コンドは、みなしごでした。
自分のお父さんもお母さんも知りません。
でも悲しくはありません。
だってコンドを実の子供のように可愛がってくれる神父さんがいるから。
コンドは小さな小さな赤ちゃんのときに、神父さんに拾われました。
もうそれは五年も前のこと、嵐がびゅうびゅうやかましい夜。
コンコン、コンコン。
教会の扉をたたく音を聞いて神父さんが外に出てみると、そこに小さな赤ちゃんが毛布に包まれて泣いていました。
神父さんは大人です。
教会に子供が捨てられていることくらいすぐにわかりました。
『この子はわたしが育てよう!』
神父さんは嵐に負けないくらい大きな声でこう云いました。
木陰に隠れているだろうお父さんとお母さんに聞こえるように。
それは二人安心させるため。
いいえ違います。
それはカムフラージュ、二人へのデモンストレーションでした。
神父さんは小さな赤ちゃんコンドを抱いて教会の中に入りました。
教会の扉がしっかりと閉じられているのを確かめて、神父さんはこっそりこう云いました。
『かわいい赤ちゃんじゃないか』
神父さんは思わず舌なめずり。
神父さんは歪んだ大人だったのです。
かわいそうなコンド。
いいえ、それはわたしたちの勝手な思い。
コンドは自分のことかわいそうだと思ったことは一度もありません。
それは神父さんのスキンシップを『愛』として教えられていたから。
『コンドよコンド、おやおや、さびしくなったのかい。さあ私の乳首をお吸い。安心するだろう』
赤ちゃんコンドは赤ちゃんの本能に従ってちゅうちゅう乳首を吸います。
神父さんの愛を感じながら。
神父さんは大人の本能に従ってハアハア息遣いを激しくします。
コンドを性の玩具として愛でながら。
コンドと神父さん、二人がそれぞれを思う気持ちは大きくずれています。
でもね、便利な便利な『愛』という概念によって二人は上手い具合に結びあっていたのです。
だらかコンドは幸せ。
神父さんも幸せ。
いつわりの『愛』だけど、二人は本当に幸せだったのです。
コンドという名前は、神父さんがつけました。
それはコンドがくわえていた擬似乳首からとりました。
『おやおやこの子はかわった擬似乳首を加えているぞ』
神父さんはコンドの口から、それをとってみました。
するとそれは擬似乳首ではなく使用済みコンドームだったのです。
『おやおやこれはオカモトのじゃないか』
神父さんは聖職者。
でもその前に大人です。
貧しいコンドの両親が赤ちゃんコンドに擬似乳首を買うお金がなくて、しかたなく二人が使用したコンドームを再利用したことはすぐにわかりまいた。
ぎゅっと絞った先っぽの精液が溜まっているところが上手いぐあいに乳首のようでした。
なかなか考えたものだと、神父さんは関心しました。
でも両親のセックスには関心はありませんでした。
歪んだ精神の神父さんは子供だけしか好きではありせん。
そんな神父さんは、子供にやさしく、大人の男女には感情をたかぶらせることなく落ち着いて説教をしていたので、近所でも評判が良かったのです。
この性癖のおかげでね。
それはさておき、使用済みコンドームを加えていた赤ちゃんは、『コンド』とそれらしい名前を与えられました。
『おやおや適当な感じがいいじゃないか』
愛は深すぎてもいけないのだよと、神父さんはひとりごちました。
コンドはだから自分の名前が大好き。
大好きな神父さんにつけてもらったんだから。
そんなコンドも今じゃもう五歳。
しっかりお仕事もできます。
コンドのお仕事は、神父さんの体を流すことと、寝る前のマッサージ。
コンドは自分の仕事に誇りを持っています。
だって大好きな神父のために尽くせることは、大好きな神様に尽くしていることだと思っているから。
一生懸命に働くことって気持ち良いな。
コンドはそう思っています。
神父さんも気持ち良いなって思ってます。
二人は本当に幸せ。
見えないことは見えないままのほうがいいこともあるんだよと、神父さんがひとりごちているのをコンドはよく聞きました。
そんなある日。
コンドは新しい仕事を神父さんに与えられました。
『コンドよ。この手紙を隣町の教会に届けておくれ』
コンドは新しい仕事をもらって大喜び。
だって神父さんが自分のことを信じて大事な手紙を託してくれたのだから。
それは本当に大事な手紙。
神父さんは異端の聖職者。
異端がばれないように常に近所の教会にはマメに連絡をとるようにしてます。
その隠れ蓑がこの手紙ってわけ。
『神父さん、僕この手紙を必ず隣町の教会に届けるよ』
『頼んだよ、コンド』
コンドは喜びいさんで教会を飛び出していきました。
『おーいコンドよう』
神父さん走っていくコンドを大きな声で呼び止めました。
『おーいコンドよ、くれぐれも森の中に入ってはいけないよう』
『はーい』
見送った神父さんはひとりごちました。
あの子に神のご加護があらんことを。
彼が神父らしいことを云ったのはこれが初めてです。
そんなことを云った自分に、神父さんははっとしました。
もしやこれが・・・。
いやいや、これは所有物への情だな。
わたしとしたことが、いやはや。
どこまでも歪んだ神父さん。
でも神父さんはわかっていました。
コンドよって少しずつ自分が変わっていることに。
神父さんがそう思っている間に、走りさるコンドの姿はどんどん小さくなっていきました。
つづく