【作品#0527】13デイズ(2000) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

13デイズ(原題:Thirteen Days)

【概要】

2000年のアメリカ映画
上映時間は145分

【あらすじ】

1962年に発生したキューバ危機を当時のケネディ大統領の特別補佐官だったケネス・オドネルを中心に描く。

【スタッフ】

監督はロジャー・ドナルドソン
製作はケヴィン・コスナー
音楽はトレヴァー・ジョーンズ
撮影はアンジェイ・バートコウィアク

【キャスト】

ケヴィン・コスナー(ケネス・オドネル)
ブルース・グリーンウッド(ジョン・F・ケネディ)
スティーヴン・カルプ(ロバート・ケネディ)
ディラン・ベイカー(ロバート・マクマナラ)

【感想】

キューバ危機を描いた作品だが、当事者から事実とは異なると言う声も上がり、完全なノンフィクションではないが、批評家からの評価は高かった。ただ、それに反して、8,000万ドルの予算に対して、6,600万ドルの売り上げとなり、興行的には惨敗したと言える作品。また、ケヴィン・コスナーにとってロジャー・ドナルドソン監督作品に出演するのは「追いつめられて(1987)」以来、13年ぶりとなった。そして、ケヴィン・コスナーにとってジョン・F・関連作品は「JFK(1991)」に続いて2作品目となった。

ケネディ大統領は弱腰であると批判されたことがあり、本作でもそれがちょっとしたネタにもなっている(予定を変更して市長に会わないと言った次のカットで市長と笑顔で話しているカットになる等)。何度か言及される「ピッグス湾事件」が彼を弱腰と批判された理由の1つである。1959年のキューバ革命後にフィデル・カストロが首相になった革命政府に対し、アメリカのアイゼンハワー政権は社会主義的であるとして国交を断絶した。その後就任したケネディ大統領は、このカストロ政権の転覆を計画したキューバ侵攻計画を承認したが、1961年4月に始まる作戦は大失敗に終わったことでケネディ大統領は世界からも批判を浴びることになった。その1年半後に発生したキューバ危機であり、ケネディ大統領としては二度目の失敗は許されない状況である。

そのキューバへの侵攻をするかどうかで意見が割れた際、オドネルは「意見が割れたのが漏れたらソ連に利用される」と言っている。そして終盤ついにオドネルとケネディ兄弟で意見が割れ、まさにソ連の望んでいた通り、アメリカ政府内での意見の齟齬や対立が大統領の間近にまで迫る状況になっている。何かを仕掛けると、どんな対策を取るのかが話し合われ、いくつかの選択肢が検討される。それぞれがそれぞれの思惑通りに行動すると組織内で対立が発生し、ミスを誘うことができる。本作はソ連側は基本的に描かれることがないので、アメリカ側がソ連の情報や行動をどう解釈するかを追体験するような形となっている。おそらくこれでも話は単純化しているだろうが、これ以外の様々な状況や思惑が駆け巡り、簡単にそして即座に判断できる状況ではなかったことだろう。

ラストはオドネルとケネディ兄弟がフレームアウトし、遅れて彼らの影がフレームアウトしていく。ご存じのようにこの後、1963年11月22日にジョン・F・ケネディはダラスで銃弾に倒れ、また兄のロバート・ケネディも1968年6月6日に銃弾に倒れた。そしてケネス・オドネルは、ジョン・F・ケネディ暗殺時に同じ車に乗車しており、ロバート・ケネディ暗殺時には選挙事務所の所長を務めていた。2人の死後、ケネス・オドネルは大統領を目指して立候補したが選挙で惨敗し、アルコールに走ってしまい、53歳で死去したという経緯がある。本作製作時にこの3人がこの世にいないと言う意味合いもあるが、キューバ危機を乗り越えた彼らに明るい未来が待っていないようにも見える。ちなみに、ケネス・オドネルを演じたケヴィン・コスナーが主演した「アンタッチャブル(1987)」でも、モデルとなったエリオット・ネスは晩年酒浸りで早死にしたところが重なる。また、キューバ危機を乗り越えたアメリカ政府は「勝利した」と喜んでいるが、ケネスから「彼らにとっても勝利だ」と諫められる場面があることで、よりリアリティある映画であると感じることができる。

何気ない家庭の日常からキューバ危機に突入し、再び家庭で朝を迎える場面で終わる。もっと複雑な思惑があり、関連人物ももっとたくさんいただろうが、米ソや大統領と軍の対立構造を明確にし、ケネスを中心とした大統領周辺の登場人物の思惑や行動がどういう結果に繋がるのかは見るものを引き付ける力があった。娯楽作の名手ロジャー・ドナルドソン監督にとってここまでシリアスな政治ものの映画は初めてだが、娯楽作としても十分に楽しめる作品に仕上げている。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

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├オリジナル(英語/ロシア語/スペイン語/ルーマニア語)

 

【ソフト関連】

 

本作の特典を楽しみたければ、DVD2枚組のコレクターズ・エディションを購入しなければならない(後に発売のBDには未収録)。

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語/ロシア語/スペイン語/ルーマニア語)

├日本語吹き替え

映像特典

├予告編

 

<DVD(2枚組/コレクターズ・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語/ロシア語/スペイン語/ルーマニア語)

├日本語吹き替え

映像特典(Disc2)

├ドキュメンタリー「キューバ危機」

├メイキング「リアリズムの追及」

├ビデオ・バイオグラフィ

├未公開シーン(ロジャー・ドナルドソン監督のコメンタリー付き)

├メイキング・オブ・VFX

├オリジナル予告編

├プロモーション映像

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/ロシア語/スペイン語/ルーマニア語)

├日本語吹き替え

映像特典

├予告編