1)井上陽水の名曲:夢の中へ

 
人類の歴史を書けば、数十万年という長い物語になるだろう。個人はその中の短い一瞬と言っても良い期間を生きるだけである。深層の真実など見ない方が、幸せだという人生の”真理”を唄ったのが、1976年に発表された井上陽水の「夢の中へ」だろう。人生の目的とか、真理の探求とか、そんな難しい解けない問題を考えるより、短い時間を楽しく過ごす方が良いではないかと誘う。退廃的な人生の謳歌のように感じるが、作者独特の皮肉なのかもしれない。よく出来た歌だと感じるのは、真理を観る作詞者の姿を、黒子のように感じるからである。(追補1)
 

 

 

真実を知る苦労をして、”悪”を見出したとしても、今度はそれと戦わなくてはならない。それを倒したとしても、真実を知る姿勢を保てば、新たな悪を見出すことになるだろう。そもそも、善と悪に分類して何になるのか?それは単に、戦いの相手を見つけるためではないのか。自分は戦わないと決めた時、善も悪も消滅するのではないのか、その道が短い人生と限りある能力の人間にとって幸せなのではないのか。(補足1)
 
この真実という概念、善悪という概念を、仏教なども利用して巧みに否定するのが、日本の伝統であった。真実も現実も所詮夢の中の話である。その日本の文化とその歴史を、陽水は知っているのだろう。
 
○露と落ち露と消えにし我が身かな なにわのことも夢のまた夢 (豊臣秀吉の辞世の句)
○世の中は 夢かうつつか うつつとも夢とも知らず ありてなければ(古今和歌集に詠み人知らず)
 
“悪”が、運悪く(多分何かの間違いで)自分を突然襲うことになったとしても、死の必然を考えれば、隕石の直撃を受けて死ぬのとどこが違うのか。運命として諦めるしかないのだろう。キョロキョロと落ち着きなく周りを見渡すのは、視力自慢になっても、幸せとは言えないだろう。何もかも受け入れる生き方の方が、人生の総決算をすれば、大きいプラスを産むのかもしれない。

 

そのような考え方の伝統が、日本には広く深く存在する。日本政治が西欧化できない理由だろう。
 
2)自民党による戦後のインチキ政治について
 
善玉と悪玉の戦いと善玉の勝利という結末を演じるのが、大衆ドラマのパターンである。人気を得るにはハッピーエンドでなければならないのは、人は本来怠け者の保守主義者であり、将来の困難や近くの醜悪から目を背けたいからである。
 
この種のドラマにおける善玉と悪玉は、対立しているように見えるが、実は裏で結ばれている。同様に、現実の世界の善玉と悪玉も裏で結ばれた一つの勢力と考えた方が良い場合が多い。善玉と悪玉を演じる人たちの顔は、同種の顔で造った全く異なる表情のように見える。ドラマが現実なのかドラマの舞台裏が現実ではないのか、自分は何かをこのドラマから得ようとしているのなら、良く考えるべきである。
 
1956年、日本政府は「もはや戦後ではない」というセリフを言い訳に用いて、戦後から脱却出来ない或いは脱却しない道を選択した。(補足2)戦前と同じ薩長土肥の勢力が戦後も日本を支配することになったため、彼ら為政者(の傲慢)に、国を滅ぼした戦前を忘れてしまいたいという欲求があったからである。
 
「もはや戦後ではない」が、経済企画庁が出した経済白書に書き込まれた1956年、「太陽の季節」が芥川賞を受賞し、“太陽族”が海辺を闊歩した。その小説は下らなさそうなので読んでいないが、似たような慾望全開&無責任映画の「太陽がいっぱい」は、DVDで見た。(補足3)
 
これも、歴史も倫理も深く考えない方が、個人にとっては幸せだという無責任な姿勢を描いている。陽水の「夢の中へ」の内容も同類の考えだが、ただ「魔の囁き」のように取り入れている点が斬新である。
 
3)西欧文化を取り入れた筈の日本の近代
 
近代社会は、西欧型社会である。その中に流れる思想は、キリスト教的世界観だろう。そこでは、「色即是空」や「夢のまた夢」的な考え方を受け入れる余地は全くない。従って、日本がこの西欧型世界に順応するには、それらを古典の古い本棚にしまい込まなければならない。
 
つまり、生の本質は戦いであり、戦いに勝利するには、善と悪の峻別が必須である。夢うつつの状態の人は、戦争は絶対悪だというだろう。非武装中立という夢は、確かに心地よい。西欧的視点からは訳の分からないこの後者の勢力が、この国の70%を占める。明治時代、英国からの貸衣装で演じた西欧風日本だったが、失敗した結果の”先祖帰り”だろう。
 
西欧的考え方を少し学べば、現在の我々の生は、祖先の生の戦いの結果として存在することが理解できる筈である。現在の国家も、そのようにして生き残ってきたのである。その歴史を学ぶ責任を、この社会で生きる権利を主張する者全てが持つべきだが、その責任感はほとんど無いのが現状だろう。
 
ただ、善玉と悪玉を取り違えることが往々にしてあり、その取り違えは仕組まれたものである場合も存在する。その場合、善悪の峻別と戦いの計画は、専門的知識を得た者に任せるしか無い。専門的知識のある者をどのようにして選任するのか、それが大きな問題である。
 
2週間ほど前(1,998年10月)になるが、TBS ニュースの報道によると、初入閣した柴山昌彦文部科学大臣は就任会見で、戦前の教育で使われた教育勅語について、「アレンジした形で、今の道徳などに使える分野があり、普遍性を持っている部分がある」などと述べた。
 
これは安倍総理が、森友問題などでも分かるように、民族主義的主張をもっていることを表面的に捉えた上での、政治屋的発言だろう。これはまた、野党が批判する口実をワザと与えて、戦後続けてきたパターンで政権構造を維持するためだろう。国民を馬鹿にしているのである。
 
19世紀末に、長州の下級侍たち(安倍総理の祖先もその中に含まれるだろう)が京都の下級貴族と結託して孝明天皇を暗殺し、倒幕後に政権を得たのだが、その勢力が未だに政権を握っているのが日本の現実である。国際的には現時点では安倍総理以外は考えられない昨今だが、その根本構造を破壊しない限り、この国は催眠術にかけられたまま夢から冷めないだろう。(補足4)
 
先程述べたように、善悪を自民党と野党で分業して演じる安物ドラマが、戦後の日本の姿であった。明治維新と言われる革命は、英国の指導によるものだろうが、戦後の政治は米国の指示によるものである。そのような外国勢力の下で働くのが得意なのが、自民党の怪しげな人たちだろう。
 
「明治維新という過ち」など、昨今上記のようなモデルを指示する本が多くなった。今のままでは、国民全てがその説を自分の説にするのは遠くないだろう。そこに僅かにこの国が西欧文化の中で生き残る道が残されているように思う。
 
教育勅語をモディファイして、それを教育に使うのも良いと言うたぐいの発言は、明治以来の旧勢力の靴を舐める仕草だろう。節操も何もない人物のものである。
 
(2021/3/3 午前10時、編集)
 
追補(午前11時20分)
 
井上陽水の「夢の中へ」をこのように解釈するのは、あるいは陽水の元々の意図にそぐわないかもしれない。また、他の人は全く違った鑑賞をされる可能性も相当たかい。その”精神の自由”こそ、社会(世界)は大事にすべきだと思う。
 
補足:
 
1)今回は、以前の投稿の中から最近閲覧があったものを読み返して、再録しても良いと判断したものを、思考の角度を替えて書き直したものである。そこで今回は、オリジナルな文章とし「再録」とはしなかった。ここで初めて、曖昧さを無くした。つまり、ここでの主張は、日本国も西欧文化の中で生きるべきだという主張である。
 
2)戦後の政治体制から全く脱却していないにも関わらず、また、豊かになった経済の実相から一切目を背け、「もはや戦後ではない」とは良く言えたものだ。無知だったと言えば、言い逃れである。無知を装うことほど罪深いことがないのは、犯罪も同様である。
 
3)「太陽がいっぱい」のラストシーンは印象的である。アラン・ドロン演じる主人公の描くシナリオと、彼の属する現実の進行が、分岐して行く様子、そして浮遊した主人公が現実に落下する瞬間直前で映画は終わる。
 
4)この文章は安倍総理を批判したものではない。安倍総理と曽祖父の岸信介元総理は評価すべき点が多いと思う。ここでいう克服すべき(排除すべき)根本的構造とは、与野党が対立しているように見せて、同じ政治屋の仲間で政治劇を演じているだけの政治である。
 
 

日曜日のテレビ番組「そこまで言って委員会」で辛坊治郎氏が、ベーシックインカム制(以下BI制)を将来採用せざるを得ないだろうと言っていた。BI制とは、国民全員一律に、一定額の生活費を配る制度である。

 

辛抱氏がその理由としてあげたのは、デジタル化やAI化などで、仕事が減少してしまうことである。ロボットとAIの活躍で最終的に仕事がなくなれば、国民の生活維持には、国が一定額をばら撒くしかない(つまりBI制度)ということになる。BI制の利点として、生活保護制度、国民年金制度などの行政コストの大幅カットが可能である。(補足1)

 

確かにデジタルカルテとAIが行き渡れば、生身の医師の診断よりも、ロボット医師の診断の方が、頼りになるだろう。精神科は、AI化が遅れるかもしれないが、例外ではないだろう。薬剤師の仕事なども同様である。

 

国防もロボットに任せれば、貴重な人命を浪費しないで済む。スーパーにはレジ担当の人は全く不要となる。介護もロボットがやるだろうし、ロボットは老人を暴行したりしないだろう。タクシーの運転手は失業し、自動運転の車が、家の前まで来るだろう。

 

このBI制を言い出し辛抱氏を洗脳したのは、あの秀才竹中平蔵氏である。https://news.yahoo.co.jp/articles/80599408f6513ed907e41b4711fa624d433a1de6

 

しかし、これらのシナリオは、労働賃金がそれらの仕事をロボットやAIで達成する時のコストよりも高い場合のものである。「仕事が無くなるから」という前提は、労働賃金が殆どゼロ近くことに等しいことである。AI化にコストが掛かることを考えれば、「仕事が無くなるからBIが必要だ」という論理は、自由経済体制を前提にすれば、最初から成立しないのである。

 

辛抱次郎もBIを言い出した竹中平蔵も、全く解っちゃいないのか、プロパガンダを流しているかのどちらかなのだ。おそらく前者が解っていなくて、後者がWEF(補足2)の構成員としてプロパガンダを流しているのだろう。

 

WEFは、グレート・リセットという言葉で、世界の共産主義革命を考えていると私は思っている。つまり、BIを言い出したのは、WEFの意向を汲んで、社会主義革命の宣伝をしているのだろう。

 

 

スーパーのレジでは未だ主婦が小銭を探して支払っている。中国のスマホペイで決済を済ませている姿と対照的である。行政などの書類から、印鑑(殆どが盲判)を無くそうなんて、今頃言っている国が、このままの延長上で没落を免れて、晴れてデジタル化とAI化の末の富の再分配を考える時が来るとは思えない。

 

山の向こうよりも、足元を見た発言をしてもらいたいと、私は思った。あと数年で、国民の全てが銀行口座と連携したマイナンバーを持つ様になるだろうから、必要性があれば直ぐに実施可能であり、議論する程のことではない。今、そのような議論をするのは、別の政治的意図が隠れていると考えるべきだ。

 

 

2)今考えるべきこと

 

今考えるべきは、日本国が新型コロナ後の世界においても、政治においては独立を、経済においては国際競争力を維持することである。ダボス会議のグレート・リセット構想に隠された世界の大混乱と社会主義化から共産化への誘導などを特に警戒すべきである。(補足3)

 

革新(米国の民主党)と呼ばれる方々は、BI制、地球環境、ポリティカル・コレクトネスなどの理想論で、頭が飽和する人たちであり、何か得体のしれない人たちの謀略に協力している。日本は、米国で言えばトランプの共和党と協力することでしか、生き残れないだろう。

 

日本は叡智を集めて、生き残りの方策を考えることが大事である。しかし、叡智を集めることに日本は不得意である。明治維新以来、西欧に学ぶという姿勢で近代化に勤しみ、“万機公論に決すべし”と言いながら、その意味を理解し、近代日本文化の中に取り入れることが出来なかった。

 

行政組織を始め、国の様々な機関において、機能体としての人事と運営が出来なかった。つまり、一握りの秀才が、個人の知恵の限界で、組織を動かしたのだと思う。そして暴走したのが、あの無謀な戦争であり、その総括が今だに出来ないのは、その責任者の仲間や子孫が日本を継続して運営しているからである。偉大な皇室から出た言葉、「和を以て尊しとなす」と、「万機公論に決すべし」が、同じ空間では両立しないことが認められないのである。

 

人的関係(コネ)で殆どの人事が決定される結果、明治維新以降時代が下るに従って、全ての組織を無能な者たちが支配する様になった。立法府や行政府だけでなく、大学(補足4)やおそらく財界など法人の人事まで、能力ではなく人的関係で決定されているだろう。(倉山満、「エリートほどバカである」残念な国家の末路、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59851?imp=0 )

 

日露戦争の頃より遥かに脆弱な骨組みの国家組織を持つ現代日本が、今後10年で大きく変わる地球世界の光景の中にあって、自由で一定の富を維持出来るかどうかが大問題であり、ベーシックインカムを考えるのは、その後のことであると辛抱さんに言いたい。(補足5)

 

つまり、BI制が可能な時代が来るように、経済的にも政治的にも安定で効率的な日本を如何にして作るかが喫緊の課題である。新型コロナのパンデミックで苦しむ中で、支援金は一律分配である。飲食業の支援も、小さい店と大きい店の区別もしないで、一律6万円/日の支援である。そのような後進国的状況で、BIなんか可能な筈がない。

 

現在の菅政権は、欧米金融支配層(WEFなど)の策略を持っている人たちの手先を抱えている。日本の産業は大丈夫か? 豊田章男社長は悲鳴に似たコメントを出していたが、それを聞いてどう思うのか?https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78943

 

3)通貨の価値を護る事ができるのか?再び悲観論

 

日本の輸出及び輸入額の対GDP比は、夫々15~16%程度であり、それほど大きくはない。その数値だけからは確かに日本は内需依存の国だと言えるかもしれない。しかし、輸入に対する依存度は、通貨の力が減少すれば、直ぐに大きくなる。

 

円安の時代になれば、製造業の復活が世界の工場的な中進国に逆戻りをするという形では成立する。先端工業部門以外で輸出を増加させて食料やエネルギーを確保することは、発展途上国へ逆戻になり、日本の競争相手は韓国や台湾でななく、ベトナムやタイになる。

 

日本の教育、日本の人事、その他の日本の文化に変化がない限り、最先端の技術で世界の一角を占めたことは過去の話となり、日清戦争や日露戦争に勝利したという類の物語と同じく、懐かしい昔話となるだろう。今の段階でも、半導体で台湾に負け、スマホでは韓国に負け、ワクチンでは英米に頼る以外にない。

 

外国と無能な芸能人に支配されたマスコミ。霞が関の下っ端官僚にまでバカにされる政治家。「戦争は外交の一形態」という戦争論など、驚天動地の物語としか聴こえない日本国民の平和ボケ。中国の自治州になって、臓器提供の対象にされても、目が覚めない可能性が高い。

 

補足:

 

1)月額7万円だとしても、1億人に配れば年間84兆円である。就労人口(5660万人)分だけでも、47.5兆円で、日本の予算の半分になる。しかも、それで最低限食っていくとしても、日本の円が現在の対ドルレートを維持しなければならない。そのためには、日本の基幹産業には頑張って稼ぐ環境を政治が用意しなければならない。

 

2)世界経済フォーラム(World Economic Forum; WEF)については、最近のブログで言及している。あのグレート・リセットという如何わしい話を喧伝している(多分ユダヤ系)の組織である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12656621190.html

 

3)巨大金融資本を握る人たちが、世界支配と世界の貧困化による人口問題の解決を策謀している可能性がある。第二次大戦後の世界の共産主義革命を画策したのと同じ層が、神の裁きの形で実現することを考えているのかも知れない。

 

4)藤井厳喜さんの千葉大教授になれなかった恨み節は、大学の理系学部でも現実である。大学の教授は前任教授に尽くした助教授から、その助教授は前任の研究助手として尽くした助手がなる。それでは、まともな教育など出来ないだろう。https://www.youtube.com/watch?v=Uu2dbyBt-hQ

 

5)司会者として素晴らしい能力を持つ人でも、一人の人間の能力はこの程度である。幼少期から天才と言われた人を大勢集め、チームで考える欧米の持ち出す考えとは比較にならない。これまでの平時に於いては、平均して真面目で優秀な労働力を持つ国として、総合戦力で先頭群の中に入れたかも知れないが、今後予想される乱世では、国家全体が機能体として組織化されなければ、東南アジア諸国の後塵を拝することになる可能性が高いと思う。

 

昨日届いた堤未果さんの本「株式会社アメリカの日本解体計画」を読んだ。米国への株式会社化の遺伝子注入は、古く合衆国銀行や第二合衆国銀行の設立のときに遡るのだろう。それが立派に「株式会社アメリカ」として、成人となったのがこの本に書かれているとおり、レーガン政権以降だろう。現在は壮年から老年期に入っているのは、昨日書いた通りである。

 

この「株式会社アメリカ」という言葉を知ったのは、堤さんの本の宣伝をネットで聞いたからである。しかし、その発想は、21世紀初頭からあったようである。(補足1)

 

それが昨日youtubeで公開されたチャンネル桜の番組で山岡鉄舟氏により紹介されていた。(アメリカ分断は、株式会社アメリカの老年期から最後の段階を議論している。今回の記事はそれ以前の話なのだが、以前に何回も書いてきた内容を含んでいるので、下に引用する。)

 

 

元に戻る。その堤さんの本が昨日届いたの、一気読みした。その中の中心テーマはウォール街の米国巨大資本による日本侵食である。

 

その中の一つだけ、ここで紹介したい。それは、小泉内閣のときの郵政民営化の話である。概略は聞いていたが、その中で一番説得力のあるエピソードをこの本で初めて知った。主人公は言うまでもなく、昨日も暗に言及した二人の内の一人竹中平蔵氏である。(あと一人はデービッド・アトキンソン氏)

 

話は、この本の51頁から書かれていた。当時郵貯&簡保マネーは340兆円あったが、その金が米国に投資される様にウォール街が画策した。その米国の操り人形になったのが、小泉純一郎首相と郵政民営化担当国務大臣の竹中平蔵氏であった。

 

20051014日、郵政民営化法案は可決成立した。この本に紹介されているエピソードは、ゴールドマン・サックスのロバート・ゼーリックGoldman Sachs Robert Zoellick副会長が、竹中平蔵氏へ郵政民営化への励ましという形をとった指示の手紙を送ったことである。

 

それを国会で質問した人物がいる。当時の民主党の櫻井充参議院議員である。質問は、郵政解散の前月の20057月、第152国会で行われた。質問は、「竹中大臣、あなたは今まで、アメリカの要人と民営化について話し合ったことはありますか」であり、竹中氏の答弁は、「いいえ、一度もございません」であった。(52頁)

 

そこで、櫻井議員はその場で、ロバート・ゼーリック氏から竹中氏に宛てられた手紙を読み上げた。そこには、民営化開始の2007年より、郵貯・簡保業務にも民間と同じ保険業法、銀行業法を適用することなどの具体的な方針が、その実現に向けて米国は支援するという形で書かれていた。(詳細は、53-54頁に書かれている)

 

2)この後、郵政民営化法案は否決される。この本は次の日のことを以下のように書いている。

 

翌日、ワシントンの広報紙であるWall Street Journalは、こんな記事を出しています。「これで我々が待ち望んだ3兆ドルは、しばらくお預けだ。が、しかし、小泉総理は頑張るに違いない」(同書55頁)

 

この本の内容は、俄には信じられない。そこでネット検索をしたところ、意外と簡単にその事実の証拠となる一つの情報が見つかった。ロバート・ゼーリック氏のウィキペディア(ただし英語版)記事に、米国のこの内政干渉を批判する豪州の人の論文が紹介されているのである。

 

In Australia's New Left Review, Gavan McCormack claimed that USTR Zoellick intervened during a 2004 privatization issue in Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi's re-election campaign.

McCormack wrote, "The office of the U.S. Trade Representative has played an active part in drafting the Japan Post privatization law. An October 2004 letter from Robert Zoellick to Japan's Finance Minister Takenaka Heizo, tabled in the Diet on August 2, 2005, included a handwritten note from Zoellick commending Takenaka.

 

McCormack, Gavan (September–October 2005). "Koizumi's coup". New Left Review. New Left Review. II (35).

 

オーストラリアのニューレフトレビューで、ガヴァン・マコーマックは、2004年の小泉純一郎首相の(郵政)民営化問題を掲げた再選運動に、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)のゼーリックが介入したと主張した。

 

マコーマック氏は、「米国通商代表部は、200582日に国会に提出された日本郵政公社の民営化法の起草に積極的な役割を果たしてきた。ロバート・ゾエリックから日本の竹中平蔵財務相への200410月の書簡には、竹中氏を褒めるゾエリック氏の手書きのメモが同封されていた」と書いている。以下省略。(英文中のfinance ministerは間違い)

 

この米国による重要で明らかな内政干渉の噂は聞いていたが、その詳細に関する報道は殆どなされていない。櫻井議員による質問など今まで知らなかった。竹中平蔵氏の偽証の罪についての議論も、私自身はしらない。勿論、当時は理系研究者としての日々を送っており、関心がなかったのかもしれない。

 

ただ、日本語版ウィキペディアには、ロバート・ゼーリックという項目はあっても、この件の記述はない。この国家反逆罪と言って良い小泉内閣の日本統治、その中での竹中平蔵氏の国会における偽証など、きっと詳細は大きくは報道されなかったのだろう。政治の問題の第一は、このマスコミの問題である。

 

補足:

 

1)フィリップ・ボビットが2003年に書いた「アキレスの盾」(Philip Bobbitt The Shield of Achilles: War, Peace and the Course of History)という本に、「市場国家」と書かれているようだ。昨日公表のチャンネル桜の番組で、山岡鉄舟氏の概説(動画41分から始まる)の最初にある。山岡氏の解説は、この動画(一時間少ししか見ていないのだが)で最も有益な情報を含むと思う。

 

(2月28日早朝、編集あり)