オネエ系のゲイさんと仲良しになりました
「ピザも食っとくから」自分でも何を云っているのやらだった。 「ごめん」「いいから。 車拾われたら追いつけないよ」「祐司」佐伯さんはとつぜん折れるほどぼくを抱きしめた。 腕をゆるめたかと思うと部屋から出ていた。 ピザ屋に何か云っている声は、もう落ち着いていた。 玄関が閉まって足音が遠ざかり、そして、ぞっとするような静けさがきた。 うちの家も佐伯の家も、窓には明るい灯がともっていた。 それが逆に不吉に見えて、門の外で立ちすくんでしまった。 おそるおそる入っていくと、肉じゃがっぽい匂いがした。 キ″チンの続き部屋で、両親がテレビを観ながら夕飯を食べていた。 姉が結婚して以降、夫婦だけだとそこですませる習慣なのだ。 「あらあら」母が茶碗を持つたままぼくを見た。 「ご飯は?」食べてきた、と答えた。 どうせ食欲はない。 ピザも手をつけずに捨ててきた。 そのわりには鎌倉駅のトイレで吐いてしまった。 「仕事はどうなんだ」父がめずらしく話しかけてきた。