昨日届いた堤未果さんの本「株式会社アメリカの日本解体計画」を読んだ。米国への株式会社化の遺伝子注入は、古く合衆国銀行や第二合衆国銀行の設立のときに遡るのだろう。それが立派に「株式会社アメリカ」として、成人となったのがこの本に書かれているとおり、レーガン政権以降だろう。現在は壮年から老年期に入っているのは、昨日書いた通りである。

 

この「株式会社アメリカ」という言葉を知ったのは、堤さんの本の宣伝をネットで聞いたからである。しかし、その発想は、21世紀初頭からあったようである。(補足1)

 

それが昨日youtubeで公開されたチャンネル桜の番組で山岡鉄舟氏により紹介されていた。(アメリカ分断は、株式会社アメリカの老年期から最後の段階を議論している。今回の記事はそれ以前の話なのだが、以前に何回も書いてきた内容を含んでいるので、下に引用する。)

 

 

元に戻る。その堤さんの本が昨日届いたの、一気読みした。その中の中心テーマはウォール街の米国巨大資本による日本侵食である。

 

その中の一つだけ、ここで紹介したい。それは、小泉内閣のときの郵政民営化の話である。概略は聞いていたが、その中で一番説得力のあるエピソードをこの本で初めて知った。主人公は言うまでもなく、昨日も暗に言及した二人の内の一人竹中平蔵氏である。(あと一人はデービッド・アトキンソン氏)

 

話は、この本の51頁から書かれていた。当時郵貯&簡保マネーは340兆円あったが、その金が米国に投資される様にウォール街が画策した。その米国の操り人形になったのが、小泉純一郎首相と郵政民営化担当国務大臣の竹中平蔵氏であった。

 

20051014日、郵政民営化法案は可決成立した。この本に紹介されているエピソードは、ゴールドマン・サックスのロバート・ゼーリックGoldman Sachs Robert Zoellick副会長が、竹中平蔵氏へ郵政民営化への励ましという形をとった指示の手紙を送ったことである。

 

それを国会で質問した人物がいる。当時の民主党の櫻井充参議院議員である。質問は、郵政解散の前月の20057月、第152国会で行われた。質問は、「竹中大臣、あなたは今まで、アメリカの要人と民営化について話し合ったことはありますか」であり、竹中氏の答弁は、「いいえ、一度もございません」であった。(52頁)

 

そこで、櫻井議員はその場で、ロバート・ゼーリック氏から竹中氏に宛てられた手紙を読み上げた。そこには、民営化開始の2007年より、郵貯・簡保業務にも民間と同じ保険業法、銀行業法を適用することなどの具体的な方針が、その実現に向けて米国は支援するという形で書かれていた。(詳細は、53-54頁に書かれている)

 

2)この後、郵政民営化法案は否決される。この本は次の日のことを以下のように書いている。

 

翌日、ワシントンの広報紙であるWall Street Journalは、こんな記事を出しています。「これで我々が待ち望んだ3兆ドルは、しばらくお預けだ。が、しかし、小泉総理は頑張るに違いない」(同書55頁)

 

この本の内容は、俄には信じられない。そこでネット検索をしたところ、意外と簡単にその事実の証拠となる一つの情報が見つかった。ロバート・ゼーリック氏のウィキペディア(ただし英語版)記事に、米国のこの内政干渉を批判する豪州の人の論文が紹介されているのである。

 

In Australia's New Left Review, Gavan McCormack claimed that USTR Zoellick intervened during a 2004 privatization issue in Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi's re-election campaign.

McCormack wrote, "The office of the U.S. Trade Representative has played an active part in drafting the Japan Post privatization law. An October 2004 letter from Robert Zoellick to Japan's Finance Minister Takenaka Heizo, tabled in the Diet on August 2, 2005, included a handwritten note from Zoellick commending Takenaka.

 

McCormack, Gavan (September–October 2005). "Koizumi's coup". New Left Review. New Left Review. II (35).

 

オーストラリアのニューレフトレビューで、ガヴァン・マコーマックは、2004年の小泉純一郎首相の(郵政)民営化問題を掲げた再選運動に、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)のゼーリックが介入したと主張した。

 

マコーマック氏は、「米国通商代表部は、200582日に国会に提出された日本郵政公社の民営化法の起草に積極的な役割を果たしてきた。ロバート・ゾエリックから日本の竹中平蔵財務相への200410月の書簡には、竹中氏を褒めるゾエリック氏の手書きのメモが同封されていた」と書いている。以下省略。(英文中のfinance ministerは間違い)

 

この米国による重要で明らかな内政干渉の噂は聞いていたが、その詳細に関する報道は殆どなされていない。櫻井議員による質問など今まで知らなかった。竹中平蔵氏の偽証の罪についての議論も、私自身はしらない。勿論、当時は理系研究者としての日々を送っており、関心がなかったのかもしれない。

 

ただ、日本語版ウィキペディアには、ロバート・ゼーリックという項目はあっても、この件の記述はない。この国家反逆罪と言って良い小泉内閣の日本統治、その中での竹中平蔵氏の国会における偽証など、きっと詳細は大きくは報道されなかったのだろう。政治の問題の第一は、このマスコミの問題である。

 

補足:

 

1)フィリップ・ボビットが2003年に書いた「アキレスの盾」(Philip Bobbitt The Shield of Achilles: War, Peace and the Course of History)という本に、「市場国家」と書かれているようだ。昨日公表のチャンネル桜の番組で、山岡鉄舟氏の概説(動画41分から始まる)の最初にある。山岡氏の解説は、この動画(一時間少ししか見ていないのだが)で最も有益な情報を含むと思う。

 

(2月28日早朝、編集あり)

 

1)新型コロナパンデミックと金融資産の膨張

 

世界の金融資産は、新型コロナのパンデミックで大きく膨らむだろう。各国政府が、なかば休眠状態になった観光や外食等のサービス業を支援するなどして、新型コロナによる経済的困難を乗り切ろうとしている。その為の財政支出などで膨張した政府債務のかなりの部分が、民間の金融資産の増加に繋がるだろう。

 

行政のデジタル化が進んだ国では、各世帯や産業への支援は、困窮度に応じてなされるので、杜撰な支援の比率は小さいだろう。しかし、日本政府の支援はバラマキなので、国民への支援金はそのまま預金となったり、休業支援でコロナ前よりも収益をあげる飲食店など多数出ている筈である。

 

その他、日銀や政府系基金は、日経225連携型投資信託などを購入するなどの方法で、経済刺激策をとっている。これらで溜め込まれた預金などの金融資産(マネーストック)の相当な増加が、日銀の統計に示されている。https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms2101.pdf (補足1)

 

溜め込まれたお金が、コロナ後の経済の立ち上がりに有効に効けばよいのだが、「MOTTAINAI」の国では、縮小した消費意欲が、文化として定着する可能性がある。http://www.mottainai.info/jp/about/

 

その一方、富裕層の膨らんだ金融資産は、投資先を探して外国へ流れる可能性がある。その結果、円安から、円の崩壊や大きなインフレになることを心配する。25年間デフレ脱却ができなかった我が国は、発展途上国への道に進む危険性がある。

 

2)国の借金1200兆円の嘘

 

財政情況を表すのに、国は貸借対照表(バランスシート;BS)を公表している。BSとは、金の出どころを右に、資産を左側に書いた表のことである。日本国を含め、殆どすべての国は債務超過である。ただ、政府が債務超過であることは、不思議でも不健全でも無い。国の経済全体への通貨の供給(マネタリーベース)は、通常(中央銀行を政府の一部と見なせば)政府の債務超過で行われるからである。(補足2)

 

話しの本筋ではないが、ここで一言書いておきたい。殆どのマスコミは、国のBSの債務欄合計額(2019年度、1258兆円)を国の借金と言っているが、それは嘘である。2019年度の日本の債務超過つまり正味の借金は583兆円であり、借金という言葉を用いるなら、この額を言うべきである。

 

上述のように、その金は日銀を通じて、国民にばら撒かれた金である。外国から借金をしているわけではない。(補足3)日本国が破産しないのは、国民(法人を含める)のBSを連結すれば、大きな黒字だからである。https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2018/national/fy2018gassan.pdf

 

マスコミの危機報道などで消沈した国民の意識もあり、コロナ後に縮小したサービス業などが元の規模を回復せず、経済規模が大きく縮小してしまうことが心配される。更に、カーボンニュートラルなどの国際的陰謀に菅政権が巻き込まれ、基幹産業に痛手を被る可能性がある。それらが重なったとき、国際金融資本の円売り攻勢などがあれば、途上国へ道に固定される可能性があるだろう。

 

気になるのが、ダボス会議とそれを主催する世界経済フォーラム(WEF)が、思考力の弱い政府の経済を破壊する可能性である。その手先として動く人物を菅政権は中枢に抱えている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12654167247.html

 

3)株式会社「アメリカ」とグレート・リセット

 

米国などの国際金融資本は、様々な手段で世界の金を吸い上げることが出来る。彼らは経済のルールも自分たちに有利に作り変えてきた。それがグローバル経済であり、人権や法治の原則も無視して作り上げた。その巨大金融資本の恐ろしさは、昨年の米国大統領選で十分知った。(補足4)

https://www.youtube.com/watch?v=zdWV2MHGSo8

 

民主主義の米国は今や存在しない。存在するのは、金融資本独裁の国“株式会社「アメリカ」”である。偽造や捏造は、主要メディアやSNSの協力で行う。裁判所も、株式会社「アメリカ」の内部機関であり、都合が悪ければ門前払いで応じる。

 

米国と中国の政治制度に、本質的な違いはない。大資本が、共産党の帽子をかぶっているか、そうでないかだけの違いである。

 

世界の金融を支配し、情報を隠蔽&独占するのだから、金融資産の殆どは世界の混乱に乗じて、最終的に米国(そして中国)に集まるだろう。必要なのは、戦争や何かのパンデミックなどの混乱である。中国は、国際共産主義と戦後のグローバリズムで、彼らの支援で作り上げられた。(補足5)

 

経済成長には、豊かな創業精神が必要であると言われる。しかし、創業精神は必要を感じたところで発生し、それほど難しいものでも無いだろう。本当に必要なのは、それを育てる金融の力と、創業精神を金融と結びつけるメカニズムである。

 

米国のビッグテックと呼ばれる企業群の多くは21世紀になって誕生している。GAFAMの内アップルとマイクロソフトが1970年代の創業だが、それらの巨大化を条件に少し遅れて巨大化したのが、その他のビッグテックである。これらの創業を可能にしたのは、将にシェアホルダー(株主)資本主義の遺伝子である。それこそ、金融とその創業を結びつける能力の源泉である。

 

株式会社「アメリカ」のシェアホルダー資本主義は、人間の歴史と文化を食い荒らそうとしていると危機感を抱いて、20世紀中頃以前の社会を取り戻そうとしたのが、トランプ大統領だった。しかし、中国など安い労働力の供給国と結託した株式会社「アメリカ」は、既に青年期を過ぎて壮年期に達していた。トランプの出現は10年以上遅かった。

 

その世界をステークホルダー(利害関係者)資本主義にグレート・リセットすると称して、世界を不況と混乱におとしいれ、世界の地理的統一と思想的統一を果たそうと企んでいるのが、世界経済フォーラムの人たちだろう。

 

そこで画策している人たちは、株式会社「アメリカ」の深層にいる人たちと同類のように思える。もっと少ない人口の楽園を、彼ら自身のために、この地球上に築こうとしているのかもしれない。神は彼らの味方なのだと信じているのだろう。

 

4)個人商店「ニッポン」

 

三橋貴明氏により、チャンネル桜での経済議論の際だと思うが、政府の財政支出増大がデフレからの脱却と日本の後進国への転落防止に必要だという議論が成されている。

https://www.youtube.com/watch?v=68BcRTbNmy4

 

その中で、三橋氏は、商品貨幣論から貸し借りの記録であるという正しい貨幣観への転換が全世界的に起こったと主張している。そして、インフレが起こらない限り財政赤字は、国民の黒字であり、良いことであると主張している。

 

これは、「インフレが起こらない限り」という前提を、あまりにも軽くあしらっており、間違い或いは政治的プロパガンダであると思う。日本のデフレは、政府の財政支出の不足が原因ではなく、民間の資金需要が無く(或いは、銀行等にその需要を見る目がなく)、創業への投資や労働生産性向上への投資が増えないのが原因である。

 

ここで意識すべきは、どのようにして社会の資金需要を増加するかであり、財政支出で資金の供給を不自然に増やすことではないと思う。三橋貴明氏や藤井聡氏は、本質的に経済文化の問題である日本のデフレを、政治の問題として取り扱っている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12564206453.html

 

遠回りだが、教育から改革しなければならないと思う。つまり、若い知恵の採用、”学ぶ教育”から”考える教育”への教育改革(補足6)、地方分権で地方に考えさせるなど、霞が関の知恵ではなく、国民の知恵を総動員する体制である。

 

その昔、「日本株式会社」という言葉が流行った時期があった。高度成長期の日本は、世界経済を牽引すると思われ時期にあり、米国で日本車をハンマーで破壊する場面がテレビ放映されたことを思い出す。しかし、日本は株式会社では無かった。単に、個人商店のレベルだったのだ。

 

日本の株式会社の多くも、日本国政府も、個人商店の域(知恵)を超えることは出来無かった。それでは、優秀な創業者が去った後は、傾くのは当然である。つまり、個人は専門家となって、各専門の間の論理的な情報交換(つまり議論)で運営される、機能体としての会社や機能体としての国家を建設することが出来なかったのである。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12655760953.html (12564206453.htmlも参照)

 

勿論、現在の環境下では、財政支出を惜しむべきではない。日本は自国通貨で国債を発行可能であり、円安には差し当たりならないと見做されているからである。差し当たって出来ることは、例えば行政のデジタル化であり、それに遅れた者は救済されないという危機意識を始めとして、日本国民全てが危機意識を持つことが大事であると思う。


 

補足:

 

1)マネタリーベースは、流通通貨(紙幣や硬貨)、払い出し可能な日銀当座預金、銀行の準備預金の合計である。マネーストックとは国民や法人の現金と預金の合計である。これに金融商品の金額をプラスする指標(広義流動性)もある。

 

2)米国の中央銀行は、ロスチャイルド系ユダヤ人が株を保有する民間銀行である。この米ドル札の供給に利子をとるなら、ボロ儲けである。現在では、剰余金の一部を米国政府に納めているので、ほとんど米国政府の一機関と言えなくもない。https://www.crfb.org/blogs/federal-reserve-makes-889-billion-profit

 

3)日本銀行の株の55%を日本政府(財務大臣)が持っているが、その他の多くを外国人(多分ロスチャイルド家)が持っていると考えられている。日本政府がうっかりしていると、増資とその増資分をその外国人に保有されることになる可能性がある。もしそうなれば、日本政府の借金は本当に1200兆円を超える。ネットでは、日銀が債務超過になれば、日本政府が増資分を買い取れば良いという意見がある。しかし、日銀が日本政府の子会社であれば、それは無意味な増資だろう。そのあたりの議論は、以下のサイトにある。

https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2017/05/08/post374/

 

4)投票用紙や投票集計マシンやそのソフトの改竄など、民主主義の根幹である選挙制度を殆ど破壊してまでも、巨大資本(=民主党)による米国大統領府の占領が実現した。ビッグテックのフェイスブック、グーグル、ツイッターの三社は、現職の大統領が国民への広報に使っていたアカウントを削除するという暴挙に出ても、それを非難する声は大手マスコミにより消された。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12649553722.html

トランプは伝家の宝刀を抜かなかった。トランプの感覚では、大統領府という頭と米軍という手足を用いても(つまり戒厳令の下、米軍が100%協力しても)、内蔵を代えられないなら、米国には死があるのみだと考えたのかもしれない。

 

5)中国はディジタル元を国際決済通貨にしようとしている。共産党幹部は、中国の資本家と混然一体なのだろう。アリババのアリペイも中国政府に接収される可能性がたかいようだ。

https://www.youtube.com/watch?v=ALcjQRjkVmk

 

6)自由な発想は過去の学問の暗記からは生じない。強いて勉めること(勉強)は、教育の方針とすべきではない。知を愛する事(Philosophy、哲学)が西欧の近代を作り上げたことを学ぶべきである。ユダヤ人の教育として、以下のような話を聞いたことがある。彼らは、例えば「Aは善である理由を述べよ」という問題に答えさせた後、「Aは悪である理由を述べよ」という問題を与えるというのである。それにより、Aに対する深い理解が得られるのである。日本の教育とは、雲泥の差を感じる。

(2/26早朝、2,3の語句修正あり)

 

 

今日、6年前の文章が閲覧されていた。実は、最も印象深かった言葉は、注釈1に記載しているF.ルーズベルトの米国民向けの演説である。実際に歴史を動かした演説だからである。その一言が書きたくて、再録する気になった。
昨夜、池上彰氏が戦後の世界を変えた言葉について、その背景やその後の歴史の変化について紹介していた。面白く、且つ、為になる番組だったが、同時に強い不満も感じた。
 
番組では素晴らしい演説が紹介されていた。例えば、人種差別に反対するキング牧師の演説では、 “I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.”(私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。)を筆頭にして、多くの形での人種差別をあげ、”I have a dream that "という同じ形の文章で繰り返し、その撤廃を聴衆に強く訴えている。そして、それらが心に刻み込まれるように工夫された名演説である。http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-majordocs-king.html
(注釈1)
 
ケネディー大統領の演説も非常に有名である。その中の「そして、同胞であるアメリカ市民の皆さん、国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。また同胞である世界市民の皆さん、アメリカがあなたのために何をしてくれるかではなく、人類の自由のために共に何ができるかを考えようではありませんか。」が特に有名であるが、それだけでなく世界のリーダーとしてなされた演説全体を味わうべきだと思う。http://www.jfklibrary.org/JFK/Historic-Speeches/Multilingual-Inaugural-Address/Multilingual-Inaugural-Address-in-Japanese.aspx
 
しかし、このような名演説を味わうときに、同様に重要なことは、キング牧師やケネディー大統領が凶弾に倒れたことである。その事実を深刻にそして同時に考えるべきだと思うのは、世界を動かしているのは、このような名演説を携えて登場する知性と勇気に満ちたリーダーなのだろうかという疑問が残るからである。(注2)
 
例えばケネディー大統領の暗殺の場合、明らかに綿密に計画されたものであると考えられる。そして、それを裏付ける様に、その弟のロバートケネディーもその後暗殺された。上記疑問は、ケネディー大統領が暗殺されたことだけでなく、それ以上に、その暗殺とその謎に対して米国が十分な調査とその報告を行なっていないことから生じるのである。
 
冒頭に書いた強い不満感とは、昨夜の番組は片方の視点でしかこれらの名演説にふれていないからである。つまり、「世界を変えた名言から知る戦後70年」というサブタイトルをつけながら、「本当に名言は世界を変えたのか?」という疑問について何の答えも用意していなかったからである。
 
大衆が仮に、知性と勇気をもったリーダーを選ぶことが出来れば、世界が平和と繁栄に向かうという前提が成立するかどうか?それがイエスでなければ、大統領の名演説も現実の政治の中ではなく、人文科学(文学など)のなかでのみ意味を持ち、且つ、民主主義は実際に政治を動かす勢力の隠れ蓑の意味しか無いことになる。少なくとも、その疑問に答える努力が番組内でなされなければ、視聴者である選挙権者に誤解を与えることになる。
 
注釈:
1)この同型文を繰り返して演説する方法は、20年程前にフランクリン・ルーズベルト大統領が日本の真珠湾攻撃を非難する演説をラジオで行なった時にも用いられている。http://ameblo.jp/shinjiuchino/entry-10933130759.html 既に大統領は、無線傍受により攻撃を知っていたが、日本の不意打ちを強調して反日感情を全米に醸成する目的で、“Last night, Japanese forces attacked Hong Kong. Last night, Japanese forces attacked Guam.” と“昨晩、日本軍はXXを攻撃しました”を繰り返す方法を用いている。真珠湾攻撃の経緯を知っている日本人にとっては、これを聴いた時に米国民が抱いた反日感情の強さと同じ程度に、ルーズベルトの狡猾さに腹立たしく思うだろう。
 この演説は、キング牧師のものとは全く歴史的な役割が異なるが、聴衆に訴える手法は同じだろう。また、米国の政治的な強さは、裏舞台での緻密な戦略立案の後に、このような演説で国民の力を結集出来るルーズベルトのような政治家が存在することだろう(又は、だったのだろう)。
 因に、日本の民主党があれほど無様な姿を晒したのは、舞台裏(裏舞台ではなく)の協力が得られなかったからだろう。別の言葉で言えば、自分達が人形でありながら、自分の意志で動こうとして舞台裏に嫌われたのだろう。
 
2)キング牧師の演説の最初の方にこの様な文章が出てくる。
文章、しかも、憲法という形で書かれた”ことば”でも、100年間実現しない現実について、不渡手形という強い表現で非難している。
 
”100年前、ある偉大な米国民が、奴隷解放宣言に署名した。今われわれは、その人を象徴する坐像の前に立っている。この極めて重大な布告は、容赦のない不正義の炎に焼かれていた何百万もの黒人奴隷たちに、大きな希望の光明として訪れた。それは、捕らわれの身にあった彼らの長い夜に終止符を打つ、喜びに満ちた夜明けとして訪れたのだった。
しかし100年を経た今日、黒人は依然として自由ではない。100年を経た今日、黒人の生活は、悲しいことに依然として人種隔離の手かせと人種差別の鎖によって縛られている。”
”われわれの共和国の建築家たちが合衆国憲法と独立宣言に崇高な言葉を書き記した時、彼らは、あらゆる米国民が継承することになる約束手形に署名したのである。この手形は、すべての人々は、白人と同じく黒人も、生命、自由、そして幸福の追求という不可侵の権利を保証される、という約束だった。
今日米国が、黒人の市民に関する限り、この約束手形を不渡りにしていることは明らかである。”