【作品#0722】355(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

355(原題:The 355)

【概要】

2022年のアメリカ/中国/香港/台湾/フランス合作映画
上映時間は122分

【あらすじ】

コロンビアの麻薬カルテルが開発したあらゆる機器を操ることのできるデバイスを、諜報機関の特殊部隊がダッシュすることに成功するが、特殊部隊のルイスはそれを奪って姿を消してしまう。アメリカのCIA諜報員であるメイスはそのデバイスを奪取すべくフランスに向かう。

【スタッフ】

監督/脚本はサイモン・キンバーグ
音楽はトム・ホーケンバーグ
撮影はティム・モーリス=ジョーンズ

【キャスト】

ジェシカ・チャスティン(メイス)
ダイアン・クルーガー(マリー)
ルピタ・ニョンゴ(ハディージャ)
ペネロペ・クルス(グラシエラ)
ファン・ビンビン(リン)
セバスチャン・スタン(ニック)

【スタッフ】

ジェシカ・チャスティンが「X-MEN:ダーク・フェニックス(2019)」の製作中に監督のサイモン・キンバーグに本作の企画を提案したところから始まった作品。批評家からは酷評され、最大で7,500万ドルに上った製作費だったが、コロナ禍の影響もあり売上はたったの2,800万ドルに終わった。

ジェシカ・チャスティンは本作の2年前「AVA/エヴァ(2020)」でアクション映画に初参戦し、本作が彼女にとって2度目のアクション映画主演という形になるだろう。両者に共通することは、どちらも今までの映画なら主人公が男だったところを女に変えているという点だ。もっと言うなら変えている「だけ」だ。

また、「AVA/エヴァ(2020)」と同様に、ジェシカ・チャスティンが演じる主人公は全く強そうに見えない。残念ながらと言うべきか、諜報員というプロっぽさはなく、素人の女性が訓練を受けて頑張っているようにしか見えないのだ。スタントとの映像を組み合わせることによってアクションシーンはかなり凸凹した印象を受ける。ただ、強いて言うなら、ダイアン・クルーガーは強そうに見えるし、ファン・ビンビンも悪くなかった。最終的に5人で1つのチームになっていくが、中でも主人公といえるジェシカ・チャスティン演じるメイスが一番強そうであってほしいものだ。これはサイモン・キンバーグ監督の演出の問題もあるとは思うが。

そして、この5人の組み合わせはアメリカ人(白人と黒人)、ドイツ人、スペイン人、中国人と、満遍なく集めました感がする(これはしょうがないか)。ちなみに、マリー役は当初マリオン・コティヤールだったが、降板してダイアン・クルーガーになったらしい。この役はマリオン・コティヤールよりかはダイアン・クルーガーの方が良かったんじゃないかと思う。

それから、ジェシカ・チャスティンが企画を持ち込んだ時点で「ミッション:インポッシブル」シリーズや「007」シリーズについて言及があったように、その女性版を作りたかったのだと思う。女性だけが活躍するチームを描こうという意志は伝わってくるが、所詮は男を女に変えただけにしか見えないところはもったいない。メイスを中心に据えた女性5人組になるのだが、どうもキャラクター的な魅力も乏しい。上述のように最もインパクトがあるのはどう見てもダイアン・クルーガーである。各キャラクターに役割は与えられており、この5人の中にオスカー女優が3人もいると言うのに演技アンサンブルはうまくいったとは言い難い。

また、悪役ニックは序盤から胡散臭すぎる。仕事で相棒になったメイスを口説こうとすると、メイスは当初拒否するのだが、次第にメイスの方から積極的になっていく。そして、いざ仕事の場面になるとトラブルに見舞われてニックはどうやら死んだということになる。この時点でメイスが軽い女性に見えてしまうし、ニックが生きていることは多くの観客が察したことだろう。彼らが体の関係を持つ意図は分からなくもないが、仕事上の信頼できる相棒という位置づけでも十分だったんじゃないか。

クライマックスの戦いでメイスは宿敵ニックとの格闘になる。メイスはニックをやっつけるがとどめを刺すことはない。そうすると、案の定ニックが立ち上がり銃撃によってマリーが倒れてしまう。そして、ニックがメイスを撃とうとすると、銃を持つことをずっと拒否してきたグラシエラがニックを撃つことに成功する(「ダイ・ハード」(1988)」のパウエルかよ!!)。メイスがニックにとどめを刺しておけばマリーは撃たれずに済んだはずである。あるキャラクターに見せ場を用意するために主人公の詰めが甘く仲間が撃たれる脚本はさすがにいただけない。まだ、マリーが撃たれる前にグラシエラが撃つ脚本では駄目だったのか。

そこから2ヶ月して、当たり前のように生きているニックの家に5人で押しかけ毒殺して映画が終わる。女性が活躍する物語にしても、そもそものデバイスの奪い合いにしても、練り込みが総じて足らず、どうも大味なスパイアクションという印象は拭えない。映画の終わらせ方を見るに、あわよくばシリーズ化してやろうという感じを受けるが、この質と売上ではこの作品限りになること間違いなしだろう。

フェミニストとしても知られるジェシカ・チャスティンがかつての男性主人公の映画に女性として主演することは十分に理解できる。ただ、やはり強そうに見えないし、娯楽性にも乏しいし、彼女が主演しているからこそ得られるものも見当たらない。演技のできる俳優によるアクション参戦はリーアム・ニーソン以降久しいが、その女性版を目指しているのか。ただ、この路線にしてはもう少しアクションにキレがあると尚の事良いと思うのだが、これから進化していくとは思えないなぁ。

 

 

 

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【ソフト関連】

 

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映像特典

├未公開シーン
├痛む乱闘
├共演者の足跡
├疾走するパリ
├マラケシュ再現
├視覚効果の力
├インタビュー
├劇場予告編