【作品#0763】エクスペンダブルズ(2010) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

エクスペンダブルズ(原題:The Expendables)

【概要】

アメリカ/ブルガリア/スペイン/ドイツ合作映画
上映時間は103分
※ディレクターズ・カット版は113分

【あらすじ】

傭兵集団「エクスペンダブルズ」を率いるバーニー・ロスは、中南米の小国ヴィレーナの独裁者を倒すことを依頼され、相棒のリー・クリスマスと共に偵察に向かう。

【スタッフ】

監督/脚本はシルヴェスター・スタローン
音楽はブライアン・タイラー
撮影はジェフリー・L・キンボール

【キャスト】

シルヴェスター・スタローン(バーニー・ロス)
ジェイソン・ステイサム(リー・クリスマス)
ジェット・リー(イン・ヤン)
ドルフ・ラングレン(ガンナー・ヤンセン)
テリー・クルーズ(ヘイル・シーザー)
ミッキー・ローク(ツール)
ジゼル・イティエ(サンドラ)
エリック・ロバーツ(ジェームズ・モンロー)
カリスマ・カーペンター(レイス)
ブルース・ウィリス(チャーチ)※ノンクレジット
アーノルド・シュワルツェネッガー(トレンチ)※ノンクレジット

【感想】

シルヴェスター・スタローンは当初、大ファンであるクリント・イーストウッドに監督をオファーしたが断られたことで自身が監督を務めることになり、彼が「ロッキー」と「ランボー」シリーズ以外で監督を務めるのは「ステイン・アライブ(1983)」以来となった。また、シルヴェスター・スタローンとドルフ・ラングレンの共演は「ロッキー4/炎の友情(1985)」以来25年ぶりであり、シルヴェスター・スタローン主演作品が全米の興行収入で1億ドルを突破したのもこの作品以来となった。

キャスティングに関する話は他にもある。ミッキー・ロークはキャリア低迷期にシルヴェスター・スタローンから「追撃者(2000)」でオファーを受けたことへの恩返しとして本作への出演を決意し、「アイアンマン2(2010)」の撮影と同時並行して行われている。

また、ヘイル・シーザー役は当初ウェズリー・スナイプスにオファーされたが税金に関する問題を抱えており出国制限が課されていたために出演できず(後に「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション(2014)」で出演がかなっている)、更にはフォレスト・ウィテカーや50セントからオファーを断られてテリー・クルーズに役が回ることになった。それから、スティーヴン・セガールもカメオ出演のオファーを受けたが、本作のプロデューサーの一人であるアヴィ・ラーナーと関係が良くないとして断っている。

これ以外にもキャスティングに関する話はいくらでもあり、その話を読んでいるだけでも楽しい(興味があればIMDbの本作のページのトリビアを参照ください)。では、その楽しさが映画本編から得られるかと言われたらそれは全くない。

結論から言うと、なんかごちゃごちゃした映画。80年代っぽいアクション映画かというとそれもちょっと違う。バーニー・ロスとリー・クリスマスの二人が偵察に行き、一旦戻ってきてみんなで襲撃するというだけのお話なのに、映画が始まってから終わるまでがきれいな直線を描いているように感じない。特に二人が偵察から帰ってきてからがそうだ。リーの彼女だったレイスに関連のエピソードが本筋に何の影響ももたらしていない。レイスの顔に殴られた痕があったのを見たリーが彼女の顔を殴った男とその連れをこてんぱんにする場面があるのだが、こんなところにアクションシーンもいらない。この映画なら他で暴れる場所はいくらでもあるだろうに。

そして、冒頭のアクションシーンでトラブルを起こしてチームから追放されたガンナーとの一件もこの後に描かれる。どうやら追放されたガンナーはバーニーらを裏切っていたことが判明する。この裏切り行為も映画的に何の役にも立っていない。序盤でチームの輪を乱して追放された者が裏切るなんて何の捻りもない。

こんなサブストーリーや設定はすべて排除して、アクション映画でかつて活躍していた、あるいは現在活躍中の男たちをバーニー・ロスが集めに行き、極悪人を頂点としたとある組織を殲滅するお話で良かった。それこそスタローンが来日中の記者会見で「七人の侍(1954)」の影響を受けたと語っていたように(リップサービスだと思うが)、バーニーがかつての仲間を訪れてチームにしていく過程を前半でサラッと描き、後半にそのチーム員が大暴れするだけで良かったんじゃないだろうか。このオールスターキャスト映画はスタローンが各所に声を掛けたことで実現したはずだ。その過程を映画内に盛り込めば良かったと思う。

そんな俳優たちが結集していても、キャラクターに個性が与えられているのは事実上のダブル主演であるシルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、それからジェット・リー、実質途中退場のドルフ・ラングレンくらいである。それ以外のキャラクターは搭乗時間が少ない、またはその他大勢に数えられるような扱いだったように思う。また、キャラクターごとに得意分野があるようだが、リーがナイフの使い手である以外はどれもこれも一緒という印象だった。それこそ上述のようにバーニー・ロスが仲間を集める過程でそのキャラクターたちの個性も描けたと思う。せめてそれぞれのアクション俳優が得意としてきたアクションでそれぞれに見せ場を作れなかったものか。

そんな個性をぶっ壊しているの最たるものが終盤のアクションシーンである。本作のアクションシーンは2000年代後半以降のアクション映画らしい引き締まった演出になっているのは確かだが、あまりにも爆破などに頼り過ぎており、悪い意味で80年代から90年代っぽいアクションにもなっている。これだけ集まったのにアクションシーンでチーム感が全く出ていないのは致命的。

これだけラスト大暴れしようが爆破しまくろうが、映画内で一番印象に残るのはスタローン、シュワ、ブルース・ウィリスの3人が集う場面だろう。また、映画本編よりも映画製作に至るキャスティングに関する裏話のほうがよっぽど興味を引く。これだけのキャストが集まったというのにごちゃごちゃして映画が終わったとなるとやはり企画倒れだったんじゃないかと思ってしまう。

【関連作品】


「エクスペンダブルズ(2010)」…シリーズ1作目
エクスペンダブルズ2(2012)」…シリーズ2作目
エクスペンダブルズ3 ワールドミッション(2014)」…シリーズ3作目
「エクスペンダブルズ4 ニューブラッド(2023)」…シリーズ4作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】

 


【配信関連】

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言語
├オリジナル(英語/スペイン語)

 

<Amazon Prime Video>

 


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├日本語吹き替え


【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├シルヴェスター・スタローン(監督/脚本/出演)による音声解説
映像特典
├オリジナルトレーラー
├NGシーン集
├未公開シーン


<BD>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├シルヴェスター・スタローン(監督/脚本/出演)による音声解説