★1950~1960年代のいすゞ消防車 郷愁の消防車 ~ 自動車カタログ棚から 248 | ポルシェ356Aカレラ

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高倉 健さんを追悼して今回は映画「幸せの黄色いハンカチ」に登場した真っ赤な1977年式のFA4型FR 2BOXファミリアの記事でもと思ったのですが、1975年以降のカタログは殆ど倉庫に仕舞ってしまい簡単には出てこないので、戦後のいすゞ消防車の記事です。

消防車といえば、昔も今もパトカーと並んで子供が好きなクルマの代表格。赤い派手な外観とメカニカルな味わいは子供ならずとも心トキメクもの。消防車の記事は過去に1度だけ2013年3月23日の本シリーズ
第123回記事で1952年ニッサンF-380型消防車をピックアップしていますが、今回は戦後の日本の消防車としては最もメジャーな存在であったいすゞTXシリーズ消防車をピックアップします。前回消防車をピックアップしてから既に1年半以上の時が経っていますので、まずは消防車の概略についておさらいしておくことにしましょう。 



★消防車は、火災その他災害に際してその鎮圧や防御を行う際に使用される特殊な装備を持つ自動車である。
日本では、赤色に塗られた道路運送車両法に基づく特種用途自動車の一つであり用途の関係から緊急自動車に指定されている。日本の消防車には、各地の消防本部が保有するものと消防団で保有するもの、空港、化学関係の企業、石油化学コンビナート、原子力発電所等の危険物取扱い施設が独自に保有するものなどがある。変り種としては皇宮警察本部(皇室警護を専門におこなう機関)が消防業務を兼務しており警察でありながら消防車を保有している。(Wikipediaより抜粋)


★日本の本格的な消防組織の始まりは江戸時代に遡るが、ガソリンエンジン付きの消防車の導入は1911年(明治44年)、メルセデスベンツのポンプ車が大阪の消防本部に配置されたのが第一号と言われ、それ以前は専ら人力による手押しポンプや蒸気ポンプを使用していた。大正初めには東京や横浜にも欧米からの輸入消防車が配置された。そして1923年(大正12年)の関東大震災を契機に消防車が急速に普及した。しかし、戦前の日本の消防車の大半は欧米からの輸入車両であった。


★消防ポンプメーカーの改造車ではない国産の自動車メーカーカタログに載った純正消防車としては、1939年(昭和14年)~1941年(昭和16年)に日産自動車がニッサン81型トラックおよびダットサン17Tトラックベースの消防車をカタログモデルとして発表し製造したあたりが始まりで(本シリーズ2012年11月11日の「ニッサン80型トラック」に関する第84回記事および2014年10月15日の「戦前のダットサン・トラック」に関する第244回記事を併せて御参照下さい)、日産では後のトラック180型、380型、580型、680型等への変遷に合せて消防車を継続的に製造した。戦後になると、マツダ、ダイハツ、オリエント等の三輪トラックメーカーを含む国内の自動車メーカー各社から消防車がカタログモデルとして発表された。


★今回ご紹介するいすゞ自動車のTX系トラックベースの消防車は、戦後、BX系バスと同様に全国的にシェアを大きく伸ばした。
終戦後、1946年(昭和21年)12月デビューのTX80より消防車仕様は存在し、消防向けの各種バリエーションはTXのマイナーチェンジに準じて変遷した。大雑把に言えば、1950年(昭和25年)にピニンファリーナのアルファロメオに影響を受けたフロントマスクに変更、1959年(昭和34年)秋にビッグマイナーチェンジ、1964年(昭和39年)に横4灯のマスクとなって1979年(昭和54年)まで生き延びた(輸出向けは1980年代前半まで?)。都内でも1980年代までは横4灯TXの消防車が普通に見られた。昭和20年代から昭和50年代にかけての長い年月に亘り全国津々浦々で見られたボンネット型TX系の消防車は、昭和という時代の日本人の郷愁を誘う1台ではないだろうか。


●当時の絵本に描かれた、いすゞTX消防車
消防車としてメジャーだったいすゞTX系消防車の描かれた絵本は大量にあり、その中から魅力的な絵を3枚。なお、絵本の表紙にいすゞTX消防車が描かれたものは夥しい種類が発行されている(本記事オマケ参照)。新旧2台のTX消防車が出動中の絵と消火活動中の現場が描かれた絵は何れも梅本 恂 画伯によるもの。1953年以前のフロントグリルの目が細かい日本橋消防署のTX照明車の絵は安井小弥太 画伯によるもの。

【出動】
出動絵本

【消火活動】
現場絵本

【夜間 照明車】
照明車絵本


●1970年頃 京都市消防局 いすゞTXG50屈折梯子消防車「青年会議所号」
きくや書店発行ファミリーえほん「ぼくらのじどうしゃ」より。
京都市



【主要スペック】 1966年(昭和41年) いすゞTXG50 空中放水屈曲梯子消防車
全長8500㎜・全幅2400㎜・全高3300㎜・ホイールベース4400㎜・車重9170kg・FR・GD150F型6気筒水冷OHV5654ccエンジン・最高出力145ps/3000rpm・最大トルク40kgm/1600rpm・変速機4速MT・梯子長15m・電装系12V・最小回転半径8300mm・最高速度79km/h・販売価格:不明


※いすゞの消防車専用カタログは手元のカタログ棚にあるものだけでも結構な種類があり、例によって資料性の観点から表紙画像を中心に駆け足で紹介することとします。また今回はオマケとしていすゞTX消防車が表紙を飾った絵本を出来る限り紹介することとします。なお、消防車ではない通常仕様の戦後のTXトラックについては項を改めてご紹介したいと思います。




●1950年? いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
掲載型式: TX80型(WB4000㎜)。よく見ると表紙のTXのナンバーが「1950」となっているので、1949年秋から1950年にかけての発行と推定。ピニンファリーナのアルファロメオに影響を受けたスタイルに変わる以前のスタイル。
50表紙

裏面
50裏


●1953年4月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
掲載型式: TX80型、TX30型(WB3000㎜)。スタイル変更した後の初期型でフロントグリルのルーバーがまだ細かい。
53年表紙


●1954年9月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
掲載型式: TX80-7型、TX30-S-7型、TX30-W-7型(後輪ダブルタイヤ仕様)。フロントグリルのルーバーをBXバスでもよく知られた左右4段に変更。
54年表紙


●1956年2月 いすゞ消防車 専用カタログ (B5判・3つ折6面)
掲載型式: TX241型(WB4000)、TX231型(WB3000・後輪ダブルタイヤ)、TX232型(WB3000)。
56年2月表紙


●1956年6月 いすゞ消防車 専用カタログ (B5判・3つ折6面)
掲載型式: TX241型(WB4000)、TX231型(WB3000・後輪ダブルタイヤ)、TX232型(WB3000)。
56年6月表紙(Copy)


●1958年4月? いすゞ消防車 専用カタログ (B5判・4つ折8面)
掲載型式: 記載なし。
58年小サイズ


●1958年12月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・12頁)
掲載型式: TX441(WB4000mm)、TX431(WB3000)。1950年代のいすゞ消防車カタログでは最も豪華なもので絵本のような表紙も魅力的。
58年絵本表紙

【中頁から】
後ろ4輪の6輪梯子消防車も掲載。
58年(1)中6輪梯子車

見渡す限りのTX消防車の整列
58年(2)整列


●1959年6月 いすゞ消防車 広告
財団法人日本消防協会発行の1959年当時3000円の豪華本「消防大鑑」に掲載された珍しい消防車の広告。
59年広告


●1960年1月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・9つ折18面)
掲載型式: TX641(WB4000mm)、TX631(WB3000mm)他。1959年(昭和34年)10月に大きくフロント周りを変更した1960年型。
60年1月表紙


●1960年12月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・9つ折18面)
掲載型式: TX641(WB4000mm)、TX631(WB3000mm)他。上掲の1960年1月版の改訂カタログで表紙から「'60」の文字が消えナンバーの文字が1960から「ISUZU」に替わり、中面も基本的には同じながら若干変更されている。
60年12月改訂版表紙


●1962年1月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・8頁)
掲載型式: TX641(WB4000mm)、TX631(WB3000mm)の他、初代エルフ消防車。
62年1月表紙


●1964年11月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
掲載型式: TXD/TXG20(WB4100mm)、TXD/TXG10(WB3000mm)の他、エルフ消防車TLG11型。横目4灯に変更。
64年表紙


●1966年6月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
掲載型式: TXD/TXG20(WB4100mm)、TXG10(WB3000mm)の他、エルフ消防車TLG11型とキャブオーバーのTD70E型。カタログNo.LT-3010。表紙の車両には入谷消防署のロゴが読める。本物の消防士さんに乗車してもらって撮影したもののようだ。
66年表紙


●1969年2月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・8頁)
掲載型式: TXD/TXG20(WB4100mm)、TXG10(WB3000mm)の他、2代目エルフ消防車TLG12型とキャブオーバーのTD70E型。カタログNo.LT-3017。表紙の車両には武蔵野消防署のロゴが読めるが、ナンバーは多摩でなく何故か品川8。これも本物の消防士さんに乗車してもらって撮影したもののようだ。
69年表紙


●1971年10月 いすゞ消防車 専用カタログ (A4判・10頁)
掲載型式: TXD/TXG20(WB4100mm)、TXG10(WB3000mm)、TXG50(WB4400mm)の他、2代目エルフ消防車TLG42型、キャブオーバーのTD70E型に加えて表紙に描かれたフォワード・ダブルキャブベースのTR20/TR30型が加わった。
71年表紙

【中頁から】
TX系最強のTXG50型屈曲梯子消防車
71年(1)TXG50梯子車





★オマケ(その1): とみやま商事(現タカラトミー) 1/66スケール 1950年代いすゞTX梯子消防車 プラモデル
とみやま商事1963年版カタログより。当時定価:全国130円。このプラモデルの完成品はイベントの展示品として見かけるが箱付未組立で現存するものは非常に少ないようだ。富山が1960年代前半に1960年型以降の新しいTXでなく、あえて1950年代のTXをモデル化した理由は謎。プラモデルとしての製品企画は1959年以前に始まったものだったのだろうか。
トミヤマ


★オマケ(その2): トミカNo.68-1 1/81スケール いすゞポンプ消防車
全長75mm。1973年5月発売。当時定価180円。右がオリジナル、中央は2001年のトミカくじⅡのバージョン、左は2006年のトミカリミテッド77番で細かく彩色されたもの。日本型HOゲージ16番 鉄道模型とほぼ同じスケールのため、鉄道模型のレイアウトにも使えるモデル。
トミカ(1)
トミカ(2)
トミカ(3)


★オマケ(その3): トミカダンディ 45番 1/58スケール いすゞポンプ消防車
全長100mm。1976年5月発売。当時定価650円~950円。ボンネット開閉アクション、消防士2名のフィギュア付。当初は紙箱で登場し1980年代にウインドパッケージとなり、80年代後半には画像にあるDE-045に品番改訂された。末期製品は赤いボディが最も濃くなり、サイドの消防庁の字体も変わっている。
ダンディ(1)
ダンディ(2)
ダンディ(3)


★オマケ(その4): サクラペット ピカピカシリーズ No.603 1/60スケール いすゞタンク消防車
全長95mm。1977年頃発売。当時定価650円(?)。単三電池付で販売された赤色灯点滅シリーズの1台。ボンネット開閉アクション付。
サクラ(1)
サクラ(2)
サクラ(3)


★ オマケ(その5): 1955年2月発行 学習研究社「のりものブック」表紙 (縦24×横17cm・20頁)
絵:木川達爾 画伯。学研の出していた「1年の学習」の付録。キリンが運転しているTX消防車。フロントグリルが細かい1953年以前の実車が描かれている。
絵本(1)のりものブック


★オマケ(その6): 1950年代 ひかりのくに絵本「消防自動車」表紙 (B5判・12頁)
絵:上田三郎 画伯。ひかりのくに昭和出版刊。当時定価35円。これもフロントグリルが細かい1953年以前の実車が描かれている。
絵本(2)粗いグリル


★オマケ(その7): 1950年代 きくやの愛育絵本「しょうぼうじどうしゃ」表紙 (B5判・12頁)
絵:初瀬五郎画伯。大阪・きくや書店発行。当時定価30円。フロントグリルが左右4段となった1954年以降のTX6輪梯子消防車が描かれている。
絵本(3)赤地


★オマケ(その8): 1950年代 えいこう社のえほん「消防じどうしゃ」表紙 (B5判・12頁)
絵:古藤幸年 画伯。永晃社発行。当時定価35円。
絵本(4)緑地


★オマケ(その9): 1950年代 ます美の幼児保育えほん「のりもの」表紙 (B5判・12頁)
絵:画家不詳。ます美書房発行。当時定価30円。
絵本(5)ます美Copy


★オマケ(その10): 1950年代 愛児絵本「しょうぼうじどうしゃ」表紙 (B5判・12頁)
絵:画家不詳。富士見出版社発行。当時定価50円。フロントフェンダーにメッキのオーナメントが付いた1958~1959年型が描かれている。
絵本(6)黄色地・赤旗


★オマケ(その11): 1950年代 トッパンの百科絵本「消防じどうしゃ」表紙 (B5判・18頁)
絵:中島章作 画伯。フレーベル館発行。当時定価100円。表紙に「監修・東京消防庁」と印字があるだけあって、消防の歴史まで解説された秀逸な1冊。これも1958~1959年型が描かれている。
絵本(7)トッパン消防庁監修


★オマケ(その12): 1960年代 フジヤのようちえん絵本「消防じどうしゃ」表紙 (B5判・20頁)
絵:秋吉文夫 画伯。文京区初音の富士屋書店発行。当時定価100円。1958~1959年の堂々たるTX6輪梯子消防車が描かれている。
絵本(8)赤白黄色


★オマケ(その13): 1960年代 えいこう社の保育絵本「消防自動車」表紙 (B5判・12頁)
絵:鈴村精一郎画伯。栄晃社発行。当時定価30円。東京タワーをバックにフロント周りを一新した1960年型が描かれている。
絵本(9)東京タワー


★オマケ(その14): 1960年代 トッパンのこども絵本「しょうぼうじどうしゃ」表紙 (B5判・16頁)
絵:中島章作 画伯。フレーベル館発行。当時定価100円。ライトを点灯して夕闇を走る1960年型。
絵本(10)濃い赤


★オマケ(その15): 1960年代 ひかりのくに声のえほん「消防自動車」表紙 (B5判・14頁)
絵:梅本 恂 画伯。大阪・ひかりのくに発行。当時定価200円。ソノシート付き「声のえほん」シリーズの1冊。
絵本(11)声の絵本


★オマケ(その16): 1960年代 ます美のデラックスえほん「のりもの」表紙 (B5判・12頁)
絵:古藤泰介 画伯。ます美書房発行。当時定価50円。バックには日産590系の救急車が描かれている。
絵本(12)黄色・救急車


★オマケ(その17): 1960年代 フジヤのなかよしえほん「じどうしゃ」表紙 (B5判・12頁)
絵:木村定男 画伯。ます美書房発行。当時定価50円。左側には縦目のセドリックも描かれている。
絵本(13)セドリック子供スノーケル


★オマケ(その18): 1960年代 栄晃社の愛児えほん「消防自動車」表紙 (B5判・12頁)
絵:甲田好文 画伯。栄晃社発行。当時定価60円。御世辞にも上手い絵ではない。
絵本(14)下手な絵


★オマケ(その19): 1960年代 コーヨー社のトップえほん「しょうぼう自動車」表紙 (B5判・14頁)
絵:画家不詳。光洋出版発行。当時定価100円。日野のキャブオーバーあたりが花形消防車となったせいか、1964年以降の横4灯のTX消防車が表紙に描かれた絵本は意外に少ない。
絵本(15)横目トップ絵本


★オマケ(その20): 1960年代 ひかりのくにダイヤ絵本15「しょうぼうじどうしゃ」表紙 (B5判・20頁)
絵:梅本 恂 画伯。大阪・ひかりのくに昭和出版発行。当時定価120円。後ろにはRS46系マスターライン・ベースの救急車が描かれている。
絵本(16)横目マスターライン救急車


★オマケ(その21): 1959年いすゞ・メッツ梯子消防車 
四谷三丁目の消防博物館の保管/展示車両。1925年(大正14年)に日本橋消防署に配置された車両が老朽化したため、1959年(昭和34年)に新車のいすゞBXバスシャシーにカールメッツ社製の梯子を載せ替えた車両。1971年(昭和36年)まで現役で活躍し、戦前の機械式梯子の昇降スピードは何と現在の油圧にも勝るものだったという。消防博物館は午前9時半から午後5時まで開館。入場無料。月曜休館。この車両、取材可能な現存車両がない限りモデル化をしないと言われるトミカリミテッド・ヴィンテージやエブロでの発売を期待したい。
消防博物館