【作品#0824】愛と哀しみの果て(1985) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

愛と哀しみの果て(原題:Out of Africa)

【概要】

1985年のアメリカ/イギリス合作映画
上映時間は161分

【あらすじ】

デンマークからブリクセン男爵と結婚するためにアフリカにやって来たカレンのアフリカでの生活を描く。

【スタッフ】

監督はシドニー・ポラック
音楽はジョン・バリー
撮影はデヴィッド・ワトキン

【キャスト】

メリル・ストリープ(カレン)
ロバート・レッドフォード(デニス・フィンチ・ハットン)
クラウス・マリア・ブランダウアー(ブロル・ブリクセン)

【感想】

1937年にアイザック・ディネーセンが発表した「アフリカの日々」の映画化作品は、アカデミー賞では作品賞含む7部門を受賞した。また、シドニー・ポラック監督とロバート・レッドフォードの6度目のタッグ作品でもある。

この物語で何を描きたかったのかは正直よく分からなかった。

カレンという一人の女性がデンマークからアフリカにやってきて、男爵夫人という肩書に憧れて結婚したものの、冒険家のデニスに惚れて男女の関係になるが彼には結婚を断られ、そのデニスが死にカレンはデンマークに戻るというお話である。ちなみに、映画内でカレンは一度だけデンマークに梅毒の治療のために戻るのだが、その場面すら映画内ではナレーションで語られるだけであり、映画が始まってから終わりまですべてアフリカが舞台となっている。

カレンは男爵夫人というステータスを得るためにアフリカにやってきた女性である。観客の感じる最初の印象は「いけ好かない女性」であろう。映画的にはそれが始まりでも良いのだが、この印象が映画の終わりまでそこまで変化がないというのは一体どういうことか。

カレンとブロルとの間にはもともと愛があったわけではないので彼らの関係はさっぱりしている。別に他に好きな人ができようと彼らは感情的になって喧嘩することもない。結婚して早々に農場経営を巡って意見が対立するのだが、その件も夫婦間で揉め事に発展することはない。現地民から「コーヒーは高地では育たない」と反対されるが、何とかコーヒー栽培を成功させていく。ところが、その苦労もそれほど描かれるわけではない。

また、他の女とも遊ぶブロルから梅毒をうつされたカレンはデンマークに帰国して治療をするが、子供を産めない体になってしまう。それでも、治療を終えるとカレンは再びアフリカの地を踏み、ブロルとも離婚することはない。カレンがそこまでしてデンマークを離れたい、アフリカに来たい、ブロルと離婚しないという選択をする理由は私には伝わってこなかった。

コーヒー栽培が順調に進むと、カレンは次にキクユ族のために学校を作りたいと言い始める。キクユ族の長から学校で学んだ欧米人はどうなったと言われてカレンは何も答えられなくなる(おそらく第一次世界大戦のことを指摘されているのだと思うが)。

そして、事ある毎に再会するデニスとカレンはついに結ばれることになる。アフリカという広大な土地で何度も再開する彼ら。確かにロバート・レッドフォード演じるデニスは男性フェロモンを醸し出しているが、この二人の間のドラマも描けたようには思えない。

アフリカという広大な土地を映すショットは何度もあったが、映像的な広がりを最も感じられるのはカレンがデニスと一緒に飛行機に乗る場面であろう。この場面も含めてだが、アフリカの大自然を映した撮影と映像を盛り上げるジョン・バリーの音楽はとにかく素晴らしかった。この映像的な広がりこそ、カレンという割と頭の固いキャラクターの考えを変えさせる契機となるべきだと思うが、決してそうでもない。

男爵夫人という肩書に憧れてデンマークからわざわざアフリカにやって来た女性が苦労しつつも何とか力強く生きていき、恋をした冒険家を亡くしてアフリカを去るという物語。第一次世界大戦前の時代に肩書に憧れてヨーロッパからアフリカにやって来るなんてとてつもない行動力だと思うが、逆にいえば良くそのあこがれだけを頼りにそこまで行動できるなと思ってしまう。映画としては最初は観客が好きになれないキャラクターでも徐々に好きになってもらえたらという思いがあったのだと思うが、主人公のカレンは最初から最後まで印象は特に変わらなかったな。

カレンが結婚したブロルも恋をしたデニスも所詮は冒険家。同じ場所にずっと身を置くことができないのだろう。その場限りの付き合いなのだろう。ただ、それはカレンにも言えることだと思う。彼女だってヨーロッパという場所を捨ててアフリカにやって来た。そして、恋をしたデニスが亡くなればアフリカを去ることになる。本作の原題は「Out of Africa」であり、直訳すれば「アフリカから外へ」とか「アフリカを抜け出して」といった意味になる。カレンにとってアフリカという地は遅すぎた、そして長すぎたイニシエーションだったのだろう。

かなり好意的に解釈すれば理解できなくもない作品ではあるが、これほどの上映時間をかけても描きたかったことはうっすらとしか伝わってこなかったし、ほぼ画面内に登場するカレンについて理解できたとも思えないし、観客という立場で客観的に何かを感じたわけでもない。やはりアカデミー賞作品賞受賞作品となれば見る側のハードルも上がるが、本作は他に目ぼしいのがなかったのだと思うしかない。




取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/スワヒリ語/アラビア語)

 

<Amazon Prime Video>

言語
├日本語吹き替え


【ソフト関連】

<BD+DVD>

言語
├オリジナル(英語/スワヒリ語/アラビア語)
├日本語吹き替え
音声特典
├シドニー・ポラック(監督)による音声解説
映像特典
├未公開シーン
├アフリカの歌

├オリジナル予告編