【作品#0823】追跡者(1998) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

追跡者(原題:U.S. Marshals)

【概要】

1998年のアメリカ映画
上映時間は131分

【あらすじ】

半年前の殺人事件の犯人として逮捕されたシェリダンは護送中の飛行機内で命を狙われ、それがきっかけで飛行機は墜落してしまう。それに乗じて逃走したシェリダンを捕まえるべく、ジェラード連邦保安官上級代理は捜索を開始しようとするが、殺人事件に関係のある国務省外交保安局からジョン・ロイスも捜査に加わることになる。

【スタッフ】

監督はスチュアート・ベアード
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はアンジェイ・バートコウィアク

【キャスト】

トミー・リー・ジョーンズ(ジェラード連邦保安官上級代理)
ウェズリー・スナイプス(マーク・シェリダン)
ロバート・ダウニー・Jr(ジョン・ロイス)
ジョー・パントリアーノ(コズモ)
トム・ウッド(ニューマン)
イレーヌ・ジャコブ(マリー)
ケイト・ネリガン(キャサリン・ウォルシュ)

【感想】

無実の人間が脱走してそれをサミュエルが追うというのは前作「逃亡者(1993)」と全く同じ構図である。前作は護送中のバスの事故だったが、本作では飛行機内での事故が原因で墜落して脱走する形となっている。後に飛行機内でシェリダンが殺される理由がわかるが、仮にシェリダンを殺すことが目的だったとしても護送中の飛行機内でやることかね。

この前作の焼き直しとも言える作品を引き継いだのは娯楽映画の編集ではレジェンドクラスのスチュアート・ベアードである。彼は「エグゼクティブ・デシジョン(1996)」で監督デビューし、本作が監督2作目である(ちなみに監督作は次回作の「ネメシス/S.T.X(2002)」が最後)。やはり娯楽映画を編集として数多く手がけてきただけあり、退屈することはなかったように思う。

前作との違いはウェズリー・スナイプスというアクションのできる若い俳優を起用し、さらにトミー・リー・ジョーンズ演じるジェラードにもアクションする場面を増やしているところだろう。本作に前作のような犯人捜しの面白さを期待するのは難しいだろうからアクションで繋いでいくのは方向性としてはありだろう。

また、味方するはずのジョン・ロイスが実は裏切り者というか悪役という設定はそもそも無理があったように思う。いくら半年前の殺人事件の犯人が関係しているからと言って捜査の部外者が加わるなんて無茶な話だし、ロバート・ダウニー・Jr演じるジョン・ロイスは登場シーンからして怪しげだ。「実は本当に味方」とか「敵と味方の間に立たされているキャラクター」とかにしないと意外性すらない。

というか、シェリダンが半年前のCIA時代にニューヨークで二人の男を殺したという話からして無理がある。半年前の事件があったからこそ映画で描かれる現在に至る動線があまりにも少ない。半年経過してシェリダン含め関係者一同は何をしてんねんという話だ。細かいところだが、冒頭の事故の場面もシェリダンはなぜブレーキを踏まないのか。事故りにいっているやんか。また、このシェリダンに協力的な恋人マリーがいるというのもご都合主義的である。この手のアクション映画の主人公の味方をする女性というステレオタイプにもほどがある。

本作の一番の疑問点はニューマンが殺される一連の場面である。逃走したシェリダンは老人ホームに逃げ込み、ジョン・ロイスがシェリダンの頭に銃を突き付けているところへニューマンが入って来て、味方であるはずのジョン・ロイスがニューマンに銃を発砲しニューマンは死んでしまい、シェリダンを逃がすことになる。この場面で初めて観客に向けて「ジョン・ロイスが悪役(のうちの一人)ですよ」と示したことになる。ラストの場面でジョン・ロイスは病室にいるシェリダンを殺そうとするのだが、もし殺すことが最優先ならなぜジョン・ロイスは老人ホームの部屋でシェリダンの頭に銃を突きつけたままだったんだろうか。そこで撃ち殺して、後で「シェリダンが撃って来ようとしたから先に撃った」とでも言えば良かっただけの話である。

つまり、ニューマンが殺された理由が分からないのだ。本作で若手のニューマンが殺される必要はないはずだ。最終的に主人公が行動する動機付けにしかなっていないように思う。本作で顔と名前の一致するキャラクターの死はおそらくニューマンだけだろう。ジェラードが非道に見えて人間味あるところは前作「逃亡者(1993)」で描かれた。本作でジェラードは仕事に私情を持ち込むと明言し、ニューマンの復讐に走っている。もう前作と同じような感情表現はできないにしても主人公のドラマ面はもう少し頑張ってほしかったところだ。

そして、シェリダンが捕まり病院で護衛される中、ジョン・ロイスはジェラードがコーヒーを取りにいき、護衛に使いをやらせると、シェリダンのいる病室に入って彼を殺そうとする。そしてジェラードに阻止されて一件落着となる。ジョン・ロイスはただのアホなのか。ジェラードがコーヒーを取りにいくのなんてたかだか数分。護衛を使いにやったところでシェリダンが死んだらジョン・ロイスの仕業になるに決まっている。彼は追いつめられていたのかもしれないが、その場でやるならなぜ老人ホームで殺さなかったのかという話だし、そこまで追いつめられた感も伝わってこない。

上述のような不満点は多数ありながらも、娯楽映画としてそこそこ楽しめたのは事実だ。131分もそこまで長く感じなかった。何というか90年代っぽいという懐かしさみたいなものを感じたのもあるかもしれない。アクションシーンの構築や特にジェリー・ゴールドスミスの音楽などがそれに該当するように思う。映画の出来と面白く感じるかはまた別なんだろうな。

【関連作品】

逃亡者(1993)

「追跡者(1998)」…上記作品のスピンオフ



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

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├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

<BD>

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├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├スチュアート・ベアード(監督)による音声解説
映像特典
├ビハインド・ストーリー
├メイキング:飛行機不時着の分析
├ドキュメンタリー:連邦保安局の歴史

├オリジナル劇場予告編