創作ラボ2 -694ページ目

青い手紙 25

「わたしが、旦那様を殺す理由などありません」彼女は大きく息を吐き出してからそう言った。「それにどうやって殺したのでしょう」


「殺害の理由はこれです」そう言うと、私は上着のポケットから青い封筒を取り出して、テーブルの上に置いた。一瞬、彼女の目が大きく開かれたように見えた。


「あなたは、私がこの封筒を持ち去ることは予想していなかった」私は言葉を続けた。「これは畠山さんの遺言のはずです。畠山さんの死後、この遺言が私によって発見される予定だった。確かに、私は青い封筒を発見した。そして、持ち去った。私が不用意にこの青い封筒の中を見てしまったら、遺言としての効力はなくなる。というより、すでになくなっている。私が畠山さんの遺言を発見したと言って、どこかの弁護士事務所に持ち込んでも信用はされない。それどころか、私が畠山さんを殺害したのではないかと疑われる。この青い封筒の中にはどういうことが書かれているのですか?」


「わたしは、そんな封筒のことは知りません」彼女はうつむいたまま、聞き取りにくい小さな声で言った。


「今から、私が話すことは、推理です。真実を知っているのはあなたです。私の話を聞いてどうするかはあなたが判断すればいい。私は、あなたに何かを求めているわけではない。真実が知りたいだけです。自分を納得させるために、真実を知りたいだけです。まず、なぜあなたが畠山さんを殺害する必要があったのか。それは、ある人物のためです。少なくとも、あなたは畠山さんに遺言を書かせて殺害することがある人物のためになると思ってやった。ある人物とは、畠山純一さんです。彼は、畠山義男さんが死亡しても、相続権はなかった。あなたは、畠山純一さんに相続権を与えたかった。なぜか。あなたは彼のことを好きになってしまったからです。畠山家にメイドとして働いているうちに、畠山純一さんを好きになってしまった。あなたは、畠山純一さんとの結婚までを考えるようになった。そのためには、まず、畠山純一さんの奥さんが邪魔だった。そこで、奥さんを殺害することを考えた。その手口はおそらく、畠山義男さんを殺害したのと同じ手口だろう。何かの薬を飲ませた。薬は、適量だとまさに、薬になるが、量を間違えると、毒になる。というより、もともと薬は人間の体にとっては毒です。たとえば、心臓病、あるいは、高血圧の持病のある者に降圧剤を多量に飲ませると、どういうことが起こるか。あなたは畠山純一さんの奥さんを薬によって、うまく病死にみせかけて殺害した。その後、あなたと畠山純一さんがすぐにでも結婚するということになると、奥さんの死に関して、誰かが疑われることになる。そこで、畠山義男さんが死亡してから結婚するという約束をしたのかも知れない。あなたとしては、畠山義男さんには、すべての財産を畠山純一さんに相続させるという遺言を書いてもらってから、早く死んでほしかった。あなたはなんとか言いくるめて、畠山義男さんに遺言を書かせた。そして、薬を多量に飲ませて、殺害した。畠山義男さんが死亡したことを確認してから私に電話をかけた。アリバイ工作のために、そして、青い手紙を私に発見させるために」


「さすがに、探偵さんですね。面白いお話ね」彼女は無理に笑顔を作ってそう言った。


「笑って聞いていられる話なのかどうかはあなたがよく知っているはずだ」


「旦那様は心臓病だったんです。病死です。あなたの話なんか誰も信じないわ」


「私はこの封筒を持って警察に行くこともできる。電話の声があなただったと証言もする。警察に私の推理を話してみる。彼らはそんな話は信じられるはずがないと言って、笑い飛ばすでしょうか。彼らは、私の話の裏を取るために、捜査を始める。そうすると、あなたが愛する畠山純一さんをスキャンダルに巻き込むことになる。彼は今の地位を失う。畠山義男さんの財産を相続することもなく、取締役社長の地位も失い、彼には何も残らなくなる。しかし、私が警察に話したところで、私には何のメリットもない。私はあなたには何の恨みもないし、畠山一族にも何の恨みもない。畠山純一さんの奥さんも、畠山義男さんも病死だったということで世間は納得している。しかし私は納得してない。ただ、真実を知りたかった。それだけだった」


彼女はうつむいて涙を流し始めた。しばらく沈黙が続いた。


「あなたが話したくないなら何も話さなくていい。あなたは私の質問にただうなずくか首を振るだけでいい。いいですか、今私が話したことは真実か、あるいは真実に近いとあなたが思うならうなずいてください」


彼女は小さくはあるが間違いなくうなずいた。


「いいですか、私は今日、ここであなたなんかには会わなかった。あなたと話なんかしなかった。そして、青い手紙を渡したりしなかった。私の言っていることの意味がわかりますね」

彼女はうなずいた。


「その封筒はあなたが望むようにしてください。私にはそんなものは何の意味もない」


そう言って、私は席を立った。そして、後ろを振り返ることもなく店の外に出た。

そろそろ、終わりにします

もう、そろそろ、『青い手紙』は終わりにします。


こんなに長くする予定ではありませんでした。


気温が低い。

色の道

これはとんでもない小説です。


とにかく、光源氏は多情です。分かりやすくいえば好色一代男です。


ほとんど見境なしの状況です。


若紫は、十歳、 『紅葉賀』に登場する源典待(げんのないし)は、五十七歳、現代の感覚からすると、八十歳手前くらい。源氏は十八くらいです。


年齢の幅も広いのですが、容姿に関しても広範囲なストライクゾーンを持っています。光源氏は完璧な暴投も打ってしまいます。


末摘花は、まるで像のような顔を持ち、痩せて胴長です。


こうなると、笑ってしまいます。


これは文学なのか。


好色一代男を描いた大衆小説なのか。


平安時代の芥川賞レベルの作品だったのか、それとも、文芸誌ではなくて、有名人のゴシップばかり掲載している雑誌の読み物的なものだったのか。


光源氏はこれから先、何をやらかしてしまうのか。


そういう視点で読んでいくと、面白いかもしれません。


やはり、女性特有の粘着的な文体です。少し違和感を感じます。


源氏物語は、少年少女に読ませるものではありません。


姦淫をすすめるようなものです。


それにして、紫式部はなぜこういう好色一代男のような物語を書いたのでしょうか。紫式部の欲望の裏返しだったのか。


つまり、紫式部自身が多情でありながら、その欲望が満たされないから、源氏物語を書いたのだろうか。


それとも、この物語は、短編で終わらせるつもりだったのだけれど、周りから、続編を書くように言われて、物語を面白くするために、短編ごとに新たな女性を登場させて、結果として、源氏の君は好色一代男になってしまったのだろうか。


よくは分からないけれど、千年もの時代を経ても、衣食住が足りると、人の関心は色の道になるのだろうか。











仏の顔も三度まで

相撲にはほとんど興味はなかったけど、朝青龍事件について少しだけ書いてみます。


相撲協会のどの組織が決定するのかは分からないけれど、堪忍袋の緒が切れて、引退させられたということだろうと思う。


仏の顔も三度までの限界を超えた言動を朝青竜が繰り返していたということで、今度という今度は許すわけにはいかなかったということだろうと思う。


最後通牒はすでに、出されていて、今度不祥事があれば引退だということは、相撲協会のどこかの組織からは言われ続けていたのではないかと思う。


そして、ついに、最期の時が来たのではないかと思う。


横綱というのは、ただのスポーツのチャンピョンではない。


横綱には、他のどのスポーツ・競技よりも品格を求められる。

青い手紙 24

直接自宅を訪ねようと思ったのだが、相手が指定した場所で会うことにした。指定された場所は、桜の木が何本も植えられた公園が見える喫茶店だった。


約束の時刻より私は5分遅れたのだが、相手はまだ来ていなかった。

コーヒーを飲みながら、公園をながめた。土曜日の午後の公園には平和な光景があった。犬の散歩をしている者、ベンチに腰かけて、時折、微笑んで話している者。5歳くらいの子供と芝生の上で遊んでいる親子。


待ち合わせの時刻から10分ほどすぎた時に、待ち合わせの人物が現れた。初めて見た時と同じように、目立たないような地味な格好をしていた。


「遅れて、申し訳ございません」と、彼女は言いながら椅子に腰かけた。

「忙しいところをわざわざすみません」私はこういう場面で期待される言葉を言った。


ウエイトレスがやってきて、水が七分ほど入ったコップと紙のおしぼりをテーブルの上に置いた。彼女はレモンティーを注文した。


「それで、どういうお話ですか?」彼女は少し目がしらに皺を寄せながら私の目を見て言った。


「死亡した畠山義男さんが電話をしてくるはずはないのです。私に電話をかけてきたのは誰なのか、ずっと考えていました。畠山さんが死亡していることを確認してから何者かが電話をかけてきた。その何者かは畠山さんの身内の者だろうと私は思っていました。少なくとも、畠山さんの葬儀に参列するまでは」私は彼女の表情の変化を見逃さないように彼女の目から視線をはずさないようにして喋った。「喪主は畠山義男さんの実子の畠山修二さんだった。喪主の挨拶の時の彼の声質に聞き覚えがあるかもしれないと思ったが、彼の声には聞き覚えがなかった。畠山純一さんの声は聞くことができなかった。別の機会に直接彼に会うことができればそれは確かめることができると思った」


私がそこまで話した時にウエイトレスがレモンティーのカップを運んできた。彼女はレモンティーにスプーンで一杯だけシュガーを入れた。


「葬儀の場で、あなたが私に声をかけてきた」私は話を続けた。彼女はレモンティーのカップを口元に運びながら私の話を聞いていた。「その時、私はあることに気づいた。あなたの声質があの謎の電話の声質に似ていた。つまり、あの電話をかけてきたのはあなただ。畠山義男さんのもっとも身近にいたあなたは、彼の喋り方をよく知っている。生気のない老人の声は女性でも真似ることができる。畠山義男さんは病死ではなかった。病死にみせかけて、何者かに殺害された。その何者かは私の目の前にいるあなただ」

カップを口元まで運んでいた彼女の右手が小さく震えだした。