【作品#0782】ハード・ターゲット(1993) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ハード・ターゲット(原題:Hard Target)

【概要】

1993年のアメリカ映画
上映時間は97分

【あらすじ】

ホームレスになっていたナターシャの父親が人間狩りの犠牲になり、ナターシャと父親を探していたチャンス・ブードローは人間狩りをやっているエミールらの標的になってしまう。

【スタッフ】

監督はジョン・ウー
音楽はグレーム・レヴェル
撮影はラッセル・カーペンター

【キャスト】

ジャン=クロード・ヴァン・ダム(チャンス・ブードロー)
ランス・ヘンリクセン(エミール・フーション)
アーノルド・ヴォスルー(ピク・ヴァン・クリーフ)
ヤンシー・バトラー(ナターシャ)

【感想】

製作総指揮のサム・ライミは英語が苦手でハリウッド初挑戦のジョン・ウーの管理を任され、もしジョン・ウーが監督続行不可能になった際はサム・ライミが監督を引き継ぐことになっていたらしい。

主人公のチャンス・ブードロー役はカート・ラッセルにオファーされていたが、2年も待てないとしてジャン=クロード・ヴァン・ダムに話が行き、彼は「ダブル・インパクト(1991)」の撮影で香港を訪れた際にジョン・ウー監督と会っている。ちなみに、主演したジャン=クロード・ヴァン・ダムだけでなく、ランス・ヘンリクセンやアーノルド・ヴォスルーらもジョン・ウー監督のファンだった。

とにかくジャン=クロード・ヴァン・ダムがこれでもかと決めまくる映画。特に仕事の依頼を一度は断ったナターシャの車の前に現れる場面なんかは見ているこっちが恥ずかしくなるレベル。とてもホームレスには見えない。ただ、主人公にとって初めてのアクションシーンとなる場面はなかなか良い演出だった。敵に囲まれたチャンスはコートをめくって右のベルト付近を敵に見せる。本来なら拳銃を見せて敵を威嚇するところだが、ジャン=クロード・ヴァン・ダムといえば回し蹴り。この仕草の後に彼の回し蹴りが炸裂するのだからこの演出はカッコいい。

ジョン・ウーにとって初のハリウッド挑戦となった本作だが、香港時代のトレードマークでもあったスローモーション、2丁拳銃、鳩は本作にもちゃんと出てくる。「そんなところにスローモーション必要か」と思うことは香港時代にもあったのだが、これがジョン・ウーのスタイルなので違和感を覚えるほどではない(人によってはくどく感じてイライラするかも)。

ジャン=クロード・ヴァン・ダムももちろん本作以前の映画で銃を扱うことはあったが、ここまで銃をぶっ放すこともなかっただろう。なので本作のアクションで銃とヴァン・ダム得意の回し蹴りをどう組み合わせるかという部分は解決できないままだったように思う。何発か銃を撃ち込んで最後に回し蹴りを決める(最後の回し蹴りは意味ある!?)みたいなのが散見された。

また、走行中のバイクから立ち上がって銃を撃ち車と衝突する寸前でジャンプするのもちょっとやり過ぎかな。走行中のバイクから立ち上がれば無防備に撃たれてしまう可能性が高くなるわけで。他にもいつものジョン・ウー作品のように銃弾は無限に発射され、一応はリロードするという申し訳程度の演出。

ラストは倉庫で繰り広げられる豪華なアクション。ちゃんとクライマックスと分かるように他の場面とは比べ物にならない量の火薬と銃弾が用意されている。細かいことは気にせず次々に敵をやっつけていく。ただ、ここでもヒロインのナターシャをどう絡ませたら良いのか分からず中途半端に絡んでくるという最悪の手を打っている。これならただの傍観者でも良かった。

敵役はランス・ヘンリクセンで、側近はアーノルド・ヴォスルーと手堅いキャスティングでそれぞれが印象深い存在感であった。一方で、本作では紅一点を演じたヤンシー・バトラーは驚くほどに見せ場も存在感もなかった。弁護士という設定の割にあまり頭が良いとは感じないし、かといってアクションができるわけでもない。もう少し利口な立ち振る舞いができていればこれほど多くの被害者は出なかったのではないだろうか。一応は主人公とのロマンスも撮影されたようだがカットされたようだ(当然!!)。こうなるくらいなら、いっそのこと主人公に仕事の依頼をするキャラクターは女性ではなく男性に変更すべきだったんじゃないか。

一応テーマに触れておくと、悪役のフーションはホームレスをターゲットにした人間狩りで富裕層から金を取ってそれなりに成功しているという設定だ。その人間狩りを盛り上げるために、ターゲットとなるホームレスはある程度の戦闘能力があるベトナム帰還兵となっている。ベトナム帰還兵は「ランボー(1982)」で描かれたように、戦地で酷いことをしているとして帰国しても世間から厳しい目を浴びせられ、なかなか仕事にありつけなかったのだ。まさにナターシャの父親も、そしてチャンスの友人エライジャもホームレスとなり、そしてフーションのターゲットになってしまう。エライジャは撃たれながらも人気のある通りに出て助けを求めるも誰一人助けてくれない。誰もが彼のことを銃に撃たれた被害者ではなく汚いホームレスとしてしか見ていない。世間の冷たさ、ベトナム戦争でアメリカ兵が経験した悪夢になかなか気付いてくれない様子と重なる。このテーマが持続したのはこの辺りまでかな。以降はテーマを無視したただのアクション映画になっていく。

製作費1,500万ドルという事情を鑑みれば十分すぎる出来だったんじゃないだろうか。この成功があったからジョン・ウーはハリウッドで次回作以降徐々に予算アップしたアクション映画を撮ることができたはずだ。また、ジャン=クロード・ヴァン・ダムのアクション映画の中でも強いて一本挙げるなら本作になるだろう。

【関連作品】


「ハード・ターゲット(1993)」…シリーズ1作目
「ハード・ターゲット2:ファイティング・プライド(2016)」…シリーズ2作目



取り上げた作品の一覧はこちら



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