【作品#0233】ラスト サムライ(2003) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ラスト サムライ(原題:The Last Samurai)

 

【概要】

 

2003年のアメリカ映画

上映時間は154分

 

【あらすじ】

 

南北戦争の北軍に従軍したオールグレン大尉は、日本の実業家から軍隊の指導役を依頼されて来日する。軍隊の指導をしている最中、明治政府へ反乱を起こす勝元が鉄道を襲ったという報告が入り、オールグレン大尉は未熟な兵士を引き連れて現場へ向かうことになる。

 

【スタッフ】

 

監督はエドワード・ズウィック

脚本はジョン・ローガン/エドワード・ズウィック/マーシャル・ハースコビッツ

音楽はハンス・ジマー

撮影はジョン・トール

 

【キャスト】

 

トム・クルーズ(ネイサン・オールグレン大尉)

渡辺謙(勝元盛次)

真田広之(氏尾)

小雪(たか)

 

【感想】

 

親日家でも知られる大スターのトム・クルーズが日本を舞台にした作品に主演し、日本では137億円の大ヒットを記録。渡辺謙はアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなどの評価を得、後のハリウッド大作出演の契機となった。また、音楽を担当したハンス・ジマーは映画音楽担当100作目となった。

 

一言で評するなら「ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990)」と「ブレイブハート(1995)」(戦闘シーンのみ)を足して2で割ったような作品。話の基本はほぼ「ダンス・ウィズ・ウルブズ」と言ってもいいくらいで、髭もじゃの主人公の日記をナレーション代わりにし、相手の言葉や考えを学んで、相手の衣装を身に纏い、夫を亡くした女性と恋に落ちるなど相似点が多数見られる。

 

また、本作はアメリカ映画における日本の描写が大きく向上したとも言われるが、正確に言うと日本人俳優の扱いの部分だと思う。渡辺謙、真田広之、小雪、それからもっと脇の福本清三までもが存在感があり、主演のトム・クルーズを喰ってしまうほどである(真田広之はラストのアクションが凄すぎてカットされたくらい)。忍者が出てきたり、謎の全員土下座をしたりと、おかしな描写がないわけではない。ただ、これはアメリカ人がアメリカ資本で映画化したものだし、メインのターゲット層はアメリカ人なので、多少は目を瞑ることができる。言ってしまえば、日本人が監督した時代劇や歴史ものの映画だってって時代考証が間違っているものなんていくらでもあるし、面白さを優先して事実を曲げることだってあるから。ハリウッド映画において、日本が舞台の作品となると、「これは違う!」とか言いたくなる気持ちも分からなくはないが、そこまで目くじら立てて言うまでのこともないだろう(もちろん事実を知ることは大切だが)。

 

本作で一番重要と言える「侍」の精神については、やや伝わりづらくなっている。急速な近代化を進める明治政府に対して、用済みになった侍たちが立ち向かうという構造だが、ガトリング砲相手に刀だけで立ち向かうって「そりゃやられるよ」って話だし、侍たちが刀に拘り、銃を手に取らなかったという事実があるわけでもない。武士道の精神に則れば、「文武両道」ということになる。英語が堪能なくらいに勉強熱心な勝元なら、刀に拘らず銃を取り入れる戦略を進める方がよっぽど賢いと分かるはずなのに、彼らが銃を手に取らず刀だけで戦おうとする意味は伝わってこない。伝統を重んじることと、それに固執することは異なるはずだ。長い上映時間の割にはこの辺りの描写が希薄だったために、ラストにもあまり感動が得られないものとなっていると感じる。また、侍の多くが仕事を失うのは戦国時代が終わった頃である。その手の話であれば「切腹(1962)」を見ることをお勧めする。

 

ただ、その刀を使った場面では、忍者との殺陣はなかなか素晴らしく、往年の時代劇や任侠映画の殺陣を彷彿とさせ、狭い日本家屋の中で、渡辺謙とトム・クルーズが背中合わせで戦うシーンはなかなか印象的だった。とはいえ、勝元奪還の場面で、敵の銃は一切当たらず、こちらの弓矢が百発百中なのは大いに気にかかる(主人公の運の良さは序盤からずっとではあるが)。

 

ここまで多くの日本人俳優が輝くハリウッド作品も貴重。日本人から見たハリウッド作品としては知名度も高い作品ではあるが、作品の出来はボチボチというところだろう。

 

【音声解説】

 

参加者

├エドワード・ズウィック(監督)

 

監督のエドワード・ズウィックによる単独の音声解説。彼が日本を舞台にした作品を作るうえで相当勉強したことはこの音声解説を聞けばよく分かる(そこらの日本人よりもこの時代の歴史は遥かに詳しいんじゃないかと思えるほど)。静かな語り口だが、監督の拘り、知性、そして日本へのリスペクトが存分に感じられる。ハリウッドの大作映画を手掛ける監督が日本の俳優や考えについて細かく話してくれるのは素直にうれしいものだ。何なら本編よりもこの音声解説の方が面白く感じたほどだ。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/日本語)

 

【ソフト関連】

<DVD(2枚組/特別版)>

言語
├オリジナル(英語/日本語)

├日本語吹き替え

音声特典

├エドワード・ズウィック監督による音声解説

映像特典(Disc2)

├トム・クルーズ:サムライの旅
├エドワード・ズウィック:ビデオ日記
├サムライを作った二人
├ドキュメンタリー:ハリウッドと歴史
├サムライの時代の再現
├サムライの衣装
├帝国陸軍の訓練
├軍人からサムライへ
├武士道(テキスト/武士道にいて)
├未公開シーン集
├日本プレミア

 

<BD>

収録内容
├上記DVDと同様