★1953年 フォルクスワーゲン・タイプ2 愛しの商用車T1 ~ 自動車カタログ棚から 247 | ポルシェ356Aカレラ

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★フェルディナント・ポルシェ(Ferdinand Porsche、1875年9月3日-1951年1月30日)が設計したフォルクスワーゲン・ビートル・タイプ1(本シリーズ第135回記事参照)は1938年(昭和13年)に生産開始されたが、タイプ1のデビューから12年を経た1950年(昭和25年)3月8日、タイプ1と同じシャシーにワンボックスボディを載せたトランスポーター・シリーズ(タイプ2)がデビューした。
最初にデリバリーバンがデビューし、追って、コンビ(簡易なシートを脱着式とした貨客両用車)、シングルピックアップ、ダブルピックアップ、マイクロ・バス、キャンピングカー、1951年(昭和26年)12月にはアンビュランス(病院車・救急車)と続々とバリエーションが生まれた。

★その愛くるしいルックスとビートル(タイプ1)と同じ独立懸架による乗用車並みの乗心地の良さからヒット車となり、アメリカを中心として世界中に輸出された。日本にも1953年(昭和28年)より梁瀬自動車(ヤナセ)がデリバリーバンの輸入を開始し、ソニーを始めとする大手企業を含むユーザーが動く広告、動く看板としても利用した。ケーキや瀬戸物といった商品を扱う場合であっても柔らかな乗心地のタイプ2では崩れたり割れたりせずに運べると好評であったという。

★初代タイプ2(T-1)は1967年に第2世代(T-2)にモデルチェンジするまで17年に亘り生産され(ブラジル等では更に後年まで現地生産を継続)、累計生産台数は200万台を記録した。新車として生まれ出た1950年代から1960年代という時代を超えて初代タイプ2は現在でもそのルックスが愛され続け、実車の現役当時から現在に至るまで夥しい種類のミニチュアが発売されているほか、日本ではスバルサンバーなどの軽ワンボックスカーをカスタマイズしてルックスを似せた車両が造られている。オリジナルのタイプ2よりこの軽ベースのカスタムカーの方が現代の日本の路上では遭遇する機会が多いかもしれない。


※註)VWタイプ2(T-1)のカタログは長い生産期間の中でボディタイプ別、年式別に夥しい種類が発行されている模様で、残念ながら現在手元のカタログ棚からご紹介できるものはその極く極く一部のみです。


【主要スペック】 1953年 フォルクスワーゲン タイプ2 マイクロ・バス (1953 Volkswagen Typ2 MICRO-BUS)
全長4100㎜・全幅1700㎜・全高1900㎜・ホイールベース2400㎜・車重1045kg・RR・空冷水平対向4気筒4サイクルOHV1131cc・最高出力25HP/3300rpm・変速機4速MT・乗車定員8名・最高巡航速度80km/h・ヤナセ国内輸入価格:不明



●1953年2月 フォルクスワーゲン・タイプ2 「マイクロ・バス」 専用カタログ (A4判・英文2つ折4面)
VWカタログNo.TB221。ヤナセが日本に輸入した最初の年のマイクロ・バス専用カタログ。この時期のフォルクスワーゲンのカタログ画は自動車史研究の第一人者だった五十嵐平達氏がその著書の中で「戦前のメルセデスベンツが用いていた日本画調の平面的技法を完全に成熟させ深味のある絵としたもの」と評され、五十嵐氏自身も1953年のダットサン・デラックスセダン及びスリフトのカタログ画(本シリーズ第109回記事参照)で同じタッチの画法を用いたもので表紙画のみでも1枚の作品として成り立つ秀逸なもの。
53バス表紙

【中面から】
53バス(1)
53バス(2)

室内: ルーフは大きく開閉するので、その開放感は半端ではなかったろう。
53バス(3)室内

裏面: スペック
53バス(4)裏面スペック



●1953年2月 フォルクスワーゲン・タイプ2 「コンビ」 専用カタログ (A4判・英文2つ折4面)
VWカタログNo.TK221。2列目・3列目シート取り外し可能な貨客両用のコンビ専用カタログ。2列目、3列目のシートを外した際の最大積載量は755kg。
53コンビ表紙

【中面から】
サイドドアは観音開き
53コンビ(1)観音開き

53コンビ(2)縦

53コンビ(3)白黒



●1953年2月 フォルクスワーゲン・タイプ2 「ピックアップ」 専用カタログ (A4判・英文2つ折+4面+)
VWカタログNo.TP221。荷台床面をリアエンジンに干渉しない高床として中間下部には別途荷室を加えた設計のピックアップ・トラック専用カタログ。
53ピック表紙

【中面から】
53ピック(1)白黒

裏面: スペック&図面
53ピック(2)スペック図面



●1953年2月 フォルクスワーゲン・タイプ2 「アンビュランス(救急車)」 専用カタログ (A4判・英文2つ折+/4面+)
VWカタログNo.TKR221。患者2名を搬送出来る救急車専用カタログ。
53救急車表紙

【中面から】
53救急(1)人物生々しい

患者用ベットは左右に2つ
53救急(2)ベッド左右2つ

人物が写っている救急車のカタログは何だか生々しい。
53救急(3)縦人物担架



●1959年? フォルクスワーゲン・タイプ2 「コマーシャル系」 専用カタログ (A4判・英文20頁)
VWカタログNo.151 559 29。ピックアップ・ダブルピックアップ・デリバリーバン・コンビが掲載された商用車の専用カタログ。エンジン1192cc36HP、最高速度90km/h。このカタログと同時期に他にマイクロバス、マイクロバスデラックス、キャンピングカー、救急車、消防車、コンビ警察用車の専用カタログが個別に発行されている模様。
59表紙

【中頁から】
ピックアップ
59(1)ピック

ダブルピックアップ
59(2)Wピック

デリバリーバン
59(3)デリバリバンその1
59(4)デリバリバンその2

コンビ(貨客両用)
59(5)コンビ

透視図
59(6)透視図



●1960年? フォルクスワーゲン・タイプ2 「マイクロ・バス系」 専用カタログ (A4判・英文16頁)
VWカタログNo.151 550 29。掲載車種はマイクロバス、天窓付のマイクロバス・デラックス、コンビ、キャンパー(キャンピングカー)。のっぺらだったフロント左右に小さなウインカー/スモールライトが付き、エンジンは1192cc・40HPにパワーアップし最高速度95kmとなった。
60バス表紙

【中頁から】
雪山にて
60バス(1)雪山

アフリカにてキャンプ
60バス(2)キャンプ

パリの夜
60バス(3)パリの夜

マイクロバス
60バス(4)マイクロバス

天窓の付いたマイクロバス・デラックス
60バス(5)マイクロバスDX

マイクロバス・デラックスの室内。ルーフは大きく開閉。
60バス(6)マイクロバスDX室内

キャンパー(キャンピングカー)
60バス(7)キャンパー

コンビ(貨客両用)
60バス(8)コンビ

マイクロバス図面
60バス(9)図面



●三栄書房モーターファン1958年8月号 フォルクスワーゲン・タイプ2 「キャンピングカー」 紹介記事 (B5判)
月刊自動車雑誌モーターファンに掲載された梁瀬が初輸入したタイプ2キャンピングカーの記事。経済基盤のない(貧しい)日本でこのようなクルマを果たして誰が使うのか疑問である旨が記されている。
モーターファン1958年8月号



●1963年 フォルクスワーゲン 総合カタログ (縦21.7×横28cm・日本語12頁)
梁瀬自動車発行の日本語版VW総合カタログでタイプ1(ビートル)、カルマンギアと共にタイプ2にも4頁が割かれている。日本国内で実際に使用された車両の写真が興味深い。
63表紙

【中頁から】
デリバリーバン「ヤナセ」
63(1)デリバリバン

ピックアップ「ヤナセ」
63(2)ピック

マイクロバス・デラックス
63(3)マイクロバスDX

救急車・・・果たして実際に輸入されてどこかの医療機関で使用されたのだろうか。
63(4)救急車

デリバリーバン「NTVテレビジョン」
63(5)NTV

デリバリーバン「象印」
63(6)象印

デリバリーバン「不二家製菓」
63(7)不二家



●1965年8月 フォルクスワーゲン タイプ2 本カタログ (A4判・英文20頁)
VWカタログNo.153 510 29。掲載車種はデリバリーバン、デリバリーバン・ハイルーフ(全高229cm)、コンビ、ピックアップ、ピックアップ・ワイド、ダブルピックアップ、マイクロバス、マイクロバス・デラックス。この末期モデルではフロント左右のウインカー/スモールライトが大きくなり、エンジンは1493cc・53HP、最高速度105kmとなった。フロント・ウインドは最後まで2分割のまま。
65表紙

【中頁から】
デリバリーバン
65(1)デリバリバン

デリバリーバン・ハイルーフ
65(2)デリバリバンハイルーフ

コンビ(貨客両用)
65(3)コンビ

ピックアップ
65(4)ピック

ピックアップ・ワイド・・・荷台のみ若干幅を広くした車両。
65(5)ピックワイド

ダブルピックアップ
65(6)Wピック

マイクロバス
65(7)マイクロバス

マイクロバス・デラックス
65(8)マイクロバスDX






★オマケ(その1): 英マッチボックス 1/66スケール フォルクスワーゲン・タイプ2・キャンピングカー
全長63㎜。当時定価150円。マッチボックス34番。ハイルーフ1967年製。ロールーフ1969年製。2台共に私が子供の頃に遊んだ懐かしのミニカー。観音開きのサイドドアを開けると向かい合わせのシートの中央にテーブルまで付いていることに子供心にも感動したものだった。マッチボックスの品番34はタイプⅡの指定席で1966年まではライトグリーンの1/64スケールのキャンパー(キャンピングカー)、その前は紺色の小さな1/75スケールのデリバリーバンがラインナップされていた。このシルバーボディのタイプⅡは1967年と68年が天窓付ハイルーフ仕様、1969年にコストダウンのため?ロールーフ(画像左側のモデル)となり更に1970年に極く短期間スーパーファースト(スピードホイール)となって1971年には絶版となったようだ(スピードホイールの現物は未見)。
マッチ(1)
マッチ(2)
マッチ(3)



★オマケ(その2): レゴ 1/87スケール フォルクスワーゲン・タイプ2 各種
全長50mm。当時定価:不明。輸入元:朝日通商。1966年前後の製品。1966年の業界誌「東京玩具商報」に乗用車12台セットが1400円という朝日通商の広告があるので、単品販売は120円程度?このデンマークのレゴ(LEGO)が出していたタイプⅡの硬質プラ製ミニカーも子供の頃に遊んだ懐かしのミニカー。私もこのタイプ2を始めレゴのミニカーはビートルやメルセデスのトラック群など沢山持っていた位なので、1960年代の日本にはレゴ・ブロックと共にレゴのミニカーも大量に輸入されたようだ。タイプ2だけでもマイクロ・バス、デリバリーバン、ピックアップのボディ違いに加えカラーバリエーションも多数あり。
レゴ(1)
レゴ(2)
レゴ(3)



★オマケ(その3): ミニチャンプス 1/43スケール フォルクスワーゲン・タイプ2/T1・デリバリーバン「PORSCHE」
これは近年のダイキャストモデル。シュコーからも同様のモデルが出ている。タイプ2のポルシェ・オフィシャル・サービスカー。レーシング・ポルシェと一緒に飾ると楽しい。シルバーのポルシェ356はイタリアのみで書店売りされたアシェットコレクション「ミレミリア・シリーズ」の1台。
ミニチャン(1)
ミニチャン(2)
ミニチャン(3)



★オマケ(その4): 1/43スケール他 フォルクスワーゲン・タイプ2 ミニカー各種
近年のミニカーを幾つか。タイプⅡは古今東西、各社から山のようにミニカーが出ていて集めきれないので、時たま気に入ったものだけ入手しています。色が変わるプラ製のHWなど面白いものも沢山出ています。ウェリーの(WELLY)ダブルピックアップとヒッピー・キャンパーは高速道路のサービスエリアやファミレスの売店でよく売っている1/38スケールのダイキャスト・ミニカーで後ろに引いて離すと勢いよく走り出すプルパック・モーター内蔵の子供向きの安価なミニカーながら、案外、良い雰囲気。ウェリーからは1/18のマイクロバスなども発売されています。当時物は古くはデンマークのテクノ(Tekno)などから物凄いバリエーションが出ていますが、日本のミニカーコレクターのバイブル的な書籍であるJMAC故 中島 登会長著1967年 保育社発行「世界のミニカー」に掲載されている、実車のプロモーション用にも使われたという独ヴィーキング(Wiking)1/40スケールの人形の乗ったタイプ2マイクロバスが一番出来が良い気がします。
各種ミニカー

・銀/黄「アメコミ」(英Corgi Toys/コーギー 1/43)
コーギー

・青/黄「ルフトハンザ」(独シュコー/Schuco 1/43)
ルフトハンザ

・黄/黒「ADAC」(独シュコー/Schuco 1/43)
ADAC

・白/青 ダブルピックアップ(中国ウェリー/WELLY 1/38)
ウィリーダブルピック

・白/黄 「Love」ヒッピーキャンパー(中国ウェリー/WELLY 1/38)
ウィリーラブ

・1/87HOスケール各種(独ブレキナ/Brekina)・・・これ以外にも膨大なバリエーションあり。
ブレキナ



★オマケ(その5): フォルクスワーゲン・トランスポーターの歴史
今回ご紹介のタイプ2(T1)から歴代のVWトランスポーターを紹介した動画。冒頭ではT1現役当時の貴重なオフィシャル映像が見られます。独語。




★オマケ(その6): 1962年 私の持っていた玩具のフォルクスワーゲン・タイプ2
撮影は1962年(昭和37年)11月3日。私が3歳になったばかりの時の玩具を一堂に並べて写したもの。中央に米澤玩具の初代いすゞエルフ・ダンプとマルサンの小サイズ都営トロリーバスに挟まれて赤色灯の付いた白い萬代屋(現バンダイ)製のフォルクスワーゲン・タイプ2 救急車が写っている。右下の白バイの横には1/43スケールらしき梯子の付いたフォルクスワーゲン・タイプ2ピックアップのミニカーも写っている。この写真が撮影された時点で既に潰れたり部品が失われたりしてジャンク化しているものも多い。この玩具達は私の玩具としての使命を全うして今は1台も残っていない。
1962年写真