【作品#0410】赤ちゃん教育(1938) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

赤ちゃん教育(原題:Bringing Up Baby)


【概要】

1938年のアメリカ映画
上映時間は102分

【あらすじ】

古生物学者のデイヴィッドはゴルフ中に出会ったスーザンに散々振り回されてしまう。

【スタッフ】

監督はハワード・ホークス
音楽はロイ・ウェッブ
撮影はラッセル・メティ

【キャスト】

キャサリン・ヘプバーン(スーザン)
ケイリー・グラント(デイヴィッド)

【感想】

当時流行していたスクリューボール・コメディの代表作。生涯4度の共演をすることになるキャサリン・ヘプバーンとケイリー・グラントの2度目の共演作。

スクリューボール・コメディの代表作と知られ、本作のスーザンというキャラクターはハワードホークスの描く女性像(「ホークス的女性像(Hawksian woman)」という言葉まである)の代表としても知られている。ただ、このスーザンというキャラクターははっきり言って不愉快である。他人のものは平気で盗む、警官に平気で嘘をつく、トラブルに巻き込んだという意識もなくその巻き込んだ相手を精神病であると周囲に吹聴する…などなど、とても天真爛漫というにはおこがましく、このキャラクターを好きになれる要素が1ミリたりともない。

欧米など英語圏では結論を先に言うことが基本であり、その点が日本語との違いであると英語教育の一環でも教わる。ところが本作はどのキャラクターも結論を言うのを後回しにして、「君、ちょっと待って、実はだね、それは…」というように非常にじれったい話し方ばかりしている。結論を先に言わないことで痺れを切らした相手が話し始めて大事なことを伝えきれずに次のトラブルに突き進んでいく。本作の会話はこれがベースである。英語に対する日本語として結論から話さない日本人から見ても非常にイライラする。誰かがどこかで要点をキチっと伝えていればここまで大事にならずに済んだ話である。

ただ、序盤のデイヴィッドとスーザンの出会いの場面は少し違っていて、明らかにデイヴィッドの話がスーザンに通じていない。言っちゃ悪いがこれってアスペルガー症候群じゃないの。スーザンの言っていることは支離滅裂である。

また、豹が本作に登場する。デヴィッドと電話するスーザンの横に豹が現れることで観客には豹がいることが早々に分かってしまう。普通の家庭に豹なんかいないという常識を考えると、ここは豹は映像として見せずにデイヴィッドがやって来て、スーザンが生きていて安心していたところに本物の豹が映るという演出にすべきだっただろう。豹がいることを観客は知っているがデイヴィッドだけが知らないということになる。となるとデイヴィッドのリアクションで笑いを取るしかなくなるが、別に受けを狙った演出にもなっていない。この演出だけ見てもとてももったいないことをしていると感じる。

それに、デイヴィッドには翌日結婚する予定の婚約者がおり、冒頭と終盤にだけその婚約者が登場する。デイヴィッドとスーザンが結ばれる結末は理解しがたく、デイヴィッドの婚約者はデイヴィッドが浮気をしたとして彼の元を去ることになる。デイヴィッドが釈明することも、この婚約者が理解を示そうとする場面も描かれることはない。何となき聞きかじった事情から判断して婚約者が出て行くという感じになっている。主人公の2人さえ結ばれれば後はどうでも良いと言わんばかりである。序盤のデイヴィッドの婚約者は結婚しても新婚旅行へは行かずに研究を優先しようと言っていた。デイヴィッドは新婚旅行を望んでいるのに婚約者は望んでいないと言う描写は、女性が結婚よりも仕事を望んでいるという点で多少は自立した女性像として捉えることができる。一方でデイヴィッドの望みを否定するちょっと嫌なキャラクターとして描いている。この要素がデイヴィッドとスーザンが結ばれるために用意されたシナリオならそれは悪意しか感じない。というかデイヴィッドに婚約者がいると言う設定は別になくても良かったと思うわ。

スクリューボール・コメディと一口に言っても他に面白い作品があるのは事実だが、本作に限って言えば肝心のヒロインも、そんなヒロインに振り回されっぱなしで要点を伝えずにグダグダしている主人公も好きになれなかった。これが古典の名作なんてやはり信じられない。

 

【関連作品】

 

スーパーマン(1978)」…スーパーマンを演じたクリストファー・リーヴが本作のクラーク・ケイブルの演技を参考にしたとされる。
 

 

 

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