私が開局した当時の50MHzの主力モードはAMで、自作以外の10W局の実に多くが日新電子工業のバナスカイ・マーク6(後にスカイエリート6に改名)を使用していました。終段は2E26で、DC-DCコンバータの2SB425以外にはトランジスタのない全管球式にしてはコンパクトで移動兼用です。また変調器の6GW8 採用は量産アマチュア機としては異例で(国産唯一かも)、普通ならば近い内容でより安価な6BM8が妥当な選択でした。
これが大ヒット作となった後、マーク10なる28MHz機が追加されますが、あまり売れた形跡がなく、現存機は少ないと思います。当時でも28MHz AM機の需要は大きな疑問符だったので、狙いはアメリカのCBだったのでしょう。国内での違法CB転用も割に少なかったのは、VFOが10kHz以上も初期変動する上にダイヤルの読み取り精度も低いので、待ち受け受信とか「クラブ・チャンネル」には使いにくかったのかも知れません。
さて当時、ある新聞の科学欄に南極観測隊の取材記事があったのを読んだところ、探査中の出先との連絡用にトランジスタ式の無線機では極低温で動作せず真空管式を使った、という話が出てきました。後に見た雪上車?だかの写真に写り込んでいたのがまさにバナスカイで、どうやらそれはマーク10だったようです。
当時主力のゲルマニウムトランジスタも旧式とはいえ南極の低温くらいで増幅作用を失いはしないので、動作しなかった理由は周辺部品を含めた温度係数の問題で、バイアスが全面的に狂った結果だろうと思います。その点、全管球式のバナスカイは待ち受け状態でも相当な発熱をしますから、ウォームアップの効果があったのでしょう。
それにしても南極探査という国家プロジェクトだというのに、命綱の連絡手段がアマチュア仕様のトランシーバー。「アマチュア用品のプロ流用」の投稿で書いたような事例はこの頃からもたびたび見られ、ハムとしては誇らしい面もある一方で、日本の懐の寒さも感じたものです。