【タイトル】
【概要】
1978年のアメリカ映画
上映時間は143分
※ディレクターズ・カット版は154分
【あらすじ】
地球から遠く離れた惑星クリプトンは危機が迫っており、その危機を訴えていたジョー=エルは惑星の外へ出ることを禁じられ、息子を宇宙船に乗せて地球へ向けて脱出させる。
【スタッフ】
監督はリチャード・ドナー
音楽はジョン・ウィリアムズ
撮影はジェフリー・アンスワース
【キャスト】
クリストファー・リーヴ(クラーク・ケント/スーパーマン)
マーゴット・キダー(ロイス・レイン)
マーロン・ブランド(ジョー=エル)
ジーン・ハックマン(レックス・ルーサー)
ネッド・ビーティ(オーティス)
【感想】
アメリカン・コミック「スーパーマン」の映画化作品は全世界で3億ドルを超える大ヒットを記録し、計4つのシリーズ作品と後のリブート作品を生み出した記念すべき作品となった。アカデミー賞では4部門でノミネートされ、視覚効果を表して特別業績賞が授与された。また、当初は2作品まとめて製作する予定だったが、途中で1作目に専念することになるなど、製作経緯の話は枚挙にいとまがない。
監督は「オーメン(1976)」で大成功を収めたリチャード・ドナー、脚本は「ゴッドファーザー(1972)」のマリオ・プーゾ(脚本は計4人クレジットされているが、実質的に携わった者はもっといる)、音楽は「スター・ウォーズ(1977)」のジョン・ウィリアムズ、撮影は「2001年宇宙の旅(1968)」などのジェフリー・アンスワース、編集は娯楽作の編集では世界トップクラスの実績を築いていくスチュアート・ベアード、製作総指揮は祖父の代からプロデューサーの血を引くイリヤ・サルキンド、美術は「スター・ウォーズ(1977)」のジョン・バリー…これだけ見ても当時の最精鋭が集まったと言える。
そんな本作は冒頭の少年によるナレーションとコミックをめくっていく演出が終わると、ジョン・ウィリアムズの壮大な音楽と共にクレジットが続々と出ては消えていく。ここでは主演のクリストファー・リーヴのクレジットよりもネームバリューのあるマーロン・ブランドとジーン・ハックマンのクレジットが先に表示される。普通に主演俳優から順番に流せばと思ってしまうところだ。そして、このジョン・ウィリアムズの音楽とクレジットは約5分間に及び、いかにも1950年代から1960年代に量産された歴史映画の序曲なんかを思わせる(特に「ベン・ハー(1959)」など)。ただ子供たちを喜ばせればという甘い考えは微塵も感じられない。
以降も、特に青年期のクラーク・ケント時代は田舎の風景を捉えたロングショットも多数見られ、やはり上述のような歴史映画の雰囲気を感じる。この青年期が終わって初めてスーパーマンの姿が見られるのだが、そこに至るまでに50分近くかけている。とっととスーパーマンの活躍する姿を見たい観客にはじれったいだろうが、スーパーマンの誕生を描くという意味においてなかなか丁寧な幕開けと言える。ちなみに、青年期のクラーク・ケントを演じたのはジェフ・イーストだが、付け鼻をして、声もすべてクリストファー・リーヴによって吹き替えられている。
満を持して登場したスーパーマンを演じるのは撮影当時25歳ごろのクリストファー・リーヴである。精悍な顔立ちで、高身長で体格も良い。スーパーマンを演じるに十分な素質を持っている一方で、素のクラーク・ケントの時の頼りなさそうな、でも飄々とした雰囲気は絶妙である。ちなみに、クリストファー・リーヴは「赤ちゃん教育(1937)」のケイリー・グラントの演技を参考にしているらしい(「赤ちゃん教育(1937)」ではケイリー・グラント演じる主人公がキャサリン・ヘップバーン演じる女性に振り回される映画)。また、キャスティングされた段階では痩せていたため、「スター・ウォーズ(1977)」でダースベイダーのスーツアクターを務めたデヴィッド・プラウズからトレーニングを受けている。
そんなクラーク・ケントが働くことになる新聞社デイリー・プラネットで働いているのがロイス・レインである。彼女はプライベートよりも仕事タイプの人間であり、どこかサバサバした性格である。それでいてチャーミングでもあり、ユーモアもあるという非常に魅力的なキャラクターで、演じたマーゴット・キダーが素晴らしい。
ただ、唯一気になったのは、クラーク・ケントとロイス・レインが暴漢に銃で撃たれる場面である。クラーク・ケントが暴漢が放った銃弾を手で掴み、それがバレないように気絶したふりをする。気絶したクラークに対してロイスは「気絶してたの!?」と心配するではなくやや呆れた感じになっている。クラークが大丈夫そうだと判断するとすぐに自分のバッグを拾いに行っている。彼女のキャラクター設定を考えると、この行動はなくはないが、いくら何でも冷たすぎないかな。
また、シリーズ通しての敵となるのがジーン・ハックマン演じるレックス・ルーサーである。本作の比較的「陽」の雰囲気を持つ作品に相応しいキャラクターで、ジーン・ハックマンのなりきりぶりも素晴らしい。そして、こんな変わり者だからこそ彼に付いて来る手下のオーティスも程よくポンコツで、こちらも演じたネッド・ビーティが素晴らしい。オーティスがミスを犯してレックスがオーティスに飛び掛かると次のカットに移行し、オーティスの右目にあざが出来ているのも不謹慎ながら笑える。
上述のように本作は正統なヒーロー映画だか、キャストの魅力に溢れるキャラクター映画とも言えよう。スーパーマンが市民の命を救う描写も満遍なくあり、ヒーロー映画を見ているという感覚をしっかり味わえる。そして、そんな正統派スーパーヒーロー映画である本作が意外に思わせるのは、スーパーマンのキスシーンである。ヒロインのロイスとのキスシーンはなく、なんとその相手はレックス・ルーサーの愛人イヴである。もちろんスーパーマンはロイスと共に空を飛ぶというある意味彼らが結ばれることを暗示するシーンこそあるが、キスまではしない。
ただ、クラーク・ケントが思いを寄せるロイスが唐突に命の危機に何度も見舞われるのはややご都合主義的である。ヘリコプターの場面はもう少しうまい筋書きはなかったかな。また、ヘリコプターが落ちてくるかもしれないというのに野次馬がそのビルの真下に大勢いるのもやや不自然である。クライマックスは死んだロイスを生き返らせるために、スーパーマンが地球を高速で「逆回転」して元に戻すという荒業である。これをやると何でもありに思えるが、本作全体を通した雰囲気や完成度を鑑みると、なしではない。
本作のクラーク・ケント並びにスーパーマンは何の汚れもない清廉潔白なヒーローだが、そんな彼もたった1つの過ちを犯している。スーパーマンがロイス・レインの家を訪れ、「嘘は嫌いだ」と言っているが、その本人こそスーパーマンであることを偽っているクラーク・ケントである。どうやら笑わせる意図はなかったようだが、本作屈指のギャグだろう。
最後にスーパーマンがカメラ目線で笑顔を送ると、ジョン・ウィリアムズによる壮大な音楽と共にクレジットが流れ始める。7分程あるエンドクレジットは当時最長だったらしいが、最後まで聞いて、そして見ていたくなる。弱点がないわけではないが、ヒーロー映画としては申し分ない傑作。
【ディレクターズ・カット版】
劇場版から約9分長い154分のディレクターズ・カット版は、2000年に公開され、DVDやBDでも視聴することが可能である。青年期のクラーク・ケントが猛スピードで走る様子を電車から目撃する少女がいる様子は劇場公開版でも描かれたが、後にもう1場面追加されており、実はその少女こそロイス・レインである。ただ、そうなるとロイスはクラークの10歳くらい年下ということになるが、デイリー・プラネットで働く際は同年代と言う感じである(ちなみに演じたマーゴット・キダーがクリストファー・リーヴよりも4歳年上である)。また、そこで彼女の両親を演じているのは最初の実写映画化「連続活劇スーパーマン(1948)」でスーパーマンを演じたカーク・アリンと同じくロイス・レインを演じたノエル・ニールである。
また、スーパーマンが父ジョー=エルと会話するシーンやレックス・ルーサーの隠れ家にスーパーマンがやって来る際に様々な攻撃を浴びる場面などが追加されている。
【音声解説1】(劇場版)
参加者
├イリア・サルキンド(製作総指揮)
├ピエール・スペングラー(製作)
上記2名による音声解説だが、ピエール・スペングラーは序盤に一言二言喋るだけで、あとはすべてイリア・サルキンドが話している。イリア・サルキンドが製作開始時のDCコミック側との交渉、監督などのスタッフやキャスト選び、一度決まった人が降板して他の候補を探した話、当初は2作品同時進行で撮影していたが予算も厳しくなって途中から1作目に専念した話、祖父と父も映画プロデューサーと言うイリア・サルキンドが父親に相談した話、同時撮影中の続編の監督を変更した話、公開直前までポスプロで忙しく試写ができなかった話、かつての名作映画との比較、撮影時の苦労、当時最長となったエンドクレジットも観客が最後まで付き合ってくれた話など大いに語ってくれる。
【音声解説2】(ディレクターズ・カット版)
参加者
├リチャード・ドナー(監督)
├トム・マンキウィッツ(クリエイティブ・コンサルタント)
上記2名による音声解説。トム・マンキウィッツは脚本のリライトとして携わったが、全米脚本家協会は映画の脚本家のクレジットを4人までとしており、スクリプト・コンサルタントとしてクレジットされている人物である。美術セットはいつもギリギリで完成していた話、ジーン・ハックマンの髭と髪に関する逸話、マーロン・ブランドのカンペの話、音楽の依頼がジェリー・ゴールドスミスとジョン・ウィリアムズに行き来した話、やむなく続編の結末を本作に持ってきた話などファン必聴の音声解説だろう。
【関連作品】
「スーパーマン(1978)」…シリーズ1作目
「スーパーマンⅡ 冒険篇(1980)」…シリーズ2作目
「スーパーマンⅢ 電子の要塞(1983)」…シリーズ3作目
「スーパーマンⅣ 最強の敵(1987)」…シリーズ4作目
「スーパーマン リターンズ(2006)」…シリーズ2作目の続編として製作された作品
「マン・オブ・スティール(2013)」…リブート/DCエクステンデッド・ユニバース1作目
「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016)」…DCエクステンデッド・ユニバース2作目
「ジャスティスリーグ(2017)」…DCエクステンデッド・ユニバース5作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
本編
├ディレクターズ・カット版
言語
├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<DVD(劇場版)>
本編
├劇場版
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├イリア・サルキンド(製作総指揮)、ピエール・スペングラー(製作)による音声解説
映像特典
├予告編集
<DVD(ディレクターズ・カット版)>
本編
├ディレクターズ・カット版
言語
├オリジナル(英語)
音声特典
├リチャード・ドナー(監督)、トム・マンキウィッツ(クリエイティブ・コンサルタント)による音声解説
├ミュージックサウンドトラック
映像特典
├未公開シーン(10シーン)
├オリジナル劇場予告編
<BD(劇場版)>
本編
├劇場版
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├イリア・サルキンド(製作総指揮)、ピエール・スペングラー(製作)による音声解説
映像特典
├メイキング・オブ・スーパーマン
├スーパーマンと地底人間
├WBカートゥーン
├予告編集
<BD(ディレクターズ・カット版)>
本編
├ディレクターズ・カット版
言語
├オリジナル(英語)
音声特典
├リチャード・ドナー(監督)、トム・マンキウィッツ(クリエイティブ・コンサルタント)による音声解説
├ミュージックサウンドトラック
映像特典
├メイキング:スーパーマンの開発
├メイキング:伝説の撮影
├スクリーン・テスト:スーパーマン
├TVスポット
├特報
├オリジナル劇場予告編
<4K ULTRA HD+BD(劇場版)>
収録内容
├上記BD(劇場版)と同様
【音楽関連】
<テーマ音楽(コンサート映像)>
<CD(3枚組/40周年記念版/5,000セット限定)>
収録内容
├56曲/191分