下着の誕生―ヴィクトリア朝の社会史 (講談社選書メチエ)/講談社

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※本日の記事は淑女向けの記事ですのおほほ

 昨今では「なんにもつけてないみた~い」という夢のようなブラジャーまで売り出されておりますが、現代の女性たちが快適な下着ライフを送るまでにはさまざまな生活様式の変化や、価値観の変遷があったのです。現代の服の原型となったヴィクトリア朝の時代における服飾の変化を、豊富な写真資料とともに面白く綴っているのが本日の本、戸矢理衣奈さん『下着の誕生 ヴィクトリア朝の社会史』なのであります。

 ヴィクトリア女王が即位した1937年から英国の栄華を誇るヴィクトリア時代が始まります。当時の一般的な女性は、クリノリンというかごを逆さにしたようなものを腰からぶら下げてスカートを広げ、自分の腰を細く見せるのが普通でした。しかしもちろんこのクリノリン、動けたもんじゃありませんでした。ちょっとでも動こうものなら暖炉の火で火達磨になり、馬車には轢かれ……。でも当時は女性が家から出ることなんてほとんどありませんでしたから、それでよかったんです。
 映画なんかでも当時の衣装は特徴的ですよね。地面を引きずるなが~いスカート。私は「あれゴミつかないのかしら……」と思っていたのですが、実際ゴミをかき集めていたそうです。タバコや枯葉や豚肉のパイ(!)なんていうあらゆるものを引きずって歩いていたんだとか。

 しかし、1850年代以降産業革命がはじまると人々は空気の悪いせせこましい英国を飛び出して旅行をするようになります。そのためにはクリノリン始め、3kg以上もあったペチコートは邪魔以外の何者でもなくなりました。そこで、ヴィクトリア女王もお嫌いだったというクリノリンが廃止されるのですが、スカートが膨らまなくなって、今度は腰の太さが気になるようになってきちゃったんですね。そこで始まるのが「タイト・レイシング論争」。コルセットで腰が変形するくらいがんがんに締め上げちゃおうぜ!!という風潮です。
 でももちろんそんなの健康には良くありません。街は青白い顔をした病的な少女であふれ、世界初の拒食症が報告されたのもこの時期だったようです。

 そんなときに注目されたのが日本風やギリシャ風のゆったりとした服装(1880年代~)。こういう服装が流行した理由のひとつには暖房器具や湯沸かし器の普及があるといいます。イギリスって冬がとっても長いですからね!不自然な体の締め付けをやめて、本来の体で健康になりましょうというオープンエア運動が盛んになります。この時代になるとほぼ私たちが着ているような活動に適した服の原型に近くなってきます。自転車にのって颯爽と走る活動的な女性が増えたのもこの時代。

 管理人が大好きなヴィクトリア朝時代の話なので楽しく読めました。これを見てみるといろんな要因が重なって、女性の価値観が大きく変わった時代だったのだなぁという印象。もちろんいいところも多いんですが、逆に必要以上の痩身を求めるようにもなってしまったようです。

 女性のドレスや服飾に興味のある人にもおすすめです!