ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)/光文社

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※本日の記事は腐女子限定ですのおほほ。

みなさんこんばんは。

 インターネット依存症から抜け出せない管理人です。もうね、引きこもりクソクズニート貧乏はインターネットくらいしかすることが無いんですよ!!ほんとうに!だから明日からネットは1日1時間以内にしようと思います。その代わり落語やクラシックのCDをいっぱい聞いて教養を深めてみようかなと思います。

 さて、本日の本はワイルド『ドリアン・グレイの肖像』です。

 ワイルドはアイルランド出身のヴィクトリア朝時代の作家。ワイルドといえば「幸福な王子」の作者として記憶されている方が多いのではないでしょうか。宝石がちりばめられて金の鍍金をされた王子の銅像が貧しい人たちに宝石でできた目玉とかをあげていっちゃうやつ。本作はそのワイルドの本領発揮、耽美全開のホモォワールドです!!!
 舞台の時代も大好きだし、主人公とその友達の青年たちがホモホモしいのも美味しくいただけますし、もう最高ですよね。実際に作者のワイルドも同性愛者だったらしくそのせいでイギリスを終われ、フランスの地で46歳の若さで寂しい最期を遂げているようです。こういう痛ましい歴史を知ると、馬鹿みたいにホモホモ言ってちゃいけないなと思いますね……。

 主人公のドリアン・グレイは絶世の美少年。彼を知るものは誰もがその純真無垢な美しさに心を惹かれずにはおれなかった。彼の友人である画家のバジルも彼に魅入られた男の一人。バジルは彼の美に触発され、ドリアンの肖像画を一枚仕上げます。その肖像画は描かれたときのドリアンの美しさをそのまま時を止めて絵にしたごとくすばらしいものでした。
 その絵とドリアンを見て、バジルの友人であったヘンリー卿という男が、「若さを除いたらこの世に何がのこる?」とドリアンの美の価値観を脅かしたところから悲劇が始まります。ドリアンは今まで意識していなかった自分の美を始めて意識するようになり、絵に向かって「この絵のほうが年をとったらいいのに、そのためなら魂だって差し出す」と言ってしまうのです。

 以下ネタバレ

 彼の望みどおり、ドリアンは年をとらなくなりました。どんなに腹黒いことや、卑しいことを思っても、顔だけはいつまでたっても何も知らない無垢な美しさを保ち続けました。しかしその代わり、バジルの描いた肖像画の中のドリアンは醜く年をとっていくのです。
 ドリアンはヘンリーにそそのかされ続け、悪行に手を染めていきます。一目ぼれした舞台女優シビルを、自分の思う芸術性がまったく失われてしまったとひどく傷つけて自殺に追い込み、凡人ではあったがドリアンを本気で心配してくれた友人のバジルを殺し、かつての親友だった科学者アランを殺人に巻き込んでこれまた自殺に追い込み、どんどん取り返しの付かないことになっていきます。
 そんな彼に転機が訪れました。かつて自殺に追い込んだシビルの弟ジェイムズが、ドリアンの居場所を突き止めて復讐しに来たのです。しかし幸運な(不幸な?)事故によってジェイムズが死んでしまいます。そのとき彼は初めて恐怖というものを味わい、その恐怖から開放されて、これからは善行をして行きようと決意します。

 しかし、その決意は心のそこからの善行とは程遠い、自分のための善行に過ぎませんでした。親友の死も、不幸な姉弟の死も、結局はドリアンの絵に封じ込められた良心を取り戻すことはできず、罪を悔い改めることは叶いませんでした。よりいっそうおぞましくなった絵を目にしたドリアンは、過去の罪から逃げるために、過去から目をつぶるために、その絵の中の自分を殺そうとしますが哀れドリアンは呪いがとけて、みすぼらしい男の姿で亡くなってしまうのでした。

 感想

 ヘンリー卿のキャラクターがとにかくすばらしい。皮肉屋で常に人を煙に巻くようなつかみどころの無い人物として描かれています。当時の貴族ってこんな感じで頭ばっかり大きくって時間をもてあましていたのかしら。ヘンリーからドリアンへの嗜虐趣味、ドリアンからバジルへの嗜虐趣味、バジルは凡人だけどいいやつ。この三人の関係がとても面白い。

 ドリアンが呪いにかかってしまったのは「自分は美しい」と自覚してしまったからなんでしょうか。楽園を追われたアダムとイブみたいに。
 すべてを絵の中に閉じ込めることで、憎しみも後悔もなく何の厚みも無いつまらない人間に成り下がってしまったんですね。若さとは確かにとても尊いものだけれど、その若さを犠牲にして得られる経験も同様にして尊いものなのでしょう。
 逆にではなぜ呪いがとけてしまったのかというと、絵の中の自分=自分の過去を壊そうとしてしまったことによって、また無知なままの自分に戻ろうとしたからなんでしょうかね。

 「俺、善行するぜ☆」といったドリアンがその舌の根も乾かぬうちに「あー、でも自首とかwww無理ぽ」って即効あきらめてるのがダメ人間っぽくていいですね。

 当時のヴィクトリア朝時代は、鏡が普及して自分というものの美しさを客観的にとらえるようになったり(それまでは心の美しさがそのまま体に出ると思われていたらしい)、ダーウィンの進化論(1858年)を始めとした科学的発展によってこれまでの宗教観・世界観ががらりと変わったそんな時代だったのかもしれませんね。

 余談ですが、このドリアン・グレイは何本か映画になっています。管理人のおススメドリアンは『リーグ・オブ・レジェンド』に出てくるドリアン。もうね、イケメンすぎやばい。不死身のイケメンやばい。
下着の誕生―ヴィクトリア朝の社会史 (講談社選書メチエ)/講談社

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※本日の記事は淑女向けの記事ですのおほほ

 昨今では「なんにもつけてないみた~い」という夢のようなブラジャーまで売り出されておりますが、現代の女性たちが快適な下着ライフを送るまでにはさまざまな生活様式の変化や、価値観の変遷があったのです。現代の服の原型となったヴィクトリア朝の時代における服飾の変化を、豊富な写真資料とともに面白く綴っているのが本日の本、戸矢理衣奈さん『下着の誕生 ヴィクトリア朝の社会史』なのであります。

 ヴィクトリア女王が即位した1937年から英国の栄華を誇るヴィクトリア時代が始まります。当時の一般的な女性は、クリノリンというかごを逆さにしたようなものを腰からぶら下げてスカートを広げ、自分の腰を細く見せるのが普通でした。しかしもちろんこのクリノリン、動けたもんじゃありませんでした。ちょっとでも動こうものなら暖炉の火で火達磨になり、馬車には轢かれ……。でも当時は女性が家から出ることなんてほとんどありませんでしたから、それでよかったんです。
 映画なんかでも当時の衣装は特徴的ですよね。地面を引きずるなが~いスカート。私は「あれゴミつかないのかしら……」と思っていたのですが、実際ゴミをかき集めていたそうです。タバコや枯葉や豚肉のパイ(!)なんていうあらゆるものを引きずって歩いていたんだとか。

 しかし、1850年代以降産業革命がはじまると人々は空気の悪いせせこましい英国を飛び出して旅行をするようになります。そのためにはクリノリン始め、3kg以上もあったペチコートは邪魔以外の何者でもなくなりました。そこで、ヴィクトリア女王もお嫌いだったというクリノリンが廃止されるのですが、スカートが膨らまなくなって、今度は腰の太さが気になるようになってきちゃったんですね。そこで始まるのが「タイト・レイシング論争」。コルセットで腰が変形するくらいがんがんに締め上げちゃおうぜ!!という風潮です。
 でももちろんそんなの健康には良くありません。街は青白い顔をした病的な少女であふれ、世界初の拒食症が報告されたのもこの時期だったようです。

 そんなときに注目されたのが日本風やギリシャ風のゆったりとした服装(1880年代~)。こういう服装が流行した理由のひとつには暖房器具や湯沸かし器の普及があるといいます。イギリスって冬がとっても長いですからね!不自然な体の締め付けをやめて、本来の体で健康になりましょうというオープンエア運動が盛んになります。この時代になるとほぼ私たちが着ているような活動に適した服の原型に近くなってきます。自転車にのって颯爽と走る活動的な女性が増えたのもこの時代。

 管理人が大好きなヴィクトリア朝時代の話なので楽しく読めました。これを見てみるといろんな要因が重なって、女性の価値観が大きく変わった時代だったのだなぁという印象。もちろんいいところも多いんですが、逆に必要以上の痩身を求めるようにもなってしまったようです。

 女性のドレスや服飾に興味のある人にもおすすめです!

 
自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝/紀伊國屋書店

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 そういえば2015年から三年連用日記をつけ始めました。管理人です。
以前読んだ今村暁さん『1分間の日記で夢は必ずかなう!』をやってみようと思って。
半信半疑ですが、読み返したときに絶対楽しいと思うし、気楽に書いています。
皆さんもいかがでしょうか。

 さて、本日の本はレスリー・デンディ&メル・ボーリング『自分の体で実験したい-命がけの科学者列伝-』です。

 人間にしか分からない暑さや、人間にしかない消化構造、人間にしかない病気、人間の限界スピード……こういったものって、どうやって研究されているのか疑問に思ったことは無いでしょうか。もちろん、一般的な人ならマウスや、人間に近いチンパンジーを使って実験するでしょう。でも、どうしても人間で実験しなければならない必要に駆られたら、好奇心の塊の科学者たちはどうするのか……?

 そう、自分で実験するのです!

 本書は、自分の肉体を科学の発展と自分の好奇心のために捧げた科学者たち(+デザイナー)の一風変わった人物伝なのです。中学生向けに書かれた本だというだけあって、写真や挿絵や専門用語の解説が豊富でとても読みやすいです。普通に生活している人は名前も知らないような科学者たちが、好奇心と探究心に突き動かされて自分の体で試行錯誤を繰り返す姿は恐ろしくも敬服せざるを得ません。この本が無ければ決して表にでなかったであろう知られざる科学者たちの命を書けた物語を、是非読んでみてください。

以下一言ずつ感想。

①ジョージ・フォーダイス(1770年代イギリス)
『あぶり焼きになった英国紳士たち』
ずばり暑さへの挑戦!!いいですねwこの単純にして奥深いテーマ!
読んでいると滑稽だなぁとおもいますが、
病気になったら体温を測るように、
体温は体の調子を測る大事なバロメーターなんですよね。
気化熱ってすごいなぁ!

②ラザロ・スパランツァーニ(1770年代イギリス)
『袋も骨も筒も飲みこんだ男』
動物によって消化の方法って大きく違うようです。
確かに食べているものが全然違いますもんね。
だから人間の消化機構を調べるには人間が一番!
ということで、ラザロさんは紐の付いた袋にいろんなものを入れては飲み込み、それを引っ張るという聞いているだけで「オェッ」となってしまうような実験を行います。

③ウィリアム・モートンとホレス・ウェルズ(1840~70年代アメリカ)
『笑うガスの悲しい物語』
今でこそ歯を抜くときには麻酔をしますから、歯医者も命がけというわけではなくなりましたが、当時はそれこそ激痛を伴う治療だったんですね。それを、エーテルや笑気ガスでなんとかしようとしたのがこの二人。でも、新しいことをするのに失敗はつき物。公開実験の失敗でウェルズは自殺という悲しい最期でした。

④ダニエル・カリオン(1885年ペルー)
『死に至る病に名を残した男』
死に至る病であったペルーいぼ病に自ら感染して、その経過を仲間の医師たちに逐一報告し、自国にその名のとおり命を捧げた科学者。下宿先のおかみさんや友人たちに見送られて最期を迎えるカリオンの姿は涙なしには読めません。こんなすごい人がいたのだなぁ。

⑤ジェシー・ラジア(1900~1901年キューバ)
『世界中で蚊を退治させた男たち』
黄熱病といえば日本人ならば野口英世を思い浮かべますが、このラジアもその研究に尊い命を捧げた科学者でした。ラジアたちは黄熱病の媒介者が蚊であることを突き止めたんですね。彼の遺志をついで、仲間たちも壮絶な実験に身を捧げています。これだけの犠牲があるから私たちは気軽に海外旅行にいけるようになったんですね。

⑥マリー・キュリーとピエール・キュリー(1902~34年フランス)
『青い死の光が輝いた夜』
この二人は有名ですよね。ラジウムを始めとした放射性元素の研究に大きな貢献をしたご夫妻です。管理人は女性としての研究者の地位向上という面でもキュリー夫人の活躍は見逃せないなと思います。ポロニウムという元素がキュリー夫妻の祖国であるポーランドの名前を取ったというのは知りませんでした。

⑦ジョン・スコット・ボールデーンとジャック・ボールデーン(1880~1940年代イギリス)
『危険な空気を吸い続けた親子』
「危険の無い人生は、マスタードをつけない牛肉のようなもの」こんな言葉はほんとうに危険をかいくぐってきた彼にしかいえないでしょう。かれらは、炭鉱や潜水艦といった空気の悪い場所で、いかにして安全に仕事をするかという研究でした。人は体内に二酸化炭素が増えると苦しくなるそうですが、それは体内が酸性になるから苦しくなるそうです。
 管理人は趣味でスキンダイビングをするのですが、ハイパーベンチレーションというテクニックで息を止める前に二酸化炭素濃度をものすごい下げておくと長い間息を止めていられるんですよ。これはそういうことだったんですね。(危険なのでハイパーベンチレーションはやらないほうが良いというのが今では定説ですが)

⑧ヴェルナー・フォルスマン(1920~50年代ドイツ)
『心臓のなかにはいりこんだ男』
体の心臓以外の部分なら麻酔をかけて開いちゃえってなもんですが、心臓だとそうはいきませんよね。フォルスマンはそれを心臓カテーテルでやろうと考えた人。時代はもう20世紀も中盤ですから自己実験への反発は強かったようで、彼は看護師の一人に施術すると見せかけて自分に麻酔かけちゃうんですねw策士。

⑨ジョン・ポール・スタップ(1940~1950年代アメリカ)
『地上最速の男』
戦闘機にとってその速度と安全性の向上は最重要課題といっても過言ではありません。彼は自分の体を実験台にして何Gまで耐えられるか調べました。停止の衝撃で一時失明しかけるとかこわ……こわ……。

⑩ステファニア・フォリーニ(1989年アメリカ)
『ひとりきりで洞窟にこもった女』
彼女は科学者ではなくてデザイナー。なんで洞窟なんかにこもったのかというと、太陽が上ったり沈んだりしない宇宙空間で、人の体内時計はどうなってしまうのかを実験するため。この実験によると、人は太陽の光で一日の体内時計をリセットするため、太陽に当たらないと1日がどんどん長く(30時間も眠らないでへいきになっちゃうとか!)なってしまうようです。太陽の光がどんなに大事なのか良く分かりますね。

 人間のとどまるところを知らない好奇心は恐ろしくもありますが、力強い希望を感じさせてくれますね。ほかにもこんな例はたくさんあるようで、巻末に論文リストが載っています。気になる方は自分で確かめてみてくださいね!