青い手紙 24 | 創作ラボ2

青い手紙 24

直接自宅を訪ねようと思ったのだが、相手が指定した場所で会うことにした。指定された場所は、桜の木が何本も植えられた公園が見える喫茶店だった。


約束の時刻より私は5分遅れたのだが、相手はまだ来ていなかった。

コーヒーを飲みながら、公園をながめた。土曜日の午後の公園には平和な光景があった。犬の散歩をしている者、ベンチに腰かけて、時折、微笑んで話している者。5歳くらいの子供と芝生の上で遊んでいる親子。


待ち合わせの時刻から10分ほどすぎた時に、待ち合わせの人物が現れた。初めて見た時と同じように、目立たないような地味な格好をしていた。


「遅れて、申し訳ございません」と、彼女は言いながら椅子に腰かけた。

「忙しいところをわざわざすみません」私はこういう場面で期待される言葉を言った。


ウエイトレスがやってきて、水が七分ほど入ったコップと紙のおしぼりをテーブルの上に置いた。彼女はレモンティーを注文した。


「それで、どういうお話ですか?」彼女は少し目がしらに皺を寄せながら私の目を見て言った。


「死亡した畠山義男さんが電話をしてくるはずはないのです。私に電話をかけてきたのは誰なのか、ずっと考えていました。畠山さんが死亡していることを確認してから何者かが電話をかけてきた。その何者かは畠山さんの身内の者だろうと私は思っていました。少なくとも、畠山さんの葬儀に参列するまでは」私は彼女の表情の変化を見逃さないように彼女の目から視線をはずさないようにして喋った。「喪主は畠山義男さんの実子の畠山修二さんだった。喪主の挨拶の時の彼の声質に聞き覚えがあるかもしれないと思ったが、彼の声には聞き覚えがなかった。畠山純一さんの声は聞くことができなかった。別の機会に直接彼に会うことができればそれは確かめることができると思った」


私がそこまで話した時にウエイトレスがレモンティーのカップを運んできた。彼女はレモンティーにスプーンで一杯だけシュガーを入れた。


「葬儀の場で、あなたが私に声をかけてきた」私は話を続けた。彼女はレモンティーのカップを口元に運びながら私の話を聞いていた。「その時、私はあることに気づいた。あなたの声質があの謎の電話の声質に似ていた。つまり、あの電話をかけてきたのはあなただ。畠山義男さんのもっとも身近にいたあなたは、彼の喋り方をよく知っている。生気のない老人の声は女性でも真似ることができる。畠山義男さんは病死ではなかった。病死にみせかけて、何者かに殺害された。その何者かは私の目の前にいるあなただ」

カップを口元まで運んでいた彼女の右手が小さく震えだした。