【作品#0431】ロンゲスト・ヤード(1974) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ロンゲスト・ヤード(原題:The Longest Yard)


【概要】

1974年のアメリカ映画
上映時間は122分

【あらすじ】

かつてはプロのアメフト選手だったポールは、女の車を盗んだ上、パトカーの破壊などの厚意により懲役3年の刑を受け、テキサス州の刑務所に収監される。そこではヘイズン所長が看守たちのアメフトチームの育成に力を入れており、その練習相手として囚人チームのコーチになるようにポールは要請される。

【スタッフ】

監督はロバート・アルドリッチ
音楽はフランク・デヴォール
撮影はジョセフ・F・バイロック

【キャスト】

バート・レイノルズ(ポール・クルー)
エディ・アルバート(ヘイズン刑務所長)
エド・ローター(クナウアー)

【感想】

ゴールデン・グローブではミュージカル/コメディ部門の作品賞を受賞したロバート・アルドリッチ監督の代表作の1つ。ちなみに、本作に主演したバート・レイノルズは大学時代にフットボールをしていた経験がある。

ニューシネマ全盛期に撮られた作品で、要所に「暴力脱獄(1967)」を思わせる場面や設定があるものだから、脱走を図ったと思われたクルーは最後に射殺されるのかと思いきや、ウイニングボールを拾いに行っただけで撃たれることなく映画は終わる。当初の脚本では射殺されて映画が終わる予定だったそうだが、本作のエンディングに変更して大正解だった。下記の音声解説でバート・レイノルズが話しているが、彼の好きな「捜索者(1956)」へのオマージュで映画が締めくくられるのも良い。

一度の裏切り行為で多くの人間を敵に回した人間が弱みを握られ、再び裏切り行為を働こうとするが、最後には仲間のために戦うという定番だが、特にメインキャラクターを演じたバート・レイノルズ、エディ・アルバート、エド・ローターの演技が素晴らしい。彼らそれぞれにとって本作が代表作と言えよう。さすがに冒頭の女性への暴力シーンは当時でもやり過ぎだと思うが、男臭い映画を得意とするロバート・アルドリッチ監督作品においてバート・レイノルズは願ってもないキャストだろう。

刑務所に収監されるとクルーはクナウアー看守長による不条理な暴力に徹底的に苦しめられることになる。特にクナウアー看守長を演じたエド・ローターの初登場の場面では、椅子に座る彼の後ろに影がくっきりと映るところは素晴らしい。また、いかにもな悪役顔で、華麗な警棒さばきは暴力慣れしていることを示す見事な描写であった。その後は役人的なヘイズン刑務所長に会うことになり、ヘイズン刑務所長はクルーに握手を求めてくる。クルーが過去に犯した八百長とその性格を利用されて刑務所長と看守長の板挟みに遭い、徹底的に痛めつけられていくところは脚本として面白い。

以降の場面で印象的なのは、沼地での作業ではクルーは黒人と鎖で繋がれ作業をすることになる。白人のクルーが黒人を嫌っていると思い込んだ看守らの嫌がらせだったが、黒人に対して偏見を持たないクルーにとっては何のダメージにもならなかった。また、後に仲良くなる便利屋と靴の中に泥を入れ合うシーンは面白い。

結局、刑務所長の一声で看守チームの練習相手となるチームの編成をするように命令されることになる。八百長で捕まったクルーを皆が嫌っているが、試合中に看守に暴力を振るうことができることと、偏見を持たない彼を見て悪い奴じゃないと思った便利屋などのおかげで徐々にチーム編成も進んでいく。ここでは個性的な面々が顔を出しているところに本作の魅力を押し上げているところがあるだろう。

そして、最後の試合では序盤は善戦すると、休憩中に刑務所長から呼ばれて21点差で負けないと便利屋殺しの共犯として長く刑務所で暮らすことになるぞと脅される。八百長で捕まったクルーに再び八百長を嗾け、しかも「前にもやったんだから今回もできるだろう」とまで言われてしまう。18ヶ月で出所できるはずだった刑務所暮らしが終身刑になるかもしれない。そんな脅しに屈してクルーはわざとミスを繰り返し、味方からも「また八百長か」と呆れられてしまう。便利屋は殺され、21点差が付いた時点から看守チームによる囚人チームへの明らかな「潰し」が始まり、次々に負傷者を出す展開になっていく。

ついに彼の心は動き始め、かつて今の刑務所長を殴ったことで終身刑になったポップに後悔していないか聞くと、「勲章だ」と言われてついにクルーは勝利を目指すために再びフィールドに戻る。ところが裏切り者のクルーを誰も守ってくれずにクルーはただひたすら看守チームからタックルを受けまくることになる。それでもクルーは自らを罰するように看守チームのタックルを意のままに受けることになる。それを見たチームメイトが徐々にクルーを認め始めてラスト7秒で逆転できる状況にまでこぎつける。

そこからの7秒は右へ走って切り返して左へ走り、見方を踏み台にしてジャンプしてタッチダウンを勝ち取るのだが、どう考えても7秒以上は経過しているように見えるのはご愛敬だろう。また、そのシーンだけがスローモーションで演出されているのも効果的である。

この大逆転勝利で権威を示すためだけにフットボールを指揮していた刑務所長の面子を完全に潰すことに成功した。本気で戦っていた看守長だからこそ、クルーが脅しに屈することなく本気で戦ったことに心を打たれているのも、冒頭からの描写が効いている。そして、クルーはこの後、長い刑務所生活を送ることになるだろう。もし八百長に加担して短い刑期で出所できたとしても裏切り癖のついた負け犬にしかなっていなかったはずだ。ただ、このクルーの人として大事なものを失わなかった行為は、あれだけ暴力的だった看守長の心も動かしたし、囚人たちの心も掴んだことわけだから、これこそ「勲章」ものだろう。

監督にとってもキャストにとっても、それから刑務所もの、スポーツものとしても代表作の1つと言える。サブキャラクターも魅力的で、70年代のニューシネマ映画と対極をなすスポーツコメディの傑作。

【音声解説】

参加者

├バート・レイノルズ(ポール・クルー役)

├アルバート・ラリー(脚本/製作)


上記2名による対話形式の音声解説。2005年のリメイク版についても少し触れているので、本作製作から30年以上の時を経て当時を振り返りながら2人が話しているというものである。監督との逸話、一度は製作中止に追い込まれた話、当時だから許容されていた暴力描写、脇役の俳優たちの印象、当時の観客の盛り上がりなど話してくれる。彼らにとって思い出深い一作なのが伝わってくる音声解説である。

【関連作品】


「ロンゲスト・ヤード(1974)」…オリジナル作品
ロンゲスト・ヤード(2005)」…上記作品のリメイク



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<DVD>
 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

音声特典

├バート・レイノルズ(ポール・クルー役)、アルバート・ラリー(脚本/製作)による音声解説

映像特典

├「ロンゲスト・ヤード」の舞台裏
├放たれた“殺人戦車”
├オリジナル劇場用予告編
├The Longest Yard (2005) 予告編