【作品#0390】イップ・マン 完結(2019) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

イップ・マン 完結(原題:葉問4:完結篇/英題:Ip Man4: The Finale)


【概要】

2019年の香港映画
上映時間は105分

【あらすじ】

イップ・マンの息子チンは学校を退学になってしまい、アメリカへの留学を勧められたイップ・マンはアメリカに渡り留学先を探すことになる。

【スタッフ】

監督はウィルソン・イップ
音楽は川井憲次
撮影はチェン・シュウキョン

【キャスト】

ドニー・イェン(イップ・マン)
ウー・ユエ(ワン・ゾンホア)
チャン・クォックワン(ブルース・リー)

【感想】

2008年に始まった「イップ・マン」シリーズの4作目にして完結編。

イップ・マンの行く先々に敵がいっぱいというのは今まで通りだが、特に本作はアメリカ人による中国人差別の描写が酷い。今までの作品では中国に来た日本人やイギリス人という少数の外国人が悪として描かれることが多かったが、本作はアメリカが舞台の映画であり、海兵隊、学校、移民局と出てくるアメリカ人連中みんなが中国人差別をしている。映画的にははっきり言ってやり過ぎであり、ルオナンを複数の男で取り囲み、体を押さえつけてはさみで髪を切るところは不愉快極まりない。アメリカでの中国人差別はゴールドラッシュの頃に遡るほど根深い歴史があるにしても限度があると思う。せめて、主人公に味方する白人キャラクターを1人くらい入れて多少のバランスを取るべきだった。しかも、ルオナンの髪を切った白人女性はその後親に嘘をついてルオナンを懲らしめるように頼んでおり、それ以降画面内に登場することはない。このキャラクターは顔に傷がついたとはいえ、映画的に罰を受ける場面は必要だろう。ここまで不愉快な気分にさせておいて、そのキャラクターが大した罰を受けないというのもその不愉快さが解消されないまま映画が終わったと言える。もしこのキャラクターが女の子だからとかそんな気を使ったのならそれはそれで問題だ(多分放ったらかしにしただけだと思うが)。とにかく、いくら中国資本の映画だからと言ってアメリカが舞台の映画でここまでやる必要もないだろう。これらの不愉快極まりない極端な差別表現が映画のベースにある時点でこの映画はダメだと言える。

また、シリーズの完結編なのだが、正直何がやりたい作品なのかがさっぱりだった。イップ・マンと息子のチンのエピソードは描かれていないと言っても過言ではないくらいに薄っぺらい(というかこのシリーズは家族描写が驚くほどに平坦で味気ない)。武術家になりたい息子を否定したイップ・マンが、アメリカでルオナンが父親から否定される人生を送っているのを見て学んでいるように見えるがエピソードとしてはかなり弱々しい。

それに、ブルース・リーが本作でようやくそれなりに出番が用意されているかと思いきや、中盤以降すっかり出番がなくなり、ラストのイップ・マンの葬儀に顔を出す程度である。本作におけるブルース・リーは中国だけではなく西洋にも武術を広めようとしている人間として描かれている。一方で、中華総会はそれを認めず、師匠であるイップ・マンに対処するように指示してくる。ケガをしたルオナンを父親で中華総会総長のワンの元へ送り届けた後、「外に出て交流する努力をしたのか」とイップ・マンがワンに対して問う場面がある。これを機にドラマとしていくらでも展開させることはできたと思うが、このセリフも言いっ放しでエピソードとしても放ったらかしのままであった。

その裏で、海兵隊基地での話も同時並行で描かれる。中国人差別を平気でするバートンは空手こそ最強で、カンフーは自分たちより劣る国のものであると考え、カンフーを訓練に取り入れたいとするハートマンを真っ向から否定する。このバートンも空手で戦うと言いながら、肘打ちなどの反則技を平気で繰り出してくるし、別に空手はアメリカ発祥でもない。このバートンの話をイップ・マンに強引に絡めて、最終的にイップ・マンがこのバートンをやっつける話になる。話の進め方が強引にも程がある。

今までの作品は中国が舞台だから目立たなかったが、中国人が外国人からどれだけ虐げられているかを示しているだけのようで見ていて良い気はしない。結局、偉そうなアメリカ人を謙虚な中国人が力でやっつけるというお話になっている。そこそこ良かったシリーズだけに、この完結のさせ方はあらゆる意味で残念でしかない。

【関連作品】


イップ・マン 序章(2008)」…シリーズ第1作
イップ・マン 葉問(2010)」…シリーズ第2作
イップ・マン 継承(2015)」…シリーズ第3作
「イップ・マン 完結(2019)」…シリーズ第4作
イップ・マン外伝 マスターZ(2018)」…シリーズ第3作のスピンオフ



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

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├オリジナル(広東語/英語)

 

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言語

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映像特典

├メイキング(3種)

├オリジナル劇場予告編

 

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収録内容

├上記DVDと同様