★1950年代のいすゞBXボンネットバス 郷愁のBX ~ 自動車カタログ棚から 246 | ポルシェ356Aカレラ

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今年も残すところ50日。年末にかけて公私共に忙しくなる人も多いと思います。私も仕事をしながら、プライベートでもやっておきたいことが沢山あります。あれもこれもというのは時間配分をよく考えないとタイムアップになってしまいそうです。音楽関係(主に楽器演奏)と平行してアメブロ記事をアップするのは実は結構大変です。
カタログ棚シリーズの記事をアップするまでにはどうしても時間がかかり、資料整理から始めてオマケにアップするモノを探し出したりしているうちに記事を書く前に下手すると1日過ぎてしまいます。カタログ棚の記事も初めの頃はあっさりと1~2時間位でアップしたものが多く、また初めの頃のちょっとユルいスタイルに戻してもいいかなとも思っています。

みなさんは日常バスに乗ることがありますか。私は雨の日は最寄り駅までよくバスに乗ります。スポーツカーなど派手なクルマの記事がいいという人が多いような気もしますが今回はまたバスの記事です。私はポルシェのようなスポーツカーは勿論大好きですが、バスやトラックも同じように愛おしいです。それは子供の頃からずっと変わっていない気がします。今回は日本のバス史上に燦然と輝く名車いすゞBXの記事です。




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★日本のボンネットバスと言えば、登録台数の多さと柴犬を思わせる温もりのあるフロントマスクなどから日本人に郷愁を最も感じさせるのは1950年代のいすゞBXだろう。
1960年代に入ると室内有効スペースの広いリアエンジンバスに押されボンネットバスの需要が狭隘路線等に限られる時代となっていったのに対し、1950年代は未だ都市部においてもボンネットバスが多数稼働していたボンネットバス黄金時代であった。その時代に圧倒的な市場シェアを誇り全国津々浦々で見られたボンネットバスがいすゞBXだったのである。


★私自身は世代的に1950年代のいすゞBXボンネットバスのリアルタイムの記憶はなく、1976年(昭和51年)3月に発売されたトミカNo.6-2のミニカーでその存在を意識したのだが、その後のトミカの膨大なバリエーション展開も手伝い(?)、ボンネットバスのリアルタイムの記憶が全くない世代を含めてボンネットバスといえば現在では1950年代のいすゞBXの姿を一番に思い浮かべることが多いのではないだろうか。


【いすゞBXの主な変遷】

・1932年(昭和7年) BX40 (WB4000mm)

・1941年(昭和16年) BX60

・1947年(昭和22年) BX80 (WB4000mm)

・1948年1月(昭和23年) BX91ディーゼル/BX81ガソリン (WB4300mm) 

・1949年(昭和24年) キャブオーバー車BX92追加 (COE)

・1950年(昭和25年) ピニンファリーナのアルファロメオに影響を受けたフロントマスクにデザイン変更

・1950年(昭和25年) BX95追加 (WB5000mm)

・1950年(昭和25年) BX93/BX83/BX96追加 (輸出向け左ハンドル)

・1951年(昭和26年) リアエンジン車追加 (型式=BX91X/BX91Y/BX95Y)

・1954年(昭和29年) フロントグリル変更(スリット左右4段に減少)

・1955年(昭和30年) WB4000mmの短尺車BX41追加

・1955年(昭和30年) エンジンを5654ccDA110型(ディーゼル)およびGA110型(ガソリン)に換装すると同時に型式名称を変更:ディーゼル車=BX151 (WB5200mm)/BX152(WB5200㎜)/BX141(WB4300㎜)/BX131(WB4000㎜)、ガソリン車=BX251/BX252/BX241/BX231

・1956年(昭和31年) 6126ccDA120型118HPディーゼル・エンジン搭載のBX351/BX352(WB5200㎜)を追加

・1958年(昭和33年) ガソリン車を生産中止し搭載エンジンをディーゼルDA120型に統一。型式=BX352 (WB5200㎜) /BX341(WB4300㎜)/BX331(WB4000mm)。フロントフェンダーにクロームメッキのオーナメント追加。

・1959年10月(昭和34年) ビッグマイナーチェンジ(BX552/BX531/BX521)


上記の変遷うち戦前のBX40については本シリーズ第239回記事でご紹介しましたが、今回は戦後1947年(昭和22年)のBX80から1959年(昭和34年)10月にビッグマイナーチェンジを受ける前までのボンネット型BXのみをご紹介します。1950年代のBX関係のカタログ、広報誌その他関連の印刷物は大量に存在し、それだけでも1冊の本が出来そうです。もとより全てを網羅することは出来ませんが、手元にある資料を可能な限りご紹介することとします。資料性の観点から印刷物の顔である表紙の画像を中心に掲載します。発行時期については推定も含まれますので誤り等がありましたら御指摘ください。


【主要スペック】 1958年いすゞBX341ボンネットバス  (1958 ISUZU Diesel Bus Typ341)
全長8220㎜・全幅2450㎜・全高2935㎜・ホイールベース4300㎜・車重5319kg・FR・DA120型6126cc水冷6気筒4サイクルディーゼルエンジン・最高出力120ps/2600rpm・最大トルク39m-kg/1400rpm・乗車定員49名(前向きロマンスシート29+立席18+乗員2)・変速機4速MT・最小回転半径8500㎜・最高速度76km/h(減速比5.57)




●1953年? はとバス パンフレット (縦12.7×横18cm・24頁)
新日本観光株式会社発行。はとバスに乗車した際に配布された東京観光案内のパンフレット。表紙は1953年までのフロントスリットが多いBX。車番851。中頁に1952年10月公開の高峰秀子主演の大映映画「稲妻」のワンシーンが掲載されているので1953年あたりの発行と推定。
はとバス


●1952年 自動車の知識 (縦17.8×横19cm・4つ折8面)
交通博物館発行。表紙は自動車史研究の第一人者だった五十嵐平達氏の描いたBXベースの移動図書館車。表紙に「Heitatu 1952」のサイン入り。五十嵐氏、28歳の作品。
交通博物館


●1957年3月 いすゞブック (縦25.6×横9.2cm・16頁)
1957年5月開催の第4回全日本自動車ショウで配布されたいすゞ自動車総合カタログ。表紙/裏表紙は佐藤泰治画伯の描いたBX。
いすゞブック


●広報誌「いすゞニュース」1957年12月号 (B5判・8頁)
いすゞ自動車の広報誌「いすゞニュース」の表紙を飾ったBXは多いが、これは開店35周年大売出しの垂れ幕文字が見える銀座・松坂屋前の東京都交通局のBX車番207。銀座・松坂屋は2013年、開店70年目にして惜しくも取り壊されてしまった。
いすゞニュース



●1946年12月 いすゞTX80トラック/BX80バス カタログ (縦24.5×横21cm・4つ折8面)
終戦の翌年1946年(昭和21年)末に発行された初の戦後型カタログ。社名はまだヂーゼル自動車工業。基本はTX80トラックのカタログでBX80は裏面にのみ掲載。
46表紙

裏面: BX80型バス
46中BX80


●1948年1月 いすゞBX91/BX81バス カタログ (縦15×横10.5cm・2つ折4面)
WB4300㎜。バス専用低床シャシーを採用した本格的な戦後型。このカタログでも社名はまだいすゞ自動車ではなくヂーゼル自動車工業。これは手帳サイズの小さなものだが、同じ内容でA4程度の大きなサイズでも発行されている模様。
48表紙

中面
48中頁

裏面スペック
48裏スペック



●1951年? いすゞBXバス カタログ (A4判・英文2つ折4面)
右ハンドルのBX91/81/95に加えて、左ハンドル車BX93/83/96も掲載された輸出用カタログ。表紙は芦ノ湖でしょうか。
51英文



●1952年11月 いすゞBXバス カタログ (A4判・2つ折4面)
掲載型式はWB4300のBX81/91とWB5000㎜のBX85/95。
52年穴開き



●1954年4月 いすゞBXバス カタログ (A4判・2つ折4面)
フロントグリルを変更しスリットが馴染み深い左右4段となった。
54年



●1955年 いすゞBXバス 総合カタログ (縦22×横31.5cm・4つ折8面+)
東郷青児画伯の表紙で有名なカタログ。ボンネット車に加えてリアエンジンバスBX91X-7/95X-7/91V-7も掲載。この名カタログについては本シリーズ第6回記事をご参照ください。
55年青児



●1955年12月 いすゞBX カタログ (A4判・4つ折8面)
A110型(ディーゼル)およびGA110型(ガソリン)に換装し車両型式を3桁に変更。
5512(56年型)



●1956年2月 いすゞBX351/352 専用カタログ (B5判・3つ折6面)
DA120型ディーゼルエンジン搭載車追加。
562専用B5判



●1956年11月 いすゞBX カタログ (A4判・12頁)
バス車内の乗客を描いた印象的な表紙のカタログ。表紙画の右下に「香」のサインは名の通った画家でしょうか。
56人物表紙

【中頁から】
BX352およびBX152(WB5200mm)
56中(1)BX352・152

上: BX141(WB4300mm)、下: BX131(WB4000mm)
56中(2)BX141・131

客室およびセンターメーターの運転席
56中(3)室内・運転席



●1957年5月 いすゞBX  カタログ (A4判・4つ折8面)
575正面表紙



●1957年10月 いすゞバス1958 総合カタログ (A4判・12頁)
前半5頁がBX、後半はBA/BB/BCのリアエンジンバスが掲載されたバス総合カタログ。
5710総合



●1958年5月 いすゞBX カタログ (A4判・8頁)
ガソリン車廃止。絵本のような表紙が印象的なカタログ。
585絵本表紙

【中頁から】
図面: BX352(WB5200mm)前向きロマンスシート仕様
585絵本(1)352図面

図面: BX341(WB4300mm)前向きロマンスシート仕様
585絵本(2)341図面

図面: BX331(WB4000mm)前向きロマンスシート仕様
585絵本(3)331図面



●1958年11月 いすゞBX カタログ (A4判・12頁)
1959年式。良き時代のBX最後のカタログ。
5811最終表紙

【中頁から】
BX352(WB5200mm)
5811最終(1)352絵

BX341(WB4300mm)
5811最終(2)341絵

BX331(WB4000mm)
5811最終(3)331絵





★オマケ(その1): トミカ6-2 1/110スケール いすゞBXボンネットタイプバス (ブルー)
1976年(昭和51年)3月発売。但し、これは2005年トミカ発売35周年の中国製復刻品(オリジナルは現在、行方不明)。オリジナルの当時定価220円。オリジナルの1Eホイール(旧ホイール)はかなりレアらしい。ボンネットバスの実車と同時代に造られた金属玩具(ブリキ)は米澤玩具の巨大モデルやカナメ産業の名品を始め夥しい種類が存在しますが明確に特定の車種をモデル化した製品はなく、明確な実車のモデル化はこのトミカが最初の製品。トミーではこのトミカの後に標準スケールのトミカダンディでも1960年代のBXをモデル化しています。このトミカは現在に至るまで文字通り膨大なバリエーションが出ています。
トミカ青復刻



★オマケ(その2): トミカ6-2 1/110スケール いすゞBXボンネットタイプバス (オレンジ)
当時定価960円。1977年3月発売の4台入りギフトセット「ふるさとシリーズ」(G-17)に最初のカラーバリエーションが入っていた。講談社発行のトミカコレクションのバイブル「ミニカー大百科」によれば1980年7月の再販(G-68)では一見同じながら微妙に色合いが変ったらしい。新品で当時入手したワンオーナー物。
ふるさとセット



★オマケ(その3): トミカ6-2 1/110スケール いすゞBXボンネットタイプバス「東海バス」「一畑バス」
当時定価2700円。1980年発売の8台入りギフト「日本のバスセット」(G-78)。ギフト専用として2台のBX(左下)のバリエーションを追加。トミカのBXとしては初の特定事業者モデル?前述の「ミニカー大百科」によると1981年4月の再販(G-88)では若干仕様が変ったらしい。これも当時入手したワンオーナー物。
日本のバスセット



★オマケ(その4): トミカ6-2&トミカリミテッド25番 1/110スケール いすゞBXボンネットタイプバス「立川バス」「はとバス」
2001年~2002年発売?2台共に中国製。小田急系列の立川バス特注品と細かく彩色されたトミカリミテッドシリーズでリリースされた「はとバス」。
トミカはとバス立川バス



★オマケ(その5): トミーテック 1/150 いすゞBX小田急バス
2002年発売。Nスケールながら驚異的に出来の良いバスコレシリーズの1台。事業者違いも多数あり。「吉祥寺駅」の行き先表示や矢印型リアウインカーが泣かせます。
バスコレ(1)
バスコレ(2)
バスコレ(3)



★オマケ(その6): 津川洋行 1/80スケール 1955年いすゞBX41
ホワイトメタル製。税抜9800円。BX短尺車唯一のスケールモデル。一緒に写っているのはタイムスリップグリコの1955年クラウンRS。画像の赤/クリームのツートン以外に青/クリーム、緑/クリームのカラーバリエーションあり。津川洋行のHPを見ると、2014年11月現在、青と緑は2台セット7140円で叩き売りされています。スケールは日本型16番鉄道模型の1/80より若干大き目のようです。鉄道模型の情景用精密モデルとしてはエコーモデルの日本型HO用の車内の吊革まで再現した細密キットがありましたが残念ながら未入手です。キットの元になった、エコーモデル主宰の阿部敏幸氏が1960年代末に月刊誌「鉄道模型趣味」(TMS)に投稿されたBXのフルスクラッチビルドモデルや田舎のバス車庫の記事にはそのリアリティに子供心にも驚嘆したものでした。
津川(1)
津川(2)



★オマケ(その7): ぽると出版 クラブバスラマ 1/76スケール 1958年いすゞBX341 (3種類)
1950年代いすゞBXの決定版と言えるスケールモデル。税抜3600円。品番5001国鉄バス標準塗色(赤系/クリーム)が2007年に2200台、品番5002国鉄バス暖地塗色(緑/クリーム)が2008年に2900台、奈良交通バスが2008年に3000台生産され、ぽると出版のHPを見ると2014年11月現在、奈良交通だけはまだ在庫があるようです。3台共、発売時に入手したのですが現在行方不明のため、ぽると出版のHPから画像を借用して貼っておきます。
3台

国鉄バス(標準塗色)
標準色

国鉄バス(暖地塗色)
暖地色

奈良交通バス
奈良交通



★オマケ(その8): カラーフォートえほん「じどうしゃ」 (B5判・12頁)
1950年代前半、浅草・綱島書店発行。当時定価50円。発行・撮影者:綱島孝太郎氏。表紙は白赤塗装になる前の小田急BX。車番323。
フォト絵本



★オマケ(その9): トッパンの愛児えほん「じどうしゃえほん」 (B5判・12頁)
1960年頃、フレーベル館発行。当時定価70円。絵:小山泰治画伯。1950年代から1960年代初頭にかけての自動車をテーマにした絵本にはいすゞBXを表紙にしたものが多い。
トッパン絵本(青)



★オマケ(その10): 小学館のよいこ絵本「はしれじどうしゃ」 (B5判・12頁)
1961年、小学館発行。当時定価50円。絵:安井小弥太画伯。
よいこ絵本(橋)



★オマケ(その11): 小学館のベビーえほん「たのしいばす」 (B5判・12頁)
1962年、小学館発行。当時定価60円。絵:木村定男画伯。
ベビー絵本



★オマケ(その12): 光洋社の保育絵本「かんこうバス」 (B5判:12頁)
1950年代後半、光洋出版発行。当時定価30円。絵:秋吉秀彦画伯。
かんこうバス(キリン)



★オマケ(その13): 1964年ニュース映像「ネをあげたバス通勤」 
半世紀前の混雑の激しかった都営バスを取り巻く映像。1:00と1:30位にいすゞBXの肌色に赤帯時代の都バスが映ります。初めの方にちらっと初代セドリックも確認出来ます。