イベント名: 美女音楽劇「人魚姫」
場所:兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
日時:10月18日(日) 13時開演
料金:前売5,000円
1)はじめに
青野紗穂さんが「人魚姫」の舞台にしかも台本は寺山修司
の人形劇。青野紗穂さんと寺山修司って一寸イメージ湧かない、
一方音楽担当の黒色すみれさんはずばりそのイメージ。
実は4年目同じ団体であるproject-nyx主催の「伯爵令嬢
小鷹狩掬子の七つの大罪」(寺島しのぶ主演の方)を見に
行ってストーリーがありそうでないシュールな舞台に感動
を覚えて・・。果たしてどんな舞台になるのかと楽しみに
していました。
東京、西宮両公演の最終公演に行って来ました。
2)気になる方の感想等
青野紗穂
初めての演技(しかも主演!)、歌も実はファルセット多用
する歌唱、ダンスもクラシックバレエっぽい振付けですべて
ゼロからのスタートみたいな感じでしたが、頑張ってやって
ましたね。特に最後の場面は感動的でした。(ご本人は
緊張して出来にはご不満の様でしたが・・)
最後のシーン。青野紗穂さんはこれまで骸骨の顔を持った
天使の像を持ってたのですが、それが綺麗な顔の
像に変わるシーンがあって、「恋」は決して邪悪な物で
はないのでしょうけど、「欲望」の一つではあって、
愛する人の為に自己を犠牲にする事で結果自らが浄化され
るという事でしょうか?
「自己犠牲による浄化」って「神々の黄昏」みたい。
黒色すみれ
元々はproject-nyxの「伯爵令嬢 小鷹狩掬子の七つの大罪」に
出演されていて、それで初めて知りました。翌年中津のライブ
ハウスで、ライブを聞かせてもらいました。project-nyxの
寺山修司の作品では常連みたいで、確かに彼女らの音楽は
寺山修司の作品にあっているとは思います。今回は役者と
しての場面も多く、さらにアコーディオンのパートは結構
難しそうで、東京ではハラハラしながら聞いていました。
東グルナラさんと黒色すみれが一緒になって奏でる
音楽は抒情的で美しく寺山修司の抒情性をよく現して
いてとても素晴らしかったです。
東グルナラ
東グルナラさん、実際の活動は良く知りませんが、私的には
現代音楽のコンサートで時々名前が出ているのは知っていて、
前衛的な舞台作品(バレエ?)の伴奏に参加されていたのを
聞いた事があります。今回の舞台では長時間、転調を繰り返す
音楽(なんか高山侑里香的)をミスもなく(多分)完璧に
弾いていたと思います。
グルナラさんが弾いていたピアノ。見た感じはアップライト
ピアノですが、なんか音が違うと思ったら、Una cordaという
ピアノだそうです。Una cordaってソフト・ペダル?と思ちゃ
うのですがそうではなく単純に「一弦ピアノ」と思えばいい
のでしょうか?音色が独特ですね。あまり響かないので。
もしかしてプリペアドなのか?と思ってました。
東京では東グルナラさんは舞台上手側の張り出し舞台の
下で演奏していて判り難かったのですが、西宮では舞台
上、下手側端にあって演奏している姿が見えて良かったです。
金世那
俳優で演出家の金守珍さんのお子さんだそうです。
「伯爵令嬢・・・」の演出も金守珍さん。
役柄としては作家役の人と一緒に劇を見守もり、劇
の内容を補足したり、劇の場面を繋げていくのですが
踊りの場面が出てきてその時は舞台に行って一緒
に踊ります。その時作家役の人が「もうそろそろ
戻っておいで、人生にも限りがあるのだから」
のセリフには一寸ドキッとしました。意外な所に
伏線が・・・。
3)その他色々感ずること
音楽
青野紗穂、悠未ひろ、黒色すみれこの3つをどう音楽的
一つに纏めて、寺山修司の世界を表すのか?というのが
最大の興味でした。
実際聞いてみて、青野紗穂、悠未ひろさんの方は
宝塚的(オペラ的とプログラムには書いてましたが)
一方黒色すみれさんの方は転調を繰り返す世界。
二つの方向性が違う音楽が共存する折衷的な音楽で
一寸がっかり。プログラムを見ると人魚姫は愛の為
声を失う事になるのですが、それは愛の為歌手を
棄てたマリア・カラスを思い起こさせ、寺山修司の
詩も美しくてそれで「もっと歌わそう」と決めら
れたそうですが、それだったらその方向で統一
したら・・・。と思ったのですが。
あちら立てれば、こちら立たずという事でしょうか。
初演(人形劇)の音楽担当は林光さんで、調べてみても
どのような音楽かは判りませんでした。どんな
音楽だったのでしょうか?興味ありますね。
美術、
美術は宇野亜喜良氏、寺山ワールド爆発!シュールで色々な
事を連想させる素晴らしい内容でした。舞台道具の中に
寺山修司の短歌がかかれていて、セリフだけではなく
こんな所に出てくるのかとびっくりしました。
演出、照明等
劇場に入ると舞台に人形が置かれていて上手側上には
座礁した船を見つめる少女のモノクロの写真が
写されていました。、多分東日本大震災の時の写真
なんでしょうね。この写真から舞台が東北の海で
ある事を暗示させ(多分)そして本当は少女は座礁
した船に乗ってどこかに行く予定だったのにそれが
叶わなかった・・・。といったストーリーを思い
浮かばせました。
また劇中では東北の踊りも挿入されていて演出家の
藤田俊太郎さんが震災後の東北を旅して、昔
として一変した風景を見て、昔あった光景は
海の中で生き続けているとしてそのように
なったそうです。
元々人形劇という事なのか、project-nyxの
特色なのか、役者の演技と同時に人形も出てきて
あるときは役者の人と同じ動きをしたり、
あるときは単独で出演したり、あるときは
役者の妄想を再現したりと面白い演出となって
ました。
照明も波を表す布に斜めから青い光が入って
海の感じがイメージ出来て、それが衣装に
反射して独特な効果をだしていて良く考えて
いるなあと感心!
劇場
東京は定員500人、西宮は1000人。箱が違う事によって
演出がどう変わるのかと思っていたら見た感じ
それほど大きくは変わっていませんでした。
劇の序盤に中央の観客だけですが、2枚の青い布が、
頭の上を通り過ぎて行って波の様に舞台にあがって
行く演出があってまるで海の中にいるイメージを
持ったのですが、東京は2枚とも広げられていた
のに対して西宮は1枚目が束ねられていて、2枚目
は広げらていましたが、客席の幅が広く布の重さで
上手く布を引っ張ることが出来なくて、列の中央の
お客さんの頭を撫でるような感じで舞台へ降りて
行きました。布の材質を変えたのかと思い
ましたが、そうではなく・・。重要な演出だった
だけに一寸残念。
西宮はさすがにクラシック用のコンサートホールらしく
残響が美しかったです。東グルナラさんが舞台上で
演奏したのもその効果を狙った為かと。黒色すみれ
さんと東グルナラさんの奏でる音楽はとても美しく
響いてこれは西宮ならではの世界でした。
最期のエンディング。西宮では舞台上に大きな本
が置いてあってそれが閉じられて舞台は終わるのですが。
その時背後の壁も上がって、舞台裏全部があらわになって
(普通その場所は次の幕の為のセットが置いてある所なの
ですが)その場所も青い光で満たされて、海の深さを
演出していました。
4)長々と書きましたが
全体的にはプロが考え練り上げた舞台という事で
たまにはこういうのも見るのはいいなあと思い
ました。ただ音楽的にはどう纏めるのかと期待
していたら、折衷的な感じで一寸残念。
project-nyxの例としてもし再演されればキャスト
や演出も変わるので、どう変わるのかも楽しみですね。
5)どうでもいい事
後日、西宮の公演を観に行ったあるお方とライブ
の後に、歓談。東グルナラさんを激賛していました。
また照明やそれを生かした衣装も感心していました。
「歌姫ライブもこうしたい」なんて事も・・。
(やるのはご自由ですが何処からスタッフやお金を
持て来るのですかね)
と思いつつ
「いやあのチープさと歌のクオリティの高さの
アンバランスさがいいのですよ」と喋ってました。
個人的には左右もう1灯ずつ増設して、スピーカー
を更新して欲しいですね。最近Lチャンネル
必ずトラブってますからね。