★1967年5月30日発売のマツダ・ロータリーの第1号車 コスモスポーツ(このシリーズ62回目の記事参照)の名を受け継いで1975年(昭和50年)10月28日に高級スペシャリティーカー=ラグジュアリースポーツ「コスモAP」が発売された。
APとは、アンチ・ポリューション=公害対策の意味であり、コスモが昭和51年排ガス規制をクリアした第1号でもあった。センターウインドウを持つ2ドア・ピラード・ハードトップボディ、縦ラインの派手なラジエーターグリル、鮮やかな赤のイメージカラーによる斬新かつ個性的なコスモAPは東洋工業(現マツダ)の爆発的なヒット作となった。高額車にもかかわらず発売半年足らずで2万台以上を売って1976年初頭にはモーターファン誌の「カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど正に時代の寵児となり、1970年代後半の国内自動車販売を大いに活性化させた。ロータリースペシャリティーカーで月販4000台以上を長期間キープしたという記録はその後も破られていない。
テレビCM等のセールス・プロモーションには大人の色香を感じさせる当時23歳の宇佐美恵子さん(1952年4月17日-)が起用された。
★初代の2シーター純スポーツカーからラグジュアリーなスポーツクーペに生まれ変わったコスモAPは、ルーチェをベースとしてリアサスペンションを4リンク・コイルにするなど改良を施したシャシーに個性的な2ドアクーペボディが載せられた。パワートレーンはいずれも51年排ガス規制をクリアした13B(135ps)・12A(125ps)のロータリーと直4・1800ccレシプロに4/5速マニュアルまたは3速ATのトランスミッションが組み合わされた。全車種に4輪ディスクブレーキ(フロントはベンチレーテッド)が装備されていたことは最大の美点であった。1977年(昭和52年)3月にはレシプロに2000ccが加わり、同年7月にはボディ後半をランドウトップに改めた「コスモL」が追加。1979年(昭和54年)3月までに全車が53年排ガス規制をクリアしたのち、同年9月にマイナーチェンジし後期型となった。後期型ではヘッドライトが丸型4灯から角型2灯に変わったほか、特徴的なL型テールが横長のオーソドックスなものとなり前期型ほどの個性は影を潜めた。1981年(昭和56年)9月のフルモデルチェンジでルーチェと兄弟車となるまでの6年間に亘り生産された。
★当時の街中では、それこそウジャウジャ見かけた大ヒット車だったが、いつの間にか街中からパッタリと姿を消してしまったのは、低燃費がネックであったロータリー車特有の短い寿命も影響しているようだ。
コスモAPの発売は私が高1の2学期のことで、当時、発売されたばかりの新車のコスモを高校の先生が買って毎日学校に乗って来ていた。その先生は生徒の嫌味ばかりを言う嫌われ者で授業も荒れて、学校に駐車しておくと生徒達に石を投げられて傷が絶えないため、毎朝コスモにボディカバーをかけた上、いつも休み時間になるとクルマが無事か見回りして確認していた。今でも思い出すと何だか滑稽で笑ってしまう。愛車を大切に思う気持ちはよく解るのだけど。ところが、私の担任だった先生は怒らなくてもただそこに居るだけでワル達も黙るような人で生徒にとても慕われていて、その先生は当時5年落ちの70年型510ブルーバードに乗って来ていたのだけれど、生徒に石を投げられるなんて心配もないのでボディカバーなどしなくても510が毎日ピカピカだったことを思い出す。
【主要スペック】 1975年 マツダ コスモAPリミテッド (型式C-CD23C)
全長4545㎜・全幅1685㎜・全高1325㎜・ホイールベース2510㎜・車重1220㎏・FR・13Bロータリー654cc×2・最高出力135ps/6000rpm・最大トルク19.0kgm/4000rpm・変速機3速AT・乗車定員5名・最高速195km/h・0‐400m15.9秒・燃費5km/L前後・販売価格181万円
●1975年10月 マツダ コスモAP 簡易カタログ(25×29.5cm・4つ折)

※中頁から

※裏面スペック

●1975年10月 マツダ コスモAP 本カタログ(25×29.5cm・24頁)

※中頁から









グレード構成は左から、リミテッド、スーパーカスタム、カスタム、カスタムスペシャルの4種で、13Bロータリーを積むのはリミテッドのみ。また、カスタム以下ではオートマは選べない。初期のボディカラーは、白、シルバーメタ、深紫メタ、青メタ、渋緑メタ、赤の6色。

※裏面スペック

★オマケ(その1):トミカ55番 1/64スケール 1975年マツダ コスモAPリミテッド
当時定価220円。サーキット・オフィシャルカー仕様は品番74。中央の赤に白シートは中国製復刻品。右側の赤はオリジナルの日本製で黄味を帯びたクリーム色のシート。ボディの赤も肉眼で見ると色味が微妙に異なりオリジナルは朱赤に近い。トミーからはコスモLや1/45スケールのトミカ・ダンディ版も発売された。



★オマケ(その2): ダイヤペットG-52 1/40スケール 1975年マツダ コスモAPリミテッド
当時定価800円。コンピュータ品番012-01379。品番の前3桁は米澤玩具がダイヤペットの製造を委託した下請け工場のコードナンバーで、012工場製は出来が良いと当時から定評があった。フル開閉アクション。カラーバリエーション5色のうち、中央のクリームは新宿小田急デパートの特注カラー。ダイヤペットからは1/30スケールでも発売された。その他、ヒット車種だけあり、プラモデルなどは大小スケールが各社で競作されている。




右側は1975年カー・オブ・ザ・イヤー受賞を記念したシールをドアに貼ってディーラーで配布したマツダのノベルティ。左側はマイナー後の後期型・角目ヘッドライトのG-136番。後期型ではバンパーも大型化されている。


★オマケ(その3): 1977年7月10日発売 コスモAP CMソング「マイ・ラグジュアリー・ナイト」
歌: しばたはつみ(1952年4月11日-2010年3月27日)
作詩: 来生えつこ
作曲: 来生たかお/編曲:林哲司
この曲のヒットで しばたはつみさんは1977年の第28回NHK紅白歌合戦に出場した。名曲です。。
★オマケ(その4): 1977年マツダ コスモAP テレビCM