【作品#0614】スーパーマン リターンズ(2006) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

スーパーマン リターンズ(原題:Superman Returns)

【概要】

2006年のアメリカ映画
上映時間は154分

【あらすじ】

スーパーマンがロイスに別れを告げずに地球を去って5年。レックス・ルーサーは捕まえたスーパーマンが裁判を欠席したために釈放され、再び悪事に手を染めようとしていた。

【スタッフ】

監督はブライアン・シンガー
音楽はジョン・オットマン
撮影はニュートン・トーマス・サイジェル

【キャスト】

ブランドン・ラウス(クラーク・ケント/スーパーマン)
ケイト・ボスワース(ロイス・レイン)
ケヴィン・スペイシー(レックス・ルーサー)
ジェームズ・マースデン(リチャード・ホワイト)
フランク・ランジェラ(ペリー・ホワイト)
エヴァ・マリー・セイント(マーサ・ケント)

【感想】

「スーパーマン」の劇場版では19年ぶりとなった作品はスタッフやキャストは一新されたものの、2004年に亡くなったマーロン・ブランドの映像と音声を利用し、テーマ音楽はジョン・ウィリアムズのものが使用されている。また「スーパーマンⅢ/電子の要塞(1983)」「スーパーマンⅣ/最強の敵(1987)」を無視した続編であるが、一部は「スーパーマン(1978)」とも齟齬のある設定となっている。

また、2億7千万ドルという当時でも史上最高額クラスの予算が投じられ、全世界で3億9千万ドルのヒットを稼いだが、期待されたほどのヒットとはならずに予定されていた続編もすべて中止となってしまった。

「スーパーマンⅣ/最強の敵(1987)」が興行的にも批評的にも散々だったために、スーパーヒーロー映画自体も作りづらくなったが、「ブレイド」「スパイダーマン」などが軒並み成功を収めたために、誰もが手を出しにくくなっていた「スーパーマン」の映画化が実現したことだろう。19年の時を経て、満を持して世に送り出された本作はおそらく「スーパーマン(1978)」ファンの期待に添うものではなかったであろう。クリストファー・リーヴ版のスーパーマンの「陽」の雰囲気はかなり削ぎ落とされ、少なくともコミカルな描写はほとんどないと言って良い。

80年代後半から90年代前半にはヒーローものと言えばダークヒーローの時代であった。「ロボコップ(1987)」「バットマン(1989)」「ダークマン(1990)」などがその代表であろう。以降も「ブレイド(1998)」や「デアデビル(2003)」なんかはその系譜と言えるはずだ。もうあの頃のような明るく楽しいヒーロー映画は作りにくい時代となってしまった。その象徴的な出来事は何を隠そう2001年のアメリカ同時多発テロだ。

本作でも新型シャトルの実験飛行がうまくいかずにシャトルを乗せた旅客機が墜落しそうになりスーパーマンが何とか助けるという描写がある。さらには「スーパーマン(1978)」のセリフをもじって「飛行機は統計的に安全な乗り物です。嫌いにならないでください」と言っている。アメリカ人から飛行機墜落の悪夢は消し去れないトラウマであろう。本作ではスーパーマンが地球を去って5年となっているので、そのアメリカ同時多発テロの起こった2001年に姿を消したという設定は意図されたものであるはずだ。

本作製作時は2001年に就任した共和党のジョージ・ブッシュ大統領政権だった。テロ発生後に「テロとの戦い」を謳い、一時は支持率90%を誇っていたが、イラク戦争では大量破壊兵器を見つけることができず、さらにはブレイム事件などのスキャンダルも手伝い支持率は20%台まで落ち込んでいた。そんなころに製作されたのが本作であり、何と言っても製作したハリウッドは比較的リベラルで民主党支持者の多い人たちの集まりである。ロイスの書いた「スーパーマンは必要ない」は間違っていた。だから「スーパーマン リターンズ」なわけであろう。ジョージ・ブッシュには期待できない。新たなヒーローが必要だということだ。

そういった観点から映画を観ていれば腹落ちするものは確かにあるのだが、本作は娯楽映画でもある。娯楽作という観点から言えば物足りなさは間違いなくあるし、それが期待されたほどの大ヒットに繋がらなかったのだと思う。本作は「スーパーマン(1987)」製作時には実現できなかった映像をすべてCGで実現しており、映像的な安っぽさや不自然さはほとんどないと言っても良い。そんなCGを駆使して作り上げた映像で一番印象に残るのは中盤前にある上述のスーパーマンが墜落していく旅客機を助ける場面である。上述のように、アメリカ人のトラウマを払拭する意味でここに映像的に盛り上げるのは理にかなっているが、残念ながらと言うかここが映画としての面白さのピークだったように思える。こうなるなら飛行機が墜落するのを防ぐ場面をラスト近くに持ってこれなかったか(それは流石にやり過ぎか)。

また、本作で一番気がかりなのはロイスの息子ジェイソンである。スーパーマンが地球を去ってから戻ってくるまでの5年間に、ロイスはリチャードと結婚してジェイソンという息子を授かっているという設定だ。ところが、後にこのジェイソンはスーパーマンの弱点であるクリプトナイトを近づけられると力が抜け、母のロイスがピンチに陥るととんでもない力を発揮することになる。これだけ記載すればわかるようにこのジェイソンの父親は結婚相手のリチャードではなくクラーク・ケント/スーパーマンなのである。

この設定にしたことでロイスはクラークとリチャードを同時に相手していた女性ということになる。この設定が本作自体をぶち壊しているように思えてしまう。ロイスはジェイソンがクラークとの間の子供だということはおそらく分かっていただろう。それなのにリチャードを父親ということにして育てていたなら、リチャードがあまりにも可哀そうではないか。リチャードは命からがらロイスとジェイソンを助けに来たのに、そんな仕打ちはないだろう。しかも知らなければ良いと言わんばかりにリチャードがその事情を知ることはもちろんない。それで良いのかね。

また、ロイスを演じたケイト・ボスワースはちょっと若すぎないかな(多分20代後半くらいの年齢設定だろう)。撮影当時22歳くらいだが、ピューリッツァー賞を受賞するほどの実力があり、5歳くらいになる息子がいるという設定なら30代でも問題なかったと思うな。

それから、悪役は旧シリーズでジーン・ハックマンが3作品で演じたレックス・ルーサーである。引き継いだケヴィン・スペイシーはさすがの存在感ではあるが、その取り巻きの2人にまるで存在感がない。旧シリーズでは「陽」の雰囲気があったからこそ、取り巻き2人もキャラ立ちしていたと思うが、本作に限っては登場しなくても良かったんじゃないかとさえ思えるレベルである。

また、そのレックス・ルーサーの愛人キティはスーパーマンに助けられたことで、味方であるはずのレックス・ルーサーの計画の邪魔をするという描写になっている。この辺りは旧シリーズ1作目の雰囲気を引き継いでいると思う。ただ、このキティは上述のようにキャラ立ちが全然していないので、なぜ土壇場でレックス・ルーサーの邪魔をするのかがほとんど伝わってこない。ここでキティが邪魔をしなければスーパーマンに勝ち目はなかったかもしれないわけで、この重要な映画のターニングポイントがあまりに印象に残らないものになっている。

ラストもどうも続編ありきの終わらせ方であり、どんよりした中で行われるクライマックスの映像も相まってスッキリすることはない。裁判を欠席したことで釈放されたという筋書きなら、最後にレックス・ルーサーに裁判を受けさせてスーパーマンが裁判で証言するオチで良かったと思う。

また、映画は当然時代に合わせて作られるものだと思うので、19年の時を経てこのような作品になったことに何の疑問もない。ただ、娯楽作として見れば「面白かった!」と言えるほどではなく、これで全世界で3億9千万ドル売れたなら「頑張った方じゃない」と思えるレベルである。時代に合わせたテーマと娯楽性の共存は難しい作業だったと思うが、「できたはずなのにな」と思ってしまう。

 

【関連作品】


スーパーマン(1978)」…シリーズ1作目
スーパーマンⅡ 冒険篇(1980)」…シリーズ2作目
スーパーマンⅢ 電子の要塞(1983)」…シリーズ3作目
スーパーマンⅣ 最強の敵(1987)」…シリーズ4作目
「スーパーマン リターンズ(2006)」…シリーズ2作目の続編として製作された作品
マン・オブ・スティール(2013)」…リブート/DCエクステンデッド・ユニバース1作目
「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016)」…DCエクステンデッド・ユニバース2作目
「ジャスティスリーグ(2017)」…DCエクステンデッド・ユニバース5作目

 


 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

<DVD(2枚組/特別編)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├メイキング:クリプトン星へのレクイエム
  ├スーパーマン誕生
  ├スーパーマンを描く
  ├撮影秘話
    ├生家にて
    ├メトロポリスにて
    ├トラブル発生
  ├ルーサーの素顔
  ├スーパーマンはいつもそばに
├よみがえるジョー=エル
├未公開シーン集
├隠しボタン
├予告編集
├ゲーム予告

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├メイキング:クリプトン星へのレクイエム
  ├スーパーマン誕生
  ├スーパーマンを描く
  ├撮影秘話
    ├生家にて
    ├メトロポリスにて
    ├トラブル発生
  ├ルーサーの素顔
  ├スーパーマンはいつもそばに
├よみがえるジョー=エル
├未公開シーン集
├予告編集