★1960年 萬代屋(現バンダイ)世界の自動車シリーズ赤箱 ~ 玩具・模型カタログ棚から016 | ポルシェ356Aカレラ

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サザンの桑田さんが紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章って、何だかちょっと似合わない気がした。年齢的には裕也さんや陽水が先であるべきか。いや、裕也さんあたりは国家に叙勲されるっていうのは全く似合わない。ジョン・レノンがMBE勲章(Members Of The British Empire)を英国のビアフラ戦争への介入に抗議して返したように、体制にくみしない方が孤高のロック・ミュージシャンらしい。桑田さんの変幻自在な言葉遊び、裕也さんの骨のある過激さ、陽水のちょっとニヒルな影をもつ抒情は確実にジョン・レノンの影響下に生まれたと感じる。まあ、中島みゆきさんやユーミンも受章しているし、これまでに創ってきた楽曲の良さとポピュラリティーからすると今回の桑田さんの受章は当然のことかもしれない。時代は確実に変わっている。現代は体制・反体制といったステレオタイプの旧弊な思考では捉えきれなくなっている。

昨日アップする予定が色々とバタバタしていて1日遅れてしまいました。早いもので、もう11月です。今日の東京は何だか季節外れの暖かさで半袖で歩いている人を結構見かけました。やるべきこと、やりたいことがとても全部は出来ないまま、すぐに年の瀬、新年がやってきそうです(汗)。

今日は玩具・模型カタログ棚からの16回目。バンダイの前身「萬代屋」(ばんだいや)をピックアップします。




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★山科直治氏(1918年-1997年10月28日)が現在のバンダイの前身である萬代屋を起業したのは、戦後5年が経過した1950年(昭和25年)7月5日、山科氏が弱冠32歳の時であった。
自動車・飛行機・鉄道・船舶等の金属玩具(ブリキ玩具)の良質な製品を多数リリースし、「あかばこシリーズ」と呼ばれた模型玩具を中心とした製品群のヒットで起業10年に満たない1950年代末には既に国内玩具メーカーの中堅どころにまで成長していた。
1960年代初頭にはトヨペット・クラウン、プリンス・スカイライン、スバル360、マツダ3輪トラック等の国産車、外国車ではキャデラック、リンカーンコンチネンタル、フェラーリ、シトロエンDS等の有名どころに加えてメッサーシュミットKR200および同タイガー(4輪)やイセッタ、ツェンダップ・ヤーヌスといった当時としても極めてマニアックな車種選択のされた「世界の自動車シリーズ」がヒット商品となった。シリーズ初期の車種選定に当っては自動車模型コレクター朝田隆也氏がスーパーバイザーとして関与した。1961年(昭和36年)5月、現在の株式会社バンダイに社名変更した頃にはバンダイ製の金属自動車モデルは膨大なラインナップを誇る看板商品となっていた。


★国立国会図書館所蔵の業界誌「東京玩具商報」のバックナンバーを調べると萬代屋時代より厚口の年次製品カタログが発行されていた形跡があり、上述の朝田氏よりも立派なカタログもあった旨を伺っているのだがその現物を見たことはなく、残念ながら手元にあるものは簡易な折カタログや製品に付属していた薄いチラシ的なものだけである。もしバンダイで保存されているのであれば、既に半世紀以上前の史実として一般公開を望みたい。



●光文社 「少年」 1959年12月号 表紙 (B5判)
鉄腕アトムや鉄人28号の連載で有名な月刊少年漫画雑誌「少年」の1959年(昭和34年)12月号の表紙は萬代屋製品で埋め尽くされている。右手前にメグロの白バイ、少女のような雰囲気の少年が手に持っているのは1959年型トヨペット・クラウン・デラックス(RS21)ベースの警視庁パトカー、背後にはスバル360(ルーフが別塗りの1stモデル)、1959年キャデラック、1958年リンカーンコンチネンタル、プリンス・スカイライン、シトロエンDS等が写り込んでいる。
「少年」表紙



●講談社 「少年クラブ」 1961年3月号 表紙 (B5判)
当時、学年別雑誌が好評だった講談社発行の月刊少年漫画雑誌。少年倶楽部の創刊は1914年(大正3年)と古く、戦後1946年(昭和21年)に「少年クラブ」と漢字からカタカナに改名したのち、この号の翌年1962年(昭和37年)に廃刊となるまで約半世紀に亘り発行されていた。この号の表紙には手前に英コーギーのダイキャストミニカー群、右下にマルサン商店の赤いタンクローリー、手前に赤/青メタのSSSインターナショナル製のマンモスクレーン等と共に萬代屋製品も少年の手前にパステルブルーのマツダR360クーペ(スタンダードサイズの初版)、左に銀/黄色の20トン・クレーン車、右にクラウン警視庁パトカー等が写り込んでいる。
少年クラブ



●東京玩具商報 1959年9月号掲載 萬代屋 広告 (B5判)
国立国会図書館の蔵書より。萬代屋では1954年発売のMG-TD/TFや1956年発売の保証玩具第一号トヨペット・クラウン等既に多数の自動車模型玩具を発売していたが、この号の広告で初めて「世界の自動車を集めましょう」のコピーが登場した。「第1回(1959年8月)紹介新型製品」と称して1959年キャデラックとスバル360が掲載されている。
玩具商報1(5909)



●東京玩具商報 1959年10月号掲載 萬代屋 広告 (B5判)
これも国会図書館蔵。「1959年10月紹介新型製品」として、フィアット600、サーブ93B、マツダK360の3台が掲載されている。
玩具商報2(5910)




●1959年 萬代屋 クリスマス・カタログ (縦9×横19cm・6つ折12面)
玩具問屋や小売店向けではなく、一般向けに店頭で配布されたと思われるミニ・カタログ。表紙に「楽しいプレゼント Merry Christmas」の印字、最終頁には「上手なお買物のしかた」と題してデパートや玩具店が混雑して商品をよく見ることが出来なくなる12月20日以降でなく12月10日~20日頃までの購入を奨める旨が記載されている。価格は都内売価のみが印字されている。
クリ表紙


【中面から】 (抜粋)

・メルセデス・ベンツ219セダン (140円)
・シトロエンDS19 (140円)
・フォルクスワーゲン (140円)
クリ(2)ベンツ他


・プリンス・スカイライン(200円)
・トヨペット・クラウンDX (200円)
・スバル360 (140円)
クリ(3)プリンス他


・マツダK360  (140円)
・クボタ耕耘機 (200円)
・三菱シルバーピジョン (180円)
クリ(4)K360他


・20トン・クレーン (500円)
クリ(8)20トンクレーン


・メグロ白バイ (500円)
クリ(7)メグロ白バイ


・1959年キャデラック・セダン (280円)
・ロールスロイス・シルバークラウド (300円)
クリ(5)キャディロールス


・1958年リンカーン・コンチネンタル赤十字車、同ハイウェイ・パトロール (各290円)
クリ(6)リンカーン2種


・特急こだま レールウェイ・セット (1000円) ・・・・・先頭車16cm・中間車13cm、4両を連結すると60cm程度のサイズ。単品、レールセット共に各社から多数発売された国鉄151系ビジネス特急こだまの玩具の中では比較的珍しい製品。
クリ(9)こだまセット


最終頁: 上手なお買物のしかた
クリ(1)文章




●1960年 萬代屋 「世界の自動車を集めましょう」 専用カタログ (縦9×横18cm・3つ折6面)
デパートの玩具売り場や玩具店の店頭で配布されたカタログ。1台ずつの車名に加えて実車の生産国、都内売価、地方最低売価、全長、縮尺(スケール)が記載されている。萬代屋製品の箱に印字されることの多かった三桁の品番は残念ながら記載されていない。個々の製品の箱やカタログに縮尺まで書かれていたのはスケールモデルを謳っていた萬代屋のみだったと思われる。表紙にシトロエンの写っているこのタイプの「世界の自動車を集めましょう」シリーズ専用カタログは発行時期により2つ折で内容が異なるものなど数種類のバリエーションあり。
60表紙

カタログを開くと冒頭には以下の文章が記載されている。
世界に製品を輸出し信頼とご好評を頂いている、お馴染みのあかばこビーシー・バンダイでは、今や日本に於いてお子さんにもティーンエイジャーにも、また一般の自動車ファンなら誰にでも楽しんで頂ける世界の自動車のモデル・トーイ(金属玩具)を製作・販売し大好評を頂いております。1960年はいよいよモーター熱も高まり、自動車ファンの最高のコレクションとしてあかばこビーシーのモデル・トーイが絶好です。 
60(1)文章モデルトーイ


【中面から】 
※縮尺・車名・都内価格のみを記載します。ダットサン1000が80円、三菱3輪ペットレオが100円など価格が異様に安く感じられますが、現在の貨幣価値は当時の軽く10倍以上と思われます。

1/18 ダットサン・ブルーバード310 (160円)
1/19 トヨペット・クラウン・デラックス (200円)
1/19 トヨペット・パトロールカー (200円)
60(2)ブルクラウン


1/23 ダットサン1000 (80円)
1/19 プリンス・スカイラン (200円)
1/15 スバル360 (140円)
60(3)ダットサン1000


1/4.8 メグロ・オートバイ (400円)
1/6 三菱シルバーピジョン (180円)
1/17 三菱ウイリス・ジープ (180円)
60(4)メグロ


1/20 マツダD1100 (200円)
1/16 マツダK360 (140円)
1/18 マツダ三輪(大サイズ: 180円)
60(5)D1100K360マツダ


1/18 三菱3輪ペットレオ (100円)
1/9 クボタ耕耘機 (200円)
1/19 トヨペット・マスターライン・ライトバン (200円)
60(6)レオ久保田マスターライン


1/14 イセッタ (130円)
1/14 ツェンダップ・ヤーヌス (200円)
1/20 フォルクスワーゲン・セダン (140円)
60(7)イセッタ・ヤーヌスビートル


1/23 メルセデスベンツ219セダン (140円)
1/23 シトロエンDS19セダン (140円)
1/23 シトロエンDS19オープン (140円)
60(8)ベンツ・DS2台


1/23 シトロエンDS19ワゴン (140円)
1/18 ロールスロイス・シルバークラウド (300円)
1/23 ランドローバー (150円)
60(9)DSワゴン・ロールス


1/19 オースチン・ヒーレー (140円)
1/18 フィアット600 (140円)
1/8 ベスパ (170円)
60(10)ヒーレーフィアット


1/19 リンカーン・コンチネンタル赤十字車 (290円)
1/18 ジープ・ステーキトラック (200円)
1/16 フェラーリ・スーパーアメリカ (290円)
60(11)リンカーン赤十字他


1/27 クライスラー・インペリアル (140円)
1/19 リンカーン・コンチネンタルⅢ (300円)
1/19 リンカーン・コンチネンタル・ハイウェイパトロール (290円)
60(12)インペリアル・リンカーン2種


1/20 キャデラック62セダン (290円)
1/29 キャデラック62オープン人形付 (290円)
1/27 マーキュリー・ワゴン (140円)
60(13)キャディ2種他


カタログが入っていた封筒裏の印字: 株式会社萬代屋、住所 東京都台東区駒形2ノ5、スケールモデル・トーイズ(世界の自動車シリーズ・航空機・鉄道)等
60(14)専用封筒





★オマケ(その1): 萬代屋 1/19スケール 1959年トヨペット・クラウン・デラックス (RS21)
全長22.7cm。ボンネットに車名シールが貼られ、トヨタ自動車とタイアップしたミニカタログ、保証券またはサンキューカード、専用ビニール袋が揃っているのが新品時の状態。萬代屋の自動車モデルはヒット商品だけに結構な数が残っているが、55年の時を経てパーフェクトな状態で残っているものは少ない。画像は1stモデルで2ndモデルでは左右フェンダーミラーが付き、フロントグリルは穴の開いた実感的なものに変更されている。窓枠に紐で付けられた保証券には昭和34年3月25日御買上のスタンプ。萬代屋では製品購入後3ヵ月間は無償で修理するとしていた。当時このクラウンは旭玩具製作所からもほぼ同スケールで発売されたが、全体のバランスや「出来」は萬代屋の方が格段に勝る。実車については、自動車カタログ棚シリーズ第101回記事をご参照ください。
クラウン(1)
クラウン(2)
クラウン(3)



★オマケ (その2): 萬代屋 1/15スケール 1959年 スバル360
全長20cm。上掲の雑誌「少年」の表紙に写っているものはルーフ別色の1stモデルだったが、これはルーフ同色となった2ndモデル。更に3rdモデルではバンパーと窓枠が実車に準じた黒塗りからクロームメッキに変更されている。フロントウインド手前にカウルベンチレーターの付いた1959年後期型をモデル化している。実車については、自動車カタログ棚シリーズ第54回記事をご参照ください。
スバル(1)
スバル(2)
スバル(3)



★オマケ (その3): 萬代屋 1/20スケール 1959年 サーブ93B
全長19cm。萬代屋の傑作の1台。丸味を帯びたデザインを旨く再現している。サーブと言えば、自動車史研究の第一人者であった五十嵐平達氏が航空機的な設計・デザインを評価されて1950年代当時、1952年式サーブ92を日常の足に愛用されていた。
サーブ(1)
サーブ(2)
サーブ(3)



★オマケ(その4): バンダイ「世界の名車シリーズ」 店頭用POP
小売店用の非常に珍しいPOP。厚さ3mmの硬質プラ製。サイズは縦20×横50cm。半世紀の時を経てかなり文字がかすれてしまっているが、「スケールモデル トップメーカーのバンダイが贈る 世界の名車シリーズ」の文字。BCマークとマスコット・キャラクターの万歳マークは浮き彫り。壁や天井から吊るすための穴が開けられている。おそらく萬代屋からバンダイへ社名変更された後のもの。
店頭用POP



★オマケ(その5): 萬代屋のスバル360を持った私
1961年(昭和36年)6月17日撮影。1才7ヵ月の私が手に持っているのは萬代屋スバル360のバンパー等がメッキとなった3rdモデル。冴えない表情に妙に内股の私。ボディカラーは当時私の家のマイカーだったスバル360の実車と同じブルーグレイだった。ルーフにはマジックで「CAR」と書いてある(右下が消えかけている)。おそらく英語教育に熱心だった明治生まれの祖父が書いたもの。このあたりの記憶が私の自動車趣味の原点になっている。
1961年写真




★オマケ(その6): ちびまる子ちゃんエンディングテーマ「100万年の幸せ!!」
作詞: さくらももこ 作曲: 桑田佳祐