★2代目RS40系クラウン(第102回記事参照) と共に1962年(昭和37年)10月にデビューした3代目マスターライン(第231回記事参照) のライトバンと同じボディを使用した5ナンバー乗用登録ワゴンの「クラウン・カスタム」が同時に製造販売された。
車両型式は2代目マスターラインと同じRS46であり、カスタムには末尾に「G」が付け加えられていた。
クラウン・カスタムは同じ1960年代前半の初代セドリック・エステートワゴンと共に本格的な5ナンバー国産乗用ワゴンのハシリと言えるクルマであった。クラウン系のステーションワゴンは1974年(昭和49年)秋デビューの5代目クラウン(MS80系)までカスタムの名称で販売され、1979年(昭和54年)秋デビューの6代目クラウン(MS110系)でも名称はステーションワゴンながらグレード名には伝統の「カスタム」名称が残された。なお、同じカスタムの名称を日産ではワゴンではなくセドリック・セダンの上位グレードに使用していた。
その後、クラウンのステーションワゴンは1999年(平成11年)12月デビューの11代目クラウン(JZS170系)まで存続し2007年(平成19年)6月まで生産販売された。
★初代クラウンカスタム(型式RS46G)は2代目クラウンの商用車マスターライン・ライトバンと同一ボディを使用した5ナンバー・ステーションワゴンである。
カスタム=特別注文の意味を持つクルマだけあって、販売価格はクラウンデラックス(RS41)の105万円より更に3万円高い108万円とクラウンシリーズ中の最高価格車でもあった。現代に置き換えれば、AMG Eクラスワゴン位の庶民にはおいそれとは手が届かない高価格車だったのではないだろうか。
クラウンカスタムはマスターライン同様、セダンより80mm延長されたセダン以上に伸びやかなフォルムを持ち、ボンネットが平らな当時流行のフラットデッキ・スタイル・横4灯式ヘッドライトと共にそのデザインは半世紀以上を経た現代の目で見てもさほど古臭くは見えない。セダン同様、初期のフロントグリルはトヨタのイニシャル「T」を図案化した独特のもので、丸いテールライトは同時期のフォード車を彷彿させるものであった。セダンと共通の重心の低いX型フレームにモノコックボディにエンジンはマスターラインやクラウンスタンダードの4気筒1900cc80馬力ではなく、カスタムではクラウンデラックスと同じチューンの90psが搭載され、クラウンデラックスより車重は85kg重かったが最高速度はデラックスと同じ140km/hと公表された。しかしリアサスペンションはクラウンデラックスのものではなく耐久性の観点からクラウンスタンダード及びマスターラインと同じリジットであった。セダン同様、1965年(昭和40年)10月にはOHC6気筒M型100馬力エンジン搭載車(型式MS46G)も追加された。
クラウン カスタムとマスターラインのボディプレスは共通だが外観的にはクラウン カスタムはフロントグリル及びサイドモールがクラウンデラックスと共通である点が実用向けのシンプルなディテールのマスターラインとは異なっていた。細部をちょっと豪華にしてもパッと見には商用向けの4ナンバーライトバンに見えるのは国産他社のワゴンと同様に販売上の弱みであり、クラウン カスタムの販売台数は高価格も手伝いマスターラインより遥かに少なかったようだ。
【クラウン カスタム (46G) 主な変遷】
・初代(46G)クラウン カスタムの変遷は2代目クラウン及び3代目マスターラインの変遷に準じる。
・1963年(昭和38年) 9月
最初のマイナーチェンジ。フロントグリルのT字の下辺が広がり、初期型で涙目と言われたテールライト下のバックライトがリアパネル内に移動。3速マニュアルがフルシンクロ化されオートマチック「トヨグライド」も2速半自動から2速フルオートマチックに進化。
・1965年(昭和40年) 7月
2度目のマイナーチェンジ。フロントグリルパターンが少々豪華な印象のデザインとなり、テールライトはそれまでの特徴であった丸型を廃し横型に変更した。
・1966年(昭和41年)10月
クラウンセダンと同時にOHC6気筒M型100馬力エンジン搭載車MS46Gを追加。
・1966年(昭和41年) 10月
3度目のマイナーチェンジ。フロントグリルパターンが更に豪華かつ複雑で少々オーバーデコラティブな印象のものに変更となり、各種安全装備が追加された。
・1967年(昭和42年) 9月
50系クラウンカスタム(乗用ワゴン)のデビューに伴い生産終了。
【主要スペック】 1963年 トヨペット クラウン カスタム(RS46G型) 1963 Crown Custom
全長4690mm・全幅1695mm・全高1470mm・ホイールベース2690mm・車重1350kg・FR・3R型直列4気筒OHV1897cc・最高出力90ps/5000rpm・最大トルク14.5kg-m/3400rpm・変速機3速コラムMT・乗車定員6名・電装系12V・最高速度:140km/h・販売価格108万円
●1962年9月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (縦21×横30cm・4つ折)
トヨタカタログNo. C-42。表紙はカスタムの正面と狩猟する夫婦の組み合わせ。カスタムのフロントグリルはクラウンデラックスと同じ。この最初期型では運転席側のみドアミラーが付いている。
中頁から
リアは涙目テール
ゆったりとした6人乗りシート
クラウンデラックスと共通のインストルメントパネル
4気筒OHV1900cc90psエンジン
X型フレーム
裏面: 図面&スペック
●1962年?月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (A4判・8頁)
トヨタカタログNo.T-50。左右にフェンダーミラーが付いた。中頁には白タイヤは新しいホワイトリボンが細いものと旧い太いものが混在しているので移行期だったと思われる。
中頁から
リアゲート・パワーウインド
●1963年9月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (A4判・8頁)
トヨタカタログNo.T-71。フロントグリル下辺が拡がった最初のマイナーチェンジを受けた際のカタログ。表紙のクルマのナンバーは東京ナンバーに地域名が入る前のもの。
中頁から
後席ライター&ラジオスイッチ追加、丸テールはバックライトがリアパネル内に移動した。
フルオートマとなったトヨグライド
●1964年?月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (A4判・8頁)
トヨタカタログNo.TAC3Z-9。この時期のトヨタのカタログナンバーは部外者には何とも意味不明。これも最初のマイナーチェンジ後のカタログだが、車両のナンバーが地域表示なしだったものから「品5」に変っている。
中頁から
丸テール&リアパワーウインド
●1965年?月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (縦30×横25.5cm・12頁)
トヨタカタログNo.: 印字なし。これも最初のマイナーチェンジ後のカタログ。46系カスタムのカタログでは最も豪華な印象の大判カタログで頁数が増え紙質も良い。
中頁から
●1966年1月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (縦33×横25.5cm・12頁)
トヨタカタログNo.10032/41.1。特徴的だった丸テールを廃し横長テールに変更された、2回目のマイナーチェンジを受けた後のカタログ。6気筒車は掲載されていない。このカタログの初版は1965年7月発行。
中頁から
横長テールとなりバックライトはバンパー内に埋め込まれた。
●1966年2月発行 トヨペット クラウン カスタム6気筒 専用リーフレット (縦32×横24.5cm・表裏1枚)
トヨタカタログNo.11043/41.2。追加されたOHC6気筒M型100馬力エンジン搭載MS46G型の専用リーフレット。フロントグリルには「2000」のバッチが付いた。時期的に上掲のカタログとセットで配布されたものかもしれない。
裏面: 図面&スペック
●1966年10月発行 トヨペット クラウン カスタム 専用カタログ (縦33×横25cm・8頁)
トヨタカタログNo.10053/41.10。3回目の最後のマイナーチェンジ時のカタログ。この最終版カタログは紙質も悪く比較的現存している数が少ない。例外もあるが自動車カタログは鳴り物入りで宣伝されるデビュー時のものは配布数が多く沢山残っていて、末期になる程現存するものが少ない傾向がある。セダン同様にフロントグリルが更に豪華なものに変った他、内装も安全パッドや3点式シートベルトの追加、ダッシュパネルに木目が貼られるなど大幅に変更された。
中頁から
木目貼りとなったダッシュボード
オプションのエアコン&前後席パワーウインド
前席リクライニング式バケットシート仕様が追加された
●1967年?月発行 トヨペット クラウン カスタム 輸出用カタログ (A4判・英文2つ折)
アメリカ輸出向け左ハンドル車のカタログ。国内仕様よりパワフルな6気筒2300cc115psエンジン搭載。
中面から
★オマケ(その1): 大盛屋チェリカフェニックス27番 1/40スケール 1963年&1964年トヨペット クラウン カスタム
1963年5月 大盛屋酒井通玩具 発売。当時定価380円。アンチモニー製。写真はJMAC会長 中島 登著 「国産ミニカー・マニュアル」(1998年グリーンアロー出版社刊)より。1963年式の1stと実車のマイチェンに即して造られた1964年式の2ndが出ています。1st、2nd共に大盛屋チェリカフェニックス2番の縦目セドリックバン1962年式2ndモデルのような激レアミニカーではないものの、1970年代後半に15000円前後、1980年代に2~3万円前後、1990年代に8~10万円前後、最近は箱付では12~20万円前後と結構なプレミア価格で流通しています。残念ながら私の手元には1台もありません。もしこの写真の4台をこれから箱付で入手するとなると50万~80万円程度の出費になるでしょうか。
先日、このクラウン カスタムの箱だけがオークションに出品され3万円強で落札されていました。絶版ミニカーは箱があるのとないのとでは天地程も価格が開くことがあるので、本体と箱を別々に入手する方が安上がりかもしれません。但し、箱なしのミニカーはよく出てきますが、箱のみというのは滅多に市場に出てこないことがネックになりそうです。
★オマケ(その2): ダイヤペット151番 1/40スケール 1964年トヨペット クラウン 救急車
1966年9月 米沢玩具 発売。当時定価400円。アンチモニー製。オマケ1の2ndモデルの金型が米沢玩具に流れて造られたミニカー。クラウンデラックスと同じグリルを付けたクラウンカスタムベースの救急車。赤色灯や大きな赤十字シールが何とも玩具然としていていただけないという意見もありますが、発売から既に48年が経ちこれはこれで味があります。1984年(昭和59年)1月に日暮里のミニカーショップイケダでバッタ屋流れの箱なしのダイヤペットが山のように安価で出た際に入手したもの。店頭に山積みになっていた救急車をよくよく見ると水色シートと深青シートのものがあったのでこの2台を入手。つい昨日のことのようですが、あれからもう丸30年とは時が経つのは本当に早いものです。
★オマケ(その3): ダイヤペット特注 1/40スケール 1964年トヨペット クラウン カスタム東芝カー
オマケ2と同様にオマケ1の2ndモデルの金型を使って米沢玩具が造った東芝特注ミニカー。本体に貼られたシールと外箱にアラビア語が印字された中近東向け販促品。高額プレミア品ですが非売品ミニカーとしては何故か意外に沢山市場に流通しています。香港トミカのギャランGTOの市場状況と似ていて、ある程度お金を出せば比較的容易に手に入るプレミアミニカーと言えそうです。これも残念ながら私の手元にはないので、つい先日のオークションの画像を貼っておきます。ちなみに落札価格は32万5000円でした。この金額ならば、このミニカーは画像で楽しむだけで私はとりあえず十分です。物の命は人間より遥かに長く、ミニカーを墓場までは持っていけませんので。