【横浜山手西洋館探訪】 | pocopanのブログ 「地図がいっぱいある暮らし」

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かねてから、家内が横浜の西洋館を訪ねたいと訴えていたので、有休奨励日を利用して、個性溢れる横浜西洋館へと1泊2日の旅に出掛けてみました。

平日の朝10時くらいに千葉を出発。横浜駅でJR根岸線に乗り換え、石川町駅で下車します。CoCo壱番屋で昼食。家内はクリームコロッケ、私はメンチカツのカレーを頼み、手軽にお腹を満たします。
大丸谷坂を登り、まずは山手イタリア山庭園を目指します。石川町駅の崖の上には、かつてイタリア領事館が置かれていたことから、イタリア山と呼ばれています。庭園には、外交官の家とブラフ18番館の2つの西洋館が移築されています。花壇や噴水、西洋館のミニチュアなどが幾何学的に配置され、ほどよく並べられた白いテーブルとチェアにはランチと文庫本を広げた女性たちが束の間の昼休みを寛いでいます。崖の上という理想的な地形なので、正面には銀色に輝くマリンタワーを望め、手すりに近づけば関内や桜木町の街並みが見下ろせます。

■外交官の家
外交官の家は、明治43(1910)年に渋谷に建てられた明治政府の外交官内田定槌氏の邸宅を、平成9(1997)年に横浜市が移築した西洋館で、国の重要文化財に指定されています。ベージュの外壁とブラウンの柱とオレンジの屋根の組み合わせが「これぞ西洋館」という印象を与えてくれる外観です。アメリカン・ヴィクトリアン風とかで、塔付きの木造二階建てです。入館すると、アール・ヌーボ風の意匠とアーツ・アンド・クラフツ(19世紀英国の美術工芸改革運動)風に装飾された部屋と家具を見学できるそうですが、あいにくの休館日で、当時の外交官の華やかな生活ぶりを垣間見ることはできませんでした。

■ブラフ18番館
ブラフ18番館は、山手45番地に建てられた外国人住宅を平成5(1993)年に横浜市が移築した西洋館です。フランス瓦のオレンジ色の屋根に白い外壁、緑色の鎧戸と窓枠の木造の二階建てで、質素な佇まいです。靴をスリッパに履き替えて中に入ると、中央に廊下のある部屋構成で、バルコニーとサンルームがほどよいアクセントです。
白壁に薄いウグイス色の窓枠と復元された家具類がとても居心地の良さそうな落ち着いた空間でした。元の住宅はカトリック山手教会の司祭が使用していたのも頷けます。


まだ時間があるので、元町公園まで足を延ばします。震災後に作られた元町公園は外人墓地に隣接し、谷と丘を利用した高低差と緑にあふれた静かな公園です。手近なところで、ベーリック・ホールに足を踏み入れます。

■ベーリック・ホール
テラコッタの壁に3連アーチの玄関やお洒落な小窓が目立つ、スパニッシュスタイルの比較的大きめの邸宅です。根岸競馬場などを手掛けたJ.H.モーガンの設計で、昭和のはじめに英国人貿易商の邸宅として建てられました。中に入ると、クリスマスパーティーかなにかのイベントの準備中で、広いリビングや重厚なダイニングで関係者たちが荷物の運搬や装飾などに余念がありません。2階には、客用寝室の他に、主人用の寝室とサンポーチ付きの広い夫人用寝室、さらには令息用寝室があり、いずれの部屋にも浴室があるという裕福さでした。


第1日目の探訪はここまでとし、額坂を下り、喫茶「コメダ」で休憩後、ビジネスホテルに向かいました。

第2日目は、みなとみらい線の元町・中華街駅を出発点とします。立体都市公園とも言われるアメリカ庭園には、エスカレーターで上がり、外人墓地を経て、再び元町公園へと向かいます。公園には、昨日のベーリック・ホールの他に、エリスマン亭と山手234番館を見学できます。


■エリスマン亭
大正末にシーベルハグナー商会のフリッツ・エリスマンの邸宅として山手町127番地に建てられましたが、昭和57(1982)年に解体され、平成2(1990)年に現在の場所に再建築された西洋館で、横浜市認定歴史的建造物に指定されています。設計者は、世界的建築家F.L.ライトの弟子で、「日本の近代建築の父」といわれるチェコのアントニン・レーモンドです。 緑の森に佇む白亜の洋館という外観で、煙突やベランダ・屋根・窓・ドアといったパーツがいかにも異人館らしい趣を示しています。
中に入れば、1階には暖炉のある応接室・居間兼食堂・庭を眺めるサンルームなどがあり、簡潔で個性的な家具類を鑑賞できます。2階には、山手の洋館に関する写真や図面などの資料が展示されており、窓から緑の元町公園を見下ろせるのがとても素敵です。


■山手234番館
昭和2(1927)年頃、外国人向けの共同住宅として、現在の敷地に民間業者によって建設され、横浜市認定歴史的建造物に指定されています。設計者は、朝香吉蔵です。共同住宅なので、4つの同一形式の住宅が、中央部分の玄関ポーチを挟んで対称的に向かい合い、上下に重なった構成ですが、家で間取りを確認するまで気づきませんでした。3LDKの間取りは見事にコンパクトにまとめられています。昭和50年代頃まで実際に使用されていましたが、その後横浜市が歴史的景観の保全を目的に取得、改修工事の後、平成11(1999)年から一般公開されています。こちらも、クリスマスパーティーかなにかのイベントの準備があるようで、2階には立ち入ることができませんでした。


元町公園を後にして、港が見える丘公園へと向かいます。この公園では、横浜市イギリス館と山手111番館を見学できます。

■横浜市イギリス館
イギリス館は、昭和12(1937)年に上海大英工部署の設計により、英国総領事公邸としてこの地に建てられました。鉄筋コンクリート2階建てで、コロニアルスタイルの建物だとかそうで、1階のホールは、貸しきりのコンサート中でした。2階に上がると寝室などがあり、広い窓からは庭や港を眺望できます。玄関脇にはめ込まれた王冠入りの銘版や、正門脇の銅板が、由緒正しき旧英国総領事公邸であることを示しています。昭和44(1969)年に横浜市が取得しました。

■山手111番館
山手111番館は、イギリス館の南側の噴水広場を挟んで立っているスパニッシュスタイルの洋館です。噴水広場のロータリーには、はとバスが到着したばかり。ローズガーデンを見下ろす建物は、大正15(1926)年にアメリカ人ラフィン氏の住宅として建てられました。設計したのは、ペーリック・ホールと同じくJ.H.モーガンです。玄関前の3連アーチが同じ意匠ですが、こちらは天井ではなくバーコラになっているので、明るく感じます。内部に入ると、柱のない吹き抜けのホールがとても印象的です。ホールの暖炉と隣の食堂の暖炉が背中合わせになっているのも合理的です。こちらもイベントの準備中で、海を見晴らす寝室とホールを見下ろす回廊を見学することはできませんでした。平成8(1996)年に横浜市が敷地を取得し、改修工事の後、平成11(1999)年から一般公開されています。ローズガーデンから入る地階和室部分は、喫茶スペースとして利用されています。


これで、一通りの西洋館の探訪は終了です。どの西洋館も見学料は無料で、気軽に探訪できます。なお、横浜市イギリス館以外の建物の入場では、スリッパに履き替えます。フランス山を下り、出発点の元町・中華街駅で、ロッカーに預けた荷物を回収し、畳とコタツのある中途半端に和風な我が家へと帰途につきました。


■地図

①山手イタリア山庭園


②外交官の家


③ブラフ18番館


④ベーリック・ホール


⑤外人墓地


⑥エリスマン亭


⑦山手234番館


⑧横浜市イギリス館


⑨山手111番館


●周遊バス「あかいくつ」




さあ、今日も地図を広げて、
西洋の館へと冒険にでかけましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。