐かしの商用車では再現しきれてはいません。




セダン等と共通のダッシュパネルの意匠


カラーバリエーション3色。懐かしの商用車コレクションでは中央のゴールドグリーンを上手く再現しています。


2024年5月1日(水)発売の懐かしの商用車コレクションVol.82はマツダ タイタン「トラッククレーン仕様」の予定。




★オマケ(その2): 今日のビートルズ「I'll Follow the Sun」 1964
気付けば無意識に鼻歌を歌っていることのあるビートルズの1曲。手許にあるシングルレコードは1965年3月15日リリースの東芝オデオン盤330円定価時代の黒盤(規格番号OR-1194)。


ジャケット内側に印刷された歌詞