約20年ぶりにクラリネットを再開しました。読まれる方は「本当に下手の横好きなやつやなあ」と思われるでしょうがその通りです。今回の記事は最近のクラリネット市場がどうなのかっていうマイナーな話です。
約20年前、何をしていたかというと学生オーケストラ(以下オケ)でクラリネットを吹いていたのです。当時はオーケストラの備品もなく、オークションもあまりなく、樹脂リードもありませんでした。新品のクラリネットを買う金などなかったので、先輩のクランポンを借りていたのでした。25万円くらいと言われたのでE13かそれにあたる前機種だったのでしょう。当時は1ドル90円とかで日本の国力がまだ高かった時代ですのでE13が25万円で買えたことでしょう。それをタダで貸してくれるとは太っ腹な方です。それをメンテナンスにも出さないで返した私は失礼なやつです。何も知らなかった若気の至りです。
■購入に至るストーリー
東京と京都に行った後の今年の1月になにやら怪しい病気にかかり、38度台の高熱にうなされて何を思ったのか「クラリネットをやろう」とネット徘徊をしていました(「ネット」違い)。それで高熱の中調べまくって購入したのが、Zeff ZCL-30でした。「中国製の安楽器は使えない 」が昔もちょっと前も言われていましたが、一方で「だいぶ良くなったらしい 」とも聞き、半信半疑ではあったものの、気づいた時にはポチってました。熱の後押しあってのことです。
日本でクラリネットと言うと、現在ではYAMAHAかクランポンの実質2択ですが、YAMAHAのABS樹脂管のYCL-255でも5万円はするのでとても買えませんし、どうせ自己満足で吹くだけなので、音色の統一性などを気にする必要がなく、メーカーを気にする必要もありません(別にヤマハやクランポンに悪印象はないのですけどね)。
この20年の変化というと、1つは新興メーカーの楽器の質が良くなったらしいこと、もう1つは樹脂リードが使い物になったらしいこと です。前者は上に書いた通りで質が良くなって使えるらしいということです。後者の樹脂リードは20年前にもあったかもしれませんが、使っている人を見たことさえありませんでした。この2つによって、購入費用とランニング費用の低減が見えてきたということです。あくまで使えればという話ですが、安い楽器と樹脂リードを使った結論から言いますと「少なくとも初心者なら十分使える」 ということです。
NUVOなどのいわゆるプラスチック楽器も考えましたが、基となっている楽器と運指が違っていたり、その他の互換性がなかったりで後々面倒そうなのでやめました(値段、変わらんし)。海辺の潮風に吹かれながらと直射日光の下で演奏するならありでしょう。塩にも温度変化にも強いですから。
■Zeff ZCL-30レビュー
↑購入したのはこちらです。楽天のワタナベ楽器で13000円台でした。久しぶりに楽天で買い物する人に1000円 OFFクーポンをくれたのでamazonよりも安かったのです。写真の通り、グリスとメーカー不詳のリード1枚、スワブ、そしてなかなか機能的で軽量なバッグ付きです。後述しますが、マウスピースとリガチャーは酷いので同時に購入しておくことを推奨します(ワタナベ楽器さんはYAMAHAのマウスピースとリガチャーが最低水準の価格で買えますが送料無料のハードルが結構高いので同時がお勧めです)。
↑amazonだとこちらです(13485円)。スワブ(管内の水分を拭き取るための布)の形状が違いますが、私の手元のスワブは白い方でした。
■Zeff ZCL-30本体の材質の長い説明
(材質の四方山話ですので飛ばしていただいて構いません)
Zeff ZCL-30本体はベークライト樹脂製 です。別名フェノール樹脂 です。化学の世界では後者が一般的なので以下そちらを使います。これは、石炭からプラスチックを造っていた時代から製造されているプラスチックの一種です。
クラリネットは150年ほど前からグラナディラというマメ科の水に沈むほど重くて堅い木で造られている楽器です(クラリネットが発明されたバロック時代にはツゲの木だったそうですが、こちらも印鑑に使うくらい堅い木です)。その間にキーが付いたり増えたりピッチが上がったり、色々と改良(?)改造(?)されてきたわけです。
更に時代は下って、世界中の学校でブラスバンドが普及し、それに伴いクラリネットも低価格な需要が増えて行きました。そして、グラナディラでは安くならないし、貴重な木材資源がもったいないので合成素材で造ってしまおうという発想が出てきました。ヤマハの管楽器のルーツである日管(Nikkan)が、半世紀くらい前にはエボナイトとという硬質ゴムで造ったりしていました。
エボナイトは比重が水よりも重く、グラナディラに近いのできちんと整備されていれば音は良いらしいです。エボナイト(ebonite)という名前自体が「黒檀(ebony)みたいなもの」という意味なので、もともと堅い木材の代用品なのです。硫化ゴムの一種です。それに含まれる硫黄が銀を黒くさせるので、エボナイト製でキーが銀メッキのクラリネットは見たことがありません。
エボナイトと言うと、バンドレン、セルマー、YAMAHAの高級品といった1万円近辺のマウスピースに現在も使われています。それらのマウスピースが高い理由は、仕上げに職人の手作業が必要だからです。手作業が含まれると、品質のばらつきと高い労働コストの問題が避けられません。そうしてエボナイトは工業製品では使われなくなっていき、マウスピースを含む趣味の世界だけになりました。
その問題を解決するには、高度な技術で人の手を介さないか、基本的に金型だけで製造できるプラスチックに変更するかです。高度な技術は高価なので、品質の安定問題は解決しますが結局高くなります(RICOのレゼルヴ ラバーがそうで結局1万円します)。つまり、安く造るには後者のプラスチックの採用が解決方法です。ということで、YAMAHAのほとんどのクラリネットに付属しているマウスピースである4Cはフェノール樹脂製です。ABS樹脂ではないのは、フェノール樹脂の方が若干柔らかいので成形の後工程で何らかの加工をしているからではないかと推察します。
ここまで読んでおわかりかと思いますが、グラナディラよりも硬質ゴム、硬質ゴムよりもプラスチックの方が品質が安定して安価に製造できるわけです 。そういう理由で小中学生などのクラリネットを始める人用(スポーツ応援用とも言う)は、現在ではABS樹脂が一般的です。例えば、前述のYAMAHA YCL-255がそうです。
ABS樹脂は野球のヘルメットなどに用いられる堅くて丈夫な樹脂です。また温度変化にも強いので、直射日光でよく割れる木製と異なり屋外での使用も可能です。ただし、生演奏はおろかYoutube動画などでさえ、うまい演奏者の音なら比較すれば一瞬でわかるレベルの違いがあります。おそらく重量(比重)の違いが最大の原因でしょう。逆にABS管は軽いので、小学生のような筋力が発達していないお子様にはメリットになります。
めざとい方は気づくでしょうが、「Zeff ZCL-30はABS樹脂じゃないじゃん、フェノール樹脂じゃん」って話になります。なぜか? これまたコストの問題です。プラスチックのコストがどれも一緒なら、丈夫で割れにくいプラスチックであるABS樹脂がもっと身の回りにあるはずです。しかし、身の回りのプラスチックは、レジ袋やストローが昨今問題になっているようにポリエチレンや、ポリプロピレンだらけです。プラスチックにも種類によって価格の違いがあるのです。
クラリネットにどれくらいの量のプラスチックが必要かと考えると、グラナディラ管で800g程度なので、プラ管でも500g程度の樹脂が必要でしょう。そうなると価格が気になるわけです。10円、20円の違いでしょうが、工場で使う量ともなれば気になるコストです。そこでABS樹脂よりも安くてそこそこ重くて丈夫なプラスチックはないか? そうフェノール樹脂です。
「フェノール樹脂」ってなんだ? と思われるかもしれませんが、一番身近にあるのはおそらく、「電子レンジにかけられません」と書かれている一般的なお椀です。「合成漆器」と呼ばれ、フェノール樹脂にウレタン塗装を施して、見た目は木椀に漆を施した漆器そっくりのお椀に見えるわけです。最近は「電子レンジにかけられるお椀」を見かけますが、こちらはいまいち漆器っぽく見えないあれです(どれだ? )。そちらはポリプロピレンです。ポリプロピレンにはウレタン塗料が付かないのだと思いますが、漆の代替のウレタン塗装さえしていないので「合成漆器」とは呼べません。つまり、漆器ではないただのプラスチックのお椀です。
家に「レンジで使えるお椀」と「レンジで使えないお椀」の両方があるなら比較するとわかりますが、ポリプロピレンの方はふにゃふにゃです。これでは安くても楽器に使えません。ということで堅いフェノール樹脂を採用というわけです。
どうでも良い話ですが、お椀に書かれているように、フェノール樹脂はレンジ非対応なので、お椀と同じくクラリネットを電子レンジにかけると泡を吹いてくちゃくちゃになってしまうでしょう。Zeff ZCL-30はレンジ非対応だからクラリネットをレンジにかけてはいけません(笑) 。
↑ポリプロピレン製の例。役には立つが、もはや漆器には見えません(こんなクラリネットも嫌です)。漆器には、木の漆器(割れる)→フェノールの合成漆器→ABSの合成漆器(レンジ対応)→木粉入りフェノール(ほぼ従来の漆器だが割れない)などあります。グラナディラ粉+プラ成形のクランポンのグリーンラインモデルの開発などクラリネットの世界とよく似ています。
■やっとZeff ZCL-30のレビュー
ワタナベ楽器さんの説明はかなり正直ですので、上記リンクの商品紹介をそのまま読んでくだされば十分なのですが、初心者には楽器として十分使えます。2ヶ月くらい吹いていますが、気づいた点はちょっと最低音のDのピッチが低いかなという程度です。それもチューナーを見るから気づく程度です。ピッチはほぼ正しいですし、音色も十分クラリネットらしい です。 千花音さんという方がPLAYTECH PTCL200(すぐ下の写真のモデル)を演奏している動画がYouTubeにありますが、Zeff ZCL-200でも技術が伴えばそれくらいの演奏はできるだろうと想像できます。彼女の愛機(60万円くらいするクランポンだったと思う)での演奏もありますので音色などを比較してみると参考になると思います。
上で、過去にCRAMPONのE13かそれ相当を使っていたと書きましたが、Zeff ZCL-30の最初の印象は「なんだ変わらないじゃん」でした 。20年ぶりに音を出した程度のテクニックでは区別はつきません。その程度には楽器として成立しています。もっとも、半音階の運指を忘れていたくらいなので、超初心者程度ですが。上で紹介した千花音さんのレベルでは安いプラ管と高級機で差が出るわけですが、プラ管だからと言って聞くに堪えないというレベルではないでしょう。
まあ中古を漁れば、同じ価格帯でアフリカに良質なグラナディラがまだ生えていた時代の良質なグラナディラ製楽器が投げ売りされています 。ジャンク品なら5000円以下でも手に入ります。そうして手に入れたYAMAHA YCL-33(ジャンク)と後ほど比較していきます。YAMAHA YCL-33は30年くらい前の中級機です。すなわち、プラ管では満足できなくなった人が使っていた程度のグラナディラ製クラリネットです。それでも十分グラナディラの質は良いと思います。それとの比較を後ほどしています。
Zeff ZCL-30に戻りますが、通販で新品を買う意味は何か という話になります。不良品に当たれば駄目なのですが、普通に吹ければほぼ確実に音が出ること でしょう。プラ管ですので材質による品質ムラが少なく、店頭で試奏する意味がグラナディラほどありません。最後まで比較検討していたプレイテックのPTCL200もそうなのですが、日本で検品した後の今時の中華楽器の品質は十分まとも です。私が外れに当たらなかっただけということも考えられますが、レビューを見ても外れは多くなさそうです。
↑サウンドハウスさんで販売中のPLAYTECH PTCL200です。送料無料で13880円です(ただし税抜き)。11880円の本体(とケース)のみもありますが、Forestoneの樹脂リード、スタンド、YAMAHA製スワブ、マウスピースパッチ、布、クリーニングペーパーが付いてきますのでこちらの方がお得感が強いと思います。Forestoneの樹脂リードだけで2000円しますからそれ以外の分がお得というわけです。樹脂リードについては後ほど書きます。
■Zeff ZCL-30の付属品の品質
これもワタナベ楽器さんの説明通りなのですが、「マウスピースとリガチャーが酷い 」に尽きます。まだ、マウスピースはまだ使えなくはないですが、特にリガチャーが酷い。はじめから装着されていたリードにリガチャーがめり込んでいました。めり込むリガチャーを見たのは初めてです。「なんじゃこれは?」と思って観察すると、リードに沿ってまっすぐであるべき部分のプレスがグニャグニャ なのです。YAMAHAのクラリネット付属品相当のリガチャーはきれいにまっすぐです。レビューによって最初から「酷い」とわかっていたため、YAMAHAの4Cというマウスピースと付属品相当のリガチャーを本体と同時に購入しました。付属品では変な吹き癖が付きそうなので付属品ではなくYAMAHAを使っています。付属品のマウスピースとリガチャーも無理すれば使えなくはない程度の最低レベルの品質はありますが、私は勧めません。サクラ楽器さんのクラリネットセット(Soleil SCL-1)もそうですが、付属のマウスピースとリガチャーは駄目そう です。
↑完全に横道ですが、サクラ楽器さんのSoleil SCL-1 15200円です。楽譜立て+キーオイルセットと、チューナー+マイクセットがありますが、安い楽譜立ては愛曲楽器に500円で店頭に売っていますので、3000円以上するチューナー+マイクが付いたセットの方がお得だと判断します。
Yahoo!だとこちら 。16000円ですが、ポイントが大量なので、実質的にはamazonよりも安そうです。
楽天だとこちら 。16000円でYahooショッピングと同様ポイントが多ければ実質的に安そうです。
Zeffのレビューに戻ります。次にスワブ ですが、品質はYAMAHA程ではなく縫製に荒さが見られます。しかし、水分を十分に吸い取るため、わざわざ別途購入する必要はない と思います(付属品の数百円が積み重なると結構大きいのです)。
ケースはセミハードでそこそこ頑丈そう です。また、かなり軽量 です。ただし、少々かさばります。しかし、内箱とバッグが一体になっていますのでそれほどは気になりません。気になったのは、ホルムアルデヒドらしい臭いがする ことです。気になる人は気になると思います。
ケースは、化学繊維の布、発泡スチロール、金具とねじだけに見えたので洗っても問題なかろう ということで風呂場のシャワーのお湯で軽めに洗いました。糊が付いていたのか泡立ちましたが、型崩れなどせず臭いが1/3くらいになりました 。自己責任ですが、気になる方は洗ってしまって構わないと思います。なお、あまりやる人は居ないと思いますが、CRAMPONやYAMAHAのハードケースを洗うのは変形する可能性が大なのでやめた方が良いと思います。
「リガチャーがめり込んだリード 」は、家電に付いてくる電池程度の動作確認用のおまけのようなもの でしょう。意外にも普通に音が出ましたが、どのみち1枚しか付いていませんので買い足す必要があります。私としては後述の理由で樹脂リードがお勧めです。
■買い足したもの
チューナー兼メトロノーム KOLG TM60
ピッチ確認の必需品です。独りで演奏するだけにしても上達するには必要でしょう。もちろんチューナーを既に持っていれば必要ありません。マイク付きをワタナベ楽器さんで買いましたが、うるさいところで使うのでなければ必要ないでしょう。いちいちマイクを差し込んでクラリネットに取り付けるのが面倒なので私は使っていません。マイク付きとなしの差額が約800円、後日マイクだけを買うと約1500円なので迷うところではあります。
チューナー本体は、単4電池2本で結構持ちますし機能的にも不満はありません。電池の厚さプラス少しの厚みでコンパクトなので、Zeffのクラリネットケースのポケットに入ります(若干膨らみますが)。なおYAMAHAのTDM700はロゴが違うだけで中身は同等の製品です(どちらかがどちらかのOEMです)。黒色は以下のものが最安ですが、メーカー違いやキャラクター付きのものがあり、差額はせいぜい数百円なのでお好みで。
↑KORG TM60 本体が現在最安なのはamazonで2605円。YAMAHAは何十円か高い。
↑マイク付きだと愛曲楽器のメール便無料3400円がたぶん最安です。
樹脂リード
20年前には存在さえ知らなかった樹脂リードの存在は、クラリネットを再開する背中を押した大きな要因です。ランニングコストの点で無視できません 。しかし、使ってみてそれ以上に感じる利点があり、それは湿らせる必要も、良いリードを選ぶ必要もないことは、練習・演奏だけに時間を使える点です 。
Youtubeでレビューされているプロの中には、葦の方が音が良いとと述べられており、実際、演奏もそのように確かに聞こえるということが有ります。しかし、私程度のザコでは演奏の質に差が出ません 。樹脂リードのメリットの方が遙かに勝ります。
なお、購入時の注意点ですが、Bフラット管以外のバスクラ用やドイツ式用(Legereだとジャーマンカット、ForestoneだとG-tuneがたぶんそれ)があります。Bフラットの最もメジャーなクラリネットにそれらは使えませんので、購入の際にはご確認を。
Forestone フォレストーン リード ブラック バンブー(M)
私がメインで使っているリードです。ブラックバンブーを選択したのはamazonで特売されていたからです。現在の価格の約3000円なら買いません。それならサウンドハウスさんにいつも送料無料の約2000円で売っています。Forestoneの工場見学のページもあるので興味があればそちらも興味深いと思います。リードとしては、ForestoneのMは3相当となっていたと思いますが、昔使っていたバンドレンの3よりも軽い気がします 。2 1/2くらいの感覚でしょうか。
↑amazonで1300円台で購入。現在は3080円なので安い時に買うべし。
Legere 2-3/4
最初に購入した樹脂リードです。2-3/4なのですが、なぜか手元にあるRICOの「4」並になりにくいように感じられます。レビューを見ても表示よりも厚めの感じだと述べられている人がおられますが、Forestoneとは逆に確かに表示よりも厚めだと思います。私だと「2」とかで良かったかも。1度だけ交換できるのでそうすれば良かったのかもしれません。上達したら使おうかと思っていますが、現在のところは正しい吹き方をしているか確認用になっています。もっとも、価格は高いものの評判は良いので、葦のリードよりも薄めを選べばメインのリードとして使えるはずです。
マウスピース
Zeff Zcl-30付属品
色眼鏡はいけないということで、Forestoneの樹脂リードとYAMAHAのリガチャーで演奏してみました。演奏は可能です。ですが、「なんかあかん」って感覚になります。感性にまで踏み込めていないのでしょう。
YAMAHA 4C
YAMAHAの楽器の付属品のフェノール樹脂製マウスピースです。Zeff ZCL-30とセットにすると、本体もマウスピースもオールフェノールで統一できます (音色の統一感がゴニョゴニョなどと言いたいところですが、だからどうした)。音色は、プラスチックなのでエボナイト(硬質ゴム)には若干劣りますが、練習するのに特に問題はありません。2ヶ月使ってみて、若干差があるかなという程度です。YAMAHAの4Cとバンドレンやセルマーでは価格に3倍の開きがありますが、正直そこまでの差は感じません。マウスピースは消耗品ですし、練習用ならこれで十分 かと。初心者向けのクラリネットにも付属しているマウスピースですので、音が出しやすく吹いていて楽しいのでお勧めです。
バンドレン F2A
以前のクランポンのクラリネットに付属していたモデルです(これまた死蔵品)。最初は音が出にくいと思いましたが、2ヶ月で「高いだけはあるわな」と変わりました(高く買ってないけど)。うまい人ならもっと感じるでしょう。YAMAHAの4Cと比較して微妙に抵抗感が増えますが、(十分にコントロールできていませんが)コントロールの幅の拡がりのメリットの方が大きいように感じます。Zeff ZCL-30の問題としては固すぎてバレルに非常に入りにくいことはあります。ですからJeuffroyのバレルを介して用いた感想です。若干抵抗感が大きいのと価格から、初心者がプラ管に使うのは不釣り合いに思えます。「上達してから買えばいいんじゃないかな」と思うわけです。廃番なので実際に店で売っていませんが、こちらもまともに買うと1万円の商品なので、本体並みに高いマウスピースを買う必要があるのかと言われるとコスパが悪すぎるとも思います。
セルマー Concept
私感ではYAMAHAの4Cと吹奏感はあまり変わりません。20年前に使っていたのもたぶんこれだからか違和感はありません。良くも悪くもスタンダードな吹き心地 です。ただし、フェノールよりは音が良い。たまたまYAMAHAのマウスピースとの死蔵品セットを6600円くらいで買ったので、2つで割れば3000円台です。それならお買い得ですが、1万円はやはりコスパが悪いと思います。とはいえ、そういう訳あり品なので選定漏れの可能性があります。それを割り引いて読んでおいてください。
Jeuffroyの樽(バレル)
ヤフオクで売っていた(まだ売っている)、新品(長期保管品)で購入したJeuffroyのバレルです。フランスメーカー・フランス製のグラナディラのバレルです。送料を含めて1000円しません。Zeff ZCL-30の付属品のバレル(当然フェノール製)は62mm、Jeffroyは65mmなのでピッチ調整にも使えます(ケースの何もないバレル用の穴も埋められますし)。が、マウスピースの次に音に違いが出るのがバレルではないか思われるくらいには音がリッチになります。4割グラナディラと言ったところでしょうか(言い過ぎ?3割くらい?)。いずれにしても1000円で結構変わるのでお勧めです。全部突っ込んでも若干隙間が埋まらない問題はありますが、私はZeff ZCL-30をもっぱらこちらのタルで練習しています。
YAMAHA マウスピースパッチ
前歯によるマウスピースの用傷よけシールです。20年前は「何のためにつけているん?」って感じで無知でしたが、今回はマウスピースを長持ちさせるために付けました。0.3mmタイプですが、とくに問題は感じません。有った方が良いと私は思います。
YAMAHA キーオイル
私はジャンククラリネットを分解しまくりなので必要ですが、整備に出していれば必要ないとも聞きます。必要ならば購入すれば良いでしょう。YAMAHAのキーオイルは世界的にも定評あるようです。
■中古楽器
Zeff ZCL-30を購入して1ヶ月位したところからやっぱりグラナディラだろうとオークションを漁ってきました。オークション歴は長いので、文章と写真から想像はできますが、その経験に基づく記述です。オークションのジャンクは大抵演奏する上での何か重大な問題を抱えています。一部のタンポがないとか、キーが曲がっているとか、キーが動かないなどです。私はどこで技術を手に入れたかは内緒ですがある程度の整備ができます。整備できれば5000円以下で手に入るジャンクでも大抵演奏できる状態まで持って行くことは可能ですが、1本目としては非常に不向きです。分解すると完成状態がわからなくなるので、なかなか戻すのが大変です。最悪、元のジャンク状態よりも酷くなります。
オークションで2万円出せば、当面は使える現行品に近い一応整備されたYAMAHAのグラナディラ管が買えます。運悪く相性が悪ければ送料・手数料プラスちょっとくらいの損失で売却はできるので、オークションで手に入れるのもありかもしれません。このクラスだとエボナイトでできているバンドレンやセルマーなどのマウスピースを用いる価値はあると思います。
さいごにに掲載した写真は、ジャンクで手に入れたYAMAHA YCL-33とZeff ZCL-30との比較です。
■最後に
やっぱり楽器のことをそれなりに知っていないと上達しないのだなと感じています。20年前は私にはもったいないクランポンを使っていましたが、技量が大幅に不足していたので、使いこなせていなくて上達も遅かったですし、練習していても楽しくありませんでした。どなたかがカカクコムのYAMAHA YCL-450に書いていたと思いますが、吹きやすくて楽しい楽器だと。YCL-650にすれば良いという話ではなさそうです。センスがあってすぐに上達できる人なら上位機種に短期間で慣れるでしょうから最初から高級な楽器にすれば下位機種の無駄が省けてよろしいと思いますが、大してうまくもなく趣味でやるだけでしたら、プラ管でも安いグラナディラ管でも良いのではないかと思います。Zeff ZCL-30は非常に音の出しやすいクラリネットですので吹いていて楽しく感じます。YAMAHAのYCL-33も音の出しやすさではほぼ同等です(YCL-33の方が若干楽かも)。初心者はその辺の楽器がよろしいんじゃないかと思います。さすがに、そのままでは使えないジャンクの中古は勧められませんので、新品のプラ管を勧めておきます。プラ管は屋外演奏に使えますので、その可能性があれば上達してグラナディラの高級機種に乗り換えた後も日の目を見ることもあるでしょうし。
何本か購入してみた後で、「今、私物のクラリネットの1本目として何を買うか?」と聞かれれば、上にあるPLAYTECH PTCL200か、Soleil SCL-1のセットかなって思います(もちろんZeffでも良いと思いますよ)。なお、サクラ楽器のSoleilのセットのチューナーはコルグの上に書いたものと同じもので十分高性能ですので、買いそろえる出費の必要がなくなります。
中華楽器の共通点は、本体は有名メーカーのABS管と遜色ないが、マウスピースとリガチャーが楽器としての水準に達していないと思います。フランスやアメリカの有名メーカーのマウスピースとリガチャーを購入すると、本体並もしくはそれ以上掛かってしまい2万円を超えてしまいます(3万円近くになるでしょう)。それではYAMAHAの型落ちのABS管とあまり変わらなくなってしまうので現実的な選択ではありません。マウスピースとリガチャーをヤマハの付属品セットにしておけば4000円台で済みますので2万円以内でおさまります。クラリネットを始められるという方はそれが良いかと思います。家での練習用クラリネットが欲しいということでしたら、学校などで使っている私物のマウスピースが有るでしょうから、それを持ち帰ってくるというのも手だと思います。
吹奏楽など集団で演奏するには、音色や業者との関係やコンクール団体とのなんやかやのバイアスその他でメーカーが限られると思いますが、しがらみなどがなければ、品質としては中華製・日本検品楽器で十分なんじゃないかというのが結論です。ただし、付属のマウスピースとリガチャーはやはり期待しない方が良いと思います。駄目なら素直にYAMAHA製でも購入すべきかと。
■余談と写真
SoleilのリガチャーとZeffのリガチャーを比較すると同じ物に見えます。そして、どちらもリガチャーの評判が悪いわけです。また、ケースはメーカーロゴの刺繍以外は同じに見えます。それらから推測するに、中国製クラリネットは本体も含めて、もしかしたら出所の共通部分がかなり多いのかもしれません。だとするとレビューが似るのも納得です。
手元にないクラリネットとの比較の話はこれくらいとして、YAMAHA YCL33と比較します。
音質はやはりグラナディラの方が良いと感じます。音程はどちらが良いかよくわからんという感じです。きちんと動くならば、古くてもやはりグラナディラの方が良さそうです。
ただし、この比較したYCL33は購入時にはキーの一部が動かず、一部のタンポに演奏不能なレベルの劣化が見られました。部品不足でまだ完璧に近い調整にはなっていませんので、操作性は新品のZeffの方が上です。ジャンクを含めた中古はどこまで調整できるか、何が痛んでいるかわからないので、「まとも」に演奏できるクラリネットとして安いものでも1本必要に思えます。
手前がZeff ZCL-30、奥がYAMAHA YCL33。前者はニッケルメッキ、後者は銀メッキ。はっきり言って初心者には、メッキの違いはどうでも良いことです。見た目の問題ですし、ニッケルメッキも十分美しいと思います。
位置関係は同じく。古いので銀メッキが黒変しているのがわかります。黒光りしていてかっこよいと思うので敢えて銀色になるまで磨いていません。銀メッキ用クロスで磨けば輝きを戻せます。
Jeuffroyのバレルをつけた状態。クランポンのマウスピース・リガチャーを付けています。フェノール管の上管とグラナディラ管のバレルの違いがはっきりと見えます。グラナディラの方が茶色掛かっています。
奥はYAMAHA YCL33にYAMAHAマウスピースを付けた状態。
VandorenのリガチャーとForestoneのブラックバンブーリードだと、全部黒なのでリガチャーもリードも位置関係が非常に見えにくい。
上がForestone、下がLegere(葦のリードではなく透明な方)