第19回ショパン国際ピアノコンクール
三次予選3日目(2025.10.16.)
三次予選も最終日になりました。
主な感想を書きます。
牛田智大(日本26歳)
プレリュードop45から演奏が始まりましたが
私はあまり聴いたことがない曲で
どう聴けばいいのか難しい曲だなと思いました。
こういう繊細で複雑な表現を要する楽曲は
彼の得意とするところだと思います。
マズルカop56の2楽章までは助走のような感じで
3楽章の切ない響きからが本番でしょうか。
エキゾチックでどこか温かみのあるメロディが
心地よいテンポで流れます。
ファンタジーop49では放たれる音の温度が
スッと下がったように感じました。
音で温度を感じさせるというのも
なかなかにすごいことだなぁと思います。
この曲は私のような素人が聴いても
奏者の表現の違いが比較的わかりやすい
ような気がします。
牛田さんのファンタジーは
ともすれば暴れ狂いそうな激情を
心の中で噛み締め昇華させようとしているような
内声的な表現のように感じました。
ソナタ3番は美しい響きが流れるように紡がれて
聞き惚れている間に終わりました。
フィナーレは最後の力を振り絞るような熱演でした。
また演奏とは関係ない話ですが、
牛田さんはこの日お誕生日で26歳になりましたね。
今回のショパコンは期間中、しかも出番の直前直後に
誕生日を迎える日本人奏者が多かったですね。
なんだかおもしろい。
Ziton Wang(中国26歳)
マズルカop50の3楽章が私は大好きです。
透明感、異国情緒、密やかさ、切なさ、
彼女の演奏はとても素敵でした。
変奏曲op12やワルツop18は高音が綺麗で
明るく軽やかな感じがホッとしました。
こういったあまり聴いたことのない曲を
選んでくれる奏者は他にもいて
世界を広げてくれるので嬉しいです。
三次予選がいちばん選曲の幅が広いので
奏者の個性が反映されて楽しいですね。
Yifan Wu(中国16歳)
子守唄op57からバラードop38への流れが
いいですね、続きの1曲みたいです。
組み立てが上手いなと思いました。
この三次予選で子守唄を選んだのは彼の他に3人、
( ヤン(21)、イェフダ(19)、ティアンヤオ(16) )
みんな若いというのがおもしろいです。
ちなみに私は4人のうちイェフダの子守唄が
いちばん好きです。ドリーミーな響きで
慈愛に満ちた優しさを感じ
すぐに安らかな眠りに落ちていけそうです。
閑話休題
イーファンの演奏は、ステージが進むにつれて
表現力が進化してきている気がします。
予備予選から二次予選までの私の感想を振り返ると、
ミスはないけれど表現がおとなしい、
個性が見えにくい、といった言葉が並びます。
でもこのステージでは表現の幅が広がり、
音色にも彩りがつき、フォルテの迫力も増しています。
彼の表現したいことが聴衆(私)の心に
ちゃんと届くようになってきました。
彼のコンチェルトはどんな感じなのか?
ファイナルでも聴いてみたい気がします。
Kevin Chen(カナダ20歳)
この人も別格だなと思いました。
最初の1音がとてもていねいで
そこからすでに惹き込まれてしまいます。
マズルカop41は灰色の雨がしとしと降るような
悲しみと安堵が混じった複雑な響きで、
最後までさまざまな色を次々と表現していました。
バラードop52は押し付けがましさのない
ギリギリの切なさ。
優しく繊細な響きが印象的でした。
ソナタ3番は清らかな高音と
深み&温かさのある中低音の
コンビネーションが心地よかったです。
力を込めキンキン鳴らす人が多いフレーズも
ソフトタッチであくまでも優しく響かせるところが
とてもいいなと思いました。
全ての音、全てのフレーズに意味を見出し
その意味を聴衆にしっかり届けようとしている印象で、
ソフトなタッチなのに胸にじわっと迫ってくる良演。
会場でもスタンディングオベイが起きてましたね。
Eric Lu(アメリカ27歳)
この人の演奏を初めていいなと思いました。
ただし表現についてだけです。
さまざまな感情がちゃんと表現されているのを
このステージで感じ取ることができました。
ただ、私にはタッチがどうしても硬く感じられ、
スタッカートが効きすぎるように聴こえますし
メタリックな響きがやはり好きになれません。
今回のショパコンに関する記事の
目次はこちら ショパコン2005目次
顔を突き合わせて何か相談でもしているのかしら。
こんな可愛い仲間がいるなんてどんな職場よ?
いい職場です。