【タイトル】
ラッシュアワー3(原題:Rush Hour3)
【概要】
2007年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は91分
【あらすじ】
シンポジウムの会場でハン大使が何者かに狙撃されてしまう。カーターと共に犯人を追っていたリーが追いつめたのは孤児院で兄弟同然だったケンジだった。
【スタッフ】
監督はブレット・ラトナー
音楽はラロ・シフリン
撮影はジェームズ・ミューロー
【キャスト】
ジャッキー・チェン(リー)
クリス・タッカー(カーター)
真田広之(ケンジ)
ノエル・ルノワール(ジャンビエーブ)
チャン・ジンチュー(スーヤン)
工藤夕貴(ジャスミン)
マックス・フォン・シドー(レイナード)
ツィ・マー(ハン大使)
ロマン・ポランスキー(レヴィ)
【感想】
前作の予算を5千万ドルも上回る1億4千万ドルの予算に対し、全世界で2億5千万ドルの売上で、前作から約1億ドル低い売上となってしまった。ただ一方で2008年のレンタル市場では年間トップだった。また、シリーズ通して音楽を担当してきたラロ・シフリンにとって、映画音楽の担当は2023年現在本作が最後の作品となっている。
一応やりたかったのはカインとアベルの物語であろう。兄弟同然に育った片方は刑事として成功し、もう片方は犯罪者の道を歩んでしまった。本作では犯罪の道に進んだケンジが成功を収めたリーを追いつめる物語である。ただ、よくあるカインとアベルを題材にしたっぽいだけの物語であり、宗教的モチーフもこの物語にした意義も特に感じられない。リーに関連する犯罪である点はシリーズ一貫しているのだが。
また、シリーズ通して最も退屈な作品と言える。やはりフランスを舞台にした意義が感じられない。アジア人二人がアメリカでも香港でも日本でもなく、フランスで戦わなければならない理由は何だろうか。フランスを舞台にするという導入はしっかり描くべきだったと思う。
前作では、映画の舞台となるのは前半が香港で後半がアメリカだったが、わざわざアメリカに舞台を移す理由が分からなかった。本作は途中でアメリカに帰ってくるような展開がないのは幸いだが、やはりアメリカで完結させられる物語だった。シリーズものということで変化を加えるべくフランスを舞台にしたのだと察するが、その効果はあまり得られていない。エッフェル塔や凱旋門が映像の中に登場したとしても、「面白く」なければ意味がない。
何と言っても本作のアクションはジャッキーらしさが皆無である。銃撃戦やカーチェイスといったハリウッド的なアクションばかりで、シリーズ1作目に見られた香港時代を彷彿とさせるアクションを見ることはできない。監督やプロデューサー、キャストが軒並み続投しているのに、ジャッキーらしさを引き継がない意図は理解し難い。シリーズを追うごとにジャッキーらしさを消して、いかにもなハリウッドらしさを追求する意味がわからない。
クライマックスの戦いでは、リーに手を掴まれたケンジはその手を離してエッフェル塔の真下に落下して死亡する。リーにとってケンジは乗り越えなければならないものであるのに、最初から最後までケンジにやられたい放題でリーは何もできなかった。ここは過去を乗り越えるべく成長したリーが自分の手で捕まえるなり何なりすべきだったと思う。そして、リーがケンジをある意味取り逃がし、追手から逃げて映画が終わる。こんな終わらせ方で良いのか。せめて、スーヤンをアメリカに連れて戻ってハン大使を見舞うくらいした方がきれいだったと思う(スーヤンまでフランスに来る必要がないし、わざわざ巻き込まれに行っているようだ)。
大前提としてジャッキー・チェンが主演する映画に求められるのは「ただの」アクションではなく、「ジャッキーらしい」アクションである。それがそぎ落とされた時点で大幅減点は免れない。また、フランスが舞台になる必然性もなく、単純に物語として面白くない。日本人としては真田広之くらいしか印象に残らない凡作。
【関連作品】
「ラッシュアワー(1998)」…シリーズ1作目
「ラッシュアワー2(2001)」…シリーズ2作目
「ラッシュアワー3(2007)」…シリーズ3作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/フランス語/日本語)
<Amazon Prime Video>
言語
├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<BD>
言語
├オリジナル(英語/フランス語/日本語)
├日本語吹き替え
映像特典
├予告篇集
├メイキング・オブ・“ラッシュアワー3”
├NGシーン
├未公開シーン集
├ビジュアル・エフェクト
├プロダクション・ダイアリー