ボーイのゲイ
祐司は皿に盛ったポルチーユのパスタを対面カウンターへ置き、すかさずホールへ持っていくのを目のはしで確認しつつ、新しい鍋を火にかける。 「……つくってるばっかりで、てめえがまったり食う時間って、ほとんどないんだよな。 たまに連れとメシ行っても変に探究しちまってさ、こないだも、この味どうやって出してんだって真剣になってたら、黙って食うなってすっげえ怒られ、」「くだらないこと云ってないで働いてください!」澄みきった声が空気を切り裂いて、本城も祐司も飛びあがった。 声の主は、木下南だった。 店に入ってまだ一週間あまり、今年専門学校をでたばかりの二十歳である。 新人は、祐司たちに怒鳴ったのではなかった。 両手を腰にあてだ恰好でサトシを睨み据えている。 サトシは南が入ったことによって見習いから前菜担当に昇格し、同時に彼女の指導係に任命されたが、サトシが指導係らしくしている場面は、今のところだれも目にしていない。
祐司は皿に盛ったポルチーユのパスタを対面カウンターへ置き、すかさずホールへ持っていくのを目のはしで確認しつつ、新しい鍋を火にかける。 「……つくってるばっかりで、てめえがまったり食う時間って、ほとんどないんだよな。 たまに連れとメシ行っても変に探究しちまってさ、こないだも、この味どうやって出してんだって真剣になってたら、黙って食うなってすっげえ怒られ、」「くだらないこと云ってないで働いてください!」澄みきった声が空気を切り裂いて、本城も祐司も飛びあがった。 声の主は、木下南だった。 店に入ってまだ一週間あまり、今年専門学校をでたばかりの二十歳である。 新人は、祐司たちに怒鳴ったのではなかった。 両手を腰にあてだ恰好でサトシを睨み据えている。 サトシは南が入ったことによって見習いから前菜担当に昇格し、同時に彼女の指導係に任命されたが、サトシが指導係らしくしている場面は、今のところだれも目にしていない。