【タイトル】
ラッシュアワー(原題:Rush Hour)
【Podcast】
Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。
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【概要】
1998年のアメリカ映画
上映時間は97分
【あらすじ】
アメリカの中国総領事になったハンは娘のスー・ヤンを誘拐されてしまう。ハンは香港時代の活躍を知るリーをアメリカに呼び寄せるが、FBIは香港の刑事がアメリカでの捜査をすることに難色を示し、ロス市警で停職処分を受けたカーターにリーの世話役を任せることにする。
【スタッフ】
監督はブレット・ラトナー
音楽はラロ・シフリン
撮影はアダム・グリーンバーグ
【キャスト】
ジャッキー・チェン(リー)
クリス・タッカー(カーター)
トム・ウィルキンソン(グリフィン)
ケン・レオン(サン)
ツィ・マー(ハン総領事)
エリザベス・ペーニャ(ジョンソン)
フィリップ・ベイカー・ホール(ディール警部)
【感想】
「ランナウェイ(1997)」で監督したブレット・ラトナーが再びクリス・タッカーとタッグを組んだ作品。主演したジャッキー・チェンにとってアメリカでの興行収入が初めて1億ドルを突破した。
1980年代に代表される「刑事バディもの」の系譜を継ぐ作品。そのバディは多くの組み合わせが作られたが、アジア人とアフリカ系アメリカ人の組み合わせによる作品はおそらく初めてだろう。彼らが互いの文化や気持ちを理解していく過程も決して悪くない(ニガーの件は補足がないと日本人には分からないかもしれないが…)。
そして、時代設定は香港がイギリスから中国に返還された1997年である。香港返還の経緯やその後の香港での出来事については割愛するが、香港にとっては新たな時代ということになる。そんな香港で活躍した刑事がアメリカにやって来るというのは、香港の大スターであるジャッキー・チェンがハリウッドにやって来ることと重ね合わせることができる。
と言っても、ジャッキー・チェンは幾度もハリウッドに挑戦してはその度に失敗してきた俳優である。そして、ようやくアメリカで興行収入1位を記録したのが「レッド・ブロンクス(1995)」であったが、それでもメインキャストは香港の俳優ばかりであった。
そして、本作ではハリウッドのあるロサンゼルスを舞台にハン総領事を演じたツィ・マーやスー・ヤンを演じたジュリア・スーを除けばその多くがハリウッドで活躍する俳優たちばかりである。ちなみに、サンを演じたケン・レオンはアメリカ出身の中国系アメリカ人であり、後にブレイクするジョン・ホークスの若き日の姿も確認することができる。
ようやくアメリカの地を踏むリーだが、迎えに来たカーターとは一言も話さない。しばらくしてリーが英語を話し始めると、「お前、英語喋れるのかよ」と定番のツッコミを入れることになる。お喋りで明るいアメリカ人のカーターに対して、リーが香港からアメリカにやって来て徐々に心を開いていくというお約束の展開が続いていく。
ただ、そのリーとカーターは捜査に専念したいFBIにとっては邪魔者でしかない。ところが、最終的に事件を解決するのはリーとカーター(とジョンソンも入れてもいいかな)である。つまり、アジア人とアフリカ系アメリカ人(と女性)である。白人の男連中であるFBIがポンコツであると描かれ、彼らから見下されている人たちの活躍で映画は終わるわけである。そして、FBIは彼らの活躍を認め、特にカーターをFBIにリクルートしているが、カーターから断られている。この場面でもまだFBIの連中は「お前をリクルートしてやる」という上から目線を感じるし、それはカーターから断られて当然である。
この辺りのメッセージはどこまで意図されたものかは分かりかねるが、ごく自然に受け入れられるハリウッドらしい物語であると感じる。ただ、FBIの連中がややポンコツ過ぎるかな。彼らはそれなりに仕事が出来て、そのうえでリーがもっと凄いという方がポイントは高かったように思う。
そのリーを演じたジャッキー・チェンのアクションだが、良くも悪くもハリウッド的である。これは多くの指摘のあるところだが、ジャッキー・チェンは香港時代に10分は下らないであろう連続したアクションシーンを幾度も演出してきた。そして、それが香港のアクション映画のスタンダードである。一方で、アメリカの観客は長いアクションシーンに飽きてしまうので、連続しても数分のアクションシーンにまとめることが多く、本作もその例外ではない(このハリウッドの慣習は2010年代前半くらいまで続く)。それでも、監督のブレット・ラトナーが敬愛するだけあってか、アクションシーンもそれなりに見ごたえのあるものになっている。
ただ、試写をしたところ、観客がジャッキー・チェンのアクションをもっと求めていることが分かり、再撮影をすることになり、終盤のアクションシーン(大きな花瓶のシーンなど)が追加されたらしい。花瓶のシーンが当初なかったなんてちょっと信じがたいくらいに本作で最も笑える箇所である。
そして、そんな本作の悪役はなんと香港警察のグリフィンというイギリス人である。長きに渡って香港を租借地として割譲していたイギリス人を悪役に持ってきているのだ。しかも、演じたのもイギリス人のトム・ウィルキンソンであり、イギリス人をキャスティングすることには拘ったようだ。香港返還後の時代設定であり、その作品に登場する悪役がイギリス人とはなかなか攻めた設定であるとも感じる。
ラストは中国博覧会の会場の天井付近から落下したリーをカーターが垂れ幕を使って助けることになる。おそらくだが、この垂れ幕を滑り降りてくるイメージは、リーが飛行機からアメリカの地に階段を降りるところと重ねているはずだ(いや、考えすぎか)。
肩肘張らずに見られる短いアクションコメディだが、設定などに隠された意図は感じなくもない。アクションが売りのジャッキー・チェンと、喋りが売りのクリス・タッカーが組めば当然これくらいになってしかるべきだ。銃の奪い方とダンスを教え合う場面は何とも微笑ましかった。
また、後になってジャッキー・チェンは本作について自身の英語やアクションについて満足していないという旨のコメントを残している。製作時の手応えと作品の評価、売上は決して結びつくものではないのだろう。もちろん、ジャッキー・チェン全盛期のアクション映画に比べれば物足りなさはある。ただ、ハリウッド進出後のジャッキー・チェン主演映画としてみれば間違いなく上位に来るであろう作品。
【関連作品】
「ラッシュアワー(1998)」…シリーズ1作目
「ラッシュアワー2(2001)」…シリーズ2作目
「ラッシュアワー3(2007)」…シリーズ3作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/広東語)
【ソフト関連】
<BD>
言語
├オリジナル(英語/広東語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ ブレット・ラトナー監督による音声解説
├ ミュージック・トラック ラロ・シフリン(音楽)による音声解説
映像特典
├A PIECE OF ACTION ~「ラッシュアワー」の舞台裏~
├未公開シーン集
├How Deep is Your Love by Dru Hill
├Nuttin' but Love by Heavy D. & The Boyz
├監督の卒業制作 Whatever Happened to Mason Reese
├オリジナル劇場予告編