1)世界経済フォーラム創始者シュワブ教授の言葉
世界経済フォーラム(WEF)の創始者のクラウス・シュワブ教授は、グローバル化とは、技術がもたらす現象であり,グローバリズムとは,国益よりネオリベラリズム的な秩序を優先させる思想であるとして、二つの用語を区別して用いる。 https://www.hitachihyoron.com/jp/column/gf/vol02/index.html
また、WEFのHPには、現在の資本主義のあり方は、株主の利益を第一に重視する株主資本主義(Shareholder Capitalism)であるとし、今後は利害関係者資本主義(Stakeholder Capitalism)に移行しなければならないと書かれている。利害関係者として、従業員、会社の周辺の住民などを挙げている。
この2点がシュワブ教授及びWEPの基本的考え方だと思われる。社会構成員一般を利害関係者と考えると、株式会社の経営と同じレベルで、大気中のCO2増による気候変動も重要な関心事となる。カーボンゼロの社会建設は、WEFが解決すべき重要問題として設定されている。
新型コロナ肺炎(Covid-19)のパンデミックにより、世界の経済が大きな困難に直面しており、各国政府は巨額の財政出動で応急対応している。しかし、将来に於ける本質的対応として、経済システムの大変革を行わなければ成らないと、WEFは言う。ダボス会議の議題としてグレート・リセットという言葉を用いて、従来から主張(利害関係者資本主義への移行)を繰り返している。
世界はパンデミックの中で、利害関係者相互の協力の必要性に目覚めており、世界全体が根本から社会を変革するチャンスだと主張する。WEFはそのホームページ(HP)で、以下のように書いている。https://jp.weforum.org/agenda/2020/06/gure-to-risetto-no/
「より良い成果をもたらすには、教育から社会契約や仕事に至るまで、私たちの社会と経済のあらゆる側面を刷新するために、世界は共同で迅速に行動しなければなりません。米国から中国までのすべての国が参加し、石油やガス、ハイテク産業まで、すべての産業を変革する必要があります。私たちに今必要なのは、資本主義の「グレート・リセット」なのです。」
2)株主資本主義への移行のプロセスとグレート・リセット
日本の近代では、会社創業者は「企業は社会の公器」という思想の下、消費者に良いものを届け、且つ、地域社会にも貢献することが、企業の利益につながるという思想が行渡っていた。それは企業も個人も社会(または国)の共同体の一員であるという考え方に沿っている。まさに利害関係者資本主義が実践された時代だった。(補足1)
金融資本が企業を所有する時代になると、資本家は会社の所有として企業利益のほとんどを取る。その一方で、会社は義務の履行として、従業員への賃金支払と地域社会への納税などを行う。それは、機能社会を構成する企業の姿である。
企業と従業員や地域社会との間は、法と契約の関係であり、運命を共有する関係(共同体)にない。そこで、資本の途上国への移動が自由化されたなら、安い賃金を求めて会社は途上国に移動する。その結果、経済はグローバル化して、先進国の金融資本は自己増殖し、エスタブリッシュメントの所得が増加する一方、労働者の賃金は相対的に低下し、貧富の差は拡大した。(補足2)
そのような結果となる株主資本主義から、利害関係者資本主義へ移行すべきだとの考え方はよく分かる。しかし、現在の株主資本主義体制からの脱却は、大混乱と悲劇を避けて実行することは不可能だと思う。それをリセット的に行う、“グレート・リセット”という考え方の詳細がよくわからない。
3)米国での利害関係者資本主義への移行の失敗について
国益よりも自由を優先させることで、株主資本主義の方向に米国を進めたのは、民主政治を巨大資本のかなりの部分が協調して乗取ったからである。その裏に、巨額のスーパーPACなどという政治資金の流れがあった。つまり、この民主主義社会の変質は、米国のこの100年あまりの政治システムの変質による。それを、米国民の利益を最重視するという視点で、元に戻そうとしたのがトランプ大統領だったと思う。
しかし、既に政府中枢と結託している大資本側は、大規模な選挙の乗っ取りを行い、トランプを落選させた。CIAやFIBも、オバマ政権が送り込んだSES(上級執行役員)に牛耳られ、最高裁に加えて大手メディアのほとんど全ても、トランプ側に非協力的であった。公聴会で明らかになった不正を基に告発をしても、裁判所は門前払で俎上にさえ載せなかった。その事実関係のレビューは「カナダ人ニュース」がyoutubeで行っている。
戒厳令下、軍の支配下で票の洗い直しを行えば、トランプは大統領の席を確保できたかも知れない。しかし、それでは、米国は大混乱になると予想される。何故なら、株主資本主義体制は完成しており、大統領周辺は米国のトップではあるが、相対的に小さな存在に過ぎなかったからである。そこで、あえて戒厳令を布かずに身を引いたのは、大混乱の中で大勢の被害者を出すよりも、あるいは賢明な判断だったのかもしれない。意外と普通の人間だったトランプは、自分と家族の身の安全も確保したかったのだろう。
以上、この資本主義形態を急遽変更することの難しさは、米国がこの4年間の政治と4年目の選挙で証明した。それを世界中で行うのは、更に数倍困難であり、危険である。大混乱と第二次大戦レベル以上の被害者が出る可能性すら存在するだろう。WEFは何か宗教的な動機を抱えているのだろうか?(補足3)
WEFは、第三次世界大戦とそこからの国際共産主義革命の可能性すら考えている可能性がある。それを牽引するのは、最初のセクションの赤字部分にあるようにC国なのだろうか? 予想される大戦などの大混乱の可能性を隠しながら、WEFはキャッチフレーズの「グレート・リセット」を喧伝している。勿論、幾らシナリオを書いたとしても、多くの国は動かない可能性が大きいだろう。
以上のWEFの考えに対する分析を裏付けるような議論が、1月25日からの「ダボスアジェンダ」で、大国の首脳らによりなされている。フランスのマクロン大統領は、「新型コロナウイルスのパンデミックには資本主義を作り変える力があると考えている」と発言した。 https://www.businessinsider.jp/post-211515
また、ロシアのプーチン大統領は、現在は第二次世界大戦につながった1920~1930 年の世界に似ていると言っている。この発言は、第三次世界大戦の危険性が増しているとも解釈可能である。https://uk.finance.yahoo.com/news/davos-2021-putin-world-war-risk-covid-19-coronavirus-grim-dystopia-124049532.html?
WEFの“謀略”を感じて、危険性を指摘する動画が配信されているので、それを下に引用する。
補足:
1)Forbesの記事において、グレート・リセットの意味としてStakeholder 資本主義を挙げている。そして、それは150年前の日本の経営理念「三方よし」に似ているとして、紹介されている。「三方よし」とは、売り手と買い手そして社会の三方が、その恩恵を受けることが商売の基本だという近江商人の考え方である。https://news.yahoo.co.jp/articles/b55355fc0235ef17a88a43d2a8b5e2def3b5b168
(「三方よし」はhttps://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html)
2)ソフトバンクの後継者として雇用されたインド系米国人(ニケシュ・アローラ)は、半年間で孫正義との意見があわずに退社した。その間の給与と退職金など合わせると、200億円を優に超える額だった。(ウイキペディア参照)
3)聖書にある「裁きのとき」、つまりヤーフェ神の再来の話は我々には全く理解できない。そして、日本でも裁きのときを信じるキリスト教の一派がある。彼らは本当にそれを信じているのかも知れない。また、米国には地球が平面だと信じる人達が作る協会があるという。そのレベルの考えが、世界政治の流れを決めるなら、本当に厄介である。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%B9%B3%E9%9D%A2%E5%8D%94%E4%BC%9A