【タイトル】
マチェーテ（原題:Machete）
【概要】
2010年のアメリカ/ドイツ/イギリス合作映画
上映時間は105分
【あらすじ】
連邦捜査官だったマチェーテは麻薬王トーレスによって妻子を殺されてしまう。それから3年後、日雇労働者になっていたマチェーテは不法移民の取り締まり強化を政策に掲げるマクラフリン議員の暗殺をブースという男から依頼される。
【スタッフ】
監督/製作/脚本はロバート・ロドリゲス
音楽はジョン・デヴニー
撮影はジミー・リンゼイ
【キャスト】
ダニー・トレホ（マチェーテ）
ジェシカ・アルバ（サルタナ・リベラ）
ロバート・デ・ニーロ（マクラフリン）
ミシェル・ロドリゲス（ルース）
スティーヴン・セガール（トーレス）
リンジー・ローハン（エイプリル）
ジェフ・フェイヒー（ブース）
チーチ・マリン（パードレ）
ドン・ジョンソン（ヴォン・ジャクソン）
【感想】
「グラインドハウス（2007）」内で使われた偽予告編だった映画の長編映像化作品。ロバート・ロドリゲス監督とダニー・トレホは「デスペラード（1995）」で共に仕事をした際に親戚であることが判明し、以降は共に多くの作品で共に仕事をしていた。そんなダニー・トレホにとっては66歳にして初の主演映画となった。また、スティーヴン・セガールにとって本格的な悪役は本作が初めてである。
この手のハードボイルドな復讐ものは昔からジャンル映画としてある一定の地位を築いており、その意味において本作の物語自体に意外性はない。ただ、本作をオリジナリティある作品にしているのがダニー・トレホである。数多くの映画で悪役を演じ、その度に殺されてきたダニー・トレホが悪を成敗する側を演じているだけで新鮮味があるし、当時66歳の強面の男をアクション映画の主演に起用する時点で面白い。
アクションシーンはどこかグラフィックノベルのような異世界を思わせ、ロバート・ロドリゲスらしい悪趣味な場面（腸をロープにするところなど）も楽しめる。マチェーテが愛用する「マチェーテ（スペイン語で山刀の意）」で敵を刺したり斬ったりする場面はボチボチ。基本的にアクションシーンは低予算映画っぽい感じで統一されている。
そして、本作は1千万ドルの予算で製作されたわけだが、どうしたらそれが実現したのかと疑うほどに豪華キャストである。セガールが悪役で最後に殺されるなんて相当金を積まないと実現しそうにないと思ってしまうが、他のキャストも軒並み通常よりか遥かに低いギャラで引き受けたのだろう。ロバート・デ・ニーロやジェシカ・アルバなどに加え、いつものロバート・ロドリゲス組のチーチ・マリンなども出演している。
そんな中で、ダニー・トレホ以上に存在感を発揮したのがミシェル・ロドリゲスであると私は特に感じた。日雇い労働者相手にタコスを売る姿も魅力的だったが、死んだと思って復活した後の眼帯姿はなんとセクシーか。この格好をさせるために映画的にはわざわざ彼女を退場させ、救急車から降りてくるところをスローモーションでじっくり見せてくれる。しまいには殺されそうなマチェーテまで助ける。この場面はミシェル・ロドリゲスが完全にマチェーテを喰っている。正直、このキャラクターのスピンオフが見たいくらいだった。
そんな悪趣味全開な本作だが、わかりやすいメッセージも付与されている。ロバート・デ・ニーロが演じたマクラフリンは移民排斥を訴えるゴリゴリの保守（共和党）であり、ロバート・デ・ニーロはブッシュ大統領の話し方を参考にしたと話している。さらに、メキシコとの国境に壁を作る話が出てきて、後のトランプ大統領をまんま予感させる展開となっていく。結局、その国境に壁を作ることで生まれる利権を守ろうとする意地の悪いマクラフリンは殺される展開が待ち受けている。ロバート・ロドリゲス監督が映画の舞台となるテキサス州の生まれであり、さらにメキシコ系アメリカ人であることも当然意味のあるところだ。
そして、ロバート・ロドリゲス監督の従兄弟であるダニー・トレホも当然メキシコ系である。そんな彼らがまたもやメキシコ系のジェシカ・アルバとタッグを組むところにも意義があり、保守の政治家をやっつけるいかにもハリウッド的な物語に着地する。
舞台となるテキサスや、メキシコ系の人たちからどのような目で本作が見られたのかは分かりかねるが、付与されたメッセージはシンプルで伝わりやすい。また、ロバート・ロドリゲス監督らしい悪趣味も程よく発揮され、画面が切り替わる度に登場する豪華キャストの出演も楽しめる。物語的にもうちょっとブッとんでいても良かったように思うが、十分に楽しめた作品。
【関連作品】
「マチェーテ（2010）」…シリーズ1作目
「マチェーテ・キルズ（2013）」…シリーズ2作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
言語
├オリジナル（英語/スペイン語）
【ソフト関連】
＜BD＞
言語
├オリジナル（英語/スペイン語）
├日本語吹き替え
映像特典
├未公開シーン集（11種）
├リアル映画館モード（観客の生歓声入りで本編を鑑賞）※本編英語音声のみ
├予告編集
